時代劇の風景  ロケ地探訪

桂川 罧原堤周辺

− 罧原堤下河原 −

 京都市右京区嵯峨柳田町から罧原町にかけて、ちょうど嵯峨美術短期大学の南付近の桂川左岸には堤下に広い高水敷があり、草が生い茂っている。
この河川敷に広がる草原と汀、川中にある中州、ここから見た対岸の自転車道などがスポットである。
2001年秋に草原をブルドーザで均し、200台収容の臨時駐車場が作られ些か風情を損じているが、秋の観光シーズンの嵯峨野の混雑を思えば致し方ないことかも知れない。その混みようたるやすさまじいもので、近年はマイカーで乗りつける向きも増え、道は人と車と人力車でごった返し殺伐とした雰囲気すら漂う。
堤上から河川敷を見下ろす 対岸から罧原堤を見る
 嵯峨美短前の河原の少し下手、松尾橋の上手に堰堤があり、この付近から流れは滞り始める。しかし水深はまださほどではなく、中州あたりはごく浅い。
河原は平らに均されバラスが敷かれている。草原はその周囲と汀に僅かに残されている。
河原と草原 草原越しに対岸の山
河原と川 河原前の中洲
 必殺仕舞人「織姫悲しや郡上節」では、いつもの如く直次郎が知り合って深く情を寄せた土地の男が殺され、直次郎が激して走る草原に使われた。翔べ!必殺うらごろしではおばさんが草原で宿の子と遊んでやったり、おねむの腹に赤子をテレポートさせた身重の女が追われていたり、飼い主の危機に際して喋る馬が汀で体を洗って貰ったりしている。必殺!THE HISSATSUでは六文銭の神輿で始末された仕事人たちの死体が銭を銜えさせられて見つかるのはこの付近の岸辺。神谷玄次郎捕物控「疑惑」では汀に船手番所がセットされ、同「闇の穴」では突然戻ってきたお津世の亭主が草原で息子と遊ぶ。鬼平犯科帳「蛇の目」で冒頭、凶盗・五十海の権平が品川の刑場で磔刑になるシーンに河原が使われるが、この例では水を映さず使っている。刑場といえば、大奥 第一章で春日局の父・斎藤利光が処刑される粟田口のシーンはここで撮られた。このときは水面を映していて、粟田口にそんな川か池があったかなと突っ込みが入るところである。なお利光役は福本清三氏で、顔がアップになったときはひっくり返った。
河原前の桂川 対岸から罧原堤下の汀を見る
 桂川に船を浮かべてのシーンも多い。
暴れん坊将軍2「悲しい嘘に惚れた奴」では、伝馬町牢屋敷に勤める同心が自分を騙そうとしていた女の遺体を船に乗せ、女が生前話していた母の思い出の菜の花が揺れる汀を漕いでゆく悲痛なシーンで汀が使われていた。岸辺に咲き乱れる菜の花の黄色が美しい画となっているが本物かどうかは判らない。菜の花と言えば、壬生義士伝でも吉村貫一郎が新妻と菜の花満開の岸辺に佇むシーンがあるが、伏見の東高瀬川堤のような一面の菜の花はここでは見ないので、演出と思われる。
罧原堤から自転車道付近を見る 自転車道をゆく人
 河原から対岸を見るとちょうど嵐山東公園付近が見える。この向こうには宅地がけっこうあるのだが、公園の緑の加減で「余計なもの」は見えず、ただ木の向こうに山なみが見えるだけ、という眺望が得られる。公園手前には堤上に自転車道が通じていて、ここを歩く人を上写真右のように撮れば、まるでどこかの街道筋である。
 このアングルの使用例は翔べ!必殺うらごろし「馬が喋った!あんた信じるか」で、おばさんと知り合った八州役人の許婚者が一緒に安中へ急ぐシーンに使われた。背後に特徴のある刈り込まれた杉が映っているので判りやすい。
また、必殺仕事人・激突!「弁天小僧のかんざし」では仕置のターゲットとなりながら見逃され巡礼姿で旅立つ菊次郎の姿が河原において撮られているが、背後にくっきり自転車道の杉並木が映りこんでいる。
罧原堤下の汀 対岸から罧原堤の河原を見る
 鬼平犯科帳9「大川の隠居」では引退した盗賊で今は大川で船頭をつとめる友五郎が育てた庄太郎がさらわれ監禁される鉄砲州浪除稲荷裏の荷船屋が河原にセットされ、自然に汀に続いている。背後には罧原堤の桜並木のてっぺんあたりと愛宕山の先っちょが見えている。上写真左のアングルよりもう少し引いたもので、おそらく川の中からの撮りと思われる。

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