飛鳥川の石走

 明日香村稲淵の集落には万葉集に詠まれた「石橋」がある。原文に「石走」とあり「いわばし」と訓む。点々と石を置いた飛石橋のことで、ここを渡って妻問いした里人の姿を髣髴とさせる。石橋のそばにはその万葉歌を彫った歌碑がたっている。字は先年亡くなられた犬養孝博士の手になるもの。

 上代、この地に暮らした人々が身近な里川を詠み込んだ歌は多数残されており、降雨による水量の増減や河川工作物への言及などもあって面白い。
「しがらみ」という言葉は灌漑用水取水のため作られた草堰を詠んだもので、堰に関する言及は数多い。降雨時には「水ゆきまさり」などと表現され、「高川」となり水量の増えた川を馬で難儀して渡ったことなどが語られる。また、「下濁れるを知らずして」などと底泥の様子さえ詠み込まれる。飛鳥から藤原京に遷都のあと石橋が無くなってしまったことを嘆ずる歌も見える。

明日香川明日文将渡石走遠心者不思鴨

明日香川 明日も渡らむ 石橋の遠き心は思ほえぬかも (万葉集巻11-2701)

*上は碑に彫られている万葉仮名の原文

撮影日 2002/5/5 奈良県高市郡明日香村稲淵


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