道明寺谷の葛

 道明寺谷は大阪府と奈良県の県境で峡谷を成す大和川に注ぐごくごく小さな谷です。
水もちょろちょろとしか流れておらず、その僅かな流れもクズの極相とも言える大群落に覆い尽くされて見えません。
 クズは道路際の被覆植物としてアメリカに輸出されたことがありますが、今や凄い勢いで繁殖し嫌われ者となっているようです。
別荘や車を覆い尽くし破壊するとも言います。クズにびっしり覆われた米国人言うところの「ホーンテッドハウス(幽霊屋敷)」の写真を見たことがあります。
 日本でも道ばたに大きな群生をなし街路樹を枯らす例もありますが、山の中の切り通しの道や伐採された森の端っこに密生するそれは何か森を守っているように見えるのは私の考え違いなのでしょうか。森の中へ入ってみると中の木には絡み付いていないことが多いのでそう思うのですが、専門家でもないし調査したわけでもないので判りませんね。
 クズの花というと折口信夫の短歌 「葛の花踏みしだかれて色あたらし。この山道を行きし人あり」 が真っ先に頭に浮かびます。言葉によって古代の道と現代の道を時空を超えて一瞬でつないでしまう、さすが天才の技だと思います。

撮影地  大阪府柏原市高井田・青谷地区境   撮影日  2001.9.16


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