川を訪ねる旅

十三峠の湧き水

 大阪と奈良の間には屏風のように国を分ける生駒山があり、古く奈良時代からこれを越える道があった。
日下越、辻子越、暗越などがあり、暗越などは未舗装部分があるものの国道である。
それらのうちの一つ、大阪府八尾市と奈良県平群町を結ぶ水越峠には弘法伝説を持つ湧き水があり、近年では峠越えの旅人のかわりに水汲みのポリタン族がやってくる。
 峠へは、生駒沿いを走る国道170号(旧道)から大阪経済法科大学に通じる道を入る。旧村を抜け登りに入ると立派な道がついている。山中で幾分細くなるものの、国道とは名ばかりの暗峠よりよほど走行しやすい。平群へ抜けてから複雑なのであまり人にはおすすめできないが。
 この道は作られてから長らく封鎖されていて、以前は封鎖ゲート下の崖に導かれたパイプから出る水を汲んで帰る人が多かった。湧き水のある「水呑地蔵」まではゲートからずいぶん距離があり登りもきつかったからである。また、カーブ部分が広くとってある見晴らしの良い道ばたでは今でも仕事をさぼって昼寝を決め込んでいる外回りの営業の車をよく見かける。

 水呑地蔵は車の通れない旧の峠道沿いにある。車道からは七曲りを登りきる少し手前に数台分の駐車スペースがあり、そこから入るようになっている。

              

 ← 十三峠旧道               ↑車道側入口

 入口から広場を抜けて行くと、御堂の手前に湧水の上に作られた屋形がある。ポリタンクを持たずに来ている人はここで水を飲んでいる。ポリタン族はこの屋形の下に導かれた塩ビパイプから出る水を汲んでいる。すみわけでもあるのだろうか。

↑ 屋形下の水場        →弘法水屋形

 御堂の前には懸崖のテラスがあり、眺望が良い。
この日は接近しつつある大型の台風の余波の大風で雲も排気ガスも吹き払われ、大阪湾が一望できた。
お城の緑の甍まではっきり見ることができた。

 御堂周辺には桜が多く、花の時期にはさぞ見事だろう。
御堂は836(承和3)、僧壱演の開基になるもので、本堂には元禄期に作られた地蔵さんが祀られている。
 湧水は旅人の難渋を救おうと弘法大師が祈願して湧き出た霊水であるという、このあたりではよくある伝説を持つ。
故に、湧水の名も「弘法水」という。地元では「水呑さん」と呼んでいる。

水呑地蔵から大阪湾を望む。タワーは南港WTC、遠景は六甲の山々


撮影地  大阪府八尾市神立           撮影日  2001.8.19


▲川を訪ねる旅・目次   ▲サイトトップ