川を訪ねる旅

疏水の庭

 京都・東山の麓にある古刹・南禅寺界隈には明治末期から昭和初期にかけて、時の権力者や豪商の邸とそれに付属する名庭が多くつくられた。
作庭家・小川治兵衛とその息・白楊によってつくられたその庭園群は、折から利用可能となった琵琶湖疏水の水をふんだんに利用した池泉回遊式のものが多く、ひとの考える自然への憧憬を切り取ったかのような、ビオトープとも呼べる趣深いものである。

 その庭たちは借景に東山の峰々を拝み、木々の繁った仄暗い庭の奥からは疎水から引いた豊富な水流が滝組を経て流れ落ちる。
幽邃の地を演出された場所から流れ出た遣水はあたかも盆地に出た川が扇状地を開くように明るい浅い流れを経て園池に至る。
平安期の浄土観を結晶させたような美意識を持つよく手入れされたその庭に野鳥や獣が時折姿を見せるのも面白い。

 彼の地には野村碧雲荘、織宝園、洛翠園、真々庵、清流亭、有芳園、環水園など名庭があまたひしめいているが、その殆どは私有物のため非公開である。
このほど、そのうちの一つ、市田對龍山荘が期間限定で公開されたので拝見してきた。ついでに近くにあって常時公開されている治兵衛の庭ふたつも併せて拝見してきた。

*文中、「植治」というのは小川治兵衛のことです。植木屋治兵衛→植治という通り名です。

■ 對龍山荘    ■ 無鄰庵    ■ 平安神宮神苑

對龍山荘 無鄰庵 平安神宮

撮影日  2001.10.21


*對龍山荘は京都市東山区草川町、南禅寺参道を右に入った路地に、無鄰庵は東山区粟田口鳥居町、京都市動物園の南・疎水南禅寺船溜前に、平安神宮は東山区西天王町・岡崎公園の北にあります。對龍山荘は一般公開されていません。無鄰庵は12月29日から翌1月3日以外の期間は公開されています。詳しくは京都市文化市民局文化部文化課(075-222-4105)に問い合わせてください。平安神宮については公式HPを御覧下さい。

▲川を訪ねる旅・目次   ▲サイトトップ