川を訪ねる旅
手漕ぎ船で水郷巡り


 ようやく秋風が立ちはじめた敬老の日の一日、近江八幡で水郷めぐりを楽しんだ。主眼は家族サービスだが、時代劇に多用される水郷の風景を一度船上で経験したかったという下心もたっぷり。一人や二人で乗り込むのもなんだか寂しいもんだし。
予約を入れた「まるやま水郷めぐり」は、これも時代劇によく使われる八幡掘から少し東に行ったところから出ている。オフィスの脇には木の船が展示してあるが、乗り込むのはグラスファイバーのもの。手漕ぎのとエンジン船とがある。別段急ぐ旅程ではないしもちろん手漕ぎのほうをチョイス。
船着場に行くと先の団体さんが降りてくるところだった。おっ犬乗せてる人もいるんだと思いよく見ると盲導犬。視覚障害の方の団体のようだった。どのように水郷の静寂を感じられたのか、少し興味のあるところ。

 予約してあった弁当を積み込んで貰い出発。左右に揺れながら船は滑り出す。まずは迷路のような水路をゆく。ヨシと水と空以外見えない網の目のような場所を手馴れた櫓さばきで漕ぎ進む。途中、幾つかの橋をくぐる。船を漕ぎながらヨシ原の説明や水際の植物、四季折々の風景や、時代劇のロケの話までして下さる船頭さん、これは重労働だなと思う。
 ロケはこの一週間ほど前に大規模な撮影があったとお聞きした。サイクリングロードから入った中の島になにやらセットをたてていたという情報をゲット。この時期の撮影だと水戸黄門か剣客商売かはたまた来年のTXの大作か、例のハリウッド映画「ラスト・サムライ」は10月だし…楽しみにアンテナを張ることとする。

 船は進み、特徴のある橋をくぐる。これは時代劇でよく映っている橋で、船頭さんは「太鼓橋」と言っておられた。ここから向こうには西の湖の広い水面が広がる。湖上にはカイツブリの姿が見える。撮ろうとすると潜るのでなかなか難しい。
 広い場所へ出たところで船は一旦とまり、食事タイムとなる。舟形の漆器に二段に盛られた豪華なもので、刺身に天麩羅、煮物といった定番から鮎の塩焼き、ミニすき焼きに特産の赤こんにゃくの煮付け、丁子麩の辛子和えに川エビと豆の煮たのと盛りだくさん。近江出身の祖母が作ってくれたお豆さんの味を思い出して懐かしかった。食べ過ぎて苦しかった。

 広い水面に出るとバス釣りの小舟がわらわら浮いているのが目に付く。真珠養殖場の向こうにはうっすらと伊吹山が望まれる。安土の山も見える。
ホテイアオイの繁り具合が凄い。狭いところでは船の進路を塞ぐこともあるようだ。対向する船同士でホテイアオイの情報をやりとりなさっているのも見た。このうえ今淀川を着々と北上中のボタンウキクサまで加わらねばよいが。
 食事を終えると船は回頭し帰途につく。行きとはちょっと違うところも通る。行きと違い物珍しさもとれ会話が途切れると、櫓の音とさわさわとヨシを揺らす風の音のみの静寂が支配する。ほんの短い時間のままごとのようなものだが、せわしない日常から切り離された時空を満喫できる貴重な体験である。乗り込む際には携帯を切っておくことをおすすめする。

 発着場に近づくとたくさんの船と行き違う。漕ぎ出して間もないのにぐいぐいと酒を食らい真っ赤にできあがっている向きもいる。女性の船頭さんもいる。
船頭さんたちは高齢の方が多い。待合で「今日は敬老の日で」と事務所の方が仰っていたのは、「敬老の日だからお年寄が多数いらして混んでいる」のではなく、高齢者の船頭さんが自治体の催す敬老会に参加して漕ぎ手が足りないという意味だった。
櫓を操るには熟練が必要で、後進が続くことを願いたい。

 上は「まるやま」のオフィスに飾ってあった時代劇撮影風景の写真と俳優さんのサイン。
左の写真に映っているのは紛れもない鬼平と与力の佐嶋さま、それに彦十のとっつぁんである。このうちお二人までが鬼籍に入ってしまわれた今、貴重な資料と言えよう。

→ 今回お世話になった「まるやま水郷めぐり」のサイト (別ウィンドウを開きます)

撮影日 2002/9/15


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