ベビー・ブルー・アイズというのがその花の名前だと知ったのはずいぶん前。雑誌記事かなにかの小さな写真だったが、今でも目に焼きついている鮮烈な青い花の色。オオイヌノフグリより幾分淡い優しげな草姿。ヒマラヤの青い芥子とこれは長いこと憧れの花だった。
学名はネモフィラ・インシグニス。北米原産、ハゼリソウ科。いつぞや明智抄という少し変わった漫画を描く人の「百花繚乱始末人」というなんだかよく判らん話の中に名前が出てきて、とても少女漫画とは思えない遮光器土偶のような顔をした米国人青年の背後に咲き乱れる姿が描かれていた。そこで語られるのは青年の故郷にある野生のネモフィラをヒロインの少女に見せてあげるとかなんとかいう口説き文句で、やはりこの花に憧れる人もいるのかと妙に感心した。
この花を見かけたのは明日香村稲淵の飛鳥川に架かる石走の近く。飛鳥古京の面影をよく残す地での思わぬ邂逅であった。
撮影日 2002/5/5