和歌山市の北部、紀ノ川右岸の河岸段丘にある古社・丹生神社のクスノキの大木。神社はいかにも村の鎮守といった趣のこじんまりしたものですが、丘の上にあるので遠くからも良く目立つ木です。社の説明板によると、昭和33年に県の天然記念物指定を受け、樹齢は500年以上と推定され、紀州藩の編纂になる「紀伊風土記」にも希な大樹として記述されているといいます。幹周は9mで、基部近くで太い枝を二つに分枝しよく樹冠を広げ、幾度かの台風禍や落雷にもめげず元気に葉を繁らせています。社にはこの木の他に鬱蒼と様々な木や竹が繁って、小鳥がうるさいくらいにすだいています。社殿の前に立つと、あたかも水の流れるような木々のざわめきだけが聞こえ、朽ちかけた社に一層の神寂びた雰囲気を醸し出しています。上の写真は社から少し離れた西の方角から見たものです。
左の写真は社殿正面から見た大クス。神社の周囲には住宅がびっしり建て込んでいますが、鬱蒼とした竹薮とヒヨドリその他の鳥の落とし物から生えたと思われるシュロが密生していて、異空間を形成しています。左の写真は神社東側の路地から見たもの。このように集落のそこかしこから姿が望まれ、付近に住む人の目に親しい大木です。