狭山池博物館見学記

 この春、ずっと改修中だった狭山池の工事が終わり、抜かれていた水も湛えられ、堤上にはこのたびの「平成の大改修」を記念して池の歴史を紹介する博物館が建てられた。溜池とその土木技術というワンテーマを中心に据えた博物館は全国でも類を見ない珍しいものである。館内には豪華な水庭が設けられ、堤体が実物大で展示されている。改修工事の際出土したさまざまな古い設備なども見られるほか、各種資料もたくさん揃っていて足を運ぶ価値は十二分にある。

外観 水庭 鎌倉期の石樋

 博物館は狭山池の堤の上・すなわち池の北側に建っている。左右に細長い建物で、これは館内に池堤を実物大で展示しているためである。順路を示すガイダンスに従い中に入ると、まず「水庭」が迎えてくれる。この建物は建築家の安藤忠雄氏のデザインになるもので、淡路や京都に作られた他の氏の作品と同様、水をふんだんに用いた独特のものである。左右の高所に設けられた池から滝がしたたり落ちる。下の通路からは流れ落ちる水のカーテンを内側から眺める趣向となっている。夏にはさぞ涼しいことだろう。
狭山池は大阪府・南河内地方南西部の羽曳野丘陵と冬期山丘陵の狭隘部で天野川(現呼称・西除川)を堰きとめ、南河内の狭山古扇状地を灌漑する目的で造られた、日本最古の農業用溜池である。古くは古事記の「垂仁記」に記述が見える。その後、僧・行基による改修を経て中世・近世にも手を入れられ今に至る。池堤の地層からは各時代を偲ばせる遺物が多数発見され、この博物館に展示されている。                  

堤体実物展示 東樋取水部(実物) 天平宝字期の東樋(実物)

 館内は七つのゾーンにわかれ、狭山池の誕生から平成の大改修に至る経緯が出土品展示と図解によって説明される。
 入館してすぐ目に入るのは、館内を圧して聳え立つ狭山池堤体の展示である。七世紀初頭に造られた狭山池の1400年にわたる歴史を秘めた地層が一目で理解できるダイナミックなものである。これは狭山池堤の中樋付近の堤体断面をはがしてポリエチレングリコール水溶液で保存処理のうえ館内にボルトで固定したものである。
 堤体大展示のあとには各施設の実物・模型が置かれている。東樋取水部はここから東除川に水を送った施設である。天平宝字期の東樋には継ぎ目部分に王寺の苦労と工夫が偲ばれる。木製枠工は堤が地すべりで壊れるのを防いだもの。中樋は池堤中央にあって狭山扇状地を灌漑した施設。実物展示もある。尺八樋は慶長の大改修期のもの。入鹿池・満濃池もこれに近いという。中樋取水塔は大正から昭和初年の改修時に造られたもの。館内の隅に実物が展示されている。


中樋取水塔
木製枠工(実物) 中樋(模型)
尺八樋(模型)
北側(池尻にあたる堤上)から見た狭山池
名物だった岸辺の桜は改修のためなくなった
天野川流入付近(南側)から見た狭山池
写真右手の建物が博物館
アクセス
鉄道 南海電鉄高野線・大阪狭山駅下車 西へ徒歩10分
駐車場 基本的には一般来館者用パーキングは無し
大型バス・身障者用駐車場は博物館北側にある
備考 施設内には弁当を広げるに適当なスペース(屋外)が充分
遠足・社会見学に利用しやすい
所在地 大阪府大阪狭山市池尻中二丁目
電話 0723-67-8891
入館料 無料
食事 博物館に喫茶コーナー
大阪府立狭山池博物館ホームページ
資料は2001.4.30現在
館内通路から見た水庭

撮影地 大阪府大阪狭山市池尻中   撮影日 2001.4.30


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