必殺からくり人

塔 キャスト
 夢屋時次郎/緒形拳 仕掛の天平/森田健作 八尺の藤兵ヱ/芦屋雁之助
 花乃屋とんぼ/ジュディ・オング 八寸のへろ松/間貫平
 花乃屋仇吉/山田五十鈴


第1話「鼠小僧に死化粧をどうぞ」1976.7.30

 鼠小僧・次郎吉と関わった時次郎、「世の中をひっくり返す」書付を巡っての騒ぎは元締を死に至らしめることになる。
汚穢船での小伝馬町の牢潜入に加え、「死のう組」の替え玉使ってまで助けた次郎吉は、情婦の手にかかり敢無く死亡。そして肝心の書付は鼠の巣材にされ粉々。しかし闇の会合に後継者として出席の仇吉は、曇りに書付の存在を示し啖呵を切るのだった。

ロケ地
・奉行の妻女とよろしくやった帰りの時次郎が次郎吉と出会う掘割、大覚寺勅使門橋。次郎吉がドボンの堀は撮影所かなんかのプールと思われる。
・隅田川べり、女郎たちの依頼で女衒を始末のチームは大覚寺護摩堂前。
・曇りに脅しをくれる会合の席は嵐亭と思われるが、確信なし。


第2話「津軽じょんがらに涙をどうぞ」1976.8.6

 越後の流れ瞽女を殺め娘の目を潰した非道な男は、その後も各地で悪辣な所業を重ね江戸一の金貸しに。そんな男でも持つ贖罪の念、毎年催していた花火大会に「菩薩」の名を冠したことから天平の怪しむところとなり、アシがつく。
弥蔵が瞽女を殺める動機、悔悟の念に眠れぬ大蔵屋が求める時さんの波枕、憎い仇を求める瞽女・おゆうの昔語りに重なる絵など、見所多し。

ロケ地
・身を投げるおゆうに行き合わせる時次郎、中ノ島橋(落)
・大蔵屋の「千両運び」を木場の橋に襲う六人の浪士のエピソード、木津川流れ橋
・菩薩花火の夜、大蔵屋が乗り込む屋形船、大覚寺大沢池舟着き
・これを狙って隠し堀を走る時次郎と藤兵ヱ、有栖川河床。大蔵屋の船を大沢池溢水口から窺うという趣向。


第3話「賭けるなら女房をどうぞ」1976.8.13

 博打狂いの魚屋、しまいに女房を女郎屋に売る羽目に。これを曇りに付け込まれた彼は、戸田藩領で一揆を起こし米価を吊り上げる小道具に使われることとなる。しかし当初仕込みの「生き仏さま」は暴走をはじめ、曇りのコントロールを離れ一揆衆とシンクロし、遂には時次郎の忠告も聞かず奇跡の上人さまのまま死んでゆく。

ロケ地
・女房を売り自暴自棄の伝次に金を渡してやる時さん、中ノ島橋越し湛水域に船。
・備前屋の蔵、伏見・松本酒造酒蔵。これを見る釣りの天平、中ノ島橋南詰右岸。
・戸田へと船を出す時さん、広沢池北岸付近。
・伝次一行を尾ける時さんと天平が休む茶店、谷山林道にセット。
・伝次が一揆衆を煽る鎮守、鳥居本八幡宮
・戸田藩江戸屋敷、相国寺林光院門。


第4話「息子には花婿をどうぞ」1976.8.20

 花乃屋への依頼は大工の女房から、赤ん坊を取り返してくれというもの。子を連れ去ったと思しき旗本屋敷の内情はドロドロ、同性愛者の跡取りと、家名第一の厳格な母堂。そして赤子は不自然な結婚生活にノイローゼの奥方によって殺されていた。その嫁も密殺され、新たな相手を求めての見合いの席にからくり人たちが現れる。

ロケ地
・旗本・安斉邸、相国寺大光明寺(門、前庭、南路地と通用門)
・依頼を聞く仇吉の船は大沢池船着(小)に係留。
・爆破される天平の小屋、木津河原(左岸砂地、遠景に小さく流れ橋)
・見合いの庭園、不明。
*赤子の死を知らされた依頼者が、乳を大川にしぼり落す情景が哀切。


第5話「粗大ゴミは闇夜にどうぞ」1976.8.27

 廃棄物処理をめぐる利権争い、執拗に妨害工作を仕掛けられる港屋。あるじは殺され埋められるが、認可取り消しを恐れる女将はだんまりを決め込み隠し通そうとするほか、体を張って役人に取り入るなどもしてのける。しまいに息子が誘拐され、花乃屋に依頼する段でも頭の中は金のほうで占められている。この女の末路は、裏切った役人を閨で刺すも首を絞め返され命を落とすという結果となる。からくり人たちは、時次郎と天平が子を救出にあたる一方で仇吉が妨害者のヤクザのもとへ乗り込み、迫力で押し切り撤退を約させる。

ロケ地
・ゴミ回収業者が百万坪さして渡る橋、木津川流れ橋(はじめ真横のショット、ついで橋上)。天平の小屋、橋近くの河原、砂地から手出ているのを発見はとんぼ。
・深更、時次郎が荷を担いだ怪しい人影を見る、中ノ島橋(時さんは船)。これを尾けてゆくとお濠に不法投棄、彦根城佐和口多門櫓前の濠。
・へろ松の釣りは広沢池観音島、のち港屋の子守をしていて息子を誘拐されてしまうのも同所。南町奉行所、京都御所管理事務所門。
*利権横取りを狙うヤクザは上州の大親分・大前田英五郎、演ずるは「阿部怪異」金田竜之助(本作クレジットはこの表記)。


第6話「秘めごとは白い素肌にどうぞ」1976.9.3

 国禁を犯し地図をオランダ人に渡そうとする長崎屋のとった方策は、洋妾の背に絵図を入墨というもの。彫られる女はとんぼが拾った借金抱える娘、彫り手は時さんの友人の職人。入墨をしくじった女二人は消され、彫り上げた途端伊佐吉も始末されたあと、花乃屋からの天罰はきっちり長崎屋に下される。

ロケ地
・入墨彫りミスで消された最初の女の死体が棄てられる百万坪、木津河原(うしろに小さく流れ橋映り込み)
*伊佐吉の隠し彫りを明らかにするくだりは見もの、温めたり冷やしたり。伊佐吉に大塚吾郎、どこかカマっぽい彼のからみは半兵衛さんならぬ時さんと。


第7話「佐渡からお中元をどうぞ」1976.9.10

 殺しナシの珍しい一作。依頼の仕事は佐渡から運ばれる御用金の強奪、運送中立ち寄る追分宿本陣の蔵に穴掘って侵入のくだりがメインのお話、碓氷峠の関所突破はお氷様を利用するなど緊迫の見せ場連続の痛快な一話。

ロケ地
・冒頭現代のかき氷のシーンは今宮神社門前・一和、停まった車のミラーに顔を写すとんぼの段で「時代劇」にスイッチ。
・追分本陣の隣家、民家長屋門
・御用金運搬シーンとお氷様のシーンに酵素(林越し見下ろし)谷山林道
・事後、佐渡で死んだ人足の遺族に金を配り歩く時さんの船がゆくのは広沢池水上、バックに遍照寺山と萱葺民家。


第8話「私ハ待ッテル一報ドウゾ」1976.9.17

 行方不明の子を求める親心につけこみ、ニセモノを送り込んで富商乗っ取りを企てる悪辣な集団。過去を暴かれぬため罪も無い娘も始末してのける非道さ。赤子を負った母という己をも利用する冷血の女でも母は母、藤兵ヱを人殺しと叫ぶ少年の悲痛な声が耳に残る。

ロケ地
・本所本石町の橋たもとにある尋ね石、中ノ島橋下手南岸に祠セット。


第9話「食えなければ江戸へどうぞ」1976.9.24

 流入する民で溢れかえる江戸の町、老中・水野越前守は人返令を発布。そして飢饉続く故郷に帰っても食えない女たちに、裏から魔手が忍び寄る。そうした経緯で恋人を見失った男に関わり闇に迫る仇吉たち、女の生き血を啜る外道どもを仕置する。

ロケ地
・人返令による送り返しの場となる千住大橋、中ノ島橋(橋上、河川敷)
・追われた弥助が入り込んでいる百万坪の天平の小屋、木津河原(遠景に小さく流れ橋)
・日光街道・竹ノ塚付近で恋人を待つ弥助、桂川堤松尾付近。
・女衒と口入屋が女たちを騙し売りつける旗本屋敷、大覚寺明智門(逃げた女が女衒に刺されるのは御殿川べり)
*時次郎不在、穴埋めの形で当事者・弥助が探索に加わる珍しい展開。現代風景に大阪市バスの澪マーク発見。


第10話「お上から賞金をどうぞ」1976.10.1

 切支丹摘発にからみ、お上から賞金を詐取しようとする悪党のお話。首謀者のかざり職人は、ハメる相手の父が棄教のすえ仲間を売った行為が父母の処刑につながったことで憎悪していた。陥れる材料のクルスやロザリオ、マリア観音の絵などを偽造するくだりが見もの。

ロケ地
・へろ松が白玉売りに出ていて「切支丹」捕縛に居合わせる鐘楼、相国寺鐘楼(鐘楼上も捕縛シーンに使用)
・目明しに追われ墜死した船大工の恋人だった娘が佇む桟橋、広沢池東岸にセット(娘の祖父の漁師が船を出すシーンにも使われる)
・時次郎が調査に赴く尾張への街道筋、桂か木津か(礫からは桂?)


第11話「私にも父親をどうぞ」1976.10.8

 仇吉の過去が描かれるお話。とんぼに伸びた魔手がかつての恋人と知った仇吉は辛い過去を娘に告白、自分にしたのと同じ手口で実の娘であるとんぼを毒牙にかけようとしている歌川延重の行為を責め、娘の目の前でその命を絶つのだった。哀切なドラマのバックには、ずっと三味の音が鳴っている。

ロケ地
・父のことを尋ねるとんぼ、広沢池観音島(現在の石橋でなく木橋が架かっている)
・延重邸、中山邸(通用門、門)
・回想シーン、お艶にカピタンの接待を依頼する延二郎、中ノ島橋。新任長崎奉行が任地へ赴く行列に斬りこむ鳥追いのお艶、相国寺大光明寺南路地
*辰巳芸者のお艶、鳥追姿のおらんだお艶、仇吉と三態を演じる山田五十鈴が見られる貴重な一作。


第12話「鳩に豆鉄砲をどうぞ」1976.10.15

 時次郎の過去が語られるお話は、同時に彼の散華を描く。
「過去の女」に似た岡場所の女を救ってくれた蘭医の横死を見た彼は、蛮社の獄を指揮した幕閣を狙うスナイパーとなる。
仲間と訣別し暗殺の時を待ち塔に籠る時次郎、引き鉄をひくまでが尺をとって描写され、緊張を高めてゆく。
そしてターゲットをスコープに捉えた時次郎の放った弾は、標的の鳥居の前に飛び出した一羽の鳩に阻まれることとなる。
累を及ばさぬため我が身を微塵に砕く時次郎、その自爆の音をただ聞くばかりのチーム、立ち尽くすのみ。

ロケ地
・南町奉行所、御所管理事務所北門
・鳥居耀蔵が法要に赴く上野の寺、仁和寺(寺へ駆けつける仇吉たちのシーンでは二王門から塔を見る。ここから、曇りが警戒しているさまを中門に見る。鳥居の駕籠が来るシーンでは中門から参道を、この間待ち続ける時次郎の目線は塔の中から撮られている。心配げに立つ仇吉ととんぼの姿が参道塀際にあり、鳥居と金座後藤と水野老中と曇りが連れ立ってやって来る道は塔下の道)


第13話「終りに殺陣をどうぞ」1976.10.22

 時次郎の配慮も空しく、曇りは仇吉に因果を含め降伏を迫る。仇吉の答は「涙以外と手を組まない/涙が零れるような依頼しか引き受けない」。
互いに「勝負!」と席を立ち、闘いがはじまる。
次々と斃れゆく仲間、とんぼを逃がし曇りとの決戦に赴く仇吉。最後のバトルは曇りと仇吉の一騎打ちとなる。
ラストはとんぼのその後を描く段で、山田五十鈴の喉が披露される明治の世の一室で幕。

ロケ地
・粉々に壊れた天平の小屋を見る仇吉ととんぼ、木津河原
・事後、巡り会えたとんぼとへろ松のシーンは嵐山公園中州下付近か。


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