五稜郭
  1988日本テレビ/ユニオン


第一部「江戸最後の日」−男たちの選択− 1988.12.30

 日テレ年末時代劇、幕末もののひとつ。
 慶応三年、オランダ留学から帰り理想に燃えていた榎本釜次郎は、回転の世に幕臣として最後の意地を見せんと時に抗う。
榎本が初の海戦を経験するなか将軍は政権を朝廷に返上し、鳥羽伏見には錦旗あがる。そして帰り着いた江戸では、勝海舟が徳川家の存続と江戸の町を守るため徹底恭順策を推進していた。上野の山に散った彰義隊の無残を見たあと、徳川宗家の駿府移封を待って「榎本脱走軍」は洗いざらいの艦船をひっ攫い蝦夷地を目指し出航するのだった。
第一部は蝦夷地入りし、希望の星・開陽丸を江差の海に失うまでを描く。

嵐山公園 ロケ地、徳川慶喜が水戸に退隠する駕籠を見送る江戸の民、仁和寺参道。彰義隊の件を聞き上陸の榎本、迎える勝、大覚寺大沢池船着(小)、勝のバックに五大堂。脱走兵を乗せた艇が出る浜、嵐山公園中州付近石垣護岸下。江戸を去る榎本艦隊の汽笛を聞く妻・多津、大覚寺大沢池北西畔。続々と仙台へ集結する旧幕府脱走軍のくだり、土方がゆく浜は木津河原。艦上のシーンは使用された船のある長崎か。

*「里見」榎本、インテリぶりより闊達な江戸っ子幕臣のカラーよく出て良し。「津川」勝海舟は老獪というより怪物じみた迫力。秋野大作が懐かしい「天下御免」を思い出させるユニークな演技を見せて楽しい。妻・多津は「瀧山さま」浅野ゆう子。仏人仕官のブリュネとカズヌーブに岡田真澄とクロード・チアリもなかなか。


第二部「幻の蝦夷共和国」−箱館戦争− エピローグ・ウラルを越えて 1988.12.31

 「デ・ファクト」の政府・蝦夷共和国の戦いはことごとく劣勢、起死回生のアボルダージュも宮古湾にあたら人材を散らすのみで失敗。薩長の足並み揃わぬ新政府軍なれど、圧倒的な軍勢と軍備の前に、もはや味方ひとつなき箱館政権に勝機は存在しなかった。
海軍が全滅、各台場も陥ち政府主要メンバーが次々と斃れ、進退窮まった榎本は切腹を図るがとどめられ、落しどころは「有為の人材」を散らせてはならぬという敵味方の共通認識にもってゆく。
以降、蝦夷共和国メンバーのその後が描かれ、海軍中将となりロシアとの領土問題に関する協議を無事終えた榎本がシベリアの大地に立つシーンで締めくくられる。

流れ橋 ロケ地、加賀藩邸に軟禁中の松本良順に榎本の消息を聞きにゆく母と妻、大覚寺参道塀際と参道石橋。アボルダージュ作戦に出動の艇が出る浜、嵐山公園護岸石垣下。迫る官軍を迎え撃つため散ってゆく各隊、伊庭隊がゆく松前への道、谷山林道。木古内山中、額兵隊の戦闘、酵素降り口と河川敷。土方隊が死闘の二股口、酵素ダート。元会津藩公用方の妻・井上ちか子が今生の思い出にと土方を呼び出す農家、広沢池東岸にセット。七重村の新政府本営を襲う榎本指揮の一隊、酵素河川敷。土方戦士の一本木関門、木津川流れ橋下に柵をセット(橋桁を映さず、橋脚をセットした柵とうまく組み合わせて使用。ここはとてもよくできているのに、ちか子が土方の遺骸に縋るシーンはまんま「川」の汀を使い、陸繋島の上にある函館市街では有り得ねー画なのも面白い。ポエムっぽい劇中歌が被ってるくだりなので心象的にはマル)。東京、太政官府に「有為の人材」を殺すなと桂小五郎に談判にゆく佐藤泰然、大覚寺大門

*伊庭八郎の「介錯」をつとめるカズヌーブ、中島三郎助一家の死に様など滅びゆく旧幕臣たちの壮烈な戦死の極みは土方のそれで、長い尺をとる。第一部での殺伐さは持ち越され、仲間への労わりに柔和さも見せるものの、女の据膳蹴る際は鬼神の如く斬りまくることで血を鎮め、自殺に近い吶喊を敢行し果てるという死への「ジャンプ」を遂げるのだった。*第一部で、大坂城から金拝借して運ぶ最中の榎本一行に噛み付く新選組引き上げ部隊にいた福ちゃん、アボルダージュに参加し華々しく散る新選組隊士・野村利三郎と判明、さかさか動く身振りが目立ちまくり。


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