十三人の刺客

1990.3.28CX/映像京都


 60年代に工藤栄一監督がメガホンをとった映画のリメイク。媒体が違うので比較は気の毒なるも、明快な話運びに好感が持てる一作、決戦の場となる落合宿の仕掛けも見もの。

 前将軍の子にして現将軍の弟である明石藩主・松平左兵衛督斉韶は手のつけられぬ馬鹿殿、江戸家老がお上に処分を訴えて老中屋敷門前でハラキリの挙に出て話ははじまる。将軍がその痴れ者を老中職に就ける考えと知った土井大炊頭は、利け者の目付・島田新左衛門に白羽の矢を立て、暗殺を示唆。拝命した新左は人材を集め、馬鹿殿が国許へ帰還する道に待ち伏せて戦う計画を立てる。迎え撃つ立場の馬鹿殿の用人は、新左の無二の友であった。
前段において馬鹿殿の所行とチーム結成の経緯が描かれ、後段は中山道に仕掛けを準備し待ち受け、宿場での大決戦となる。

酵素 河川敷を見下ろす

 ロケ地、江戸城イメージに姫路城天守。老中・土井大炊頭邸門前で切腹の明石藩江戸家老、大覚寺大門。このことを協議の幕閣、相国寺方丈座敷。明石藩上屋敷、随心院薬医門。江戸家老の身内を引き据えたと聞き激怒して同輩に抑えられる鬼頭半兵衛、相国寺方丈北側廊下。新左邸、随心院長屋門。ここを見張っていた明石藩士が、出た侍の一人を詰問する道、相国寺湯屋前。ヤクザにショバ代を迫られ、鮮やかな剣技で追い払う浪人・佐原平蔵を見る新左、大覚寺大沢池北西畔。江戸を出立した斉韶がゆく中山道、木津堤。木曽路を馬で急ぐ新左一行、下鴨神社糺の森馬場。木曽福島を過ぎ尾張領境の王滝川で斉韶一行の通行お断りの高札が立つ橋、木津川流れ橋(橋詰には斉韶に息子夫婦を殺された上松陣屋詰の尾張藩士・牧野靭負が立ちはだかる)。決戦の場に新左が選んだ黒瀬街道落合宿、入口となる落合橋は摩気橋(宿場はセット、遠景には合成画面もある)。落合宿の死闘の果て、斉韶を討った新左に一分立たぬと挑む半兵衛、酵素河川敷(ダートから見下ろしのショットもあり、土地の子供が遊ぶ情景をあしらってある)。斉韶は病死で処理のナレーション、御廊下をゆく丹哲は相国寺方丈南側廊下。EDには姫路城、いの門からろの門を見る画と、菱の門遠望のショット。

*新左に仲代達矢、半兵衛は夏八木勲、友垣の絆消えぬまま敵味方となる葛藤が男くさい骨太なドラマを展開、最後の殺陣もなかなかに味わい深い。新左の腹心・倉永に下川辰平、要所をきちんと詰める有能ぶりをかっちり演じる。甥の新六郎に田中健、ジゴロぶりもはまっている。新左宅に寄食の剣客・平山に益岡徹、剣の達人設定で鋭い太刀ゆきも披露。雇われ浪人・佐原に綿引勝彦、一癖ありげな性格は団子むしゃむしゃ食ってたりする細かい仕草で表現。牧野靭負には米倉斉加年、倉永により語られる自決も哀れ。土井大炊頭は工藤映画と同じ丹哲。斉韶には立川三貴、かつて菅貫が演った馬鹿殿に新味を加えて熱演。どっちかというとねちっこさより乱暴さが前に出た感じ。ハラキリのみの江戸家老は古谷一行、友情出演。*落合宿の大殺陣、映画でも馬鹿馬鹿しいまでの規模だったが、この作でも明石藩一行は53人というのに優に倍の人数は斬られてる感じ、斬っても倒しても次から次へと湧いてくる。


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