斬り抜ける 1974-1975ABC/松竹

 作州松平藩士・楢井俊平は藩主の奸計により親友・森千之助を斬る羽目に陥る。事後真相を知った俊平は藩主の非道を幕府に訴えるため千之助の未亡人・菊と一子・太一郎を伴い江戸へ向かう。藩主は俊平が不義密通を働き千之助を殺害したと偽り千之助の父・嘉兵衛と妾腹の弟・伝八郎に追捕を命じる。また、諸国に多数ある松平系の大名に廻状を発し俊平たちの道中を阻もうと画策、この設定ゆえ俊平たちの道中はより過酷なものとなり緊張感溢れるドラマとなる。重苦しい設定に合わせ、殺陣も独特のリアルさを醸しだす。
キャスト
楢井俊平/近藤正臣 森菊/和泉雅子 森太一郎/岡本崇
弥吉/火野正平 道家鋭三郎/志垣太郎 おしん/田坂都
森嘉兵衛/佐藤慶 森伝八郎/岸田森

第1話「不義者俊平

 楢井俊平と菊さんの逃避行がはじまる、起こりを描く一話。親友で菊の夫の森千之助を上意によって討つ役を振られる俊平、その場から菊と幼い太一郎を連れての旅が慌しく始まる。着のみ着のままの彼らに稼ぎ口を世話する弥吉、彼が拾う形で加わる鋭三郎と同行者も揃い、用心棒代でトレードマークのデニムもゲット。この間、菊を奪おうとした馬鹿殿・松平丹波守は千之助の父・森嘉兵衛に俊平の追捕を命じ、松平廻状も発せられる。加えて、嘉兵衛の妾腹の子・伝八郎はこれを千載一遇の好機として野望の牙を研ぎはじめる。

 ロケ地、弥吉が俊平を金蔓と認識する伝八郎一味との戦闘、酵素ダート〜河川敷。作州松平藩城、彦根城天守閣。御嶽真蔭流・森道場、相国寺大光明寺。菊が嘉兵衛に宛てた手紙を運ぶ飛脚、北嵯峨農地竹林脇の道(田んぼ越し)酵素ダート(伝八郎が文を詐取)。俊平追捕を命じられた嘉兵衛と伝八郎がゆく城下の道、相国寺大光明寺南路地。旅をはじめた俊平に挑みかかり仲間に加わる鋭三郎、北嵯峨農地竹林脇の道。嘉兵衛と伝八郎がゆく街道筋、酵素奥の水子地蔵。
*俊平の指ゴキゴキや、青空を背負って登場の志垣太郎など見どころ満載だが、なんといっても火野正平。走り役・正ちゃんの祖形がもうちゃんと出来上がっている。ガメた金で買うヘンな服やオールバックにしてみるあたりも傑作。馬鹿殿が菅貫なのもマル。


第2話「松平はずし

 松平廻状に気付く俊平、旅籠も抜け出し一気に緊張感が漲る。播州松平領を抜けるには「目こぼし駕籠」の女元締が助力し、俊平らは遂に他人を巻き込んでしまうことになる。

 ロケ地、嘉平が浪人剣客を斬る野、不明。このほか街道筋や関所まわりも不明。おたみを犠牲にして通った関所を越えてなおゆく駕籠、下鴨神社泉川畔。


第3話「お札くずれ

 傷を負った菊のため温泉宿に滞在、嘉兵衛とはニアミス、伝八郎はいよいよ本性をむき出しに。弥吉がとってきた仕事はお札くずれのならず者退治、二人斬ると刀がダメという理屈を映像化したシーンで竹槍刺し食らうのは阿藤海。

 ロケ地、俊平の腕を雇い主たちに見せるお堂、丹波国分寺本堂。俊平が背にして立つ山門からは、「はさ木」が見えている(現在は消滅)。伝八郎が門を出てくる俊平を窺うのは今は無い礎石側の塀。伝八郎に刀で釣られた鋭三郎が嘉兵衛を無駄に歩かせる山道、保津峡落合崖道〜落下岩(嘉兵衛崖落ち)。菊が嘉兵衛を保護し手当てする小屋、清滝川金鈴渓。菊を探し回る俊平、途方にくれるお堂は鳥居本八幡宮(本殿前にいるのを下から舞殿越しに見上げ)。伝八郎が菊を連れ込む神輿小屋、鳥居本八幡宮舞殿に扉セット。当地を発つ俊平たちを対岸から見やる嘉兵衛、保津峡落合書物岩。俊平たちがゆく道は落下岩〜日吉美山線(地道の模様)


第4話「女が峠を越えるとき

 行く手全て松平領、端っこを突っ切って宮津を目指し山道をゆく俊平。廃村で住み替えの山越え女郎たちと出会い、行を共にすることに。襲い来る山賊と戦う俊平たち、女たちと菊の交流や熱く人生観を語る弥吉と鋭三郎も見どころ。関所で待ち構える嘉兵衛もやり過ごし、軛から解放された女郎たちと別れ再びの旅がはじまる。

 ロケ地、ほぼ山道と野、谷山林道や酵素ダートと思われる個所はいっぱい出てくるが確定要素は自然物ゆえ少なく、特定は難しい。ラスト、別れゆく野道は北嵯峨農地か。


第5話「女が命を燃やすとき

 盗っ人の地下蔵に落ちてしまう俊平、その間上では伝八郎が菊をいたぶり拉致。蔵にやってきた大盗一味を倒し虎口を脱するも、追っ手との死闘が待っていた。

 ロケ地、冒頭俊平らがゆく道、松尾橋下手堤か。嘉兵衛が訪ねる弟子・田中勘三の長屋、橋蔵版荒木又右衛門の郡山のお長屋と同所、不明。嘉兵衛が女囚を斬る刑場、罧原堤下河原。百舌小屋のある山中の野、酵素河川敷。嘉兵衛たちが馬で疾駆する街道、北嵯峨農地・陵前付近。
*変態伝八郎の執拗ないたぶりに菊が漏らす「俊平さんが好き」、地下で聞く俊平の表情が凄い。*弥吉とおしんが狙った贅六は大盗・からくり細兵衛というアチャーな展開、でっぷり貫禄の金田龍之介が怖い。俊平に絞められて白目むいてる顔はもっと怖い。小屋の番人に江幡高志、情婦に三島ゆり子と豪華。


第6話「女が道を変えるとき

 伝八郎に責められ口にしてしまった一言に加え様々な刺激、惑う菊の心。もう俊平と旅はできないと太一郎を連れて逃げ出す道で、菊は同じ思いを持つ女と出会う。

 ロケ地、若君派の泉藩士たちが待ち伏せに遭う山道、谷山林道切り通し。鋭三郎がテストを受ける泉藩徴士所、下鴨神社糺の森。俊平の留守に宿を出てしまう菊、両に並木の道は松尾橋下手堤か。歩けないとへたりこむ太一郎、大覚寺放生池堤。休むお堂、護摩堂(若君付きの女武道が太一郎をさらう)。弥吉がおしんにコナをかけて断られる道、北嵯峨農地陵前か。用心棒の仕事を終え再び三人となり歩む河原、桂川松尾橋上手・中州下合流点(右岸河原)
*女武道に弓恵子。


第7話「男は待っていた

 背面(そとも)道をゆく一行、俊平の道は山の中。雨宿りのお堂で出会った浪人は、己を裏切った匹夫姦婦を追っていた。彼らは俊平たちの運命に巻き込まれ三人ながら道に屍を晒す仕儀となり、この悲惨に俊平も菊も嘉兵衛も暗澹たる思いに沈むのだった。

 ロケ地、山道や里の道、ほぼ不明。伝八郎の回想、兄夫婦に斬りかかる菩提寺の石段、西寿寺。嘉兵衛に止められ惑乱し母の墓に向かって駆け上がる狭い石段は墓地へ通じる細道、墓所も西寿寺。追っ手と乱闘の水辺、沢ノ池と思われるが確証得られず(ダム湖源頭)


第8話「女が愛にゆれるとき

 菊の体調すぐれず追っ手は迫る。弥吉の入れ知恵で川下りをはかるが、操船を買って出た女は俊平が斬って捨てたならず者の女房、菊と太一郎を乗せた船は俊平を置き去りにして出て行ってしまう。そして、身動きのとれぬ状態で難所に差し掛かる二人はここを先途と語り合い、心は寄り添ってゆく。

 ロケ地、俊平が斬った源七の野辺送り、北嵯峨農地か。川下りは保津峡、御留船係留場所は落合河口で、この付近をふんだんに使ってドラマが進む。崖道に落下岩付近、トンネルも使用(弥吉が駆けるシーンは明暗がはっきりしていて見もの)。早瀬のシーンの不自然すぎる川霧はスモークか。
*亭主を殺された意趣返しを目論む女「船頭」に加茂さくら。出てしまった船に崖から飛び乗る俊平が凄すぎ。


第9話「男は耐えていた

 疲れがたまり倒れてしまう菊、しかし「不義者」に村人は冷たく宿もなく医者も診てくれず、ただ出て行けの言葉のみ。そんななか村にはかつて放逐したならず者が帰還し、俊平に用心棒の口がかかるのだった。

 ロケ地、天領がらすの兄弟が相生宿へ向かう道、不明(農地の中、畦道に「はさ木」が目立つところから亀岡盆地と思われる。また後段出てくる道には河畔林があり、七谷川とも見える。十手持ちが逃げ出す畑地もどうも亀岡くさい)。太一郎が村の悪ガキと喧嘩、酵素河川敷。太一郎と遊んでやる俊平、桂川臨川寺地区河川敷か或いは寅天堰付近か、判断材料乏しく不明(水量かなり多い)
*この話、なんといっても村人の偽善者ぶりが「光る」。天領の民であることに鼻持ちならぬプライドを持ち、自分たちの手は汚さずにおく手前勝手さ、モロに「きれいな村」なんて発言が出たりしてカリカチュアになっている。俊平は憤るだけだが、弥吉が欲がらみでちょっかいを出すのは傑作。


第10話「女が炎になるとき

 松平領を通過するため、俊平と菊は太一郎を弥吉に託し間道をゆく。川にはまった俊平を温めているところを嘉兵衛に踏み込まれる、太一郎が人さらいに持って行かれるなどのトラブルが発生し万事休す、しかし嘉兵衛は馬鹿な逆恨みを受けており足をやられてしまうのだった。

 ロケ地、太一郎を連れた弥吉を誰何する「松平はずし」一行、大覚寺大沢池堤。渡り巫女が旅人を誑しこみ財布を奪う辻堂、護摩堂。菊を人質に嘉兵衛が待ち構える追分宿はずれのあだしの原、酵素河川敷。


第11話「女が闘うとき

 天領の村で穏やかな時を過ごす二人、名主の勧めるまま一冬居着く心づもりも修羅の定めが無惨に吹き消してゆく。

 ロケ地、松平はずしの追っ手と戦う野原、河原か。名主の息子を助ける街道、不明(谷地田)。うわなり討ちの相談をぶっている女たちに声をかける弥吉、丹波国分寺(門前から塀外を歩く弥吉、女たちが車座は跡地の礎石)。代官所手代が検地の畦道、国分寺近くの畦道・背景に林あり、畦にははさ木。名主宅へうわなり討ちの決闘状を持ってくる女たち、民家南塀(村の道)民家長屋門(名主邸の門)。俊平に定住を勧める名主、国分寺前の畦道。村を後に街道をゆく俊平たち、七谷川の天井川堤が尽きてからの橋が架かる道と思われるが、圃場整理のためもはや確認不能。
*うわなり討ちに参加してはしゃぐ菊さん、敵方の大将の襷を鮮やかに捕ってみせたり。名主の後妻を狙う助平役人は俊平に斬られるが、ここで斬奸状が登場「不義者俊平悪を斬る」。構っていた下女が伝八郎に殺されても今回はぐずぐず泣かない正ちゃん、でもお金の話を「それ弱い」とすぐに引っ込めるあたりが妙味。*村は飛騨、信濃の国ざかい近くの設定。


第12話「男は賭けた

 信州高島藩の隠し銀山に入り込み、囚われてしまう菊と太一郎。奪還のため、俊平は捨て身の賭けに出る。俊平・弥吉・鋭三郎それぞれに役割を果たすドラマは見せ場多し。

 ロケ地、銀山、どこかの砕石場か。狼煙を上げる弥吉、一部谷山林道。人質交換の野原、湖南アルプスか。菊と太一郎を奪い返した俊平と鋭三郎の馬が甲州指して駆ける野、木津河原(遠景に流れ橋、橋桁なく河原に散乱)
*風呂の見える部屋をとり泊り客から金とってハダカ見せる弥吉、湯船に男との苦情で見てみると岸田森の入浴シーン…。俊平の手紙を売りつける段ではちょびっとしかくれない伝八郎に「ケチー」ついでに供侍に「ケチのともだちー」…あんな瞬間湯沸かし器(死語かも)に軽口叩くのは弥吉だけ。高島藩士の馬から鞍盗むのも傑作。…しかし狼煙あげようとして捕まりかけたときのごまかし方が最も火野正平らしいかも。


第13話「あなたが欲しい

 ようやくの江戸入り、菊の叔父の目付屋敷に駆け込むも「不義者」の一件は上つ方の政争の道具と成り果て、太一郎は奪われてしまう。取り戻しに藩邸へ押し入った俊平は、乱闘の興奮さめやらぬ返り血を浴びた姿で、死装束の菊に叫ぶ「あんたが欲しい」。

 ロケ地、叔父の家に向かって走る菊と太一郎に伝八郎が立ちはだかる池之端、大覚寺大沢池堤。目付・勝邸へ駆け込む俊平たち、相国寺大光明寺南路地。作州松平江戸屋敷、大覚寺大門。夜、水野老中を西の丸下の屋敷に訪ねる勝、入る裏門は相国寺大光明寺通用門。城から出る大奥年寄・姉小路の駕籠、彦根城佐和口多聞櫓。墓参の下谷長福寺、相国寺墓地(松平江戸家老と密談)。登城した水野老中がゆく御廊下、相国寺方丈前廊下(座敷から)。松平の江戸家老と姉小路が駕籠に乗ったまま密談、大覚寺大沢池堤。嘉兵衛らが太一郎を伴いゆく東海道、桂川松尾橋下手右岸堤と汀(俊平と菊が追う)
*金づるを失った弥吉、かかった仕事の口は「不義者節」を広める流し。正ちゃんのガナるそれは河内音頭みたい。


第14話「愛と死と…

 母であることを捨て俊平と二人生きる決心をする菊、しかし運命はそれを許さず一人の修羅が誕生する。

 ロケ地、小川の川面に母の面影を見る太一郎を殺そうと近付く伝八郎、酵素河川敷。松平藩江戸家老が嘉兵衛に俊平ら生存を伝える、大覚寺天神島。「仕事」の間菊を預ける庄屋屋敷、走田神社社務所。俊平の帰りを待てずに太一郎を捜しに出た菊がゆく道、北嵯峨農地。嘉兵衛が馬子に太一郎を奪われてしまう落石の崖道、落合か。伝八郎と組んだチンピラのアジトの小屋、酵素林際(セットと併用)。村の入会地も酵素


*ここからタイトルが「斬り抜ける・俊平ひとり旅」に改題

第15話「城中乱入

 遂に真実を知る嘉兵衛、殿を斬ると決めた途端とてつもないパワーを発揮。物凄い勢いで街道を走りとおし殿に肉迫、城中を「斬り抜ける」。志果たし得ず斃れる嘉兵衛、そして伝八郎の野望も挫ける。

 ロケ地、病の母を介抱する農夫を装った黒鍬から逃れた俊平たちが通る墓地、酵素水子地蔵。嘉兵衛を呼び出し俊平と会わせる神社、篠八幡宮境内。美作城天守、彦根城天守閣
*岸田森の「ひとりごと」がますますパワーアップ、悪企みしてにぱーと笑う顔も段々凄味を増してくる。*実は黒鍬だった志賀勝、というのが妙におかしい。


第16話「城代暗殺

 嘉兵衛の死を知り、太一郎も亡いものと思い込んだ俊平は武家社会そのものに牙をむく。皮切りは幕府の権威の象徴・駿府城代、葵の御紋に公然と楯突く修羅の旅がはじまる。

 ロケ地、影送りで美作へ向かう俊平たち、保津峡落合崖道。「黒鍬者」の辰野が腰元たちに軽口を叩く駿府城内、大覚寺参道(橋も門も映さず)。城代に上納金免除を直訴の百姓たち、金戒光明寺永雲院下坂、東西の路地。黒鍬者たちをひきつける野原、酵素河川敷(弥吉の狼煙は谷山林道か)。久能山参拝の城代を襲う俊平、金戒光明寺路地各所〜石段(上部に標の柵をセット)。追う黒鍬者と戦闘の掘割、大覚寺御殿川河床(辰野と芝居を打つのは参道石橋)。駿府を去り旅立つ二人、落合付近河畔の岩場。
*絶望の果て死も覚悟して封建制度に一人立ち向かう俊平の重苦しい話に、藤田まことの黒鍬者がアクセントをつける。旨いものを食って好きな女と暮らす日常をこよなく愛する男は、中村主水と秋山小兵衛を足して割ったような感じ。全然似合わない忍者ルックもご愛嬌。


第17話「綾姫御殿

 駿府城代を叩き斬った「不義者・俊平」の名は世に轟いており、それを見込んでの殺しの依頼が来る。ターゲットは将軍が三河吉田の松平藩に押し付けた庶子、その姫は葵の御紋を傘に着て乱行の限りを尽くしていた。やる気満々の俊平は姫の黒髪をぶっつりと切り捨て、晒し者にして当地を去ってゆく。

 ロケ地、お褥辞退の姫が巣食う綾姫御殿、仁和寺宸殿(宸殿南縁階、池泉と白州、回廊、平唐門)。また出た姫の犠牲者を見て「餌を撒く」と弥吉に呟く俊平、広沢池東岸。松平はずしの追っ手とやりあうのは観音島西岸(水無)。六部に化けた黒鍬者を撫で斬りにするのは北岸汀。これを見ていた綾姫に招かれ御殿に入る俊平、仁和寺本坊表門(大玄関が見えている)。三河を去り東海道をゆく二人、広沢池東岸
*姫にいたぶり殺された恋人の仇討ちを依頼するおくにに小山明子、綾姫に国景子。


第18話「死地突入

 今回俊平が狙う相手は献上使、影送りに乗って行列が通過する予定の関宿へ。修羅となってお上に逆らう不義者はヤクザにも忌避されるようになっており、関宿の親分は俊平密殺を手下に示唆、この情勢のもと俊平は影送りの最中に殺されかかって復讐鬼と化した、自分と似通った境遇の渡世人と出会う。

 ロケ地、関宿へ向かう俊平たちがゆく裏街道、落合付近河原〜池堤(不明)。献上使一行がゆく街道、川堤か。渡世人・竜の回想、竹熊の企みで銀次らに斬りかかられ崖から落ちる道、落合落下岩。竹熊に頼み込まれ竜を探して歩き回る俊平たち、落合崖道、河口汀。
*竜を演じるは中村敦夫、俊平のダンナが小ざっぱりキレイに見えてしまうくらいボロボロのなりで登場。しかもジャンゴよろしく棺桶を引きずっている…中は機関銃ではなく、恨む相手の名を記した卒塔婆が二本。不義者と復讐鬼の出会いはレゾナンスを呼び、手を潰された竜を「武装」してやるところなんかは涙モノ。*弥吉も見せ場多し、監禁されちゃったダンナを助けるために奮戦の禁断の技も使う。掛け矢で錠前ぶっ壊すとこなんかも荒っぽくて新鮮。寝言の「俺の金ぇ〜」や、献上品を叩き割る俊平に「コレ金なんだよぉ」と食い下がるシーンも笑える。


第19話「黄金振舞

 舞台は大坂、弥吉の懐を狙った女掏摸を仲間に引き込み、大坂城の御金蔵を狙う俊平。珍しく明朗快活な泥棒活劇が展開されるが、完全に幕府を怒らせた俊平の前には太一郎の命を餌にした召喚状が突きつけられ、一気に元の深刻なドラマに戻ってゆく。

 ロケ地、大坂城には本物を使用、桜門や大手、刻印石広場に外濠端と各所が使われる。あってはいけない筈の天守もしっかり映りこみ。御金蔵や普請場はオープンセット。作州松平藩の高札を見た俊平がずんずん歩く街道、罧原堤対岸河原
*女掏摸に中村玉緒、ネイティブの関西弁はさすがハマっている。同心株を買って城に入り込む弥吉もノリノリで、お得意の大阪弁のほか、蘭語もちょっとねのお遊び「ヤラズボッタクーリ/イカズゴーケ」なんかもまくしたてる。


第20話「作州炎上

 俊平来襲に戦々恐々の作州松平藩、対策に大わらわの家臣をよそに殿の狂態はやまず、次席家老が諫死の事態に。太一郎を取り戻して後も俊平の怒りはやまず、その刃は遂に殿を貫き藩は崩壊、大乱の兆しが示唆されてこの重苦しいドラマは終わる。
 ロケ地、作州松平藩城、彦根城天守閣。惑いにある伝八郎が赴く母の墓、西寿寺墓地(墓石を抱いて泣く岸田森怖すぎ)。太一郎を取り戻し伝八郎と斬り合いの峰の原、酵素河川敷(ラスト、野道をゆく弥吉と太一郎に追いついてくる俊平のシーンも同所、こちらは極端なローアングルで。弥吉の笑顔が青空に印象的)
*太一郎を殺して森家の家督を狙う伝八郎に、理解者が現れるというドラマが用意されていて見もの。もちろん凍てついた伝八郎の心は解けないが、俊平に斬られて横たわる瀕死の彼は紫野に謝意を示し果てる…これで母に会えると呟いてるのがまた、最後まで天晴れな歪みかたのウルトラマザコン。*殿様の菅貫はたっぷりと狂態を演じてくれる。家老を押しのけてゆらりと俊平に近寄る目つきなんかサイコー。


*主人公たちが道なき道をゆくシーンが多いので、誤謬を含む可能性があります。

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