銭形平次  365〜382話

平和台公園キャスト
銭形平次/大川橋蔵
お静/香山美子 八五郎/林家珍平
おせん/酒井靖乃 お勝/武田禎子
為吉/神戸瓢介
万七/遠藤辰雄 清吉/池信一
樋口一平/永田光男


第365話「星の降る夜に」1973.5.2

 島帰りの男が再びお縄の危機、なかなか職も得られず悩む男を支えたのは、島送りの発端となった恋人ではなく、情深い幼馴染だった。

*ロケなしセット撮り。島帰りの与吉は藤巻潤、幼馴染の髪結いは十朱幸代。与吉とともに三宅島から帰ったゴロツキ三人組のヘッドは汐路章、人相をギョロ目とか表現されてて笑える。*与吉は完全に潔白、お店の娘と引き離すため仕組まれたことで、岡っ引もグルというひどい話。ために目明しを憎む彼が、親分を信頼してゆく過程も見もの。裏で全ての糸を引いていた悪党を指弾するのは婚礼の席上、平次にしては情のない手法だが相手の女も相当な描かれ方をしていて、因果応報を匂わせる。タイトルは万事おさまり与吉に結婚話が出て、親分がお静と見上げる星空。*ひょうたんの娘が交替、いきなり八にちょっかい出されてるおせんちゃん。おゆき引退の理由は語られず。*主題歌およびアイキャッチのアレンジがマイナーチェンジ。


第366話「罠にはまった道行」1973.5.9  39

 稚気溢れるアンちゃんが岡場所から女を足抜けさせ、逃げるにあたって幼馴染の兄貴分を頼るも、その男はとんだ悪心を隠し持っていた。アンちゃんをしおらしい心持ちにさせるのは、逃避行の途中出会った、貧しくも仲良く温かい夫婦者。形だけなれど盃を交わさせてやり連行する親分も泣かせる。

 ロケ地、お直の手を引いて逃げる勘次、広沢池東岸並木/堤法面(追ってきた「恋敵」と揉み合い腹を刺してしまう場面)。一時身を寄せる船小屋、広沢池東岸汀にあしらい。文三が八をボコって撒き勘次と会う橋、中ノ島橋
*勘次に水谷豊、お直は小鹿ミキ。水谷豊のいきがったアンちゃんぶりが傑作、盗ってきた芋を生で齧ってるし。*広沢池ロケ、前段ではほぼ水面を映さず。


第367話「日陰に散った涙花」1973.5.16  39

 苦労人の酒肆の女将は、娘が良縁を得て幸せになることだけを希うが空回り、当の娘と齟齬を来す。娘のため犯した大罪に加え玉の輿と思った縁談は詐欺、挙句娘に家出されてしまい、女将は悲嘆に暮れる。初手から女将が大事を引き起こしてきたことが明らかな作り、罪を告白し過去を語る愁嘆場に尺が費やされる。

 ロケ地、両替商・讃岐屋との見合いの料亭、錦水亭東屋(前庭と橋、草戸)
*酒肆・喜楽女将に藤間紫、見合いの席で娘をいたたまれなくさせる下品さと卑屈さや、娘の男を殺してしまう浅薄さ、しどけなくほつれた髪で酒を呷るさまも真に迫る芸。


第368話「兄弟しぐれ」1973.5.23  28

 寄場送りの身で見事に更生を遂げた元盗っ人、平次は我がことのように喜び目をかけるが、ただひとつ残った懸念はやはり現実のものとなる。

 ロケ地、金のない兄弟に飴を買い与える新助(配達中)今宮神社東門内側。旅姿の伊太郎がやって来てアジトの小屋に入る林、不明(林の奥に池、小屋は起伏の上、林は落葉樹の多い明るい林)
*捕まれば死が掟の一味、しかし伊太郎は負傷し逃げられぬ弟・新助を仲間から庇った、このことが親分の気がかりで、果たして新助は逃げ込んできた兄を匿ってしまう。そして曲折の果ての土壇場で、弟に向け放たれた刃を身に受ける兄。今はの際の言葉は「あの時殺しておけばよかった」の悪態、平次は新助にこんな悪い奴もう思い切れと口添え。しかし伊太郎は刃を受ける前、弟の立ち位置を確かめている。庇った上で負担にせぬ為の気遣いか、偶発事で言葉通りか、事後考え込む親分にも真実は遠い、余韻を残す作り。*新助は森次浩司、女房は葉山葉子、伊太郎は松原光二で賊の首領は外山高士。


第369話「ただ一度の裏切り」1973.5.30  39

 盗賊の引き込み女は凶行に嫌気がさし、思い詰めて身投げ。これを助けた若旦那は、女の運命を狂わせた父の贖罪と自身の慕情から親身に世話を焼くが、賊の手はそこにも伸びてくる。

 ロケ地、平次の追及を煙たがった賊が放った殺し屋が襲ってくるのは御室霊場巡拝路。偽の印形を彫った職人を殺し逃げる仙三郎、船を奪う渡し場は嵐峡船着き上手汀(駆けつけた平次らの背後に嵐亭の建物)。仙三郎が若旦那を呼び出す祠、松尾大社本殿脇摂社
*お関に赤座美代子、蓮っ葉な女がよくハマるが手配書ヒドい・もっとキレイだし。若旦那は永井秀和、お関の情夫に早川保。


第370話「母子草」1973.6.6  29

 自分が殺人犯と疑われても口を閉ざす幼児、それは祝言を心待ちにしている母を悲しませたくない一心からだった。平次は彼の心の襞を読み、真犯人に行き当たる。

 ロケ地、鉢植えをかっぱらう新吉を見る植木市、赤山禅院参道。新吉がよく遊びにゆく八幡様、赤山禅院境内各所(池端中心、母犬をさがす幼女と経巡るのは拝殿脇や十六羅漢に本堂前、喜助が出て新吉に刃を向けるのは本堂脇の池端)。新吉の母が倅の無事を祈りお百度を踏む天神様、木島神社本殿
*新吉に大川辰五郎。こんな小さな坊が鉈で人の頭をカチ割るはずも無いと思うが、ここにはツッコミなし。


第371話「とんだ道連れ」1973.6.13  29

 はるばる伊勢から店の窮状を訴えにやって来た娘、目安箱へ入れた訴状は却下されるが、彼の地を知る南町奉行はお伊勢参りにかこつけて平次を遣わす。その旅には樋口さまから託された爺さまが同行、平次が命懸けで伊勢に巣食う悪党を召し捕った段で正体を現す趣向の、痛快な「印籠もの」。

 ロケ地、評定所、大覚寺大門。藤堂和泉守と南町奉行が話す城中の廊下、大覚寺宸殿。朝霧峠をゆくおるい(巡礼姿)、谷山林道か安行山か(足を止め富士山を見やる/直後平次一行がやって来て茶店で休む)。早起きして水辺にいる平次に爺は置いていこうと持ちかける八、中山池汀。結局三人で行く街道、爺さまが孫をおぶう婆さんを見て首をひねるのは北嵯峨農地・竹林際。宇津之谷峠に差し掛かる橋(爺さまが八に財布を預ける)中山池堰堤に架かる橋。爺さまの尻を押して登る坂、平和台公園・安行山登り道(地道、登りきったところで護摩の灰が出て立ち回り)。新居関所、不明(地道に柵あしらい/関所を出たところの茶店で平次らが待つくだりは植生が安行山に似る)。伊勢山田へ入る直前の山道、安行山か(伊勢湾を望む峠設定、二見夫婦岩のイメージ画が挿入される/おるいは平次らと別れ間道をゆく←分岐道が映っている)。伊勢山田へ入る橋で羅生門一家が通行料を取り立てるのは中ノ島橋。平次を追ってきたお静が雲助にからまれる宇津之谷峠、平和台公園・安行山
*同行の爺さま・幸兵ヱは辰巳柳太郎、藤堂のなり立てご隠居。道中、過食したり大鼾かいて八を悩ませたり、とてもご老公とは思えない素振りが傑作で、さすがの貫禄。ヤクザとつるんでいた伊勢山田奉行は畏れ入っておしまい。*京都縦貫道開通は1988年だから、1970年代初頭なら全く様相が違ったわけで、今は平和台公園内の道も舗装されているから特定が難しく、一部谷山かとの疑いも捨て切れない…全部そこで撮れたものをわざわざよそへ行く筈もないと思うが。


第372話「誰も知らない」1973.6.20  30

 ただ一人信じ愛した女が己を訴人したと知った男は寄場を脱走、意趣返しに向かうが思い知らされる我が身の罪深さ、男にとって道は一つしか残されていなかった。

 ロケ地、脱走した源次が逃げ込む葦原、広沢池か(けっこう広大、水に逃れる際にはとぷんとたゆたうアオコっぽい緑が見える)。源次がおしのの姿を求める上野山内、仁和寺境内(まず御室桜越しに塔が映り、おしのを含む通行人が行き交う御室桜の西側にパン。観音堂脇に源次の姿、駆けつけた平次が万七と合流するのは観音堂前で背景に塔。市が立つのは水掛不動参道で、源次は鐘楼基部に腰掛けて雑踏を注視。その中にはおしのがいて野菜を求めるが、平次が来て源次は隠れ、ここでは見つからず)。おしのの話を聞き己の罪を思い知った源次が、おしのに求婚している番頭を見て家を飛び出し向かう崖上の寺、智積院密厳堂。源次の墓、黒谷か。
*源次に菅貫太郎、純で一本気な人物を演じるのは珍しいが感情表現はさすがの巧者。おしのは三好美智子、菅貫におしの訴人の件を吹き込む男に西田良(回想シーンで丸いフレームに登場もあり)で、彼や菅貫をシバく同心は国一太郎。


第373話「昨日の風が後を追う」1973.6.27  39

 炭屋の番頭は未亡人の女将を助け店を盛り立てて働き、跡取りの坊も彼に懐くが、女将は狎れない。しかし彼の過去が身を危うくする事態に、女将は己が心の真実を知る。

 ロケ地、俵屋番頭の仁吉を待つ五十海浪人、吉田神社竹中稲荷拝殿前(丁稚が来れぬと告げに来る/背後に三高碑への石段)。業を煮やし俵屋へ現れる浪人、表でと二人してゆくのも竹中稲荷、参道前・大元宮へ通じる道へ平次が通りかかり二人を見かける。浪人が仁吉を詰るのは本殿前。神社の設定は妻恋稲荷、俵屋は妻恋町。湯島の妻恋神社か。
*仁吉に和崎俊哉、元松井田宿の目明し。彼を狙うのは浪人だけでなく、盗賊の兄を獄門台に送られた弟(深江章喜)とその一味(もちろん賊)も・こっちは逆恨みの仇討ち。上州浪人・五十海(いかるみ)新八は大山克巳、妹の恋人を無実の罪で獄死させた仁吉を斬りに来る。余人に殺させぬと賊に襲われる仁吉を守り、遂には恨む心を押し殺し去ってゆく、渋い役どころ。


第374話「むしけらの魂」1973.7.4  30

 強請りタカりの地回り殺し、下手人はすぐに名乗り出て目撃証言もあるが、平次は動機に得心が行かない。誰を庇っての、という視点は案の定で、青年に目をかけていた仏の目明しの「事情」が出てくるほか、若気の至りで逆目に出た、母を思っての過ちが哀切。

 ロケ地、強請りの源助が殺されて見つかる神社裏、赤山禅院池端。源助に脅されていた山形屋の女将に話を聞く神社、赤山禅院本殿内陣。箱田の弥平の回想、チンピラ仲間にボコられ命乞いをする友吉を助けた弥平、赤山禅院本殿玉垣際。懐いた友吉と釣りの池、赤山禅院本殿脇池の切石橋上。弥平が茶汲女のお甲に呼び出され強請られるのを見る八、赤山禅院井戸(現在、前に「還念珠」)。出家した弥平が参る友吉の墓、不明(林間の小丘、欅の根方)
*友吉は小野川公三郎、弥平は花柳喜章。源助は中田浩二でお甲は長谷川待子。源助の仲間に聞き込みのくだり、川谷拓三がちらっと。


第375話「黄金の牙」1973.7.11  30

 河岸人足から大商人に成り上がった札差の阿漕さが心胆寒からしめる話、倅が拐かされても投機を優先、そも誘拐も過去の非道の報い。親分は、人命は尊び事件を解決するも、微妙な駆け引きで奸商に鉄槌を下す。

 ロケ地、周防屋の若旦那が父の商いを女中に愚痴る大川端(誘拐現場)大覚寺五社明神(船で逃走の「大川」は大沢池か)。身代金を乗せた船が下ってゆく大川、罧原堤下桂川(金をとった一味が上陸する汀は堤下汀か)
*周防屋は沢村宗之助、取引はフイになり妻子にも見限られた彼が、折しも鳴りだした半鐘に狂気の態を見せる姿を炎でフレーミングして終劇・隈作ったギョロ目も迫力の熱演。あまりの非人間性に万七も己の行動を反省。倅は池田秀一、父を自死に追い込まれた意趣返しに入り込んで若旦那に求婚されていた娘は東三千で、彼女を手助けする元手代の「誘拐犯」の船頭は御木本伸介。誘拐に手を貸すチンピラに江幡高志。


第376話「命を賭けて」1973.7.18  39

 札差殺しで疑われる、店を追い出された腹違いの弟。彼の女房は罪を被って「自首」して出るが親分は信じず、真実を聞き出し裏に隠れた悪を引きずり出す。

 ロケ地、浅蜊行商のお直が立ち寄り茶を貰う田所稲荷、鳥居本・平野屋(石段下から愛宕神社鳥居越し/お直の元許婚者が現れるのは下六丁峠へ通じる道のほうから)。死体検分の際、悔みに来た叔父の態度を怪しんだ平次らが尾行し立ち塞がる道、大覚寺勅使門橋と付近の林間。叔父が名を出した新次郎の家を訪ねた帰りの平次らを襲うヤクザども、大覚寺五社明神(宮の前に出る「道」の脇に竹垣あしらい/立ち回りは宮の前から池端で)。とっ捕まえた一匹(森章二)から聞き出した隻眼隻手の浪人のことを聞き込みに行く田所稲荷、平野屋
*お直は水野久美、新次郎は久保明、実は五体満足のふざけた浪人に穂積隆信。*お直の「自首」、虚偽を見破られぬため万七に申し出。親分、「だから三輪に」がひそかな笑いポイント。手柄は万七に譲り。


第377話「歪んだ花芯」1973.7.25  39

 死罪になった父を持つ少年は人情家の老目明しに育てられ、大商人に暖簾分けを認められる青年となったが、祝いの当夜お店から貰った大金を盗られてしまう。自棄になる彼を苦労も厭わず支えようとする健気な婚約者、かたや邪まな手段で彼を手に入れようとする愚かな女、対照的な二人の女が描きだされる。

 ロケ地、目明し・佐兵衛の墓へ参る宇之吉と平次夫婦、不明(墓標は坂道の傍ら、坂の下に甍がのぞく)。祝いの席からの帰りに宇之吉が襲われる常念寺横の夜道、下鴨神社河合社(塀越しの俯瞰もあり/昼間、平次の検分も)。万七に狂言だ血は争えぬと悪態をつかれ医師宅を飛び出した宇之吉が佇む川辺、下鴨神社泉川(流水に濁り)。宇之吉を見舞った帰りのお蕗に顔を貸せと声をかける男、中ノ島橋上。伊与造に聞き込みにゆく木場、他社の年代の違う作品にも出てくる「例の場所」。親と平次に仕出かしたことを告白するお蕗、強請られたときの回想、仁和寺観音堂(伊与造が浪人に突っ転ばされているのは蔵脇)。浪人らに金を渡す約束の西福寺(伊与造と堀田原で落ち合って、とお蕗が言っているので蔵前と推測される)仁和寺観音堂(いろんなアングルが使われる)
*宇之吉に夏八木勲、死罪の父と二役・罪人のほうは髭ぼうぼう、自棄を起こしての酒肆での喧嘩で振り上げた拳を一旦おさめ躊躇うあたり、演技も脚本も出色。三浦屋主は潮万太郎、浅薄な企てで窮地に陥る出戻り娘のお蕗は池田幸路、嫁ぎ先の材木屋の川並人足の伊与造は唐沢民賢(もちろんくわせもの)、脅迫者の浪人に五味竜太郎。宇之吉を待ち続けるお妙は服部妙子。*万七親分、嫌味が過ぎて平次に「面ぁ張り飛ばしてやりてぇぜ」まで言わせる、見る者も思わずムカっとくる熱の入り方がなんとも。


第378話「あに、いもうと」1973.8.1  39

 島から帰った疾風組一味の男を警戒する平次と新米岡っ引・英次郎、天涯孤独と供述していた男に妹がいたことが知れるが、それは英次郎が求婚中の娘だった。訪ねてくる妹に縁は切ったと突っぱねる兄、犯した罪も何もかも妹の幸せを願っての行動、平次はその心を十二分に汲んでやるのだった。

 ロケ地、妹の回想、孤児院を出てそれぞれ奉公した兄妹がたまさかに会う市中、御所高倉橋厳島神社境内汀。
*兄・伊三郎は目黒祐樹、妹・おしのは中津川みなみ、母・おふさは日高澄子、英次郎は岡崎二郎。妹と英次郎を添わせてやるため母を探し出し、妹は貰い子で血縁なしと証言させる芝居を打つ兄、幼子だった自分たちを捨て惨めな境遇に追いやった憎い母に見せる優しさも泣かせる。


第379話「雪の日の記憶」1973.8.8  39

 行き倒れたところを助けられた母子は、名も告げず去った男を待ち続けるが、再会は男の市中引き回し。その人は罪人でないと叫ぶ幼女、仕置は日延べとなり、男が頑として何も白状しなかった真の理由が明らかとなる。

 ロケ地、泳がせるため解き放ちとなった政吉が、母子を危険から遠ざけるため急ぎ江戸を離れる夜道、盗賊仲間が現れ三人を始末にかかる町角は相国寺方丈塀際。
*政吉に内田良平、妻子を大火で亡くし悪の道に・行き倒れの母子が妻子と被る設定。母子に「ごじょもんさん」の話をする老巡礼は藤原釜足。*ごじょもんさんは寒村の民が言い伝える、神とも救世主ともつかぬ霊的な存在。水神や山の神、祖霊神への信仰が凝って山越阿弥陀等に至るプロセスと同じか。親分の分析は義民等の神格化。こんなペダンチックな要素が出るかと思えば、政吉の塒に踏み込んだ万七の「寝床が冷たい」に、清吉の「まるで赤穂浪士」発言も飛び出す。


第380話「朧夜の甘い匂い」1973.8.15  31

 双親の仇を討とうとする娘、手を汚させまいと動く親分。仇の二人が殺しあうよう捨て身の色仕掛けで持ってゆく女軽業師の緊迫のドラマ、彼女のため命を賭けて紀州の家老に訴えたり、盗っ人紛いの潜入を敢行したりと平次の見せ場もたっぷりで、痛快な懲らしめのあと娘の店が復活するめでたい結末。

 ロケ地、お竜が大和屋や田尻と会う料亭・辰巳屋、嵐山公園・錦(平次が様子を窺うのに隠れる塀はあしらいもの)。お竜が参る両親の墓、化野念仏寺(石仏群傍の新墓)。紀州藩中屋敷、大覚寺大門(参道を家老の駕籠が来て、門をくぐる家老は内側から/平次が跪き願い出るのは式台玄関前の植栽脇・聞き届けた家老は式台玄関へ)
*お竜は光川環世、色っぽい姐さんも罠にはまった悪党を嗤う悪女っぽい顔も良し。爺やは北見浩一、紀州のご家老は竜崎一郎。お竜の親を害し紀州家出入りゲットの悪徳商人は高野真二、手を貸した紀州家御納戸役頭は天津敏。お竜に手玉にとられるヒヒ爺っぷりがお二人ともなかなか。*折角のオフを鯵二匹の釣果に費やしお静を怒らせる親分、狙いの鯛がバースデープレゼントだったと知って嬉し涙のお静、もうどうにかしての熱々夫婦のおのろけ入り。


第381話「天女を女房にした男」1973.8.22  39

 記憶喪失の美女を拾い保護した男、女に頼られ縋られ夫婦気取りで有頂天。じきに女の身元は知れ二人は引き離され、挙句女は大川に落ち死んだものとされるが、起こった出来事は全て大店乗っ取りの仕込みだった。

 ロケ地、備前屋に引き取られていった記憶喪失の女が、なぜか店には戻さず留め置かれる深川の寮、中山邸通用門(裏口はセット撮り)。寮から清八と逃げた女が店の者たちに追いつかれる橋、中ノ島橋(女が川に落ちるのは橋たもとの中州岸から)。清八が死んだと思った女を見かける両国界隈、仁和寺水掛不動入口。女の墓、金戒光明寺本堂裏墓地
*悪党に見込まれ利用されてしまうダメ男に財津一郎、朗らかな売り声が印象的。彼の「天女」は森秋子、ダメ八にほだされる展開。お店乗っ取り首謀者の分家の弟に柳生博、グルの番頭は牧冬吉、汚れ仕事を引き受ける駕籠舁きに平沢彰と宮城幸生。


第382話「海鳴りが牙をとぐ」1973.8.29  31

 奉行のお声掛りで下総の海に沈んだ御用金を求める親分、何やら上つ方も加担の簒奪を防ぎ大立ち回り、若い恋人たちを苦しめる悪い網元もついでに成敗・家を取り戻してやる。

 ロケ地、下総・椿浦の海浜、丹後海浜か(柱状節理の露出)。朝吉ととねを会わせてやるお堂、御室霊場お堂。
*先の網元の娘で難所に潜る能力を有する娘・とねに三浦真弓、恋人の朝吉は酒井修、彼らを庇う酒肆の親爺に見明凡太郎。阿漕な網元は福山象三、御用金狙いの怪しの浪人は外山高士で相棒の御家人くずれは飯沼慧。*ヤクザ紛いの網元一家へ入り込むための変装は渡世人、よって立ち回りの得物は道中差・八は十手と二丁でブン回し。


→銭形平次 表紙


・日記目次 ・ロケ地探訪 ・ロケ地探訪テキスト版目次 ・ロケ地一覧 ・時代劇の風景トップ  ・サイトトップ