銭形平次
  400〜425話

赤山禅院雲母不動堂・御滝堂境東望キャスト
銭形平次/大川橋蔵
お静/香山美子 八五郎/林家珍平
おせん/酒井靖乃 お勝/武田禎子
為吉/神戸瓢介
万七/遠藤太津朗 清吉/池信一
樋口一平/永田光男


第400話「お光の縁談」1974.1.2 35

 物的も状況も証拠揃いまくりで盗っ人として捕まる青年、ハメられたと見た平次は青年の恋人を使い、真犯人が尻尾を出すのを待ち構える。元旦早々の事件、親分のお正月はまた遅れてやって来る。

 ロケ地、魚清の番頭が強盗に遭う池之端の暗闇坂、黒谷か(除夜の鐘も黒谷?)。明神さまへ初参りの平次夫婦、今宮神社本殿〜稲荷社前(八がてーへんと駆けてくる)。常吉が晦日の晩襲われた下根岸の辻堂、大覚寺五社明神(舞殿に扉あしらい、側面には花頭窓付きの壁も)。雪降るなかお百度を踏むお光、木島神社本殿。事件に関わるゴロツキの富蔵が仲間を引き連れて乗り込む屋形船、嵐峡
*常吉に渡辺篤史、恋人のお光に和泉雅子。若旦那の意を受けて動く悪党に今井健二、情婦の常磐津師匠に白石奈緒美。


第401話「往くも還るも地獄道」1974.1.9 35

 直訴にやって来た武州新倉郷の親子、斬られた父の遺志を継ごうとする娘。彼女の前に現れる同郷の男ふたり、調子のいい遊び人と物堅そうなお店者、どっちがどうかは時代劇のおきまり。

 ロケ地、父・宗兵衛の墓に参るお民、永観堂墓地(江戸で奉公している英次郎が来て助力を申し出る)。平次の家から連判状を持ち出した半次を追う平次、捕まえてシメていると刺客が出る夜の林、大覚寺大沢池畔林間。新倉代官の篠原主水之介に故障を申し立てに行く平次、お屋敷は相国寺光源院。父の墓に詣でこれから勘定奉行のところへ駆け込むと報告するお民、永観堂墓地。ここで正体を現した英次郎と揉み合い逃げるお民、御影堂脇に駆け込み・ここへ平次登場、英次郎をとっちめる。そこから逃れたお民が半次に当て落とされ趣意書をとられるのは御影堂前・の脇。勘定奉行・秋月邸前へやって来る半次、相国寺林光院。篠原の用人一味に捕まり連れ込まれる林、下鴨神社池跡(半次の危機に銭、ここでラス立ち)。篠原邸から出てくる平次と半次、相国寺光源院。半次を待っているお民は塀際。
*お民に珠めぐみ、半次は三田明。実はいいお殿様だった篠原主水之介は野口元夫で悪い用人は山口幸生。


第402話「父と子と」1974.1.16

 またぞろ蠢きだした二ツ名の賊を追うと出てくる怪しの船、そこには身を持ち崩して帰るに帰れぬ悲しい「父」も乗り合わせていた。拗ねて父を拒否した坊がたまらず会いに来て、悪党どものタテにされかかるが父は猛然と突進、涙の和解となる。
*ロケなしセット撮り。父は和崎俊哉、賊の首領は天津敏で手下に阿波地大輔や峰蘭太郎、強面の人足頭は千葉敏郎。八の失恋ネタもあり、恋敵は唐沢民賢。


第403話「八五郎病中記」1974.1.23フジ/東映  40

 八五郎が担ぎ込まれた医者は、偏屈の変わり者だが庶民のために尽くす磊落な人物。彼に関わるうち、偉そうにしている怪しい「御典医」と出会う平次、迷宮入りが気にかかっていた六年前の事件が浮上する。

 ロケ地、一色右京太夫御典医・鳴滝塾免許と大層な看板を掲げた五島玄道邸、相国寺瑞春院(門越しに式台玄関が覗く)
*八を診た医師・壬生慶斉に大山克巳、偽医者・玄宮は深江章喜で悪党仲間の用人は江幡高志。*お話を医者に持ってゆくため演出された八の病気は腸重積。このほか八は慶斉の娘(母と共に別居中)を不憫に思い落語で説得しようと一席ぶつなど見せ場あり(噺は「子別れ」)。


第404話「憎まれっ子」1974.1.30  36

 世間から爪弾きにされる子、荒むその子を我が命で陽の当たる場所へ戻そうとする老爺。痴情のもつれの殺人事件が、二人の心を結び合わせるきっかけとなる。

 ロケ地、常磐津師匠の死体が見つかる松尾渡しの河原、罧原堤下河原(右岸/松尾橋下手の可能性あり)。主家の娘とお参りの職人に声をかける留吉、松尾大社本殿
*荒物屋の老爺に寺島雄作、留坊は加賀爪芳和。*清吉をして嘆かせる万七の見当違い、何の罪も無い爺さまを引っ括ったことで、爺さまの留坊更生プランが出てくる運び。


第405話「だるま長屋の殺人」1974.2.6  40

 コソ泥騒ぎが続いて起こっていた長屋、遂に住民がらみの殺しが起こる。脅迫されたすえに殺ったと若女房が「告白」するが、腑に落ちぬ平次。謎を解き冤罪を晴らす過程は、哀しい過去を清算し夫婦仲をより強固にしてめでたく終る。

 ロケ地、湯島天神の崖下で殺されて見つかる男の検分、吉田神社大元宮西側崖下(長屋の者を連れて八が本殿から通じる道をやって来る)。殺しを告白するお久の回想、大元宮境内(揉み合い、脅迫者の池松が玉垣から転落)
*掏摸の前歴を隠していた若女房は清水まゆみ、暴れ者だった亭主は人見きよし。長屋に対する負い目を消そうとしていた大家の油問屋は河村弘二でグルのヤクザは五味竜太郎。*だるま長屋の謂れは「おアシが無い」←万七が憎ったらしく解説。大家の負い目は火事を長屋衆に救われたことで、50年店賃値上げなし・追い立てせずの約定。この証文は平次が投げ銭でぱかっと割った月番の下げ札から出てくる。


第406話「岡っ引志願の娘」1974.2.13  40

 賊を追う平次のもとへ現れる、父の仇を討ちたいと言う娘。しかし彼女は知らずに操られ、悪党の手先を務めさせられていた。とんだ攪乱にあい無駄足を踏まされ闇討ちにも遭うが、明晰な推理は裏で妙なシナリオを書いていた男に辿り着く。

 ロケ地、平次宅に居着いたお峰が寝巻を取りに帰り、店を出している易者の雲竜に平次の動向を喋る夜道、今宮神社東門。母の見舞いに帰ったという常五郎を追って川越へ出向く平次、役所でその母は三年前亡くなったと聞かされたあと佇む川辺、中ノ島橋上手中州岸(欄干越しのアングルで導入)。お峰に平次の動向を書いた文を結ばせる約束の玉姫稲荷、今宮神社稲荷社。文をとった常五郎が雲竜に見せにゆく門、今宮神社東門(後で平次が現れ雲竜の正体を指摘→立ち回りに/子分どもを追い立てて万七たちも走り入り、大捕物・門内側と石橋や溝で立ち回り)
*お峰は四方晴美、雲竜は北村英三で常五郎は浜田晃、賭場で平次をたばかる仙太は平沢彰、一味に始末される島帰りの猪之松は市村昌治。江見俊太郎が与力で出ていて、番屋から容疑者を持ってゆきむざむざ毒殺されてしまうので、てっきりワルの一味と思っていると大ハズレでそのまま・何の関係もナシ。*タイトルは平次に近付くため捻り出した「動機」。


第407話「悲しい傷跡」1974.2.20  40

 他の男の子を身籠ったまま嫁いだ女だが、優しい亭主と理解ある舅のお蔭で幸せな女将として日々を送る。しかし伝馬町の火事で、「過去の因縁」が解き放ちに。身を持ち崩した昔の男に自責の念を抱く女、平次のはからいで過去は清算される。

 ロケ地、店へ現れた民三と外で会い金を渡すお秋、わら天神六勝大神裏手。民三が金を持ってくるよう指定した竹屋の渡し端の船小屋、罧原堤下河原(ラス立ちもここ)。要求された金を持たずに店を出たお秋が竹屋の渡しへ向かう途中呼び止め説得する平次、大覚寺天神島
*お秋は赤座美代子、民三に郷^次、亭主は平井昌一。*凶悪民三、囚人を一人身代りに仕立てるほか、万七を殺しかける←万七に痺れ薬を使われお縄を恨み。


第408話「ろくでなしの叫び」1974.2.27  40

 父にも兄にも邪慳にされるグレた青年に殺しの疑い、実母に会い出自を確かめた彼は自首して出るが、それには深い思いが隠されていた。得心のゆかぬ事象は放置せず、かつ青年の心底を見据える平次の目が冴える。

 ロケ地、地回りと酌婦の「心中死体」が上がる大川・緑橋下、中ノ島橋下河原(見物衆は護岸に/橋の裏側も見えている)。その二人の墓、不明。二人について偽証した源造が出没という八幡さま、木島神社(本殿前で刺されて見つかり/仙次が本殿へ駆け込んで逃走。夜間撮影)。源造殺害時の返り血がついた衣が犬に掘り返されて見つかる男坂下稲荷、大覚寺五社明神本殿脇。
*仙次は小倉一郎、飾り職人の父は美川陽一郎、大店へ婿入りが決まっている兄は寺田誠、美人局カップル殺害実行犯の源造に松山照夫。


第409話「江戸と田舎の若旦那」1974.3.6  36

 表題どおり対照的な二人の青年が登場、優男の恋人に見返られた女は、山出しの純情者の暴走気味の愛に救われる。

 ロケ地、上方で油を買い付けてきた井筒屋と河内屋の番頭が暗殺される林、不明(起伏のある丘の上に蔵のような建物・丘の下には池/杉良の金さんでも何度か出ている)。木曽から出てきた山持ちの「若旦那」直介が、一目惚れの女を追ってゆくと優男とデートで頭に血がのぼり暴れる堀端、嵐山公園中州料亭際路地(路地奥が水路)。おのぶが井筒屋の若旦那に預かった荷受書を突きつけ問いただす神社、吉田神社竹中稲荷(悪党の同士討ちをおのぶの犯行として来合わせた万七が逮捕)
*山出し男に山本紀彦、水茶屋女のおのぶは北川美佐。実は親父も悪党の井筒屋主人は北原将光、儲け話に絡んでくる賭場開帳の悪党は小田部通麿。


第410話「夢が殺した」1974.3.13  36

 息子を出世させたい父親の、行き過ぎた期待が若い恋人たちに悲劇をもたらす。色魔のチンピラと浪人は本筋には無関係だが、殺伐を強調(シナリオが破綻している気がしないでもナイと、こそっと言ってみる…銭平には珍しいもんだから)

 ロケ地、お縫が墜死した崖(「上野の山と不忍の間を谷中へ抜ける途中の、お花畑の向いあたり」と発見者の火消し・峰蘭太郎の台詞)吉田神社大元宮西側崖(後段、おきさが浪人に襲われかけるのは大元宮本殿前)。南部屋の娘が暴漢に拉致される下谷高徳寺近くの坂、吉田神社本宮と大元宮間の参道。お縫が見つかったと兄のもとへ駆けてくるおきさ、和三次が佇むのは赤山禅院境内池端。後で鼈甲の櫛のことを問い詰めるのは本殿の中。伍平に事情を聞く平次、大覚寺放生池堤(伍平は自分が邪魔なら親子の縁も切ると言い放ち、伏線に)
*倅の立身を願うきっつい親父に花沢徳衛、彼の親友でお縫の父に村田正雄、和三次に柴田p彦と来てまたハナっからおどおどしていて丸わかりの筋立て、この三者が展開するのは三様の持ち味を活かしたベタな人情劇。


第411話「江戸は今夜も」1974.3.20  37

 出稼ぎから帰らぬ父を案じ江戸へやって来た子供たちが、とんでもない口入屋に騙されタコ部屋へ放り込まれている父親たちと曲折を経て再会する情話。子らに手を貸す孤児の三太がいい味、彼の身の振り方も決まるハッピーエンド。

 ロケ地、顔役の政五郎らに殺された人足の死体が上がる大川、広沢池か罧原堤か。荷車の後押しで子らが三太と出会う橋、中ノ島橋。子らの事情を聞く三太、松尾大社楼門続きの塀のくぐり戸。出稼ぎ人たちが集まる飯場へ赴く平次、桂川松尾橋下手右岸堤。飯炊き女に聞き込みをする飯場は河原にあしらい。政五郎らが人夫に非道をはたらく等々力の工事現場、不明(雪の山道)
*鮫州の政五郎は山岡徹也、出稼ぎ人夫の一人の森章二がなかなか・悪役もいいけど土臭い好人物も巧い。


第412話「お父っあんの十手」1974.3.27  40

 老目明しのグレた息子は瀕死の重傷を負った父に目もくれず、好きな娘を取り返す算段に走る。手立てに使った父の十手、それは強欲で非道な実父を捕るものとなる。

 ロケ地、父の十手を継ぎ仇をとれと迫る万七から逃げた伊之吉が、おさよが女郎に売られると聞かされる水場、松尾大社亀の水場(水路、楼門映り込み)。おさよ奪還をしくじり、勝五郎らに父の書付を盗ってくるよう命じられた伊之吉を懇々と諭す平次、中ノ島橋下手右岸河川敷
*伊之吉に水谷豊、拗ねた青年を好演。この二年後に「青春の殺人者」。養父も実父も失うが、好いた娘は戻ってきて父の十手は許されて彼の手に。老目明しは加藤嘉、島帰りの勝五郎は外山高士。博打の借金でおさよを売るハメに陥る親父に北見唯一、勝五郎の仲間に藤尾純や上野山功一。*勝五郎が執着したのは伊之吉に遺された祖父母の財、岡っ引になった伊之吉はこれを返上。


第413話「女心に背を向けて」1974.4.3  40

 一度潰れた店を立て直した女傑は先代に恩ある元女中、遺言に従い頼りない惣領の妻となり店を切り盛りするが、諦めた恋が厄介事を伴って立ち現れる。店のため恋しい男を訴人し、ために亭主には冷酷な女と呼ばれてしまう女将、負わされた重荷は彼女を押し潰してしまう。

 ロケ地、三人組の追い剥ぎが出る夜道、大覚寺五社明神。悲鳴を聞く夜回りの平次は有栖川畔。井筒屋女将の回想、金策に出る次男・源二郎に守袋を渡す水天宮、赤山禅院本殿玉垣脇。源二郎に呼び出される兄(井筒屋主)相国寺弁天社前〜鐘楼裏手。弟に通行手形を渡しに水天宮へ赴く井筒屋、赤山禅院参道石段本殿(女将が本殿裏手から現れ自訴を勧める)。女将に場所を聞き出動してくる平次だが、見当たらずまさかと戸惑う「水天宮裏」、赤山禅院弁天社前。
*女将は三浦布美子、自訴するよう勧めに現れた時点で唇が蒼白。源二郎は伊吹吾郎、金策ままならず失踪後盗っ人の一味に。仲間は城北幸夫と千葉敏郎。


第414話「万七純情」1974.4.10  37

 偽小判を追っていた同心が変死、彼を持ち上げておいてこき下ろした怪しい与力は、未亡人に甘言を用い甲府行きを勧める。ご新造は万七を頼り、もちろん親分は舞い上がり母子とともに甲州街道をゆく。仕組まれた旅には危険がいっぱい、頼りない万七をサポートの平次、与力が甲府勤番支配に宛てた悪企みの文をゲット。

 ロケ地、加治木同心の墓、永観堂か。甲州路、切り通しの山道・野道・小屋のある谷地田・田畔等ほぼ不明(亀岡か)。平次の尺八がかぶる夕景の水辺は広沢池東岸か。甲府勤番支配・高坂邸、相国寺大光明寺
*加治木は不破潤、未亡人は磯村みどり。悪い与力は高原駿雄で悪徳札差は内田朝雄。*悪党のスケールはけっこう大きく、大量に作った偽金を御金蔵の金とそっくり入れ替える魂胆。*万七親分もちろん未亡人に岡惚れ、旅籠の風呂でピンク妄想全開。元より娘に頼りないとか言われていて、危機に平次でますます株を下げるのが大笑い。


第415話「女すりの子守唄」1974.4.17  37

 腕利きの掏摸・稲妻のお加代は、町で拾った捨て子に我が身を重ねて甚く思い入れ。ろくでもない来し方、ひとつくらい善い事をと赤子の父が殺された汚職隠蔽事件に関わってゆくが、慕っていた長屋のご浪人さんを失う結果となる。

 ロケ地、町でお加代を見かけた八が怪しみ追ってゆく道、金戒光明寺参道石段脇林間長安院下坂鐘楼下石段(ここでお加代が赤子を拾う)。竹原代官所手代が殺されて見つかる市中、金戒光明寺極楽橋たもと。元竹原代官所元締で現勘定奉行所吟味役の霜野と行き会い肚を探り合う平次、金戒光明寺永運院下坂。霜野が丹波浪人に指示を出す料亭、嵐山公園中州料亭・。丹波浪人の墓、黒谷墓地
*お加代に「和歌山ブルース」の古都清乃、赤子をあやす段で「根来の子守唄」を披露。丹波浪人は小林勝彦、平次の指弾に改心し霜野を討ちにゆくが、腕はさっぱりの言葉通り返り討ちに。霜野は北原義郎。


第416話「死神を子が招く」1974.4.24  37

 大店の主が不審死を遂げ、喪も明けぬうち若旦那は番頭に多額の金を求める。跡取りはとんだ放蕩者というおきまりの話だが、借金の中身に捻りがあり、妹をめぐる人情話も絡んでくる。

 ロケ地、暮夜女といちゃついていた髪結いが「泳ぐ男」を目撃する不忍池端、御室霊場のお堂(池から猪之松が上がってきたあと伊勢崎屋の死体が浮く)。墓参帰りの伊勢崎屋の娘・お芙佐が、同じく墓に詣でてきた出入りの担ぎ呉服屋・綾吉と行き合わせる雨宿りのお堂、大覚寺護摩堂(設定は菩提寺境内)。お芙佐が兄の指示で赴く寮、中山邸(兄に吉原行きの説得を頼まれた綾吉が出迎える。つけていた平次が邸内に「侵入」する場面で境内の建物も映る)。事後、大旦那の墓に参る兄妹と綾吉、化野念仏寺(墓標は石仏群脇の新墓)
*お芙佐は松木聖、綾吉は剣持伴紀、若旦那は松橋登。若旦那に死一倍の証文を書かせた吉原の始末屋は福山象三、大旦那殺し実行犯の猪之松は福ちゃん(福本清二と誤記されている)、髪結いを消した雇われ浪人は出水憲司。*伊勢崎屋の検死を担当して水死とした万七親分、不審を言い立てる平次に「俺ァ銭形平次の居ねぇ国へ行きてぇよ」が爆笑もの。始末屋をハメるお芝居の捜査状況べらべらリークがまた傑作で、ほんっとに遠辰はカワイイ。万七に肩叩かれてる実行犯の福ちゃんも可愛い。*放蕩者の若旦那が追い詰められての葛藤、血の繋がらぬ妹に「恩返して貰ってもイイよね」のあたり寒気するなと思っていると、律義者のはずの綾吉の過去が出てきてうひゃあなのも妙味←若旦那は五百両だけど綾吉のは二千両で桁違い…大丈夫かそいつでお絹さん。*若旦那の苦悩シーンに出てくるガラス板真下からのアオリ、この頃流行ったのか←1973年の助け人走る第5話「御生命大切」博打のシーン。


第417話「無頼の兄」1974.5.1  40

 妹の幸せを思うあまり刃傷沙汰を起こす兄、猛る心は赤子を宿し祝福を受ける妹夫婦を見て急速に解けてゆく。寄場送り、入牢、火事での切り放し→涙の出頭と、おきまりの場面が続く。

 ロケ地、牢内での政吉の回想・雨宿りする幼い角兵衛獅子の兄妹、大覚寺五社明神舞殿。妹の相手の絵師を捜し歩く平次をつける政吉、捜しあぐねて一息つくところで彼に気付く平次は大覚寺天神島朱橋たもと。妹の妊娠を知った政吉が平次の説諭を受ける水辺、大覚寺放生池堤。政吉が出頭する囚人集合場所の安養寺、大覚寺大門
*政吉は志垣太郎、むちゃくちゃ短気で刃物振り回しまくり、口を割らせるのに女の首絞めたりとにかく乱暴で、金を作る手立ては賭場荒し、お白州では妹の「男」を激しく呪詛し喚き散らす…こういうのががらっと変わって情話になる作りが面白い。兄に似て、妹もちょっとエキセントリック。


第418話「扇屋おわか」1974.5.8  41

 悪党の使嗾を受けた兄が恋しい人を殺すと知った妹は、捨て身で防ごうとする。庭に潜んでいた兄は自分が誰を刺したか知り、妹の語る父の思いを聞き嗚咽するのだった。

 ロケ地、売扇堂の番頭が殺されて見つかる川端、中ノ島橋下手右岸河川敷(以降、再調査や聞き込みで橋上や橋たもとも何度も出る)。売扇堂の主・与一郎が万七に捕縛されたあと平次に縋るおわか、話すお堂(?)、不明(石積基壇、窓は格子)
*養女なためよけい兄と恋人の狭間で苦しむおわかに十朱幸代、与一郎は前田吟。悪たれ兄貴は藤木敬士、「与一郎」の布団を刺すがやり損なうお決まり。ライバル店主は中井啓輔。*万七ギャグ、牢での与一郎とおわかのやりとりを聞き「人情家の俺には辛ぇわ」。


第419話「寄場帰りの詩」1974.5.15  38

 善悪ないまぜの人物を描き、それに絡む群像を情感たっぷりに見せる話。侍のごり押しにも屈せず身内を庇う侠気を持った、寄場帰りの入墨者を親身に世話する口入屋は平次をも感心させるが、彼には已む無き経緯で仕出かした「過去」があった。

 ロケ地、ならず者の平十と弥市がやって来る道、赤山禅院参道(山門内側映り込み)。池辺に佇むお澄を見つけ殺そうとするのは参道左手の疎林と池(朽ちかけた小屋あり)。平次が踏み込む賭場、伏見の酒蔵(イメージカット、大倉浜か松本酒造か特定できず←窓の形が?)。山谷墓地裏にある平十らのヤサで彼らが殺されているのを発見し、そこから逃げた男を追う平次、赤山禅院御滝堂脇石段〜本殿前(喜久三が隠れているのは延命地蔵)
*山崎屋は岡田英次、この人だからあとで悪人面出てくると思ってるとその通り。しかし単なる悪党ではない深さがこのお話のメインテーマで、ラストの平次の述懐につながる。彼に証文を捲いて貰った元飯盛女・お澄は加茂さくら、命を投げ出して恩を返そうとするいじらしさが哀れ。喜久三は二瓶秀雄、山崎屋に恩義を感じ罪を着ようとする。*万七主従、情報提供で平次から飯タカり。*山崎屋は日本橋穀町にあり、お澄はそこからの帰り殺し屋に襲われる設定。*山崎屋が身の上を語るくだりで出る「逃散」のターム、「とうさん」と発音されていたのに引っ掛かったが広辞苑では可の模様、お芝居等ではそう訓む事例もあるのかも。


第420話「浪花男の江戸の夢」1974.5.22  41

 上方者の屋台の親爺が、贔屓にしてくれたご浪人とその娘のため命を張ろうとする情話。事件は浪人が切腹を装い殺されたうえ、長屋立ち退きの金を着服したことにされるもので、新橋架橋による繁栄を当て込んだ悪党が暗躍。

 ロケ地、塩見浪人の墓、不明。その娘が長屋衆に責められ思い詰めて入水未遂の橋、中ノ島橋
*けつねうどんの屋台を牽く親爺に芦屋雁之助、賞金首の大盗と似ていることからその金目当てに名乗り出る。小雁は黒幕の藩の中間。大盗を長年追っていた大坂の岡っ引は茶川一郎、瓦版売りに化けている。一味の芸者は三島ゆり子。


第421話「蛤河岸に雨あがる」1974.5.29  38

 恋しい男の罪を被り遠島となった女、赦されて帰るも男はお店の婿に納まっており、さらなる裏切りも知ることとなる。

 ロケ地、おしのが下総屋の番頭に迫られ突き飛ばしてしまう深川・仙台堀神社、木島神社本殿。下総屋を覗くおしのを絵馬堂へ引っ張ってゆく太一、松尾大社水路脇(山吹の茂み越しに楼門が映り込む)。太一とおしののいる旅籠へやって来た平次、表へ連れ出しおしのに事情を聞くのは常寂光寺境内(眼下に山門映り込み)。店の庭へ入り込んでいたおしのを外へ連れ出し「言い訳」のすえ東金の知人のもとへ隠れるよう指示する長次郎、松尾大社本殿脇摂社前。蛤河岸付近の木場で働く太一に経緯を聞く平次、「材木置場」。東金さして街道をゆくおしの、歩き疲れ休む木陰(千葉街道・市川手前)桂川松尾橋下手右岸堤。ならず者に殺されかかる河原は堤下か。
*おしのは江夏夕子、全てを知ったあと長次郎をきっと睨み唇を噛む顔が印象的。共に島から帰った太一に工藤堅太郎、己の思いは殺しあくまで長次郎と添わせてやろうとする大度が泣かせる。おしのに言い寄る番頭は牧冬吉、主にプレッシャーかけてたりと裏の顔も持ち、結局欲がらみで因果応報。長次郎は清川新吾、身勝手な優男を好演。*タイトルの蛤河岸は太一が傷心のおしのに晴れ着を与えた酒肆のある河岸、長次郎をきっぱり諦めたおしのが太一会いに来てラストを締める場所でもあり、二人を見届けた親分の帰り道に「雨あがる」。*万七珍しくお手柄、番頭殺しの真犯人を検挙・平次の邪魔はせず。


第422話「密告」1974.6.5  41

 グレた青年と健気に尽くす水茶屋女の情話、女の献身も心に届かぬ色悪が更生するきっかけは、あまりにも重く哀しい。

 ロケ地、ワル仲間の溜まり場へのこのこ現れた直五郎を捕まえ諄々と諭す平次、赤山禅院雲母不動堂前。直五郎に岡場所へ身を沈めてくれと懇願されたお佐代が佇む不忍池畔、大覚寺放生池堤
*直五郎は山下洵一郎、お佐代は八木孝子。市兵衛は島田正吾、長年放ったままだった息子に会いにやって来た「父」。正体はお手配中の大泥棒で、倅がお佐代にした仕打ちを贖うため彼女に訴人させ賞金を得さしめようとする←馬鹿息子は父と知らず欲をかいて己が訴人。*市兵衛の話を立ち聞いた平次は黙して去る「親心に俺の十手は向けられない」。


第423話「哀しき追跡」1974.6.12  39

 妹の薬代のため凶賊に身を投じてしまう傘張り浪人、事情も人となりも知ったうえで追う平次は、妹に事実を知らせぬようはからう。火盗のダンナとの機微も見もの。

 ロケ地、凶行現場にあった処方箋から割れた南条浪人、彼の周囲をあたってきた八が平次と落ち合う谷中法住寺門前の茶店は今宮神社東門内側塀際にあしらい(石橋映り込み)。凶賊が隠れ潜む法師岳の籠り堂、大覚寺五社明神舞殿に建具あしらい(南条浪人が外へ出て佇む池辺は大沢池畔)。一味を追って街道をゆく平次、谷山林道か平和台公園か(切り通し)。捕縛した南条浪人とともに八が連れて帰る綾乃を見遣る平次、八らが渡る橋は平和台公園鶯橋か(狭いが深い谷、平次の背後は松林)
*場所の設定補足/谷中の寺裏に南条の長屋/法師岳は赤城の奥の袈裟丸連峰か、代官領で用心棒稼業と鳴海が話しているのでほぼ関八州と推測される/八の「千住から先の一本道」発言からおそらく日光街道*南条は長谷川明男、妹の綾乃は市毛良枝。凶賊の浪人、リーダーは今井健二、あとの二人は五味竜太郎と玉生司郎。登場時嫌味なるもここ一番に駆けつけ加勢してくれる火盗のダンナは川合伸旺、正義感に燃えて悪を斬る役まわりなんていうのはマジ珍しい。*親分、立ち回り前にぱっと上衣を脱ぎ捨てるときりりと襷掛け、二丁十手で今井健二をビシバシ。*火盗のダンナが馬をやる物音を寝転がって聞く万七のたわごと「このところ平次も見ないな/野郎も脚気だろう」←脚気は万七のサボり名目。


第424話「苦い水」1974.6.19  39

 皆目正体の知れぬ賊の手がかりは子らの泥棒ごっこ、貧者に施しを撒く義賊はヒーロー。正体を隠し長屋に暮らす賊の首領は、気にかけた女が子供に悪影響と案じる姿を見て悩む。

 ロケ地、鬼面組がツナギをとるお堂、大覚寺護摩堂。泥棒ごっこを聞き込みにゆく平次、根岸の浄閑寺は赤山禅院、お志乃の寺子屋は地蔵堂で、子らが遊ぶ情景や寺子屋周りに拝殿や御滝堂脇石段、雲母不動堂や延命地蔵など映り込む。龍三の墓、不明(丘の上の崖地?)
*鬼面組の首領・龍三は南原宏治、奥行きの深い人物像を見事に演じる。隣人で未亡人の武家女は早瀬久美。*子らに与えた悪影響は、瀕死の龍三の望みで惨めな姿を見せつけ呪縛を解く次第で親分のお説教つき。タイトルは父を無実の罪で獄門にされた龍三が舐めてきた辛苦。


第425話「女ごころの裏表」1974.6.26  41

 内儀を蔑ろにして好き放題、公然と女を囲う富商が殺される。囲いものの偽証で内儀が一旦引っ張られるがすぐに釈放、万七などは「喪服の貞淑な妻」萌えで舞い上がるが、お静の分析通り、内に激しい憎悪を滾らせた夜叉がいた。

 ロケ地、お駒の身請け金を強奪したやくざ者が匿われていた両替商・大隅屋寮、中山邸門。お駒の同僚に聞き込みの際出てくる岡場所の塵芥まみれのどぶも印象的(セット)
*岡場所から落籍されたお駒は行友勝江、ふてぶてしく逞しい悪所の女を好演。染め上がってきた自分の名の店の幟をぎゅっと抱きしめるさまが哀切。大隅屋内儀は三好美智子、亭主と別れるようお駒に迫る顔が無表情に近いので余計怖い。最初に刃傷沙汰起こしかける派手な芸者はかっとなっただけで拍子抜け。平次の聞き込みに答えるお駒の同僚もいい味。大隅屋は永野達雄、実は内儀の使嗾を受けていたチンピラは滝譲二と井上茂。


銭形平次 表紙


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