銭形平次
 469〜485話

永観堂墓地と鐘楼キャスト
銭形平次/大川橋蔵
お静/香山美子 八五郎/林家珍平
おちよ/林寛子 健太/吉田次昭
お勝/武田禎子 為吉/神戸瓢介
万七/遠藤太津朗 清吉/池信一
樋口一平/永田光男


第469話「謎の脅迫状」1975.5.7  45

 放火が続く緊張の日々に届く一通の文、平次の十手を取り上げ不名誉に形で追放せよ・さなくば放火続行と脅す文面、笹野さまは市民のためとこれを呑む。平次を悪者に仕立て上げ十手を取り上げる役を振られたのが他ならぬ樋口であることと、彼の目が潤んでいることを平次は見逃さない。

 ロケ地、平次が十手召し上げと書き立てた瓦版を全部買い川に叩き込む万七、中ノ島橋上手中州岸(欄干越し)。熊五郎の仕事場へ雇われに行く平次、「材木置場」(材木のうしろに蔵)。平次を襲う火盗同心たち(イカ頭巾)下鴨神社泉川畔。
*火盗改筆頭与力に林与一、キャスティングと役職であらかじめ筋が判ってしまうハマリ役。腹心の同心には牧冬吉。島送りになったことで深く平次を恨み利用されてしまう熊五郎は金井大。今回から加わるひょうたんの看板娘はおちよ(劇中でEDテーマを歌う)、魚屋の兄は健太。おせんちゃん退場に関してはエピソードなし。久々登場の与力の笹野さまは黒川弥太郎。「脅迫状」を笹野さまに届けにくる同心に福ちゃん、証拠を掴み奉行所へ押しかけた平次を留める場面でも登場、台詞はけっこうあるが立ち回りはナシ。*平次の苦境に周囲も涙ものの配慮を見せるが、晴れて宴の段で不在のお静が久々の昼風呂と称し熊五郎の位牌に香華を手向けに行っているのが泣かせる。


第470話「甲州地獄坂」1975.5.14  45

 甲州の岡っ引からの情報で大盗を捕える平次だが、その岡っ引が一味にさらわれたと聞き甲州へ。そこには、思いもよらぬ陰謀が渦巻いているのだった。

 ロケ地、甲府山中の情景はダイナミックな侵食地形からほぼ白水峡と思われるが、全部そこかというと街道筋や峠など疑問点あり。桑原のダンナの捕物を「助けてしまう」のは酵素か。紋次宅、民家門。桑原宅、不明。
*岡っ引の紋次は睦五郎でやっぱり悪党。天晴れな賞金首の儀十は山形勲で渋すぎ。実は儀十の弟だった、密告で捕まった疾風組首領は千葉敏郎。*崩壊地形を活かした大立ち回りが圧巻、それにしても親分強すぎ。


第471話「一人だけの約束」1975.5.21  42

 捕り方に追われた賊が逃げ込んだ先は、元の女の家。過去を隠し今の男を待つ女に、親分は一日の猶予を与えてやる。

 ロケ地、所払いになった男が帰ってくるのを待つお葉、下鴨神社参道
*お葉は葉山葉子。賊は首領が山岡徹也、浪人が有川正治、手下は井上茂に浜田雄史、お葉を騙し引き込みをさせた忠治は綾川香・頓死の経緯が痛すぎ。*ラス立ち、浪人ともつれてアタマから障子破り・直前に切り替わりがあるのでスタントか。


第472話「母の裁き」1975.5.28  42 

 癇性な見習い同心は平次の言を容れずフライング、無実の逃亡者を追い詰めてしまう。芯に二組の母子の結びつきを据えた情話。

 ロケ地、目撃者の女中を聞き込んだ帰りの平次らが通る並木、不明(樹冠しか映らず)。文太が青柳の母堂を人質にとり「立て籠もる」船、広沢池東岸(設定は浜町河岸、漁具あしらい)
*見習い同心・青柳は南城竜也、母堂は北城真記子(鉄漿)。文太は工藤堅太郎、母は野村昭子。証文目当てに利兵ヱを殺ったヤクザは天王寺虎之助。*ねっちり嫌味な青柳の表現にアオリを多用。立ち回りでは親分の畳返しも。


第473話「風が恐怖を呼ぶ」1975.6.4  45

 大風の吹く日に盗癖が出る娘、これをネタに強請りが出現。経過とともに、癖の元となった恐怖の記憶は鮮明になってゆく。

 ロケ地、沢木同心が万引をネタにおよねを強請りにかかる町角、下鴨神社河合社脇。「孤児」だったおよねが育てられた下谷正燈寺、赤山禅院境内(父から逃げた幼いおよねが和尚に保護されるのは羅漢像付近)
*正燈寺と字をあてたが、下谷にあるこの寺の訓は「しょうとうじ」。親分は「せいとうじ」と発音。*およねは森川千恵子、父の三島屋茂平は水島道太郎。和尚は天草四郎でおよねの恋人は剣持伴紀、強請りグループ首領の八丁堀は波田久夫。


第474話「おみくじは凶と出た」1975.6.11  42

 「鬼瓦みたいな顔で毒づく」万七親分が施した情、その恩に報いようとする富商の心尽くしが悪心を呼び覚ます。

 ロケ地、万七がお御籤を引く神社、今宮神社本殿。欲ボケ話をしながら御籤を結ぶのは稲荷社裏手。万七が呼び出され銃撃されかかる誓願寺、永観堂墓地。よくも命を狙ったと京太郎をシメる万七、今宮神社石橋
*万七に千両の遺産を残そうとした材木商は岩田直二、遊び人の倅・京太郎は柴田p彦、主の遠縁で何くれとなく本店の世話を見る「忠義面」の分家は中田博久。*御籤の示す「凶」は万七宅の小火、これを幼き京太郎が因の大火とイメージをリンクさせた脚本がなかなか。情に脆かったり潔かったりする万七、お金欲しかった俗っぽさも見せてやっぱりいつもの万七親分なのもイイ。


第475話「十手を持った狼」1975.6.18  42

 外道目明しのせいで将来を閉ざされた男女の哀話。男を見限りその外道に靡くかに見えた女だが、平次の慧眼は真情を見抜いていた。

 ロケ地、逃走した源次郎らが潜む葦原、不明。源次郎がお秋を呼び出す厩河岸、宇治公園左岸(お秋に「刺された」源次郎は瀞へドボン)。久六と千住へ赴くお秋、走田神社社務所前〜参道(お秋が足を止め、源次郎が出てくるのは稲荷社前)。平次が二人を連行してゆく道、境外社叢脇。
*源次郎は亀石征一郎(クレジットには源太郎)、お秋は赤座美代子、外道目明しは沢村宗之助。*無宿人狩りを嫌う平次が仮病でサボタージュ、樋口さまも黙認のエピソードあり。


第476話「殺しの罠」1975.6.25  42

 義母を誤解しグレる若旦那、悪党の仕込みで親殺しの罪を着せられかかるが、平次の粘り強い捜査と説得で命拾い。尻尾を出さぬ悪党には芝居をかけて力押し。

 ロケ地、伊勢屋の後妻・お澄が襲われる道、仁和寺鐘楼前〜水掛不動参道。一味の中間が伊勢屋番頭にツナギをとる神社、不明(朱鳥居二基と祠)。真実に迫りかけた平次が襲われる夜道、上賀茂神社ならの小川畔。
*お澄は長谷川待子、若旦那は平井昌一、番頭は服部哲治でグルの中間は汐路章。*若旦那を捕縛の万七は平次の動きに怒るが、お芝居の牢送りはちゃんと勤める。八の無理矢理聞き込みやお薦さん変装も笑える。


第477話「死人の復讐」1975.7.2  42

 慶事を前にした男たちが次々と惨殺される。繋がりが判らず容疑者も上がらず難渋、出てきたのは遠い日の怨恨・人の心の恐ろしさだった。

 ロケ地、徹夜明けの万七らがボヤきながらゆく道、下鴨神社河合社前(三井社玉垣越し)。呉服屋の番頭の死体が見つかるのは泉川(沈)、万七が騒ぎを聞きつけるのは紅葉橋上。
*旅籠の主におさまっていた「土竜の辰」は戸浦六宏、松前屋隠居は潮万太郎。松前屋一行が島送りの辰に唾を吐きかけ悪罵を浴びせた回想シーン、傍らにいる町衆の一人に福ちゃん。


第478話「影の女」1975.7.9  45

 阿漕な金貸しが殺され、彼の子を孕んだという妾たちも次々と殺され、女の恨みを示す遺留品や投げ文が出る。いかにもの小道具には騙されぬ親分も決め手を欠き苦悩するが、思わぬところでヒントを得て密室殺人の謎を解く。

 ロケ地、夜回りの平次らが身投げ女を見つけて止める川、中ノ島橋とたもとの岸(橋上手中州・堰堤脇)。釣りをしている情夫に岩戸屋からたんまり金を頂く話をする亀造の妾・まさ江、嵐山公園派流岸辺(右岸)。亀造の妾・とみが渡世人に斬られる道、嵐山公園派流端林。岩戸屋の若旦那が渡世人に襲われる菩提寺、永観堂墓地。花屋をしている亀造の妾・ひなを襲った渡世人が平次に追われて船で逃げる川端、広沢池東岸(漁具・船着きあしらい)。奉行所帰りの平次が、子が手繰り寄せる凧を見てヒントを得る道端、下鴨神社河合社(健太が桶放り出して子を構っている場面)
*若旦那は大丸二郎、近所で弓を教えている浪人は高木二郎、入墨者の番頭は鮎川浩。*殺られても仕方ないかもの岩戸屋の所行、四人もの蓄妾に加え身投げの御新造は借金のカタに手篭めというのも鬼畜。ぞろぞろいる女たちの性格も活写されるほか、妾羨望を口にしてお静の柳眉を逆立たせる八の挿話をラストで受けるオチもある。


第479話「ある愛の終り」1975.7.16  42

 島帰りの凶賊にたばかられ、平次を狙う女。一途な愛は女を盲目にする。

 ロケ地、お直に嘘を仕込んだことを手下に話す利助、桂川大堰下手中州岸。時次郎に売られた女をお直に見せた雨の帰り道、上賀茂神社校倉脇。時次郎がろくでもない悪党だったという事実を否定するお直の回想、時次郎とデートした祭礼の夜、大覚寺天神島朱橋〜祠。お直を呼び出した利助が「平次の質問」についてしつこく聞く町角、仁和寺九所明神。八の尾行を太鼓で知らせる手下、仁和寺水掛不動。利助を恐れつつ持ち出された時次郎の遺髪欲しさに手下の船に乗ってしまうお直、嵐峡か(湛水域、設定大川端)
*利助は蜷川幸雄、平次に検挙され島送りになったことを深く恨む。飴売りに化けている手下は江幡高志。お直は武原英子。*利助に刺され落命したお直の亡骸に、時次郎はいい男だったよと餞の言葉をかける親分が哀切。


第480話「三十六番目の若様」1975.7.23  46

 半ば厄介者の将軍家の若君、小藩へ養子にやられるのが不満でと見えた出奔には彼なりの理由。気の毒がって世話をした清吉と八の親身に人の情けを知った捨丸ぎみは、己の命を狙った「家来」を庇い立派な殿様ぶりを見せる。

 ロケ地、お城、よくできた書割か(姫路城モデルは確実)。高取藩江戸屋敷、相国寺林光院。捨丸ぎみの母の墓、永観堂墓地。捨丸ぎみの駕籠を八と清吉が担いで渡るのは上賀茂神社神事橋、高取藩士の襲撃はならの小川畔。
*捨丸ぎみは松山省二、じいの珊太夫は今福正雄(樋口さまの本家筋)。高取藩不満分子のリーダーは川辺久造。町場に屯ってお邪魔の藩士たちを退かせるくだりの普請場の大工、平次が藩士を見て古着屋に隠れる段で通り過ぎる風鈴売り、の福ちゃん二態。*暴れん坊将軍第1シリーズ「百万石の冷飯くらい」は同じ迫間健脚本で、設定を少し変えた同じお話。若様は松平健の二役。


第481話「幸せの行方」1975.7.30  42

 田舎から江戸へ出てきた同期の若者たちは、折に触れ集まり歓談し助け合うことを誓うが、一人減り二人減りする状況。そんななか、紅一点のおるいの姉が賊の手引きをする事件が持ち上がり、紐帯は完全に切れかかり娘を慕う青年が大事を仕出かすが、何分にもこうした若者たちを見過ごしにする親分ではない。

 ロケ地、おるいの姉がはじめ勤めていた材木商を聞き込みの親分、「材木置場」。捕まった姉と番所で再会したあとおるいが佇む水辺、大覚寺大沢池畔。卯七に身を売っても姉が仕出かした盗難の金を工面すると言うおるい、大覚寺有栖川畔・五社明神脇。卯七がおるいを見返った勝次のお店の娘を誘拐し監禁する船小屋、罧原堤下河原か。
*おるいは関根世津子、卯七は穂積ペペ。若者たちが集う甘酒屋の親爺は吉田義夫。


第482話「手裏剣を打つ女」1975.8.6  42

 不実な男を愛し遠島の罪に服した女、しかし子までなした縁は保身をはかる男にとって煩わしいだけのつながり。幸薄い女は恩ある人のためにした事で再び人殺しの疑いをかけられてしまうが、意外な線から真犯人が浮上、女は出直し旅に江戸を発つ。

 ロケ地、金貸し殺しの容疑が晴れ釈放されたお袖がもといた一座にやって来る段、小屋掛けをしている林は仁和寺境内林。罪に服した小春太夫に代わって座頭となり江戸を発つお袖、仁和寺五重塔前〜御室桜林。見送った平次が去る道は参道
*お袖は八木孝子、いい仲の華道師匠が女絡みで殺されかかるのを見て思わず投げた簪が心臓を貫いてしまう設定。太夫は加藤和恵、容色の衰えで落ちる深間に愛憎ないまぜの哀れな役まわり。「闇の顔役」の金貸しは富田仲次郎、手下に平沢彰。お袖の子を引き取り育ててくれた牢番は北村英三。*お袖を見返った不実な男に平次の怒り爆発、打擲してシメる。止めに入った万七が突き飛ばされるのは笑うところか。


第483話「親父はつらいよ」1975.8.13  42

 どじな亭主は富籤に当った事実を隠蔽、誰にも内緒の夢の暮らしを続けていたが、賞金の五十両は贋金、勧進元に捩じ込み死ぬ目をみる。大怪我と聞き駆けつけた女房はおんおん泣いて縋り、亭主は面目を施すかと思いきやそうはいかない笑い話。

 ロケ地、贋金造りに加担した元金座職人がタレコミを約したお堂、大覚寺護摩堂(平次らが張りこんでいると天神島朱橋を渡って職人、しかし脇から浪人が出てバッサリ)。浪人を追う平次、大覚寺大沢池木戸(ここで浪人の足に銭)〜見失う建応寺(富突興行の寺)赤山禅院参道石段、和尚に話を聞くのは雲母不動堂前。贋金のことを談じに行く留助も同所、富突き興行は雲母不動堂で。
*甲斐性なしと侮られる留助は山城新伍、夢は庭付きの家で金魚を飼うこと。勤め先や家で大量の卵を損じる手つきが傑作。女房は有崎由見子。贋金を作らせ賞金にしていた生臭坊主は多々良純、用心棒は笹木俊志。*お静も富籤を買い親分に呆れられ。お勝さんのは見事当るが、受け渡しのそのとき銭が飛んでくる絶妙のタイミングで、幸運を逃し呆けた顔が大笑い。


第484話「消えた流人船」1975.8.20  46

 流人船の針路を曲げる悪党ども、樋口さまの要請で当地へ赴く平次たち。そこでは、哀れな囚人のみならず現地の民も泣かされていた。

 ロケ地、海崖や砂浜、岩場、日本海と思われるが不明。
*黒幕の与力は田口計、当地のヤクザの親分は福山象三、囚人の一人で一味に加担する極悪浪人は原口剛。平次と「喧嘩」して意気投合・手を貸してくれる荒くれ漁師は有川正治、浦賀奉行所の嫌味言うけどすることはしてくれる与力は西山嘉孝、兄が船に乗っていた見習同心は酒井修、流人船を目撃し崖から落とされた老爺の孫は服部妙子。


第485話「お京の身代金」1975.8.27  46

 大店の令嬢誘拐事件は、欲をかいた万七のために八はとっ捕まるわ責任を感じた女中が身投げするわのマズい展開。しかしそんなことは問題にもならぬ、悲惨な事実が明らかとなる。

 ロケ地、灘屋の娘・お京がさらわれる町角、仁和寺観音堂脇〜御室桜林脇西塀際(野辺送りの早桶に押し込んで拉致)。灘屋が身代金を持ってゆくお玉稲荷、石座神社(万七が玉垣下に潜み、灘屋が金箱を置くのは舞殿、一味がお京を連れて降りてくるのは本殿前石段)。お嬢様が戻らず絶望した女中がふらふらとゆく夜の水辺、中ノ島橋下手右岸河川敷(死体検分もここ、ラストシーンで「現場」に立ち死者に詫びる引かれ者のお京は中ノ島橋上)。一味が巣食う寺、神光院(中興堂がメインイメージ、回廊や「監禁」の蔵のほか、宝筐印塔なども効果的に使われる)。再度の身代金受け渡しに指定の大川端・弥助桜下は広沢池東岸、船で逃げる一味を葦原に船を潜ませていた親分が追う。捕り方に合図の、平次が寺の裏で粗朶に火をつけた煙は葦原越しに見える趣向。
*一味の首領は武藤英司、配下の怖いおじさんは汐路章。*潜入親分はアイパッチにムシリ頭、腕っ節を見込まれ雇われ。監禁中のお京や八とツナギをとったことが悪党の正体暴露につながる運び。


銭形平次 表紙


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