銭形平次
  53〜99話  1967〜1968年

御香宮 キャスト
 銭形平次/大川橋蔵
 お静/八千草薫 八五郎/林家珍平
 お民/園佳也子 為吉/神戸瓢介 お弓/鈴村由美
 万七/遠藤辰雄 清吉/池信一
 笹野新三郎/黒川弥太郎

 
左写真は頻出ロケ地「御香宮」本殿裏手


第53話 「盗まれた爆薬」 1967.5.3 5

 御先手組から奪った爆薬での土蔵破りが続くが、一味の真の狙いはもっと大きく、佐渡金山の水替え人足の恨みという要素まで加わっていた。

 ロケ地、佐渡から御用金を運ぶ一行が通る甲州街道(代田付近)湖南アルプス(詳細な特定はできず)。橋の爆破なんかもあり、狭い山道で大立ち回り。
*キャスト変更で三輪の親分は「遠藤辰雄」に。「判った!犯人は…」がさっそく出るが、まだ傑作な的外れ定型のアレにはなっていない。


第54話 「おんな牢」 1967.5.10 23

 恩ある養父の冤罪を雪ごうとする娘に合力の親分、処分済みの事件で再吟味が難しいなか、たった一つの手掛かりをもとに真実を解いてゆく。娘をハメた悪党の中に生き別れの姉という図にも情を寄せる平次、でもやってることは三輪の尻拭いだったり。

 ロケ地、獄死したおみねの養父の墓、くろ谷か。実は姉だった悪党一味のお蓮の遠島をおみねに見送らせる浜辺、木津川下流部(堤の高さと流水・植生から判断。)
*お蓮のワル仲間の浪人に北原義郎、立ち回りの切っ先が鋭い。同じくグルのチンピラには江幡高志、小ずるい態度が満点。


第55話 「鬼女の琴」 1967.5.17 2438

 町人大名と称される分限者・島之内家で起きる騒動、もちろん財産がらみ。行く先を悲観した病弱な当主の失踪からはじまり謎めいた展開となるが、親分の目は怪しい奴を見抜いていた。

 ロケ地、当主の足取りを寺の住職に聞く平次、上賀茂神社校倉脇。一族集まって今後を協議の席から帰る「叔父」が文を渡される、勅使殿(平次が浪人に斬りかかられるのも同所)。叔父が呼び出され殺される別邸、不明(竹垣の料亭ふう門)。当主の死体が見つかる潮見橋たもと、上賀茂神社ならの小川(橋は簡素な木橋)。平次を襲う黒頭巾以下の浪人たち、糺の森か。
*珍しくワル一堂に会し上得意の座敷に乱入という図のラス立ち、親分は当主の能衣装で現れ、戦う得物は撞木を持ったまま十手と合わせ二丁で。*お静発言、平次は用向きの事は家で話さない…いっつも核心部分まで全部喋ってる気がするんだけど…。


第56話 「母娘流し」 1967.5.24 5

 越後の杜氏たちが初夏になっても帰らず、案じた妻子が江戸へ出て八五郎に保護される。根強い捜査に加え、きまって現場に影のある不審な同心を親分は見逃さなかった。

 ロケ地、蔵前の造り酒屋を訪ねるも門前払いされた母子がとぼとぼゆく道、松本酒造前東高瀬川堤。ここは後段も何度も使われ、旧高瀬川側の堤法面も効果的に使われチャンバラも行われる。旧高瀬川には板は渡されていない。杜氏の一人が縊死体(偽装)で見つかる湯島天神裏、上賀茂神社渉渓園(背景に北神饌所の屋根)。杜氏と同じ様態で見つかる飾り職人の死体、「身投げ」の蔵前の川っぷちは渡月橋下か。堀田同心を決定的に怪しんだ平次が尾行する堀端、宇治川派流沿い・大倉記念館付近。贋金つくりのアジトの空き屋敷、不明(塀越しに方形のお堂、寺か)
*堀田同心に川合伸旺、全然スリムで激しい立ち回りもある。よりによってお町のダンナがやらかす悪事に親分の怒り炸裂、川合氏額に銭を受けてたらーり流血。*蕎麦代を払いあぐねている母子を助ける八が泣かせる。


第57話 「盗賊の娘」 1967.5.31 2438

 大泥棒・ましらの島次の娘は、足を洗った兄貴分の弥市爺さんに育てられ成長し祝言間近。しかし島次が弥市に託した嫁入り資金が仇となり、駿河屋を襲った賊は弥市とされてしまう。親分は僅かな手掛かりを見逃さず、当の「被害者」の裏を暴き出す。

 ロケ地、駿河屋の裏口を調べる平次、木戸を開けて出た水辺は大覚寺大沢池(裏塀をあしらい)。駿河屋の番頭が怪しい六部とツナギをとるお宮さん、御香宮本殿裏手、東照宮脇。古い調書を調べて奉行所を出てくる平次、大覚寺明智門。八がやってきて落ち合うのは参道石橋上。捕り方も出張るラス立ち、不明(蔵のような建物)
*嫁入り間近の娘に土田早苗、同年の「風」のかがりとは全く違う、か弱い町娘。島次は徳大寺伸、弥市は岩田直二、抜け荷の悪徳商人・駿河屋は市川男女之助。


第58話 「あじさいの花」 1967.6.7 24

 大筋は父が奪われた軸を取り戻そうとする姉妹の話、これに自分試しで市井に暮らす旗本の若様がからみ、結局は離れゆく男女の機微を描く。悪党は、近江八景コレクションを力ずくで蒐集し幕閣に献じて甘い汁を吸おうとするステレオタイプで、ならず者やセンセイ方をいっぱい飼っており立ち回りが派手。

 ロケ地、奉行所から出てくる平次を迎えに出る八、大覚寺明智門。姉妹の妹がならず者に拉致されてゆく清洲の森、鳥居本八幡宮(立ち回りは広場、平次たちが来かかるシーンに鳥居下、夜間撮影)
*そろそろ出てくる三輪のギャグ、直次郎の新内を都々逸と言ってみたり、ラス立ちでは清吉と八に十手ではたかれ目を回し、最後はワルに取り付いた二人の上にどっかと跨りゆらゆら揺れてみせる。*タイトルの紫陽花は雨に濡れる花を縁側から見る平次夫婦の述懐、色変わりを人生に譬えてしみじみ。


第59話 「王手飛車角」 1967.6.14 2438

 何人もの娘がさらわれ、唯一の目撃者も子を人質にとられ口を噤むなか、犯人の行動に僅かな揺らぎを見て取る親分。タイトルは悪者の首魁とやり取りする台詞、ラストに八と将棋を指す段でも使われる。

 ロケ地、安蔵親子が下水口からの女の悲鳴を聞く掘割、不明(石垣の堀、土手上に神社の外囲いみたいな透垣)。丁子屋の娘が姿を消した四谷稲荷、吉田神社竹中稲荷(茶店の婆さんに話を聞くのは本殿前、舞殿脇に店をあしらい。境内風景に参道の重ね鳥居も。自分のせいで容疑者を取り逃がしたと落ち込む為吉がお祈りは本殿、背後に三叉の石畳が見える)


第60話 「帰って来た男」 1967.6.21

 両替商に阿漕な取立てを食い傷害事件を起こした男、遠島になり赦免され帰るが、当の商人が殺され渦中に。わざとらしい証拠が島帰りの男に真っ黒けのなか、親分は関係者の人物をちゃんと見ているのだった。

 ロケ地、三宅島イメージの波濤、御赦免船の着く浜、不明。ほかはセットの模様。
*用心棒の浪人とやり合う親分、刃を避けてトンボ切る場面も。


第61話 「岡っ引き殺し」 1967.6.28 24

 仏と言われた目明しの殺害、三輪まで義憤にかられ奔走するなか平次が探り当てた真犯人は、いけしゃあしゃあと通夜に泣き葬儀に奔走していた善人面。ぱきっと怒った親分の凄絶な立ち回りが見もの。

 ロケ地、江戸川に上がる強請り屋の死体、桂川か(河原は礫、平次の背後に高い堤と並木が見える。松尾橋下手と思われるが見える部分少なすぎ)。強請り屋が仲間の浪人とツナギをとるつもりだった花園神社の杜、下鴨神社糺の森池跡(平次がやって来るシーンにはぼんぼりをあしらい)。町名主・藤造の江戸川べりの寮、中山邸(平次は塀にロープかけて侵入、捕り方は参道を北から殺到)
*ラス立ち、小柄を腕に受け投げ銭も失い額を裂かれ大苦戦の親分、危機に捕り方が駆けつけるが、逃げようとした首領格の浪人には十手をガツンとお見舞い。*町名主で浅吉親分の幼馴染の藤造に織本順吉。


第62話 「七夕の唄」 1967.7.5 5

 回船問屋の娘の誘拐は、権高で憎さげな富商への復讐劇。真実を知った親分の怒りは激しい。立ち回りは富商に雇われたセンセイがた相手、二丁十手が炸裂。

 ロケ地、脅迫状の指定場所・犬神の祠に張り込む三輪、大覚寺護摩堂。金を取りにやって来るチンピラの背後には石仏(囲い無し)。その場を逃げる怪しい願人坊主を追う平次たち、天神島への橋(色・形等確認できず)。坊主を見失った平次が物売り船の船頭・鶴松に話を聞く川端、瀬田橋竜宮・玉垣傍川端。出島屋を追い返された平次が帰り道、鶴松が襲われている場に出くわす神社、瀬田橋竜宮鳥居、境内。品川で殺された水主頭の墓を訪ねる平次、金戒光明寺本堂裏手(和尚に許可を得るシーン、蟇股から判断)と墓地。鶴松が三吉に七夕イベントを約束の河原、桂川か(粗い礫の河原、重機で均したような高水敷、堤に疎らな木)。鶴松の回想、始末される甚兵衛のイメージ、北嵯峨・陵前付近か。
*鶴松に里見浩太郎(郎の表記はママ)、チンピラ直次に宮土尚治(現・桜木健一)。


第63話 「化粧する女」 1967.7.12 5

 阿片の出所は薬草園、そこでは主亡き後残された娘をめぐって門下生の鞘当て、遂に片方が落命する惨劇が出来する。器用に立ち回る口のうまい男に菅貫、馬鹿殿も好きだけどこの手の悪党をやらせたら最高。タイトルは薬草園の娘の化粧、愛しい男の枕辺で果てるための死化粧という哀れな挿話。女性心理についてお静にレクチャーを受ける親分が可愛い。

 ロケ地、千手百草園、民家長屋門(平次の動きを見つめる男が身を潜めている民家?は現在見当たらない)。薬草の畑、不明。二人の弟子と平次がやり取りの神社?不明(今宮か御香さんか)
*およう/長谷川季子、打越/菅貫太郎、おしま/松村康世


第64話 「花婿の死」 1967.7.19 24

 富商の婿がね殺し、彼が通っていた水茶屋の女も死体で見つかる。それぞれの事件で怪しい奴には完璧なアリバイという難事件、しかし謎を見抜いた親分が打った芝居にワルはまんまと乗せられてしまう。

 ロケ地、縁日で易者に縁談を占ってもらう越後屋の娘、御香宮東照宮脇。三輪が捕縛した男の話をしながら検分に向かう平次と八、大覚寺大沢池堤。殺された婿がねを検めるのは池端。生臭坊主が住持する武州押上村の荒れ寺・善福寺、不明。寺から出てきた遊び人の伍市が消される林、下鴨神社河合社裏手。
*トリックは交換殺人、お話の半ばで謎はほぼ明確になる作りで、ウラをとってゆく経緯が丁寧に描かれる。*易者・竹林斉に北村英三。*押入れで死体見つけてそのまま気絶している為吉、ボロ乞食に化けて番頭誘き出しに一役買うお民、夫婦でコミカルに話の要所に噛んでくるのも面白い。


第65話 「秩父の姉妹」 1967.7.26 24

 金貸し殺しは若旦那に取り入った矢場女の仕業で、勘当で目論みがフイになるのが動機とされ女も自白するが、親分が回り灯籠に擬えた如く見えぬ部分に真実は隠れていた。身の証が立ち晴れて帰宅するも女の命数は尽きていたという、親分も袖を絞る哀話。

 ロケ地、若旦那が万七にお房の犯行が信じられないと掻きくどく奉行所前、大覚寺明智門。大旦那の離れを辞したお房が番頭に呼び止められる川端、不明(水量の多い瀞)
*胸を病みつつ働き、命を賭して若旦那を庇おうとする健気なお房に松山容子。*対抗意識むき出しの三輪に勝負を挑まれ珍しく引き下がらないと言う親分、真犯人取り押さえてフフンとばかりコミカルに得意ぶってみせたりする。でも将棋はお民にも負けてたりする。


第66話 「闇に笑う男」 1967.8.2 5

 平次に捕えられた賊の復讐譚、名声を地に墜とした上で捕縛された当の店を狙う執拗さ。親分への深い恨みを抱いて雌伏する男、彼が巻き込んでゆく人の運命を織り交ぜて進む話、最後は再会を果たせた恋人たちの笑顔で締める。

 ロケ地、元盗賊の闇の伊蔵が暮らす川端の乞食小屋、宇治川派流(導入は大倉記念館付近から)。明神さまでお百度を踏むお静、不明(上御霊か)。伊蔵の根岸寮への路地、不明(建仁寺か)。絶望して渦巻く川を見つめるお久美、不明(流芯に余水吐のような勢いの流れ)。蘭方医・北村洪庵邸、不明(塔頭の門か)
*伊蔵に見明凡太郎。


第67話 「捕縄の誓い」 1967.8.9 24

 執念の老目明し、凶賊を追って17年。しかし追捕の対象は娘の男、老人の手助けをする親分だが、後味は複雑なのであった。

 ロケ地、博打帰りの権兵衛に捕り縄をかける多吉、大沢池堤か(首に縄かかった権兵衛の背後は嵐山遠景か)。権兵衛の死体が見つかる汐留河岸、罧原堤か(高いめの堤と葦原)。多吉が隠れている船小屋、不明。二つの川辺は罧原堤付近と思われるが決め手なし。
*妻を亡くしたあと足を洗っていた元盗賊に牧冬吉、投縄の多吉は河野秋武。


第68話 「夫婦燈籠」 1967.8.16 24

 若狭屋に出る幽霊。怪異を全く信じない親分は、長屋のおばさんたちの申し立てにきっちり不審を抱きからくりを解き明かす。

 ロケ地、両国の化物屋敷(お光がもと娘手踊りをしていた一座が商売替)豊国廟・太閤坦に小屋をセット(鳥居、神門、鐘楼が映り込む)。精霊流しの大川、セットかロケか不明。
*若狭屋親子に手ひどい仕打ちを受けた女を庇う長屋衆に小屋主が泣かせる一話。嘘ばっかりつくおばさんたちの申し状を考察するシーンの黒バックが笑える。立ち回りも捕物もない話で、そのことを八がぶちぶち言うのもおかしい。お静姐さんの「新仏を送らずに済んでよかった」発言がよく聞くとブラックで、もっとおかしい。


第69話 「多喜之助は何処に」 1967.8.23 6

 女掏摸と関わってお武家の騒動に首を突っ込む羽目になる親分、探りを入れるのに侍のなりをしてお屋敷に入ったり。騒ぎのもとは、その旗本が将軍家大事の際にと託された五万両だった。

 ロケ地、平次夫婦がお参りの宮、御香宮本殿。北村英三の易者が店を出しているのは本殿東側。子らに財布を持たせて建部の手下を誘い出す林、下鴨神社糺の森。女掏摸が建部の小者に財布を返すのは河合社裏手。易者が一味の浪人を尾行して凄まれる鐘楼、智積院密厳堂鐘楼。建部邸と周辺の路地、平次が様子を窺う塀際は智積院総門内側の狭間脇(建部邸玄関の門等は不明)。建部の若様・多喜之助が監禁されている蔵、不明。五万両が埋めてある黒谷の池、大覚寺石仏(掘るのはここ、池に逃れる多喜之助や護摩堂をバックに立ち回りの親分など。北側に塀をセットか)。事後平次と多喜之助がやってくるほんとうの埋蔵場所、御香宮参道(埋めたままにしておこうと話す灯篭は参集殿前、皆してご飯食べにと歩く道は参道を南向きに)
*建部家の後妻の弟・多喜之助の叔父に江見俊太郎。


第70話 「女の城」 1967.8.30

 小料理屋の女中殺しは一筋縄でゆかぬ謎めいた展開、親分は散りばめられた証拠の裏を鋭く推理、真相に迫る。タイトルは女将が築き上げた店、身持ちのわるい亭主を庇う女心が泣かせる。その女将に亡き恋人を重ね合わせひそかに慕う浪人に小林勝彦、書を能くする剣の達人で静謐な役柄。
*ロケ無しセット撮り。


第71話 「稲妻組御用」 1967.9.6 6

 半月で五千両を盗り11人も殺した凶賊を召し捕る大捕物。親分は当りをつけて捕えた一人から巧みに情報を引き出し事に当るが、張り込みの八や万七たちは妙ちきりんな行動をとりワルにとっ捕まってしまうのだった。

 ロケ地、夜釣り船を出させて船頭をしていた一味の仙三を捕える平次、広沢池か。賊に捕まった八たちのくだり、雲住寺塀際を奥に見て瀬田橋竜宮社務所裏手(「回想」シーンも同所で笑える)
*八と万七の手柄話が傑作、一目置かれている強面のお兄哥さんだったり、女たちにモテモテの大親分だったりと好き放題に為吉に大法螺を吹きまくり平次を助けてやったとぶつのだが、言ってるだけじゃなく「再現ドラマ」つき。二人が語るところの、なっさけない駆け出しで膝なんかガクブルの弱虫を大真面目に演じる橋蔵が抱腹もの。賊の首領・勘次に山本麒一、再現映像のならず者はこの勘次。彼によって実際のところが語られる仕掛けだが、こいつも自分の段ではちょこっと嘘をついてたり。


第72話 「五十両うら表」 1967.9.13 24

 仏と言われた商家の主殺し、状況から容疑濃く追われる青年。しかし親分は現場で得た証拠を基に真実に迫ってゆく。関係者を集め謎解きの趣向、グルの面々を指弾の弁舌が爽やか。

 ロケ地、下総の権八の実家、不明(萱葺民家)。権八を追って下総へ向かう万七らがゆく街道、不明(北嵯峨か)。夜道で平次を待ち伏せて襲う浪人たち、下鴨神社河合社裏手。
*権八に峰蘭太郎、真面目なお店者とグレていた前身の二態を演じる。*八、お静の手作り饅頭をぱくばくやる食べっぷりが見事…コマ送りになっててぱぱぱっと大振りのお饅頭が消えてくんだけど、最終的に敷き紙もなくなってるんだよね…アレも食べたの?八っぁん。


第73話 「首なし佛」 1967.9.20 6

 江戸へ呼び戻されたお店者が忽然と消え、首無し死体が見つかる不気味な展開。仏はもう一体出て謎は深まるが、三好屋の後継を狙っての暗い企みがあらわとなる。

 ロケ地、幸吉が消える北品川の街道、北嵯峨農地。傍に蔵のある茶店は不明。首無し死体の出る玉垣下、不明(例の半ば傾いだ玉垣)。「幸吉」の葬儀が行われる宗念寺、雲住寺(門を出た左手に瀬田橋竜宮の鳥居が映り込む)。もう一体の首無し死体が出る双葉神社、雲住寺門前と竜宮社叢、背後の破風は雲住寺鐘楼か。浪人たちが幸吉をダシに金をとろうとする寺、智積院密厳堂、幸吉を殺そうとする留吉、大師堂
*欲をかいて馬鹿を見る浪人二人も傑作、友人のほうに千葉敏郎。食い詰め浪人が持ち運ぶ首があっちへ行ったりこっちへ来たりのギャーな展開だが親分は平然、推理する顔がなんだか楽しそうにも見え、ラストは恋女房に種を取って貰った西瓜食べて熱々。


第74話 「夜の口紅」 1967.9.27 24

 毒矢で狙われたのは三島同心、警戒にもかかわらず殺られてしまう。死後明らかとなる彼の悪行、思い切り怪しい女の死で謎は深まってゆく。

 ロケ地、笹野さまの「お叱り」を受けて平次・万七・三島が連れ立って帰るさ、矢を射た者を追って出る夜道、広沢池岸か(道端に葦原)。三島が射殺されたあと曲者を追い夜釣りの紅屋らと出会う水辺、広沢池観音島(橋は木橋、山田五十鈴の映画で見た記憶あり)。土左ヱ門で見つかる芸者・お袖、広沢池岸か。三島の役宅を出たあと平次とお由が短筒で襲われる街角、相国寺湯屋前。偽の脅迫状を書いて紅屋らを呼び出す妙蓮寺釣鐘堂、相国寺鐘楼(虚無僧姿の親分が待っている)。多賀屋の死体はと虚無僧平次が指すやしろ、弁天社
*弓術を能くする芸者、矢羽についていた口紅の跡など、艶っぽい手がかりが前半を引っ張り面白い。三島の情婦・お由は波野久里子。ぼろんじに化ける親分、天蓋の中はちゃんと切り下げ髪。


第75話 「お妻あわれ」 1967.10.4 6

 料理屋の女中周辺で起こる奇っ怪な殺しは、生家の財産が妹にゆくのを阻もうとする勘当兄貴の仕業。彼の所業を知りつつ庇う女房の悲哀が描かれる。

 ロケ地、用足しから帰った妹・お秋に声をかける兄・圭吾、お秋が勤める湯島の料理屋・小春の裏塀と堀、哲学の道疏水分線際、大豊神社御旅所付近(現在は建てかわり)。兄の家からの帰り襲われるお秋も同所(御旅所から橋を見る構図)。容疑者の石切人足を捕縛にかかる万七(逃げられた挙句人足は殺害)、同じく哲学の道・疏水分線の橋周辺。圭吾の女房・お妻がお秋を呼び出す堀端、疏水分線宗諄女王墓所前。圭吾の生家・青梅村地主坂部忠右衛門邸、民家長屋門。平次に踏み込まれ逃げた悪党どもと立ち回り、民家北西角。青梅へ帰るお秋を見送る平次ら、金戒光明寺三門前。
*お妻に野川由美子。


第76話 「月に飛ぶ雁」 1967.10.11 6

 弄ばれ大川に身を投げた娘の意趣返しをしようとした父の思惑は、かえって悪人に利用されてしまう。しかし親分は明晰な推理で真の悪を見抜いていた。

 ロケ地、伊勢屋が小染と遊んだ帰りに襲われる川べり、上賀茂神社ならの小川神事橋たもと(その前に八が月を見て迷句をひねっているのは川端の祠前、伊勢屋を襲った蕎麦屋の親爺が潜むのは神事橋下)。娘掏摸のお照を尾行する八、堀にかかる橋、哲学の道・疏水分線の橋。その翌日外出するお照尾行の町なみ、不明(塀と門)。蕎麦屋の親父の娘の墓、黒谷か。南町奉行所、大覚寺明智門
*蕎麦屋の親爺を父と慕い、八を騙して証拠品を盗み出す娘にジュディ・オング。八の居候先を訪ねてきて呼ばわる声からもう印象的。今回の敵はもと侍、親分ちょっと苦戦で縁側から落とされる場面も。


第77話 「江戸の野良犬」 1967.10.18 24

 仏具屋から権現さまゆかりの仏像を盗った賊の狙いは二十年前の親の意趣返し、しかし一味に欲がらみの裏切りが出て事件の流れは変わってゆく。

 ロケ地、賊一味だったお美津の弟が土左ヱ門となって見つかる本所割下水、北野天満宮脇・お土居下の天神川河床。南蛮奇術一座の出刃撃ち芸人・小四郎がお美津に上方へ行こうと誘う水辺、上賀茂神社ならの小川畔。脅迫状に従い金を用意して日輪堂が待つ谷中正源寺、黒谷墓地。小四郎が幻斎らに斬られて走りこむ川、ならの小川(呻き声に駆けつける八の背後に校倉)
*途中から平次に協力して捜査に加わるお美津の弟の悪友・安がいい味。安とその仲間の「野良犬」を更正させる話がラストに入っている。*南蛮一座との立ち回りではロープを使い空中から襲う奴も出るが、銭で切断。


第78話 「卍鍵」 1967.10.25 7

 闇に葬られた心中事件から明るみに出る、十年前に出た怪盗。加賀さまの金蔵を破った帰り船で、父は身投げした息子を発見する。幾重にも重なった因縁が謎めいた状況を作り出す展開は、親分の大立ち回りで締めくくられる。

 ロケ地、漁師の弥陀八が七之助の死体を見つける水辺、不明(広沢池みたいな葦原)。夜回りの平次らが加賀藩の侍に誰何される橋、不明(若森廃橋に似る)。女乞食が拾っていた心中者の下駄を見咎める平次、不明(橋と川、宇治か)。事後、姉と七之助の墓に参るお秀、黒谷墓地。立ち直ったお秀を見届けて帰る平次夫婦、金戒光明寺石段(見下ろし)
*御家人崩れの賊と大立ち回りの親分、大苦戦。逃げる浪人の船に棒高跳びの如く飛び乗り船上で戦うが川に落とされ、水中から取り縄を引っ張って浪人を引きずり込む。このほか、中ほどの立ち回りでは肩車なんかも披露。


第79話 「六番目の男」 1967.11.1 24

 その昔お上の御用金三千両を盗んだ賊が仲間割れ、取り分を増やそうと殺しあい。残った仲間を消そうとした正体不明の「六番目の男」の前に、謎を解いた親分が現れる。

 ロケ地、和泉屋の死体検分、金戒光明寺本堂脇(西側)。二人「残った」一味の小唄の師匠と飲み屋の親爺(親分が大工に変装して張り込む酒肆)が腹をさぐりあう、大覚寺天神島


第80話 「待っていた女」 1967.11.8 24

 両替商に連続強盗、狙いは金相場の操作で大儲けを企む富商の仕業。その商人の妾となっている悪女に運命を狂わされた男と、彼を慕う幼馴染の話が主軸となる。

 ロケ地、御赦免船の着く浜、琵琶湖西岸(対岸に近江八幡の山なみ、浜は砂浜と石積の突堤状の施設が見える。浜には柵をセット)。悪女に唆され隠匿してある金を運び出そうとする一味の男、船を係留の堀端、瀬田川(悪女は瀬田橋竜宮境内にいて玉垣の隙間から覗く)。弥之助を庇い大和屋の妾を殺したと自首して出たお雪に話を聞いたあと平次が出てくる大番屋、大覚寺大門。八に推理を聞かせるのは参道石橋御殿川に石投げ。
*事後、弥之助とお雪の仲人を頼まれる親分、どうやら初めての模様。嫁取りは遠いと呆れられる八、蕎麦の食い方がダイナミックにお下品。


第81話 「質札の娘」 1967.11.15 7

 大店の跡取りをめぐる騒動、隠し子を育ててきた祖父は孫を渡したくなくて動くが、欲にかられたワルの手が伸び殺されてしまう。隠し子は愚連隊に属し万引きなどはたらく不良娘、しかし駿河屋が実の親と判明するも入るをよしとせず、更正して働き口を見つけ前向きに生きてゆく。

 ロケ地、万七に連れられ駿河屋へ入っていたおみねが不良仲間の吉松とこそこそ話す駿河屋近くの塀下・川端、北野天満宮脇のお土居。おみねの亡き母の姉が住む六郷在に出張の八、六郷渡しへ二里の街道筋、北嵯峨農地陵付近(訪ねる相手が殺されたと聞く加納村の畑地も同所付近と思われるが確証なし)。祖父・伍平の隠し子でないとの申し立てで駿河屋を出されたおみねが歩く川端、北野天満宮脇・御土居下の天神川河床。姪を隠し子に仕立てようとしていたおるいが雇ったならず者に金をせびられる川端、上賀茂神社ならの小川(平次が現れラス立ち、一本背負いで川に叩き込むシーンも)
*おみねに大原麗子、伍平に杉狂児。


第82話 「情けの盃」 1967.11.22 7

 お弓にまで「こう、きゅっと首を」なんて言われる因業な上州屋だが、殺されては放っておけぬ親分、きりきり捜査。最後に浮かんだ真犯人は恨みの筋ではなく欲がらみの線だった。

 ロケ地、上州屋の腹違いの弟が申し立てたアリバイの船宿・辰巳屋、嵐山公園中州料亭・錦。女中に話を聞いて帰る平次らが渡る橋、中ノ島橋。佐伯や早瀬が仕えていた相生藩江戸屋敷、相国寺林光院(門で話を聞く/早瀬が尾けてくるのは植え込みの路地)。なお尾けてくる早瀬浪人、今宮神社東門内石橋高倉(平次とやり合う)。刀身を見て去る平次は稲荷社合祀摂社の間へ。
*元相生藩勘定方・佐伯の娘・早苗に宮本信子、佐伯に大恩を受け早苗の罪を被ろうとする上方男・紋太に大村崑。按摩をボコるチンピラに川谷拓三がちらり。タイトルは捕われ引かれてゆく按摩に紋太が差し出す、この世の名残りの一杯の酒。


第83話 「なでしこ秘抄」 1967.11.29 24

 死体の傍に撫子の花を置いてゆく殺し、花には悲しいわけが込められていた。小料理屋の主と踊りの師匠が組んで仕出かしていたのは美人局、使う女は師匠に騙された哀れな娘たち。疵安と二ツ名を持つ男は、ワルにハメられ失明した妹の哀れさに手を汚すが親分の情溢れる説得に投降、このくだりが道行きの葦原で尺をとってしみじみと描かれる。

 ロケ地、疵安が妹を隠している寺、雲住寺(門内側と鐘楼。アーチ形の回廊については不明、本堂の竹製手すりも同じ←今は普通の欄干)。疵安が妹と逃亡をはかるも捕り方が出て窮する渡し場、木津河原か琵琶湖流入河川か(堤は相当に高く、堤外地には葦原が広がる)
*撫子は、無体を強いられ自ら柱に額を打ちつけたおいとが昏倒する前に見た最後の花。この哀れさに親分ちょっとメソ入り、安のために長文の助命嘆願書をしたためる。


第84話 「おとし穴」 1967.12.6 25

 お目付が抜け荷探索に放った隠密が三人も殺され、笹野さまから平次に話が降りてくる。首魁の商人は、彼を恩人と慕う男を罪に落し女房を狙っていた。

 ロケ地、伊之助がご赦免になり出てくる伝馬町の牢、不明(冠木門、看板には「江戸囚獄」)。迎えに来た堺屋や女房と再会を喜ぶ塀際、不明(腰高な石垣、鏝飾りを施した築地)。堺屋への手配を済ませた平次が出てくる笹野さまのお屋敷、相国寺大光明寺。堺屋の番頭が指揮する抜け荷取引の水辺、広沢池観音島(割符を合わせるのは観音さまの前、立ち回りでは池ボチャもありの派手な展開)。事後、お参りの伊之助夫婦と歓談する平次ら、今宮神社境内(本殿右翼、合祀摂社)
*伊之助に和崎俊哉、女房は葉山葉子。堺屋の番頭に藤岡重慶、口入屋に沼田曜一(お上の協力者でワルに非ず)。


第85話 「小判と簪」 1967.12.13 25

 分限者の上総屋殺し、通夜の晩から互いをチクりにかかる家族にうんざりの親分。損得の線から判りきっている犯人を挙げるのに苦悩するも八のほんの一言をヒントに解決、あとは芝居に打って出る。

 ロケ地、犯行現場の為吉や庄太が働く材木置場、不明(珍しく山なみが明瞭に見えている)
*被害者の財布から庄太が盗った一朱を足し前してお上に届ける人情親分、お静が質屋で調達の模様。夫婦の会話もドラ猫の捕縛や囲い者などコミカルで楽しい。


第86話 「小さな幸せ」 1967.12.20 7

 悪性の熱病が流行、特効薬のキナが不足するわけは大儲けを企んだ悪徳商人の隠匿。橋蔵版銭形には珍しく、幕閣が後ろで糸を引く図。当の薬屋で働く丁稚が孤児仲間のため立ち回り事件に巻き込まれる話をからめ、情話に仕立ててある。

 ロケ地、辰巳屋の丁稚・太市が育てられた梅林寺、不明(最初門扉のみ映り、事後平次夫婦が孤児らに汁粉を振る舞いにやって来る段でお堂が映る。堂前に互の目の石畳)。寺で聞き込みのあと平次が辰巳屋の小番頭とばったり会う道、北野天満宮脇のお土居。辰巳屋の裏塀を乗り越えようとしている太市を見る平次、北野天満宮お土居から衣笠小学校前へ抜ける路地(太市がとりつくのは北側の塀、現在中はマンション)。大番頭が用心棒と連れ立って赴く若年寄・村田将監邸、相国寺大光明寺と周辺(大名屋敷が並ぶ一角という設定、湯屋前から導入、尾行の平次らは方丈塀際に待機し松の陰に身を潜める)
*キナは樹皮がホールで映っているからおそらくキニーネ。*梅林寺で高熱に苦しむ孤児らを捨てておけぬ親分は、お静とお民を呼び看護に当たらせるが過労でお静がダウン寸前に。お役目との間で悩む親分の渋面が泣かせる。


第87話 「女郎蜘蛛」 1967.12.27 25

 佃島の牢を脱走した賊、腕に蜘蛛の入墨をした七兵衛を追ううち二転三転する事態。欲をかいた男たちは、欲深さゆえ狙いをはずしてしまう。

 ロケ地、佃島から上がった破牢を知らせる狼煙に浜へ駆けつける万七ら(清吉が賊にボコられ衣を剥がれる)、琵琶湖岸か(岩浜)。馬道の源助の死体面通しを終え奉行所を出る平次、大覚寺明智門〜参道石橋(八に推理を開陳)。小料理屋の女将・お小夜が参る亡き亭主の墓(谷中・観音寺)、黒谷墓地。佃島へ調査に赴く平次、琵琶湖岸か(牢役人が七兵衛に殺された「らしい」岩浜、腕に墨の死体が出る砂浜←松林、遠景に突堤)。川崎大師へ赴くお小夜を追う東海道、一部北嵯峨・一部琵琶湖畔か。
*琵琶湖かものロケ地、波は静かで湖と思われるが島や岬が見えないので確認できず。街道筋の一部には謎の蔵も見える。*お話を回すのは小料理屋の美人女将。岡惚れしている癖に金のほうをとってしまう浪人、女将も自分と同様欲深く金狙いと思い込みしくじる「化けおおせた」男、ラストは炬燵ミカンの親分が女将のことでお静の嫉妬を買ってツネられるお笑いできれいに締める。*お小夜に桜町弘子、吉蔵に山城新伍(善→悪の表情の変貌が見もの)。


第88話 「大江戸の春」 1968.1.3 7

 師走の江戸に上方からやってきたお騒がせ娘、天満橋でいつも見かける思い人のためお見合い拒否で家出。彼女が持つお香の秘伝を狙う悪党とすったもんだ、助け手となる長屋衆も楽しい一話、めでたく明けたお正月でラストを飾りお江戸の春を寿ぐ。

 ロケ地、掏摸を探して八とやってくるおみち、同じく財布をやられたお静とばったりのお宮さん、および幇間の一八と羽子板を求めにやってくる縁日のお宮さん、ともに御香宮本殿まわり(提灯の下がった回廊も映る)
*長屋衆は掏摸に幇間、火消しに居合抜き芸の浪人と賑やか。櫻井センリ、石橋エータロー、小島慶四郎、上方柳太など多彩なゲスト。*親分が赤鞘組と戦っているさなか、長屋衆が法華の太鼓でどんつくどんどんと乱入するほか、火消しが小屋根に出現。でもこいつら囃し立ててるだけなのが大笑い。浪花娘の恋の結末はもっと大笑いで、祭りのあとに萎れる男たちがいい味。


第89話 「銀色の吹矢」 1968.1.10 25

 出合茶屋で人の妾と心中を遂げる目明し、女房も乱行に呆れ果てており、殺しかもという平次の言葉にも取り合わない。しかし家財を質入れしてまでの遊興も、実直な目明しが畢生の大仕事と意気込んだ捜査の一環だったと知れる。

 ロケ地、船頭が大野屋に荷を渡す現場を誰何の八がマムシで脅かされごまかされる河岸、罧原堤下か(河原に塀を立て店の裏手に仕立ててある。ラス立ちがなだれ込むのも同所)。目明し・辰造の墓、黒谷か。
*タイトルは遊び人に身をやつして潜入の親分が露見しヤラれる、しびれ薬塗った代物。ラス立ちでも繰り出されるが、銭ではたき落し。


第90話 「狙われた平次」 1968.1.17 25

 かつて平次が捕え八丈送りにした三兄弟が島抜け、意趣返しに出る。じわじわと迫る魔手、最後はたった一人で三人と向かい合う親分の死闘が見もの。

 ロケ地、平次が更生させた雲州屋の喜助が刺される明神境内、不明(舞殿越し神殿・前にステップ、平岡八幡や石座に似る)。喜助が収容される漢方医・菅井道庵邸、御所拾翠亭。砂村新田の姉を頼った三兄弟が隠れる屋形船、広沢池東岸か(暗い水面、画面の端に葦原)
*三兄弟の一人は平次の銭で片目を失明しており、復讐のため銭投げを身につけている。凶暴な三人との立ち回りでは、首に鎖を巻かれ大ピンチのシーンもあり、この危機を脱するに小屋根へ跳躍する荒技を披露。権次の銭を防ぐ、くるくる十手バトン回しも見事。*夜っぴいて八と将棋をさすつもりだった親分、一回も勝ったことないのが判明。敵の投げ銭で負傷したお静を労わる場面も泣かせる。八の変装のムシリ、むさくて可愛い。


第91話 「御高祖頭巾の女」 1968.1.24 8

 大身旗本宅で起った事件に巻き込まれる親分、とにかく偉そうでイヤげな殿様は、やっぱり諸悪の根源なのだった。

 ロケ地、旗本・坂崎左近邸、相国寺林光院。今回このお屋敷を中心に話が展開するので、林光院の門と周辺の路地や空地ほか境内林間など多用される。事件に関わった当家の腰元が出てくる裏門には大光明寺南通用門、「頭巾の女」を尾行し追い詰める段では湯屋前から墓地が使われている。頭巾の女が知らせた金の在り処の楠神社は御香宮本殿裏手の祠や摂社、林間。
*平次のまわりをうろつく馴れ馴れしい瓦版屋にジェリー藤尾、実は島帰りの盗っ人で、殿様に弄ばれた妹の不幸に激する情深い兄という設定。兄貴が仕出かした窃盗を妹がいちいちフォローして歩く展開で、親分振り回されまくり。しかし拝領の茶碗盗られて、五千両盗られて、そのうえ将軍の祈願書までヤラれるなんて、お殿さまんち警護甘すぎ。


第92話 「亥刻(よつ)の鐘」 1968.1.31 8

 犯人とわかりきっている男のアリバイを崩してゆく筋立て、男は三年前寄場送りにされたことを恨んでおり、公然と平次に盾突き憎さげに振舞う。被害者の死亡時刻を偽装する手立てが面白い。

 ロケ地、伊勢屋の死体が見つかる正念寺、金戒光明寺本堂(西側)。伊勢屋が掛け取りに行った亀戸の旗本屋敷で聞き込む万七、相国寺塔頭、路地。亀戸からの帰り道に架かる三平橋(工事で橋止め)中ノ島橋。船を盗まれた亀戸の船宿、嵐山公園料亭・錦。このほか船を探すくだりや、川端で考え込む平次、平次を鶏泥棒と誤認し殴りかかってくるオヤジのシーンなどに中ノ島橋周辺の川端や河原を使ってある。
*今回の相手・吉五郎は寄場から帰るや平次宅に現れ復讐を宣言するという悪態、いやらしく睨めつける上目遣いが怖い近藤洋介。


第93話 「万七手柄」 1968.2.7 8

 市坊のため三輪をフォローし手柄を立てさせてやる情話、勇んで踏み込むもどんくさい万七と清吉の危機に、平次の投げ銭が飛ぶ。事件は金貸し殺し、万七がいつものごとく先走って捕縛した男が実は大当たりだったという構図、平次は容疑を固める動きに出る。

 ロケ地、八が調べてきた怪しい三人を聞き込んだ帰り道、平次らを襲おうとしてあきらめ散る「刺客」一味、仁和寺西門〜水場前〜鐘楼前。わざとらしく出てきて捕縛されている男の疑いを晴らしてくれるよう頼み込む重助、金堂前、石段。うかうかと解き放ってしまった源吉を夜通し探して疲れ果てた万七らがへたり込んでいると、万七の息子がダメ目明しの倅と苛められているのを見るお宮さん、御香宮本殿脇・祠前。このあと市坊と万七のシーンでも何度か出る。参道に縁日あしらいも。
*見どころはやはり万七の大立ち回り、くるくる十手回しでは取り落とすし、清吉が誤って万七をポカリのいつものドジもあり。平次は植え込みに隠れて要所で銭投げてフォロー、万七のミスにガハハ笑いの八が親分に頭押さえられてたりコミカル。子の名を叫び目ぇ瞑って敵に向ってゆく万七がおかしくも可愛い。*源吉に曽根晴美、刺客の一人に川谷拓三がちらり。


第94話 「幼馴染み」 1968.2.14 25

 通人の伊勢政が還暦の祝いに仕込んだ悪趣味なアトラクションは、ほんとうに葬送の儀式になってしまう。彼がもう一つ用意していた趣向が殺された原因で、それには跡目の趨勢が記されていた。

 ロケ地、伊勢政の「葬儀」が行われる妙法寺、不明(本堂、アーチ型の渡廊)。按摩のお藤が崩れた崖に導かれ落ちかかるところを助ける平次、不明(平次らはお堂脇から出てくる)
*疑われる島帰りの男、殺人現場にいた女の按摩、伊勢屋の後妻、怪しい動きを見せる遊び人。彼ら四人は幼馴染で、複雑な感情と思惑が交錯する。


第95話 「一本の命綱」 1968.2.21 8

 土蔵破りの手掛かりを求めて、伊豆へ飛んだ三下を追う旅もの。なんとか捕えるものの当の仙太は味方に命を狙われており、伊豆山中で死闘が繰り広げられる。捕縄で結ばれたまま逃げ回るうち、仙太は親分に心を開いてゆく。

 ロケ地、仙太を引き据えてゆく山道、いろんな場所が出るが特定材料を欠く。はじめの残雪の山道や馬車でゆく道などは谷山林道に似る。川下りの段は保津峡落合、崖道や河口が使われていて今とほぼ同じ。一時隠れる山小屋は酵素っぽい。仙太が崖から落ちてファイト!一発状態になる岩場は、白水峡か湖南アルプスみたいな感じ。八や為吉と落ち合う茶店、近付いてくる親分の背後に湖面がのぞき沢ノ池沿いのダートにも見える。
*仙太、兄貴分を天から信じている単細胞で親分に悪態をつきまくるが、最後は殊勝に両手を差し出し観念。恋人に会いにゆけと言う親分に、戒めの心覚えとして旅の間縛られていた捕縄をせがむ泣かせる展開で長谷川明男が熱演。彼をハメた極悪凶相の兄貴分は今井健二、怖いのひとこと。連行中襲ってくる手下は阿波地大輔に西田良。干草を運ぶ荷馬車の御者が遠山金次郎なのもちょっと見もの。


第96話 「割れた鏡」 1968.2.28 8

 好まざる「お武家の事情」に関わる親分、まもなく許婚者の意趣返しをはかった芸者が浮上するが、真実はもう一つ向こうのベールの奥に隠されていた。権高な上つ方に痛烈な啖呵を切る親分が爽快。

 ロケ地、勘定奉行に内定の旗本・須貝主水正が失踪した柳橋の料亭・水月、嵐山公園料亭・錦。これの堀端と船宿・巴屋周辺の大川端の水辺、不明(桂川か)。主水正の死体が出たあと、これ以上の調査無用と言い渡されるも、共に失踪した芸者の詮索は町方の仕事と動く平次を襲う刺客、相国寺経蔵(差し向けたのは自分と奥方が現れる)。芸者・染太だったお光の回想、親方に認められたと勇んで報告に来た伊之助、中ノ島橋。巴屋の板前の告白を聞き、自訴して出たお光が危ないと奉行所へ駆けつけた平次が、稲垣同心に寺社方へ引き渡されたと聞く塀際、相国寺光源院前路地。お光が連れ込まれる主水正のライバルだった旗本・松永邸、相国寺玉龍院。事後、伊之助の墓参に連れ立ってゆくお光と板前の佐吉、不明(門入ってすぐ鐘楼の、何度も出ているアレ)
*真犯人だった旗本に青木義朗、お光の許婚者で蒔絵師の伊之助に中村敦夫(出てきてすぐに無礼討ち、回想シーンで復活)。*八、いちゃいちゃ親分とお静にアテられてひっさらってゆくお餅はナマ…ばくって食べてたよね。


第97話 「女雛は知っていた」 1968.3.6 25

 あちこちの家で何者かにお雛様が毀損される奇怪な事件が起こり、八に急かされ乗り出した親分は変事の匂いを嗅ぐ。出てきたのは三年もホットマネーを寝かせていた賊、悪銭の寛文小判が市中に流れ恐慌を引き起こす事態を防ぐべく平次は走る。

 ロケ地、狙われた雛を扱った店を聞き込んだ帰り道、後に退けなくなったと話す平次、金戒光明寺石段。雛を作った人形師の娘を後妻に入れている越中屋が殺される、金戒光明寺本堂脇(西側)。越中屋の女房に事情を聞いた帰りの平次をつけてきた男が八の胴間声に逃げ去るお宮さん、御香宮(本殿脇、拝殿前)。賊の片割れを追い詰めるも口封じされる谷あい、北野天満宮脇のお土居。寛文小判四千両の隠し場所だった三又稲荷、御香宮本殿脇祠。
*お雛様ばなしを締めくくる平次夫婦のエピソードは質から出してきたお静の雛飾り、代わりに簪が消えている苦労譚。あまり楽でない暮らし向きについては何度も出てくるが、親分ちの家計ってちょっと謎。


第98話 「献上の琵琶琴」 1968.3.13 26

 幕府お抱え琴師の家から消えた御台さまへ献上の琵琶、裏に複雑な事情が絡んでおり親分を悩ませるが、琴師の偉そうな態度にムカついた八の当て推量が正しいのだった。

 ロケ地、市井の琴職人・音吉が三輪に捕縛されたあと、八と歩きながら推理の親分、金戒光明寺長安院下坂瑞泉院前。とんぼを切って逃げた賊の調査で赴く浅草奥山の軽業小屋、不明(松の疎林の広場、生垣の向こうに萱葺き屋根がのぞく。軽業一座が鍛錬をしている)


第99話 「今日の月」 1968.3.20 9

 どうにも不可解な研屋の主の自害、身内にも心当たりの無い借金を苦と遺言状にあり、貸し主の奈良屋は思いきり怪しい。殺し屋を使っての手口を暴くのに、親分は虚言と芝居の合わせ技で追いつめてゆく。

 ロケ地、研屋殺しの浪人が膾になって見つかる入船町河岸、中ノ島橋下手右岸河川敷(見物の衆を橋上に配してある)。見物を装って死体を見てきた八卦見(仲介者)が殺し屋に金を渡す川辺、瀬田橋竜宮玉垣傍川端、境内。八卦見が店を出す神社、不明(楼門、簡素な回廊、殿舎外観は上御霊やごこんさんに似る)
*遺言状にあった妙な辞世の句が事の発端、したたかに酔った研屋の「明月を三千両で買う・手持ちがナイから借金ね」が犯行を誘ってしまったと皆に解説の親分、オチは「酒は怖い」。*殺し屋メンバーに福ちゃん、お静をさらいに来たりもする。気付いて騒ぐお民に匕首を突きつけたり、為吉のニセ鉄砲に驚いたり。


第100話 「隠密有情」 1968.3.27 9

 公儀に二心を抱く尾張が放った隠密、偽装のため娶った女房を心底愛してしまった男と、別離を悲しみ世を儚む女の悲哀を描く。上から詮議無用を言い渡された親分がせめてもと出す女の葬儀、非情の男はそれに甚く感じ入り忍びとしての己を捨てて逝く。

 ロケ地、隠密たちが追われ出てくる若年寄・堀田邸、不明(相国寺か)。先に逃げた二人が結城新三郎と合流する美土代町・随心寺、智積院大師堂(参道石段を駆け上がったところで合流、平次たちが来たため大師堂縁下へ隠れる。親分が降りてくるのは密厳堂に通じる石段)。「大工の新蔵」と知り合いの「薬屋」に新蔵の居場所を迫るお仲の弟・文二、相国寺鐘楼まわり(設定は下谷・宝蔵寺)。秘密を知られたと誤認し文二を襲う隠密たち、不明(蔵のような建物)。お仲の葬儀の寺、不明。
*大工に身をやつしていた隠密に岸田森、任務と私情の狭間で苦悩するさまはもちろん秀逸なんだけど、井戸に落ちた子供を助けるくだりでは関節はずしをやってみせたり。他作品でも見られるが、この人はホントに芸達者というか熱の入ったというか、とにかく「見せる」。


→銭形平次(大川橋蔵版)表紙


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