銭形平次

572話〜603話  フジテレビ/東映

赤山禅院 雲母不動堂キャスト
銭形平次/大川橋蔵
お静/香山美子 八五郎/林家珍平
おゆみ/つばめ真由美 おなお/つばめ奈緒美
壮吉/大橋壮太
万七/遠藤太津朗 清吉/池信一
樋口一平/永田光男


第572話「むささび小僧」1977.5.4 56

 情が濃過ぎる元盗っ人のコミカルな哀話、足を洗った因が実はトンデモな真相も明かされ、今度こそ晴れてまっとうな道をというオチで締める。

ロケ地
・長吉が子捨てを思い立つも捨て子を拾う羽目になる尼寺、相国寺大光明寺。向かいの方丈塀際に捨て子。
・むささび小僧出現を聞いた長吉が、自分なら次はここと目利きをする屋敷、不明(腰高な石垣の塀際など)。元の手下と話す物陰は相国寺鐘楼裏手。
*長吉は財津一郎、女房は正司花江。元手下は灰地順、長吉が罪悪感を持っていた、アイパッチが大きすぎる若旦那は木村元。長吉の屋台をカタに持ってゆく取り立て人に福ちゃん(「仙造/福本清三」でクレジット)。


第573話「誰がための命」1977.5.11

 人一倍妻子思いの男は病がちな身を悲観、人の罪を肩代わりして金を残そうとし、意を察した女房は真実を語ろうとしない。もちろん非道の輩は親分によって罪を暴かれ、再び親子の暮らしが戻ってくる。

*ロケなしセット撮り。罪を着る男は花上晃、耐え忍ぶ女房は三好美智子。悪徳商人は新井和夫、番頭は玉生司朗。人の生き血を吸う外道に親分の怒り炸裂、立ち回りも念入り。お静を使った釣りこみの芝居も見もの。


第574話「大泥棒平次」1977.5.18 56

 凶賊の手がかりを求め遠征した平次は、一味とつながりのある女道中師と出会い、お仲間のふりをして江戸入り。ノリノリの親分は、女賊とともに的の商家へ入ったり、浮気を疑われ万七の説教を食いかけたり。賊を懲らしめたあとは、神妙な女賊に茶目っ気を見せて幕。

ロケ地
・下田港はバンクフィルムか。帰り船に乗る渡し場は広沢池東岸に船着きあしらい。
・枕探しの女賊を匿ってやった翌朝、街道筋で待ち構え仲間になる話をする平次、大覚寺大沢池堤。水門も映る。
*女賊は和泉雅子、平次に盗法指南をするが、なんでもできちゃう達人ぶりに舌をまく→ぞっこん惚れこみで足洗って所帯持つ妄想。仲間にも顔を見せぬ首領は梅津栄、ふだんは猫いじりの呆けたおっさんで、豹変した顔はけっこう怖い。手下に富田仲次郎、有川正治など。*監禁をとく小道具にギザギザ銭登場、自作なら笑える。


第575話「雀に餌をやる女」1977.6.1 44

 禁制品が出回る一件に乗り出す親分は、変装して一味の内懐に。主軸は一味と関わる酒肆の女の話、撒いてやった米粒をつつく雀を幼時の自分に擬える哀しい女を、職を賭けて庇う親分なのだった。

ロケ地
・お喜代が雀に餌をやる神社、今宮神社(稲荷社前、東門内側)
・地位の簒奪を目論んだ富三に殺された男の死体が上がる砂村河岸、大覚寺大沢池畔。
・首領に怪しまれた富三を連れ出し、組んで仕事をと持ちかける平次、大覚寺大沢池堤を田地側から上がり、「砂村河岸」の池畔へ。
・騙りがばれて一味に囲まれる平次、金戒光明寺石段。崖落ちは鐘楼西側から。
*お喜代は赤座美代子、悪い仲間に入ってしまった幼馴染の富三は新倉博。抜け荷買い一味の首魁は長谷川弘、手下に北町嘉郎や黒部進。


第576話「人情寄席ばやし」1977.6.8

 満座の客の前で手妻師が血を吐いて死ぬショッキングな事件は、母と娘の相克を露わにし20年前の変死事件も絡んでくるが、真実を知った母と子は靄を払い新たな道へ。

*ロケなしセット撮り。寄席・蔦本の女将は楠侑子、元恋人の下足番は多々良純、娘を狙う邪まな同心は田口計。


第577話「女親分と五人の子供」1977.6.15 56

 男に混じって力仕事に出て五人の子を育てる、「女親分」と綽名される女傑。ここへ、女と逃げたダメ亭主が帰ってきて巻き起こす珍騒動が、賑やかに展開される泣き笑い人情劇。押し込み直後の質屋に居合わせて犯人にされてしまうと泣き縋るダメ親父のため、女親分と子らは真犯人を自ら挙げようとしていいだけ「現場」を荒らし、妙な足跡など残して親分を混乱させるのだった。

ロケ地
・「女親分」お松が働く普請場、大覚寺遣水跡か嵐山の公園か。
・質屋の女将が狂信する行者の屋敷(四谷)大覚寺望雲亭(導入は庇越しに有栖川の堀あたりを見る絵)
・ダメ亭主が悪党を誘き出す湯島天神境内、赤山禅院本殿前。
*お松は園佳也子、亭主は小鹿番。行者は清川新吾でつるむ浪人に岩尾正隆と土橋勇。*普請場のシーンでは、威勢良く歌われるヨイトマケの唄が趣き深い。


第578話「はしりがねの女」1977.6.22 57

 哀しい過去を持つ女を、全力で庇おうとする亭主。彼がやむなく仕出かした殺人を立場上見逃せぬ平次の苦悩も描き、出頭は清新なスタートともなる。

ロケ地
・菊屋の女将が「一味」に連れ込まれる屋形船(隅田川を上下)広沢池(水面の色から判断/乗り込む船着は映画村セット)
・菊屋の夫婦を平次が見かけた水天宮、今宮神社本殿〜境内(舞殿や参集殿が映る)
・「はしりがね」の説明の段で出る、小舟で沖の千石船に漕ぎ出す「女」の情景、さざ波の立ちかたは村のプールと思われず、広沢池あたりか(静水域)
・「一味」を呼び出し金を差し出し、女房の前借を済そうとする弥助、赤山禅院雲母不動堂前。一味が去ったあと平次が出て話を聞くのは石仏前。
*菊屋の女将は池波志乃、亭主の弥助は石山律雄。はしりがね宿元にして凶賊の鳥羽屋は近江俊輔で、ねっとり悪い女房は加東けい。今回の下っ引は井上茂。*はしりがねは「針師を兼ねた女郎」の転訛、遠州灘と熊野灘の境で風待ちをする船に遣わされる女を謂う。港は安乗・的矢・浜島・渡鹿野・鳥羽にあると語られ、鳥羽屋の正体は「渡鹿野の甚兵衛」で地名からして怪しさ満点。


第579話「盗っ人志願」1977.6.29 57

 仏師宅から預かりものの仏像が盗まれ内弟子が殺された事件、町方は寺社方に追い出されてしまうが、親分は僅かな手がかりから外堀から埋めてゆき真実に迫る。タイトルは、濡れ衣を着せられかかった元盗っ人の先導で仏師宅に侵入しからくりを探る平次の謂、盗法指南を受けるシークエンスが挿まれている。

ロケ地
・平次の詰問を受けるも口籠る伝蔵をつけた八がならず者の襲撃を受ける道、上賀茂神社ならの小川畔/河畔の祠脇。
・伝蔵が半助を盛り場から連れ出し難詰するつぐみ稲荷、今宮神社稲荷社脇。
・事件が解決し晴れて仏像を運んでゆく伝蔵たち、今宮神社楼門(外側)。彼らを見遣る平次たちは楼門下、平次夫婦がいちゃいちゃ鬼ごっこは境内燈籠際。
*仏像を運んだ元盗っ人で島帰りの伝蔵は高原駿雄、悪企みの兄弟子は楠年明でグルの寺社方役人は田畑猛雄。はじめ平次らを追いたてる偉そうな寺社方の柳田は西山辰夫で悪人に非ず、禁を破った平次を咎めず礼を言う役回り。ラス立ちは寺社方と立ち回りとなるが、柳田さま以外みんな悪党の手先なのが笑える。八を襲ったならず者と矢場でツナギをとる怪しの遊び人に福ちゃん(クレジットなし)。


第580話「女の水鏡」1977.7.6 44

 富商の奥女中が殺された一件から焙りだされる、お店乗っ取りの悪行。ここに、己の正体を知られ憎まれるのを覚悟で盲目の娘の目を治そうとする、元盗っ人の情話が挿まれる。

ロケ地
・お志乃にからむならず者をシメる与助、今宮神社境内(高倉に茶店あしらい)
・殺された山萬の奥女中の検分が行われる代地河岸、嵐山公園・渡月橋下手中州岸(橋は橋脚のみ映る)
・父の墓に参り思いを訴えるお志乃、西壽寺(墓は本堂西側の崖下・石碑脇、帰る際の石段のくだりに本堂が大写し)
*山萬の先代の娘だったお志乃は松原智恵子、山萬に入った賊の一人だった与助は長谷川哲夫。現山萬店主の悪党は北原義郎。*タイトルは、ならず者に襲われ乱れた髪を直すのに見る水溜り。


第581話「吉凶うらおもて」1977.7.13 57

 不敵な盗賊が暗躍する裏に、お町のダンナの内通者。ばかりか、平次が人柄を見込んだ気のいい傘貼り浪人がハメられてしまう。なかなか正体を現さぬ天魔党の首領だが、親分の慧眼と粘りは悪党を見逃さない。

ロケ地
・三島屋の裏から入る賊、「材木置場」。板塀と蔵らしき壁が見える。
・万七たちをたばかり木戸を破った天魔党が捨てていった大八等の残骸が見つかる川端、広沢池西岸湿地(作り物の塀あしらい)
・傘貼り浪人の那須が妻に面差しの似た人形を求めようとする露店、大覚寺護摩堂裏手にあしらい。阿国山三の人形を手にゆく平次と那須の背後に心経宝塔の台座も映り込む。ここでは八卦見が店を出していて、天魔党に次の的と名指しされた札差の女将が連れてこられる。
・手がかりを求め郊外の松崎まで出張る平次と八、稽古帰りの若者たちを見かける川端、不明(起伏のある野面、北嵯峨か)。井関同心が入ってゆくのを目撃する道場は民家門。道場を売った、那須浪人の長屋の大家に話を聞く家は不明(塀越しに萱葺がのぞく)
*那須浪人に親切づらで札差の用心棒の話を持ってくる八卦見は左右田一平、手下に五味竜太郎や小田部通麿。那須浪人は高津住男、偉そうな札差は天王寺虎之助。*これとほぼ同じ筋の話が暴れん坊将軍第二シリーズの「誰がワルやら閻魔やら」に見られる。


第582話「夫婦坂」1977.7.20 44

 昔日の過ちを償おうとする男は、家財を擲ち女房を泣かせるが、危うく凶賊の企みに陥るところを親分に救われ、将に雨降って地固まり夫婦の絆はより強まるのだった。

ロケ地
・子のため飴を求める大工の伸助を見かける親分、縁日あしらいは今宮さんか。
・伸助が妻子の出迎えを受ける坂道、金戒光明寺放生池の北を浄土宗教師修練場へ行く坂、墓地側に塀をあしらい見事に「市中」に仕立ててある。この前に来る、職人たちに心づけを渡し帰す場面や、おふじが現れる場面は東坂下の石垣や池端の玉垣際などが使われている。
・伸助の告白を聞いた女房が家を飛び出し泣く小川べり、上賀茂神社ならの小川畔。来かかってそのさまを見る親分は神事橋上。
・伸助がおふじの亭主だと言う男に金を渡すも足りぬと突き放され、手掛けた顧客の寮の絵図面を要求されるくだり、相国寺宗旦稲荷
・絵図面を持って来いと指定される向島常泉寺、赤山禅院雲母不動堂前(ラス立ち)
・幸せそうな伸助夫婦を見送る坂は先の坂、その後いちゃいちゃ平次夫婦が渡る橋は金戒光明寺極楽橋
*伸助は長谷川明男、女房は北林早苗。昔伸助と駆け落ちして「酌婦に落ちた」おふじは行友勝江、彼女の情夫で凶賊のかしらは天津敏。下っ引で井上茂登場。


第583話「お民の初恋」1977.7.27 58

 傾きかかっていた畳屋に、訳ありで転がり込んだ男は腕のいい畳職人。コンテストに夢を持っていた主は喜び娘は彼を慕うが、渡り職人の彼は凶賊の一味。根っからの悪人でない男は娘の思いに懊悩のすえ、元から店にいた若者を鍛え自らはそっと身を引くのだった。

ロケ地
・定吉が畳替えに入る伊勢屋、不明(池泉と家屋、民家か)
・定吉とお民がデートの水辺、広沢池観音島
・畳職腕競べが行われる常泉寺、金戒光明寺。看板が掲げられるのは本堂階右端、方丈の甍が見えている。コンテストは本堂前、石畳脇に作業台をしつらえ。見物衆の背後に経蔵や阿弥陀堂が映り込む。
*お民は清水めぐみ、定吉は倉石功。*畳針を使った殺しに、必殺ばりのレントゲン表現。


第584話「男の錦」1977.8.10

 恩ある主とその娘に捧げる下男の純情は、悪党の企みにより最悪の帰結を見るすんでのところで救われる。そも火事の発生に疑義を抱いた平次の慧眼が、不器用極まりない男に「錦」を飾らせる情話。

*ロケなしセット撮り。まず人の難儀を考慮する高潔なお嬢様は松木聖、彼女を崇拝する下男は高橋元太郎。お店乗っ取り・お嬢様ゲットを狙う番頭は中村孝雄で、グルのヤクザは中島正二や平沢彰、情け薄い親戚筋は山口幸生。


第585話「船宿の女たち」1977.8.17 58

 万七が祝いの宴を張る船宿で殺しに遭遇した平次は、どうにも腑に落ちず残留。その手口はまんま「居残り佐平次」、「いのさん」ならぬ「平助」さんは女中たちにモテモテ。そして、一味に引き入れられていた女の一人は、平次の正体を知るも仲間に告げることはなかった。

ロケ地
・平次の正体を知ったあと、「居残り平助」さんに船を出させるお新、広沢池。船を着けるのは東岸。先に出た、八が船頭姿を目撃するシーンも同所か(こちらは映画村セットと併用)
・船宿の主を脅迫する元仲間の賊が巣食う根岸の荒れ寺、神光院(本堂裏手に破れ障子をあしらい)。ラス立ちでは本堂階から平次が投げ銭、仕留めた悪党を万七が宝筐印塔前で捕縛。
*船宿の女たち、主と番頭に脅されグルの目明しの情婦にされていたお新は森秋子、冤罪で捕まった船頭の恋人は水沢有美、弁当呉れたりする年増は戸部夕子。元盗賊の船宿主と番頭は西山嘉孝と青山良彦、グルの目明しは沢村宗之助で賊とも通じる大悪党、賊のかしらは宇田学哉。船宿で行われていた悪事は抜け荷。


第586話「壺振りのお駒」1977.8.24 58

 岡場所上がりの壺振り女と、無実の罪で藩を追われ賊に身を投じた浪人。互いを思い合う二人だが、夢は何ひとつ叶わずほぼ心中立てで二人して黄泉路へ。

ロケ地
・仕事に乗せろとお駒をさらった稲荷の小兵ヱの船宿、嵐山公園・。お駒を救出し逃げてくる新之助、広沢池東岸(漁具や葭簀あしらい/変装した平次が出て助け、船で逃げる)。上陸の船着きは不明、水がとろんと汚いから広沢池かも。
・御用金の荷駄がゆく街道、木津堤。悪党の差し金で向かわされる裏街道は竹林、北嵯峨か。
・御用金を奪った一味が休息するお堂(かしらは一人で金を隠しに行き不在)大覚寺護摩堂
・かしらが金を隠してあった川っぺり、不明(水は静水域)
・お駒の墓、北嵯峨農地起伏の上。
*お駒は北川めぐみ、元庄内藩士の秋山新之助は有川博。賊の首領は伊沢一郎、本格の盗賊で殺生は禁じ手下を見捨てないほか、潔く畏れ入る。新之助をハメる剣友の小役人は内田勝正、裏で糸を引く勘定改役は穂積隆信でカマっぽく内田勝正にからみ不気味。*変名ですぐ銭形の親分と判る木賃宿の親爺のくだり、ふだんの平次が窺えてけっこうツボ。


第587話「平次御用旅」1977.8.31 58

 旅もの、平次一家に万七たちも加わった遊山旅は、ところの名主に頼られてお仕事に早変わり。刀フェチの代官はその性癖で過去にも悪行、こやつとつるむヤクザまがいの口入屋をやっつける痛快な話に、代官を仇と狙う浪人と彼を慕う女の逸話も挿まれる。

*ロケは海ロケ、日本海と思われる荒磯。代官は可部靖之で口入屋は川合伸旺、仇持ち浪人は横内正で恋人は宗方奈美。


第588話「白浪ざんげ」1977.9.7 59

 足抜き女郎と情夫は悪党に阻まれ別れ別れに。奇縁めぐり、男は窮地にある女を助けることになるが、遂に会うことなく終る。互いに生死も知らずとも思いあっていた二人が袖をしぼらせる情話。

ロケ地
・孕んだおかよを連れて逃げる千吉、北嵯峨農地小柴垣(追っ手の気配に垣根を越え竹林に分け入り)。芳蔵が船を用意の柳瀬川は保津峡落合河口、連れ去られかけ川に飛び込んだおかよが旅の商人に助けられるのは保津峡側の巌上。設定は倉ヶ野宿、川は「烏川」。
・毎月の供養に寺へ赴くおかよ、駕籠をおりるのは今宮神社東門前。おかよを見つけ行動に出ようとした芳蔵は「門前茶屋」のかざりやに隠れる←平次らがかざりや西側の路地から現れる。寺へ上がり供養の場面は神光院中興堂(映り込む葉っぱ等からも判断)
・芳蔵が脅迫のためおかよを呼び出す玉池稲荷、上御霊神社。平次らは虚無僧姿の千吉が盗っ人宿から出たのを尾行してそこへ、この際は楼門を入ってゆくのが映る。おかよが待つ茶店は高倉下にあしらい、本殿も映り込む。
・一味が捕縛されたあと、引かれ者の千吉に母子の晴れ姿を陰ながら見せてやるくだり、有馬さまのお屋敷は大覚寺大門。平次と千吉は「対岸」に。
*おかよは服部妙子、千吉は竜崎勝。おかよの亭主の大和屋は宇南山宏、千吉を柳瀬川から助けた賊の首領は高杉哲平。芳蔵は松山照夫、千吉を供養している寺の住職は玉生司朗。


第589話「岬に立つ少年」1977.9.14 59

 恋情と打算の狭間で苦しむ富商の令嬢、保養先の漁村で事件は清算されるが、爺やの孫の少年は、美しい年上の佳人へのほのかな思いを踏み躙られ、苦い思いを胸底に沈めて成長の階梯をひとつ登る。

ロケ地
・保養先の「品川の先」の海浜、日本海か。浜は海食崖の磯。
*令嬢は沢井孝子、彼女との関係で冤罪に落ちる浪人は井上孝雄、彼に奸計を仕掛けた若旦那は北条清嗣、保養に来た佳人を慕う少年は庄野たけしで祖父のじいやは寺島雄作。


第590話「悪徳の応酬」1977.9.21 59

 乱暴な手法が咎められ、十手を召し上げられた元目明しの哀話。世話になった同心が事件の渦中で落命したあと、捨て身の行動に出た男の遺志を果たす平次だが、ごまかし額多過ぎ。

ロケ地
・抜け荷を追っていて消された小杉の旦那の墓、西壽寺墓地。寺では小杉の娘が孤児を養っている設定で、遊ぶ子らを見る源七のくだりは鐘楼脇、帰る源七に声をかける平次は参道石段の中ほどから出る。この際、本堂の屋根が背景に大映しに。
*源七は和崎俊哉、ホントに金とか取ってたりするダーティな男だが、孤児を養う小杉の娘に届けていたという泣かせる設定。悪党に容赦ない乱暴ぶりも描かれるが、腹刺されてなお闘い二人を返り討ちにしている超絶パワーは凄絶。抜け荷商人は武藤英司、つるむ船奉行は伊達三郎。*源七に金を託されてしまう平次、樋口さまに千両箱の行方を尋ねられてすっとぼける、いたずらっぽい顔が傑作。


第591話「疾風のおはる」1977.9.28 44

 事件は大店乗っ取りの陰謀、生き別れの倅に会いたさの母心を利用しての悪企み。しかし女白浪を女将と間違えた万七のドジが、悪党も思いもよらぬ珍展開となり、最後はニセモノの「親子」に心が通いあう人情話で締める。

ロケ地
・互いにニセモノの「浪花屋母子」が乗り込む屋形船、広沢池(窓から東岸汀が見える/上陸はオープンセット)。その後赴いた浅草、ニセ息子に知り合いの娘が声をかけるのは今宮神社東参道(かざりや側に露店あしらい、娘の茶店は一和)
・本当の息子が葬られていた下谷正楽寺、金戒光明寺墓地。調べに来ていた平次を見かけ身を隠す喜兵ヱは本堂縁下、推理を呟きつつ帰る平次は経蔵付近。
*枕さがしのおはるは春川ますみ、ニセ息子に仕立てられる青年は風間杜夫。財産狙いの亡き浪花屋主人のいとこは草薙幸二郎、手先をつとめるチンピラは江幡高志。


第592話「めぐりあい」1977.10.5 59

 その昔、平次の母に無体を仕掛けたゴロツキ侍が再び仕出かす悪事。脅され苦しめられていた娘の父は、他ならぬ平次の母を助けてくれた職人だった。恩と職務の狭間で苦しむ親分、その分悪党への怒りは凄まじい。

ロケ地
・平次と母が魚とりをしているところへ来かかり脛を見て悪心を起こす間藤重兵ヱ、上賀茂神社ならの小川。間藤は神事橋を渡ってくる(回想シーン)
・外回りのおりくが連れ込まれ脅される物陰、相国寺鐘楼裏手碑脇。見張りの八は宗旦稲荷裏手に隠れている。
・平次の回想、幼い自分と遊んでくれた弥助、相国寺鐘楼脇。
・間藤を懲らすくだり、立ち回りは梅宮大社神苑門内側石橋付近、ここへ入る平次は東参道の蔵(北面)を背にして参道側の通用口から。
*直参の間藤は田口計、平次の母を助けた職人は花沢徳衛で娘は新藤恵美。


第593話「侍の傘」1977.10.12 59

 平次が知り合った気のいいご浪人は仇と狙われる身、しかし実はという裏事情が、平次の追う事件とリンクする。抵抗せず討たれようとするのを制した親分、その足で抜け荷をはたらく悪党を懲らしめにゆく。

ロケ地
・平次が居合大道芸の浪人・高瀬右近と知り合う縁日、今宮神社。八が団子をねだった茶店は高倉下にあしらい、高瀬が店を出すのは境内、逃げた掏摸に銭がヒットするのは稲荷社前、帰る高瀬に礼を言う平次は東門。
・釣りに出た平次が先客の高瀬と出会う水辺、大覚寺大沢池水門傍。
・番所を襲い掏摸を連れ出し密殺する男たち、木島神社。駆けつける平次たちは参道石畳、悲鳴に気付くのは舞殿前、殺害現場は境内摂社。
・仕事帰りの高瀬が哲之助を伴い帰る道、大覚寺放生池堤。哲之助が狙う仇が自分と知り物思う高瀬も同所、哲之助に本名を明かし仇討免状を貰って来いと指示するのは護摩堂前。
・高瀬が哲之助に討たれようとする総泉寺、赤山禅院雲母不動堂前。
・国へ帰る哲之助に同道する高瀬を見送る街道、北嵯峨農地竹林際に茶店あしらい。
*高瀬浪人は伊吹吾郎、豪快な殺陣もあり。いい仲の女は松本留美、哲之助は高野浩之。高瀬をたばかっていた現江戸家老は江見俊太郎、つるむ悪徳商人は永野辰雄。


第594話「冬の蜆」1977.10.19 44

 託された身代を、生さぬ仲の兄になんとか継がせようとした義妹の努力は、所詮性根の治らぬ道楽者に通じず終るが、幼時より彼女を護ってくれた男と結ばれての再出発が叶い、親分はそれを寿ぎにやって来る。

ロケ地
・お柳の回想、肝の臓が悪かった彼女のために冬の荒川に入り蜆を漁ってくれた与一、広沢池東岸か(水はけっこう濁水、汀と叢には降雪)
・怪しい「兄」が泳げるか試すため八に芝居を打たせるくだり、「酔っ払い」八が七之助にぶち当り川に落とす川端は嵐山公園中州岸
*お柳は酒井和歌子、手代の与一は酒井修、お柳の味方の大番頭は山村弘三。家出から急に帰って来た腹違いの兄は河原崎建三、お柳目当てで「兄」を使嗾する大黒屋は富田浩太郎。


第595話「ひとでなし」1977.10.26 44

 恋に迷った愚かな娘の行為は男の運命を狂わせ、世を拗ねた男は血も涙もない高利貸しになりおおせる。その悪評にずっと心痛めていた娘は、再び稚気溢れる健気さで男を危地に陥れてしまうが、平次により凍った心を溶かされていた男は、全てを赦し娘に感謝するのだった。

ロケ地
・幸助の前に突然姿を現した元恋仲の「お嬢様」が店を再興すると称し助力を要請する川端、上賀茂神社ならの小川神事橋たもと。そのあと現れてお嬢様に幸助を大事にしてやってと頼むおふくはならの小川畔・祠の前。
*世人に「ひとでなし」と呼ばれる高利貸しの幸助は森次晃嗣、昔同じ店に勤めていたおふくは原田英子。幸助に讒言され島送りになったことを恨み「お嬢様」を使い罠を仕掛ける悪党は中田博久で、お嬢様は彼も呆れるあばずれに成り果てている設定。


596話「夫婦屋台」1977.11.2 44

 夫婦でする苦労は蜜の味、しかしその幸福は突然現れた前の亭主によって断ち切られる。女に枷をはめた事件は、親分の調査によりからくりを暴かれ悪いヤクザ一巻の終わり。

ロケ地
・おしのが前の亭主に脅され石で頭を殴ってしまう池端、赤山禅院西池畔。
・壺振りに戻るよう強要されたおしのが物思いに沈む橋、中ノ島橋
・姿を消したおしのを探し当ててやって来る父、大覚寺天神島大楠根方。
*おしのは磯野洋子、今の亭主は平井昌一、父は小栗一也。本所深川一帯の縄張りを賭けた大勝負のためおしのの壺の腕を要する貸元は今井健二、手下に唐沢民賢。


第597話「謝り八州」1977.11.16 60

 奇妙な賊の正体が泣かせる話、平次に見露された親爺はあっさり観念、情けで袖から舞台を見せて貰ったあと、引かれゆく彼の耳に二代目を誉めそやす喝采がこだまする。

ロケ地
・八に恋の悩みを持ちかける錺職の作蔵、神泉苑法成橋とたもと。
*冴えない一座のため盗みで穴を埋める裏方の老爺は今福正雄、座頭の二代目は北上弥太郎。一味の下っ端にホットマネーの細工を強要される錺職は大竹修造、恋人は鮎川いづみで八が失恋。*タイトルは賊が置いてゆく貼り紙、盗んだ多寡を記した「詫び状」。二代目の舞台を爺さまに見せるくだり、橋蔵の説く芸事の心得が圧巻。


第598話「万七忘れな草」1977.11.23 44

 甥の結婚に加え、昔の女との再会に舞い上がる万七親分。しかし祝言の直前賊が正体を現し大騒動、事後毎度の運びで万七の恋は破れ空しい妄想が頭を駆け巡るのだった。

ロケ地
・船頭に変装し探りを入れる平次、船にいるところへ声をかける義平は広沢池東岸。このほかにも船宿付近の情景として登場、替玉と思われるが平次のドボンもあり。
*万七の昔馴染の船宿の女将は南田洋子、生さぬ仲の青年は真夏竜。船宿の板前に擬態していた賊は清水彰。*短筒を持つ賊だが銭にはたき落とされ、親分はすかさずその銃を拾い一発ズドン、連発ですか。


第599話「冨くじ騒動」1977.11.30 44

 子のため足を洗ったやもめの掏摸は、額に汗し日々を過ごすが、富籤当選という降って湧いた幸運が彼を不幸のどん底に突き落とす。子供の誘拐という事態を受け、慎重を期す平次の苦衷も見どころ。

ロケ地
・身代金を作るため再び掏摸に手を染める新介、稼ぎを得るためヤバいシマの水天宮の縁日へ入り込むくだりは上御霊神社。露店は参道にあしらい、シマの主の伊蔵たちに露見しボコられるのは本殿裏手、平次が出て伊蔵たちを懲らすのは参道、逃げる新介を銭で止めるのは楼門。
・身代金受け渡しに指定された湯島天神へ赴く新介、木島神社参道、舞殿前。
*新介は佐々木剛、彼を慕う長屋の女は藤江リカ。伊蔵は西田良。家作の空き家に新介の倅を隠していた大家は三谷昇。*富籤を共同で購入というよくある筋立てを人情話兼サスペンスに仕立て、些か牽強付会なるもいたずらガキのかくれんぼが大家の女房の神隠しの暗示になる筋立てはなかなか。当り籤がパァのくだりでは、通夜の席でとんだ「黄金餅」をやらかす親友の女房が新介の人の良さや情けなさを強調するほか、「大家」の伏線も織り込まれ妙。


第600話「陽にそむく女」1977.12.7 44

 回船問屋の船頭殺しに端を発し、船頭の娘もさらわれて怪しい匂いのたちこめる事件は、哀れな境遇の裡に諍う姉弟を悲劇に追いやって終るが、新しい命の芽生えが救いとなる。

ロケ地
・船頭の死体が見つかる水辺、嵐峡汀。
・抜け荷の証拠書類が隠されていた船頭の墓所の寺、永観堂。船頭の卒塔婆は墓地に、再度やって来た平次が住職から書類を貰い受けてくるくだりは阿弥陀堂前と墓地石段。
・事後、釣りに出かける平次と八、相国寺放生池
*船頭の娘は黒須薫、恋人の佐吉は佐藤仁哉、佐吉の姉で井筒屋の妾のお艶は三条泰子。井筒屋は高桐真、抜け荷で彼とつるむ船宿の主は中井啓輔。


第601話「父と娘」1977.12.14 44

 親子の固い絆を描く情話。事件の解明は娘の二親の酷い死に様を暴き出し、養父こそ仇の一味と知れるが、ともに暮らしてきた時間こそ娘にとって真実なのだった。

ロケ地
・縁日でチンピラにからまれるおみつ、上御霊神社舞殿前。帰ってゆく父子は楼門。
・おみつの恋人が一味に殺される町角、大覚寺五社明神舞殿前。
・先代の娘と判ったおみつを迎え入れる寮、大覚寺望雲亭
*おみつは鈴木美江、父・芳三は内藤武敏。お店乗っ取りの番頭で現当主は袋正。おみつにからむチンピラの一人に福ちゃん。


第602話「廻り舞台」1977.12.21 60

 スランプの役者を支え励ます女だが、出世に障りと言われ別離。その後の二人の運命は大きく隔たり、女の情夫は昔をネタに襲名披露前の役者を恐喝。罪を免れぬ女だが、裁きが下るまえに恋しい男の晴れ舞台のたった一人の観客となり、中空に喝采を聞く。

ロケ地
・辻琴を弾くお秋を見る平次、相国寺湯屋前。お秋の消息を求め、何か知っていそうな素振りの中間をシメる平次、大光明寺南路地
・要求された金を持って神社に赴く吉三郎、赤山禅院本殿脇。物陰から彼を見たお秋は、姿を現さず立ち去る。
*お秋は野川由美子、吉三郎は青山良彦、二人を別れさせた親方は加賀邦男。お秋の「無理矢理」情夫で恐喝が生業の強面は五味竜太郎。


第603話「投げ銭を拾った娘」1977.12.28 60

 生まれつき心臓がわるく寝ついたままの富商の娘、離れの工事に来ていた若い大工を見て恋心をときめかせるが、男は借金返済を迫られ人を殺めた身上。事実を知った娘が発作を起こすのを案じる父親を押しとどめ、親分が深い心で見届けさせたゆくたては、娘に命へのつよい執着を生じせしめる結果となる。

ロケ地
・若い大工・三吉が嶋屋の娘・おいとにせがまれ散歩に連れ出す市中、上賀茂神社北神饌所裏手(二人が腰掛けるのは縁先)。姿を消したおいとを探しにやって来た父や平次が二人を見るのはならの小川畔。
*三吉は高城竜也、おいとは池上季美子。三吉が激情のあまり殺してしまった質屋とつるみ数多の女を苦界に叩き込んだ女衒は木村元。*タイトルは、捕物の際嶋屋の手水に落ちた銭を見つけたおいと、リリーズのお友達で平次の話を普段から聞いていた設定。


銭形平次 表紙


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