銭形平次788〜816話  フジテレビ/東映

キャスト
銭形平次/大川橋蔵
お静/香山美子
八五郎/林家珍平
おきよ/市毛良枝 おくみ/桂木あや
松吉/鎌倉俊明
万七/遠藤太津朗 留造/有光豊
善太/京本政樹
矢吹圭一郎/森次晃嗣


第788話 「藤娘の謎」 1981.11.25 77

 藤娘の装束を着た娘が殺されて見つかった件は裏にトンデモ組織、悪趣味な桃色接待を企んだ悪党を懲らしめる。下っ引志願の青年が見習いを許可される次第を、謎解きのプロセスにからめて仕上げてある。

ロケ地

  • 八に駆け寄り平次への紹介をねだる善太、中ノ島橋。ここから土左ヱ門を見る運び、大川端での検分は桂川河川敷(罧原堤付近)で。
  • 長崎へ回る予定の平戸屋の船、琵琶湖

*異人に女色接待で阿漕な商売を重ねる平戸屋は田中浩、ラス立ちではサーベル振り回して抵抗。美人を物色する役目の南蛮一座、座頭は長谷川弘で太夫は志麻いづみ。善太の母は伊吹友木子。
*生き人形に仕立てられる娘たちの扱いがヘン、監禁してある牢でも衣装着せてあるし、甲板に人形入れるでっかい箱置いて娘たち入れてあるし、「見せる」都合はわかるが不自然すぎ。


第789話 「死罪を願う女」 1981.12.2 50

 腐れ縁だが愛していた男を殺した遊女、裏には哀れすぎる事情。ヒモから逃れたかったという供述は、生まれて初めて幸せをくれた男を庇っての虚偽、そして再びその男に魔手が伸びると知った女は捨て身で脅迫者に向かってゆく。

ロケ地

  • 宇之吉がおせんを堕胎させた千住の小屋、広沢池西岸湿地に小屋あしらい。養魚場流れ込みの奥の葦原に設置。
  • 宇之吉とおせんがデートの水辺、広沢池観音島
  • 千住から帰った平次が渡る二ツ目橋(本所竪川か)中ノ島橋(親柱に橋名被せ)。子守女とすれ違い、逃げた宇之吉を追ったおせんを想像。
  • 芳三に返り討ちにあって死んだおせんを、戸板に乗せて運んでゆく出頭場所(伝馬町の牢が火事で解き放ち中)の下谷・蓮慶寺、大覚寺参道と大門(看板に寺名)

*おせんは根岸季衣、情念の女を熱演。おせんと結婚するも逃げ、今は大店の入婿の宇之吉は河原崎建三。岡場所の遊女のおせんのヒモで宇之吉を恐喝しておせんに刺された仙次は福本清三、ぐっさぐさに刺されて喚きまくり・さすが名斬られ役。新たなる脅迫者・芳三は木村元、彼の情婦でおせんの朋輩な遊女は辻本厚子。


第790話 「平次軍団仕掛ける!」 1981.12.9 50

 花街建設に邪魔な親爺が消された事件、尻尾をつかませぬ黒幕という難事に、血気の青年たちの力を借りて平次が乗り出す。実行犯が逃げ込んだスラムに潜入した「平次チーム」が、機略を用いて殺人者を騙し連れ出すプロセスが傑作の痛快な一話。

*ロケなしセット撮り、スラムのセットはよい出来。設定は羅生門河岸、たしかにあまりお上品なところではないが、新吉原はあんなスラムじゃないと思うケド。ムシリつけてボロ着てるが上品すぎの親分に対し、八のカッコ傑作・腹の出具合にもよくマッチ。
*但馬屋殺しの仙三は松山照夫、だんだん平次に乗せられてゆき、着いた先が実はというオチにがっくり肩を落とすのが傑作。彼を追い使う香具師の元締は菅貫太郎で、一発でのされる弱さが笑いを誘う。依頼者の材木商は稲葉義男。平次とともに潜入の若者たちは善太の友人で、鳶に大工に花火師と揃い、仙三持ち出し用の箱作ったり橋を爆破したりと活躍。


第791話 「顔のない狙撃者」 1981.12.16 50

 男に棄てられた女が企む狂言は哀れな屍を積み上げて幕切れとなるが、引き起こしたトラブルは入婿話をご破算に。

ロケ地

  • 利三郎狙撃を阻止され逃げた源次が滑落する石段、豊国廟参道鳥居下。
  • 浅吉の亡骸が掘り出される竹林、北嵯峨か。

*茶屋女・おゆうは上村香子、彼女を棄てた利三郎は大竹修造。狂言のため消された浅吉は安井孝、おゆうに雇われたスナイパー・源次は椎谷建治。


第792話 「人情渡り鳥」 1981.12.23 77

 はずみで情夫を刺殺した女を庇う男、その女は悲惨な経緯で死んだ、彼の女房とそっくりの顔をしていた。

ロケ地

  • 弥三郎に聞き込みをする市中、御香宮参道。
  • 弥三郎の回想、無実の罪で連行された越中の在のくだり、弥三郎宅玄関は不明、放免されて駆け戻る道は木津堤、走る村中は民家前。設定は越中・山田村。
  • 行商に回る弥三郎のイメージ、遠景の山道や谷に渡された橋は谷山林道か。隧道イメージは落合トンネルか。この間、枯れたいい感じのおわら節が被る。
  • 早暁、待ち合わせる弥三郎とお房、流れ橋下。お房と平次らが旅立つ弥三郎を見送るシーンは橋上。弥三郎は上州を回ってから帰郷の予定・設定は千住大橋か。

*富山の薬売り・弥三郎は坂上二郎、女房と二役のお房は葉山葉子。お房のヒモで盗っ人を強請った池松は黒部進、ものすごい顔して死んでて笑える。賊のかしらは小田部通麿、例の奇妙な訛の上方弁。


第793話 「鶴が殺した」 1982.1.6 78

 話のキモは、蕎麦屋の親爺のダイイング・メッセージの謎解き。これに、盗っ人の実父を獄門台に送った元岡っ引を父と慕うに至る情話、二世を誓った男がその恩ある父を殺したと知っての葛藤、その男が関わっている麻薬密売組織の怪しげな匂いなど、たっぷりエピソードを詰め込んで、そのうえレギュラーのおちゃらけまで積み上げて、年のはじめの放送は賑やか。

ロケ地

  • おしのが男と会っているのを勘助が見る橋であり、その男の悪事を見た勘助が番所へ走る途中渡る橋、その後も何度も出てくる「中之橋」は中ノ島橋。欄干越しに堰堤の落水を映したり、ローアングルで橋の反りを強調したり、情感たっぷりの夜景を出してみたりと凝った絵がたくさん。設定は劇中出てきた地図を切絵図で捜すとどうやら西堀留川の中之橋、日本橋小舟町と本町の境にあった橋と思われる。
  • おしのが思い決めて常吉を呼び出し、父を殺したか問う川端、広沢池北岸。
  • 勘助の遺骨を抱いて故郷へ帰るおしのを見送る街道、北嵯峨農地農道。

*おしのはいしだあゆみ、身を売ってまで養おうとした弟妹を亡くし絶望の果て自刃しかけた傷があり、それを隠すためマフラーを常に巻いているのが印象的。勘助は花沢徳衛、常吉は北村総一郎。
*巧すぎの女優とよくできた脚本でいい出来のお話だが、平次の推理は飛びすぎててちょっと笑える。
*タイトルにも採られている「鶴」は常吉が持っていた印籠の紋、身分ありげな戸田家の光琳鶴。


第794話 「危うし!亀沢藩十二万石」 1982.1.13 78

 プチ天一坊事件発生、御落胤に仕立てるべく子供をさらったうえ母の命をタテに脅す卑劣漢どもを、平次の十手は許さない。将棋上手の大目付との関わりも、しっとり描かれて楽しい。

ロケ地

  • 品川宿はずれでさらわれる京太(小田原から一人で江戸の母に会いにゆく旅の途中)下鴨神社泉川畔。
  • 亀沢藩城イメージ、彦根城天守(サブタイトル被り)
  • 亀沢藩上屋敷、大覚寺大門。参道を御落胤の駕籠がやってくる。
  • 墓参の御落胤、不明(丘の上の墓地か)
  • 御落胤が滞在中の亀沢藩下屋敷へ植木職人に化けて入る平次、枳殻邸(門は映画村セット)。腰元たちが立ち働く御廊下を池越しに見遣り松をいじるシーンは臨池亭、スキを見て奥庭に入り込む際隠れる渡り廊下は回棹廊縮遠亭前で御落胤が鞠遊び・それが転げて下にいる平次の足もとへ。
  • 御落胤出生のウラ取りのため保土ヶ谷宿へ早駕籠を打たせる八、大覚寺大沢池北辺並木(紅葉)
  • 御落胤を演じさせられている京太のもとへ母のおこうを連れて急ぐ伊吹同心や八らが走る道、大覚寺有栖川畔〜五社明神(ここで浪人の襲撃)大沢池畔。
  • 亀沢藩の殿様との御対面に出かける御落胤の行列がゆく道、枳殻邸高石垣際。対面場所に指定の本所松平家の庵・珠光庵入口、不明。
  • 庵で悪党を指弾したあとの大立ち回りが殺到する庭の橋、枳殻邸侵雪橋。戦闘を終えた平次に駆け寄る八ら、傍花閣前。このとき侵雪橋に神林さまが出ていて微笑みあう。
  • 小田原へ帰る母子を見送る街道、下鴨神社馬場(レンブラント光線目立ち)

*御落胤事件を追う大目付・神林は島田正吾、平次との馴れ初めは風呂屋の将棋。御落胤を仕立ててやって来る元尾張の御典医とかいう怪しのおっさんは川合伸旺、メイク怖し。相棒の下品な侍は堀田真三、手下の殺し屋は福本清三(薬売りのなりをして京太の母を殺しにかかるも失敗、のちに消されてみつかる)。京太の母は長内美那子。


第795話 「八五郎替え玉作戦」 1982.1.20 50

 事件性は高いものの物証に乏しいヤマに、平次が思いつくのは実行犯誘き出しのお芝居。目撃者の大工に化けさせられた八はさんざんな目に遭うが、最後は立派に役目を果たし悪党ばらを焙りだす。

ロケ地

  • 肝の病で頓死と済まされた兄の死に不審を抱いた妹が、番所に入りあぐねていたのを見た平次が呼び止めて話を聞く市中、二尊院境内〜紅葉の馬場。
  • お絹の回想、帰らぬ兄を案じ訪ねていった根岸の寮、中山邸通用門。

*毒殺された若旦那の断末魔を目撃した大工は轟二郎、八は彼の格好をして囮に。若旦那殺しの番頭は花上晃、毒を処方したやさぐれ医師は西山辰夫、兄の死に不審を抱き番頭を恐れる妹・お絹は若原瞳。
*殺された若者の身元を洗うため調べさせた早桶の数に感慨を抱く平次、天寿を全うせぬ人生が多いことに関しての台詞が「エースをねらえ」ふう、なにか意味深。


第796話 「初恋の罠」 1982.1.27 50

 命の恩人であり兄と慕う青年への、少女の恋はけっこう真剣。彼が毎日連れまわした理由を、隣の両替商に向けて掘られた庭の穴を見て瞬時に覚る娘だが、甘酸っぱい思いは大人の恋愛に変わりかけていた。

ロケ地

  • 道場帰りのおけいが八(仕事サボってつきまとい中)と歩く道、大覚寺放生池堤。叔父にと薬草を摘むシーンあり。後段、道場を辞めての帰り道も同所。
  • 久しぶりに「兄」矢七とおけいが再会する橋、中ノ島橋。後段も頻出。
  • 矢七と待ち合わせのおけい、大覚寺護摩堂。ここでおけいの叔父夫婦(両替商の隣で下駄屋を営む)が保養に行ったきっかけは矢七の奨めと知れる。
  • 捕まるも自白せず舌噛み切って死んだ賊の情婦を探し当て、つけると入ってゆく盗っ人のアジトの陋屋、広沢池東岸の料亭(?)(撮影当時いかなる形態だったかは不明、現在は「跡地」)
  • 事後、「普通の娘」に戻ったおけいが女友達と談笑しながらお花の稽古から帰ってくる道、中ノ島橋下手右岸河川敷(中ノ島橋は映さず、見遣る平次と八は映画村日本橋)

*おけいは黒木真由美、火事の際彼女を救った鳶の青年・矢七は小野進也。賊の首領は五味龍太郎、舌噛んだ手下は出水憲司で情婦は小林千枝。
*おしまいに八と善太のおちゃらけ入り、なんか仮装大会とか言って女装。京本っちゃんはフツーに女形だけど八はキモ老婆。


第797話 「逆手一文字斬り」 1982.2.3 78

 仇討ちもの。行為と制度そのものへの疑問に導く作りで、関わる者たちの人生を照らし出すドラマも丁寧で深い。

ロケ地

  • 源蔵と話し合いに来た弥兵ヱが、用心棒に連れてきた伊十郎を待たせる水辺、大覚寺大沢池畔。屋形船は船着(小)に係留されている。話を終えての帰り道、浪人たちが出て伊十郎が応戦中に弥兵ヱが斬られるのは五社明神、翌朝の検分は池畔。
  • 辰之進を呼び出し問い詰める伊十郎、今宮神社。若宮社や稲荷社など摂社脇。
  • 仇の玄蕃を見つけ駆けつけるも消されたあと、という事件のあと調べを受けての帰り道、伊十郎に何を隠しているのか問い「真実」に気付き目を瞠る梢、神護寺金堂下石段。辰之進への思いを聞かれたあと苦悩していた父を思い出す段は五大堂脇、カメラ基壇の亀腹シルエット越し、人物の背後の潅木に石段が透けて見える。
  • 伊十郎が辰之進を呼び出し決着をつけようとする駒留橋、流れ橋。橋下で芝居が進行、駆けつける八や平次は橋上、立ち回りは川中に及ぶ。

*梢は小林かおり、父の友人で後見人の潮田伊十郎は財津一郎。二人の仲については、善太の思い違いや辰之進の邪推が出るが具体的言及はなし、しかし十分に空気が伝わる脚本と演技がマル。梢の許婚者で逆手斬りの遣い手・筈見辰之進は鹿内孝、雇い主の悪徳大工は井上博一、殺される顔役の弥兵ヱは河合絃司。


第798話 「御宿しもだや殺人事件」 1982.2.10 78

 江戸で散財するお大尽が泊まる旅籠、ある夜の同宿者は皆一点を見つめ異様な雰囲気。そしてお大尽は殺され、謎解きがはじまる。Murder on the orient express を翻案したかのような作りで、お大尽は「カセッチ」同様の悪漢、泊まり客たちは三年前の悲劇の関係者だった。

ロケ地

  • 勘定方与力・松坂が責任者をつとめる御用金運搬の一行が投宿した甲州の庄屋宅、民家門。そこを襲った賊が殺されて見つかる山中の小屋、不明。
  • 平次の慧眼を案じた三枝が呼び出しをかける愛宕不動尊、蓮華寺五智如来像。抜くものの斬る気はなく投降。

*お大尽の信濃屋は外山高士。旅籠を仕切る番頭は穂高稔、予約いっぱいの筈の宿に泊まりにゆく娘は三浦リカ、信濃屋の部屋を凝視していた鳥追いは北川恵、信濃屋に斬りかかり投獄された渡世人は根岸一正、お伊勢参りと称しやって来る年寄りは永井柳太郎、信濃屋に雇われかける三枝浪人は青山良彦。


第799話 「雪の夜の密室殺人」 1982.2.24

 楼の女将の不審死は果して殺し、平次の推理が冴える謎解きと、女将の非道に泣く者たちの情話が併せて語られる。綱渡りとか、揉み療治の背後で吊りとか、妙な迫力の絵も見もの。

*ロケなしセット撮り、しんしんと降る雪とふかふかに積もった雪と、質感よく出た作り。
*三味の師匠は中村晃子、下女のお鶴は佐久間真由美、欲深で癇癪持ちの女将は三浦徳子。使い込みをしていた被害者面の番頭は穂高稔、目撃事実を隠匿し番頭を強請るも平次の情に泣く老爺は北村英三、喧しい按摩は梅津栄。


第800話 「椋鳥の春」 1982.3.3 50

 妹を遊女にしたくなくて必死の出稼ぎ青年はとんだ罪を着せられかけるが、椋鳥の正直さを信じる平次は奔走、遂に真実を明らかにする。正直者と外道のコントラストをやりすぎなくらい利かせ、ドラマを作る。

ロケ地

  • 強盗を働いた地回りを刺した雅吉が隠れる鎮守、鳥居本八幡宮(石段越しに舞殿見上げ、「神輿小屋」内部はセット。同郷の友人が飯を運び)
  • 隠れ潜む雅吉が思い出す故郷の祭礼、藪田神社。舞殿(まだ萱葺)から参道へパン、幼い雅吉兄妹が参道をゆく絵には里の遠景も映り込む。設定は信濃の在所。
  • 雅吉が金を作りに行った奥秩父へ向かう平次、早駕籠仕立てての道中は清滝河畔(高所から見下ろし)保津峡落合崖道。石切場でもっこ担ぎの雅吉に声をかけるのは落合桟道、話を聞くのは落下岩。

*雅吉は中村梅雀、妹は笠間一寿美、同郷の青年は頭師佳孝。妹を気にかけてくれる岡場所の女は田中綾、荒っぽい女衒は黒部進。欲深いうえに助平な雅吉のお店の若旦那は沖田駿一。


第801話 「命売ろう」 1982.3.10 78

 命を売ると公言する浪人が現れ物議を醸すが、奇矯の裏には明確な目的。友の汚名を雪いだ男は朗らかに笑い、未亡人と遺児を堂々と愛する。片や人を殺めてまで守ろうとした格式は地に堕ち、全ての因となった女の嗟嘆を顧みる者は一人もいない。

ロケ地

  • 河内屋の女将を乗せた駕籠が谷中・感応寺へ向かう道、金戒光明寺永運院下坂〜三門(駕籠を降りる)〜文殊塔下墓地。女将を大熊半兵衛がつけ、そのあとを八たちがつけるが、二人とも大熊に当て落とされ気絶←別の事件で出張った親分が倒れている二人をぺちぺち。
  • 感応寺の寺侍が殺されて見つかる境内、金戒光明寺本堂・方丈間の回廊下の通路。大熊が凭れているのは本堂脇。通路をくぐった先に出合茶屋がある設定、ここはロケかセットか不明。
  • 河内屋と大熊が船上で対決の大川、琵琶湖東岸(沖ノ島と八幡の山なみの見え方、および「州」のできかたから日野川河口の浜と思われる。けっこう危ない場所での撮影、加えて波高し)

*大熊半兵衛は川津祐介、河内屋の入婿は久保明、家付き娘の女将は北林早苗、浮気相手の寺侍は峰蘭太郎。


第802話 「死の遺産相続」 1982.3.17 50

 その昔平次の捕物に協力し更正を誓った賊の情婦は、いま大店の後妻におさまり後継の件で岐路に立たされていた。結局誰も彼も不幸にした騒動の起こりは昔の因果、悪い運命に追いつかれた女はせめてのことに平次を庇って逝く。

ロケ地

  • 変死人を見に番屋へやって来たお島と外で話す平次、広沢池東岸汀。
  • 平次に犯行を告白して数合斬り結んだあと、わざとらしく用意した船で逃げる榊原浪人、罧原堤下河原(棹は自ら操り)

*お島は左幸子、榊原は中田博久。お島を後妻にした松前屋は谷口完、跡目を狙う義弟は守田比呂也、若旦那は本物も偽物も石田信之。
*お島の軽口「一夜を共にした仲」にドン引きの万七らが大笑い、即お静に注進している八にも大笑い。


第803話 「偽証」 1982.3.24 50

 複雑な手法を用い殺人犯を庇う女、しかしその男を守ってやるためではなく、捨て身の抗議。フレームアップにより大事な人を亡くした女二人の、哀れな思いが隠されていた。

ロケ地

  • 夜鷹のおしんが殺されて見つかる葦原、広沢池北岸(水無し)

*偽証する酒肆の女は結城しのぶ、彼女の許婚者の姉だった夜鷹は三島ゆり子。金貸し殺しは火野正平、処々に妙な可愛げはあるもののただ単に悪い男←女たちにクズとか言われてるし。


第804話 「夫の過去が暴かれた」 1982.4.7 79

 死後明らかとなる亭主の正体、盗っ人の隠し金をめぐり物騒な男たちがわらわら湧いて出るが、義兄と称する渡世人は兇状持ちにも関わらず優しく、親身になってくれるのだった。

ロケ地

  • 井筒屋の死体が見つかる大川、検分は大覚寺大沢池(屋形船繋留)
  • 井筒屋が拷問されたお堂、大覚寺護摩堂(八の聞き込みで行ってみると中から怪しの虚無僧が飛び出て、天神島のほうへ逃げてゆく)
  • 井筒屋新三郎が埋葬される墓地、招善寺墓地。会葬者たちは坂をおりてゆき、本堂前で女房の挨拶を受ける。お堂前には目付筋と称し接触していた津島主水がお光を待っている。この間、平次はまだ墓地にいて乞食姿の八とツナギ、ここへ浪人たちの襲撃で立ち回り、坂もたっぷり使う。
  • 津島がお光に語る卍組の顛末、御用金盗のくだりは北嵯峨・陵前の竹林。
  • 卍組の儀助と勉三を芝居でハメた平次が二人を丸め込む市中、大覚寺五社明神祠脇。
  • 魔鏡に記されていた一万両の隠し場所・下谷竹剣稲荷境内にある踏石、吉田神社竹中稲荷裏手摂社群にある設定。

*信じては騙され人生に倦むお光は山口果林、津島主水と称しお光に接触する賊のかしらは綿引洪、儀助は唐沢民賢で「小田部通麿ふうアクセントの関西弁」、勉三は榎木兵衛。


第805話 「八五郎に嫁がいた!?」 1982.4.14 50

 ハイテンションな女につきまとわれる八、もちろんマジでモテているわけではなく心算あってのこと。騙り夫婦に付け込む更なる悪党が現れ、事態はとんだ人情劇に。

ロケ地

  • おもんが八を追いかけ回したあと頼みごとをするくだり、大覚寺有栖川畔(河床から見上げ)〜護摩堂(精魂尽き果てた八がへたり込み←おもんが夫婦芝居を懇願)
  • おもんが連れていた幼女が賊にさらわれ監禁される小屋、ロケかセットか不明。
  • お千代を捜し疲れた夫婦が座り込む坂、二尊院紅葉の馬場(鮮やかに紅葉)

*おもんは中村メイ子、亭主は山田吾一。木賃宿で彼らの企みを聞きつけ、八の横取り利用を思いつく蔵破りは田畑猛雄と西田良、万七が作った手配書が神レベルにそっくり。


第806話 「殺意の手紙」 1982.4.21 50

 十手持ちの風上にもおけぬ恐喝男が殺された事件は、二組の男女が明暗を分ける結果に。凍結されていた愛が動き出すのを邪魔する無粋は、もちろん平次の仕事ではない。

ロケ地

  • 佐平二が殺されて見つかる、いつも下っ引と落ち合う市中、神護寺毘沙門堂階下。佐平二の女房に話を聞く茶店は山門内側にあしらい。

*佐平二は小林勝彦、女房は中島葵で下っ引は南城竜也。佐平二の妾にされていた常盤津の師匠は三沢あけみ、恋仲だった医者は安井昌二。師匠の首には心中沙汰の折の傷があり、隠すのに真綿を巻いている趣向・同様の設定でオーガンジー様の薄物をまとう例も見られる。
*導入は佐平二宛ての文が不慣れな飛脚により平次宅へ誤配される一件、佐平二宅は天神坂下同朋町。


第807話 「人情寿限無ばなし」 1982.4.28 50

 身持ちのわるい噺家を、いずれ名人になる男と妙に庇う冴えない「同業者」。彼の心情を汲み取ってちゃんと情にあふれた始末をつける親分、礼にと語る「寿限無」で締める。

ロケ地

  • 夢之助が武蔵屋の女房と忍び会う料亭、不明(本物の料亭か)。直後その女がヤクザに強請られる町角も不明、塀際(画面奥に竹垣)
  • おしんが勤める茶店を訪ねる四角、嵐山公園中州河畔にあしらい。渡月橋の橋脚が画面隅にちらり、万七がボヤきながらやって来るシーンでは川面にユリカモメ浮かび。
  • おしんが参る縊死した姉の墓、不明(大きな五輪塔が林立、立地は丘の上っぽい)
  • 武蔵屋の女房がヤクザに金を渡す川端、広沢池東岸。葦原にボロっちい感じで鳥居あしらい、北望・南望両方のアングルあり。刺された瞬間切り替わる、カモが飛び立つ絵はここかどうか不明。池水は少ない模様。
  • 火遊びの悲惨な結果を聞いた夢之助が慌ててヤクザに会う水辺、広沢池西岸湿地・養魚場流れ込み汀。葦原から善太が覗いている。
  • 自棄を起こす夢之助の話を聞く四角、仁和寺経蔵脇。夢之助は基壇に突っ伏して泣く。ヤクザが殺到するシーンには塔映り込み、夢之助を逃がすため負傷した四角のところへ駆けつけてくる平次のシーンは鐘楼脇へスイッチ、「誘導尋問」はここで。

*寿限無しかネタがない上方亭四角は笑福亭仁鶴、芸達者だが女癖のわるい異母弟・夢之助は高峰圭二。姉のことで夢之助を憎むおしんは村田みゆき、武蔵屋の女将は山口奈美。夢之助のネタで稼いでいたヤクザの親分は五味龍太郎、手下の脅迫者は浜伸二。


第808話 「平次・初恋の人」 1982.5.5 50

 偶然を装って平次の前に現れた「初恋の女」、職業病か、平次の眼は僅かな不審も見逃さない。周囲はすわ浮気と気を揉んだり火に油を注ごうとしたりするが、意図をもって近づいた女は亭主のことで頭がいっぱい、平次は捕物が第一で、色気のイの字も無いのだった。

ロケ地

  • ゆめやで再会したあと、お桂を送ってゆく平次、大覚寺放生池堤。池畔に茶店あしらい、お桂が駕籠に乗り込むのは石仏前。

*お桂は浜美枝、家庭内の事故で火傷を負い大工を続けられなくなった亭主は河原崎長一郎、彼が図面を渡してしまった賊のかしらは出水憲司。
*嬉々としてお静に告げ口しにゆく万七親分、マジで落ち込むお静を見てもひるまず、ウキキ状態なのが凶悪で笑える。こういうスベってる人演じさせたら遠辰は絶品。


第809話 「幻の殺人者」 1982.5.12 50

 幼時の恩を返すための愚直な行動は、結局は女に泣きを見せる。続けて碌でもない男に当たる女は、真に己を思う存在を見ていなかった。

ロケ地

  • 女将の相手の正体を知った三吉がそれを殺しにかかるくだり、尾行は中ノ島橋、仕掛けるのは上賀茂神社、神事橋を渡ったならの小川畔で縄かけて絞め上げ。このとき、女将が男を待つ料亭は嵐山公園料亭・ですぐ近く設定、絞められた男の悲鳴を聞いて駆けつけてくる。
  • エンディングの平次、仁和寺参道。閉じた中門を背に桜の回廊を演出した石畳をゆく。途中に段差も登ってるぽい。

*庭男の三吉は佐久間宏則、女将は本阿弥周子で、とんだ色悪だったお相手は住吉正博。


第810話 「なにわの彦六捕物帳」 1982.5.19 50

 事件を追って江戸まで出張ってきた上方の岡っ引は、泊めてくれた親切で婀娜っぽい姐さんにマジ惚れ。しかし女の背後に当の抜け荷商人がいて、浪花の親分危機一髪。

ロケ地

  • 天満の彦六が越中屋殺しに仕立てられるくだり、酔って前後不覚の彦六が調子のいい男に連れてこられるのは大覚寺大沢池畔・観月台前の船着(小)付近。翌朝目覚めると屋形船の中で、手に血がついてて血塗れの匕首があって越中屋が死んでいる船は大沢池船着(大)に繋留、やって来た船頭が人殺しと騒いで通行人に訴えるのは五社明神、慌てた彦六が逃げ去るのは大沢池木戸。
  • 万七から隠してくれた善太に、平次に取り次いでくれるよう懇願する彦六、大覚寺天神島朱橋
  • 大坂での遺留品の煙管を持って聞き込み回る彦六を肥後屋の手先が襲うくだり、下鴨神社泉川石橋〜泉川畔。駆けつけた平次が彦六に事情を聞くのは二の鳥居脇。

*彦六は芦屋雁之助、立ち回りになるとついプロレスや「魚籠」を連想してしまう。抜け荷の元締は和崎俊哉、妾で彦六に色仕掛けの師匠は水原麻記。
*情夫の指示で彦六に毒を盛る師匠、未遂に終るが後段神棚に供えてあったそれを「テスト」のくだり、どう説明をつけるやら鮮やかに赤変するのが大笑い。時代劇の毒ってやっぱすげーぞ。


第811話 「必殺千鳥鉄」 1982.5.26 79

 不気味な殺し屋が暗躍、平次の推理で次第につながりが見えてくる作り。欲をかいた者は真っ逆さまに転落、日陰を来た者に望外の幸という趣向で、陰惨な事件は終結する。

ロケ地

  • 近江屋を診ていた医師を狙って出る殺し屋、下鴨神社糺の森、河合社と塀際。社殿のスリットが殺し屋の影を不気味に映し、捕り方が潜んでいて飛び出してくるのに門を使う。
  • 下谷のるい宅から帰るおくみを、るいと誤認して狙う殺し屋、松尾大社摂社前。
  • るいを狙って出る殺し屋、広沢池東岸(水少なし)

*殺し屋・寸鉄の粂造は福本清三、目だけ菅笠から覗き寡黙なさまが迫力を増し怖い。立ち回りの身のこなしのシャープさも見もの、武器の凝ってさ加減と併せてほぼ今回の主役。病の床にある札差は西山嘉孝、元番頭の娘婿は石田信之、実は札差の隠し子だったるいは岐邑美沙子。


第812話 「無言の叫び」 1982.6.2 79

 悪党に人生をめちゃくちゃにされた女、健気に紡ぐ小さな幸せはその盗っ人との再会で再び踏み躙られる。しかし亭主が平次宅へ出入りしていたことから事態は好転、親子三人の暮らしが戻りメデタシ。

ロケ地

  • いなくなった源吉父子を捜す段、一人で神田川の岸に悄然と立つ源吉を見つけ捕える万七は広沢池西岸。後段、善太らが坊を捜して川浚えのシーンも同所。
  • 三太坊が捨てられていた安楽寺、不明(門越しに方形のお堂が見える。お堂は花頭窓を二つ持つ風雅な造り)
  • 三太が身につけていた守袋を発行したお稲荷さん、竹中稲荷か。
  • 三太をさらった夜吉がお駒を呼び出す「葦沼」、広沢池西岸
  • 事後、源太一家が揃って参詣しているのを平次夫婦が見て微笑むお宮さん、吉田神社竹中稲荷。平次夫婦は参道の重ね鳥居下から、本殿にお参りの一家を見る。

*捨てた我が子を拾った男に近づいて嫁すという数奇な定めの女・お駒は片桐夕子、亭主の大工・源吉は遠藤剛。お駒の情夫だった盗っ人・夜吉は遠藤征慈、家を出たお駒が働く酒肆の主で夜吉の手下な親爺は芝本正。源吉の住む長屋の騒がしくも親切な夫婦は正司敏江・玲児。


第813話 「おしゃまな妖精」 1982.6.9 79

 父のいない寂しさから、万七をお父っちゃんと呼び慕う幼女はちょっとした小悪魔。振り回されるのも楽しい万七親分、母親の元掏摸にも入れあげて舞い上がり、プロポーズ寸前。もちろん恋は実らず、幼女のお痛で凶賊にとっ捕まって大ピンチ。それでも別れが辛く、見送りにも行けず、我らが万七親分は言伝を聞きぼろぼろと泣く。

ロケ地

  • 万七を振り回した挙句、おんぶされた背で寝てしまうお千代、大覚寺五社明神
  • 水天宮前の茶店で行われる凶賊一味のツナギ、今宮神社門前茶屋・かざりや(一和側にも露店あしらい)。前に出した床机にいた赤マフラーの男が、はばかりにと席を立った池田屋が置いたままにした手提げ袋に質札を突っ込む。これをお千代がかっぱらい、赤マフラーに追われるのは今宮神社境内、稲荷社前〜高倉脇(お千代は高倉下の置き台下に隠れてやり過ごし)
  • お千代の母を訪ねると、むかしお縄にした掏摸、長屋近くで話すのは大覚寺天神島、近所の子らが池端で遊ぶ。後段、正体を現した賊にとっ捕まる万七のくだりも同所。
  • 日暮れて帰る母子、万七と別れる道は嵐山自転車道

*お千代は川瀬香織、母の元掏摸は長内美那子。マフィアばりの変態縛りが特徴な凶賊のかしらだった池田屋は船戸順、お千代にツナギの邪魔をされ制裁を受ける引き込み役の赤マフラーは福本清三(こんなの引き込みに使うの?どこのお店が雇うの?っていうビジュアルの福ちゃんが保存モノ)。


第814話 「妻からの告発」 1982.6.16 50

 万引きを繰り返し、捕まるも恬と恥じぬ武家の妻女。奇行の裏には、非道を許せぬ強い正義感が隠されていた。

ロケ地

  • 本所方与力・戸村源三郎の組屋敷、妙伝寺塔頭。
  • 告発者・鶴吉の名で夫を呼び出す若宮稲荷、今宮神社若宮社。ここは戸村の弟が兄の汚職を嫂に喋ろうとして殺された現場でもある。

*筆頭与力も間近とされる戸村源三郎は根上淳、妻女は南田洋子、弟は石倉英彦(刺されてあうあうの場面が何度も)。悪徳商人は高野真二、荒事をしてのける手下は阿波地大輔や小峰隆司。襲われた際もみ合って小峰さん刺しちゃう気の毒な告発者の大工・鶴吉は武岡淳一。


第815話 「悪への惑い」 1982.6.23 50

 貧ゆえついた盗癖は矯められず、病みついた幼馴染を助けたい気持ちが、たやすく青年の背中を押す。獄門台へ送れとふてぶてしく嘯く青年の命を救うべく、平次は奔走する。

ロケ地

  • 高札を見て名乗り出た吟二の母を連れてゆく大番屋、大覚寺明智門。息子に悪態をつかれ嘆く母は大沢池船着(小)。小伝馬町送りの際も明智門が出る。
  • 母の回想、盗みをやめさせたあとに目撃した、幼い吟二が賽銭泥棒をはたらいたお宮さん、大覚寺五社明神本殿。
  • なお知れぬ盗金の行方を求め、母子が昔住んでいた長屋へ行ってみようと八に話す平次、大覚寺護摩堂(背後に石仏ちらり)
  • 吟二の幼馴染で岡場所に売られ胸を患っているという女を捜す段、医者に聞き込み回るくだりで出る医者宅、留のは大覚寺望雲亭、善太のは大沢池木戸を門に見立て。いずれも看板あしらい。

*吟二は清水健太郎、母は荒木雅子、幼馴染の女は朝加真由美。


第816話 「江戸評判一枚刷り」 1982.6.30 50

 あまりに阿漕なヤクザの非道を見た親分は追放を決意、ビシバシ取り締まった結果悪の親玉は江戸を売ることに。喜んだ町衆は親分を褒め称え錦絵にまでなるが、そこに八っあんまで描き添えられていたことが、とんだ災いを呼ぶ。

ロケ地

  • 甚九郎らに命じられるまま八五郎を名乗って迷惑行為を繰り返す参次のくだり、漁師と事を構える河原は罧原堤下河原
  • 平次に捕まったあと鍛えられる参次のくだり、葦を刈り耕し青物を植えだす「開墾地」、桂川河川敷か。
  • 羅五郎たちが八を誘き出しかどわかそうとするも、文を読んだ参次が出向く烏ノ森、下鴨神社糺の森。立ち回りは池跡に移動。

*八と似ているとして道具に使われる、ヤクザ志願の馬鹿な若者・参次は湯原昌幸。彼にコナをかけられた純情秋田娘は清水めぐみ。江戸を売った悪党は菅貫太郎、身を寄せる越ヶ谷宿の兄弟分は汐路章。


銭形平次 表紙


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