銭形平次876話〜888話
フジ/東映

キャスト
銭形平次/大川橋蔵
お静/香山美子
八五郎/林家珍平
おきよ/市毛良枝
万七/遠藤太津朗
清吉/田井克幸
森川同心/滝田裕介


第876話 「笛屋敷殺人事件」 1984.1.11  52

 笛の佐野川流家元の後嗣をめぐる鞘当ては、遂に血生臭い事件を出来するが、事の起こりははるか昔。辛い日々を過ごしてきた家元夫婦の、強い紐帯が物悲しい。

ロケ地

  • 三代目指名の技競べの日、お静が入ってゆく家元屋敷の門、中山邸通用門
  • 三代目を射止めた男が祝宴の帰り殺される柳橋界隈、大覚寺石仏付近。
  • 三代目になれなかった了以が立ち尽くす川原、柊野堰堤下。
  • 三代目にくっついていた島帰りが殺されて見つかる柳橋界隈の溝、大覚寺放生池源頭(有栖川からの分流を導く土管が見えている)
  • 家元宅へ聞き込みにゆく平次、不明(導入は飛び石のある池泉、家元夫人が応対するのは茶亭っぽい建物の縁先)
  • 暇を貰うと言い出し家元に叱られた了以が笛をさらう川原、柊野堰堤。その音色が聞こえてくる家元邸の庭先、不明(娘が上がってきているので起伏があると知れる。阪口の庭のような作りか)
  • 家元夫人が平次の偽手紙で呼び出される明神境内、大覚寺五社明神本殿。この場へ出てきた家元が語る「犯行」の回想、大覚寺石仏護摩堂放生池源頭。先に出たシーンになかったアングルが足されている。

*苦悩の家元夫婦は横内正と赤座美代子、娘は松本美奈子で恋仲の弟子・了以(当字・正訓不明)は小林芳宏。家元夫婦を脅し三代目指名を強要した弟子は西園寺章雄、大元の色魔強盗は田中弘史。


第877話 「風は知っていた」 1984.1.18  52

 脅迫者を殺したと見られる男のアリバイ崩し、手詰まりと悩む平次にヒントを与えたのは、お静が買い求めていた風車を回す隙間風だった。

ロケ地

  • 結城屋の入婿が通いつめる水茶屋、不明(聞き込みのくだりでは庭木っぽい背景、尾行の段では門が映るがあしらいものっぽい←うしろに塀)
  • 入婿を呼び出し番頭殺しについて切り込む平次、愛宕念仏寺本堂脇。

*入婿は寺田農、平次との腹の探り合いが見もの。殺された番頭のことを聞き込みの段で火野正平カメオ出演。


第878話 「悪同心の野望」 1984.1.25  52

 出世という妄執に憑かれた者どもが落ちた闇は深く、保身行動がさらなる犠牲者を積み上げてゆく。途中からはもうコイツしか犯人有り得ない展開で親分もイヤーな顔して見ている始末、丁寧な現場検証がしたたかな悪党を追い詰める。

ロケ地

  • 南町奉行所、大覚寺明智門。出てきた筆頭同心・加賀を呼び止め内々に話がと告げる田坂同心、有栖川(河床から見上げ)
  • 加賀を殺る手筈を船頭と打ち合わせる田坂、中ノ島橋下・背割上(中州側の岸に編笠を着た長谷同心)
  • 加賀が呼び出される屋形船、大覚寺大沢池畔に繋留(以降も捜査段階で登場)。加賀を殺した船頭が死体を置くのは天神島祠、翌朝の検死で夜釣りに出ての凍死と片付けられ。
  • 荒らされていた長谷同心の部屋について考え込む平次、大覚寺大沢池船着(大)

*上司を殺る、ライバルの従兄弟を殺る、果てはグルの船頭も口封じという極悪同心は長谷川哲夫、地位を譲れと迫って殺される馬鹿な従兄弟は西沢利明でおんなじくらい悪辣設定。


第879話 「恐怖の宿」 1984.2.1

 身代金目当ての立て籠もり事件発生、居合わせた森川のダンナや万七に八まで人質に。新吉の潜入により投げ銭の効果が倍増、爆薬を無力化して悪党をお縄の運び。

*ロケなしセット撮り。一味の首領は苅谷俊介、裏切って消される子分は宮口二朗。脅迫の材料になる札差の放蕩息子は小野進也で父親は神田隆、若旦那と船宿にしけこんでいた水茶屋女は泉じゅん。
*脅迫に使う爆薬が漫画チックな束、ほとんどダイナマイト。親分の立ち回りはシルエット。


第880話 「花嫁殺人事件」 1984.2.8  52

 祝言の夜に起きた花嫁殺し、裏にはどろどろの愛欲。万七のフライングで牢にぶち込まれた前科持ちが、平次の活躍で救われてメデタシの絵で締める。

ロケ地

  • 殺人犯に手を貸した役者崩れのオカマが土左ヱ門で見つかる大川、中ノ島橋下手河原、見物衆は橋上に。
  • 大番屋、大覚寺明智門。釈放された彫師を見送ったあと、八と新吉を連れ町をゆく平次(ED被り)大覚寺放生池堤中ノ島橋上。

*花嫁を亡くした「悲劇の婿」の手代は河原崎建三、彼とわりない仲になっていた大店の後妻の「花嫁の義母」は亀井光代、娘を殺されたコキュは北原将光。疑いを向けられる彫師は大竹修造、偽証なんかもして彼を支える健気な恋人は田坂都。殺しのトリックに一役買ったオカマは峰蘭太郎、オネエ言葉での芝居もあり。


第881話 「裏切者は二度死ぬ」 1984.2.15  52

 押し込み強盗の内輪揉めと見えた事件はあとをひき、虚偽の果て黒い淵へ堕ちていった哀れで惨めな男女の事情が照射される。

ロケ地

  • 商家へ押し込んだ二人組が船で逃げようとする川端、大覚寺大沢池(相棒に刺されて瀕死の片割れを万七が知らずにぶっ叩き、死んじゃってびっくり)
  • 死んだ賊が葬られる了泉寺、不明(立地は丘の上か、墓石の間に落葉散り敷く林間。法名からみると浄土宗?)
  • お梶の回想、定吉に手を引かれ安中の岡場所を逃げ出したくだり、民家前畑。このあと逃げ回る竹林、および実を潜める小川は北嵯峨か。小川は大沢池土手下っぽい。

*己を死んだことにして盗金を独り占めしようとした賊は蟹江敬三、女房は山口果林。彼らを追ってきた安中の地回りのかしらは上野山功一。


第882話 「十手が泣いている」 1984.2.22  52

 隠れ遊びの賭場を摘発しようとした下っ引志願の青年の惨死、十手を貸したことで胸を痛める新吉の心も慮る親分が泣かせる一話。怪しのカジノ描写と、平次が隠し部屋を見破る段の仕掛けが面白い。

ロケ地

  • 茶室の地下に隠し賭場がある鳴海屋寮、不明(細竹編みの塀が続く瀟洒な冠木門、庭には大刈り込み)
  • 隠し賭場へ踏み込むも露見し殺された下っ引が見つかる川端、広沢池東岸(水無)
  • 隠し部屋を作った大工が殺されて見つかる葦原、広沢池西岸
  • 八の前で仕込み芝居をしてのける五郎蔵のくだり、町中のセットから移動する土手は嵐山自転車道、芝居→マジ刺しの原っぱは罧原堤下河原

*消される下っ引は三波豊和、彼を裏切っていた親分の五郎蔵は和崎俊哉。回船問屋の鳴海屋は武藤英司、手下に堀田真三や小峰隆司。


第883話 「盗まれた殺人計画」 1984.2.29  52

 金持ちの馬鹿旦那の人もなげな振舞いは、己が身に災いを呼ぶ。憎悪から発した企みの「変遷」を、再現ドラマタッチで描く。

*ロケなしセット撮り。馬鹿旦那は原田大二郎、赤マフラーの取り巻きは平沢彰、欲をかいた番頭は遠藤征慈で別の意趣もある模様。馬鹿旦那にいたぶられ殺しを企む鳶の青年は片桐竜次、計画に手を貸してしまう情婦は金沢碧。冒頭、馬鹿旦那と取り巻き連を見て平次にボヤく八のくだり、二人の後ろで蝦蟇の油売りの商品を見ている客に福ちゃんと峰蘭さんチラリ。


第884話 「狂言夢芝居」 1984.3.7

 憎めないモテモテ男が、髪結いの亭主におさまる過程を描く話。女ごころを踏み躙るお芝居は、とんだ性悪だったグルーピーに利用されておおごとに。

ロケ地

  • 髪結い女の前歴を聞き込む平次、木場イメージの材木置場、不明。
  • 髪結い失踪に関係していそうな元盗賊について聞き込み回る新吉、小峰さんのお面売りの露店は中ノ島橋たもと(欄干がちらりと映り込む)。万七が漁師らに聞き込む川端は嵐山公園中州舳先。

*四人の女を食い漁る青年は火野正平、はじめはターゲットに入っていなかった健気な髪結いは松本留美、彼を振る踊りの師匠と芸者は谷川みゆきに村田みゆき、可愛い顔して賊を引き込んでいた矢場女は栗田陽子。引き込みを強要する、髪結い女の亡夫の盗っ人仲間は浜田晃。


第885話 「平次隠密軍団」 1984.3.14  85

 森川のダンナに見込まれ地方へ遠征の親分、助っ人の青年たちの協力を得ての救出劇はスリル満点の演出。

ロケ地

  • 武蔵屋の娘がお花の稽古帰りに誘拐される道、車折神社参道。
  • 渡世人に変装し桑野宿へ向かう平次、嵐山自転車道広沢池東岸(水無)北嵯峨農地(農道)。以降、滝と山道は不明(琴滝に似たフォルム/林道っぽい道)
  • 桑野宿はずれの隧道、不明(山腹に「穴」、山肌に岩露出、ここへの道は谷地田っぽい野道、溜池端なども)

*助っ人は崎津隆介ら。桑野宿で生糸利権をむさぼろうとする貸元は汐路章、子分に黒部進や福ちゃん(大目立ちの保存もの・人質に持ってった握り飯の落としっぷりナイス)。


第886話 「悲しき嘘」 1984.3.21  52

 娘の幸せのため目撃証言を拒否する男、その用がなくなったあとの身の処しかたも渋いニヒルな親爺は若山富三郎、喧嘩独楽を生かした立ち回りも見もの。

ロケ地

  • 土地買占めに反対していた男が土左ヱ門で見つかる川端、桂川松尾橋付近汀(男の住まいは深川界隈)。お嬢様に別れを告げる手代のシーンも同所、よりはっきり流れの方向が見える。

*飲み屋の親爺の実の娘だった辰巳屋のお嬢様は高見知佳、恋仲の手代は南城竜也、辰巳屋の主は大木実で手下に江幡高志。土地買占めの黒幕の唐物商は北原義郎、調度の甲冑とか怪しすぎ。あと「独楽屋」の内装も笑える。


第887話 「母の涙のおわら節」 1984.3.28  85

 大火ではぐれた母子の邂逅、しかし互いの立場のあまりな違いに、母はきっぱりと血のつながりを否定する哀れ。気鋭の若手同心と、悪所で働くアル中老女の対比が鬼気迫る。

ロケ地

  • 保護された平次宅を出て彷徨うおたつ、おわら節を口ずさみ記憶を取り戻しかける川端は広沢池北西岸(水無)。おたつの回想、江戸さして旅ゆく越中藩士一家が歩む街道、北嵯峨農地

*記憶を失い炎にトラウマを持つおたつは小畠きぬ子、親とはぐれたあと同心の家に拾われた中原は宮崎達也。おたつのいる岡場所も経営する、タチの悪い地回りは田口計。


第888話 「ああ十手ひとすじ!!八百八十八番大手柄
        さらば我らの平次よ永遠に
」  1984.4.4

 幕府転覆を企む胡乱な軍学者とその一味を懲らすのがお話の要諦、秘密が漏れるのを防ぐため罪を着せられた町娘の逸話がからむ。

ロケ地

  • 火盗改長官・黒崎源蔵役宅、大覚寺明智門
  • 保利の本隊が集結する赤坂溜池の寺、神光院中興堂。立ち回りはセット併用。

*歴代出演者が顔見せするほか、豪華「友情出演」が目白押しの賑やかな最終話はスペシャル拡大枠の73分。
旧キャスト連/京本政樹・永田光男・森次晃嗣・鎌倉俊明はそのままの役どころで、森田健作と武田てい子は別の役柄で出演(「ひょうたんのお勝さん」は火事に驚いて出てくるおばさん、「青柳同心」は油問屋の番頭で出てきて火付け浪人について証言)。
友情出演・善玉連/里見浩太朗は南町奉行、汀夏子はは組のかしらの娘で恋人だった「一味の浪人」に舟木一夫、志垣太郎は大店の若旦那で恋人役の竹井みどりが冤罪で捕まる町娘・父の小間物問屋は武藤英司。なべおさみはは組の小頭、和泉雅子は飛脚問屋の女将で間抜け従業員が火野正平、あべ静江は怪しい酒肆聞き込みの際の証言者、野川由美子は番屋へ出前の蕎麦屋の女将、三嶋ゆり子は一味の浪人の情婦の酒肆女将、松山英太郎は不逞浪人の待ち合わせに使われて迷惑を蒙る酒肆の主、三田明は灯油を購った浪人について証言する蕎麦屋、桜木健一は「お勝さん」の倅、高橋元太郎は八が行く夜鳴き蕎麦屋、五木ひろしはい組の火消し、美空ひばりは平次の古馴染み設定・悪党が出入りの料亭の女将で冤罪娘の知人←「平さんはみんなの心に永遠」発言で物語の棹尾を飾る。
友情出演・悪役陣/クーデタを企む軍学者・保利は内田朝雄、手下に浜田晃や田中浩、心酔者の火盗同心は亀石征一郎で長官は菅貫太郎。


→ 銭形平次  表紙


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