銭形平次
  158〜191話  1969年

罧原堤下 キャスト
 銭形平次/大川橋蔵 お静/鈴木紀子 八五郎/林家珍平
 お民/園佳也子 為吉/神戸瓢介 お弓/土田早苗
 万七/遠藤辰雄 清吉/池信一
 樋口一平/永田光男


第158話「獅子の舞」1969.5.7 15

 踊りの師匠殺害事件を追う平次、出てきたのはおきまりの後継争い。グレて家を飛び出した弟を思う姉の情がメインのお話。姉を演じるは美空ひばり、弟は香山武彦。

 ロケ地、松蔭流家元邸、不明(表門は二条陣屋に似た作り、裏門は萱葺の門で民家ふう)。万七のたもとに太郎吉の煙草入れ(密告状つき)を入れてゆく女、上賀茂神社神事橋。太郎吉を探索中の八が平次とばったり会う道は上賀茂の勅使殿前。父の墓に参るお延、黒谷墓地(帰り道平次とゆくルートはサイババみたいな螺髪の石仏脇を通って中央の石段〜極楽橋←俄か雨、手拭を出して二人で被り「道行きと洒落るか」のシーン)
*本作より常時カラー映像に。*タイトルは晴れて姉弟で舞う山王さまの奉納舞、紅白の獅子物。


第159話「あらくれ馬子唄」1969.5.14 15

 丁子屋の買い付け資金が強奪される事件、馬子をハメて犯人に仕立て上げる悪党たち。しかし平次は馬子の気性から当初より真相を見抜いており、一芝居打ちワルを焙り出す。
大山克巳演じる馬子は、丁子屋の女将をマドンナと崇めるが我が身を恥じ真実の思いを告げることもできない純情さで、女の危機にたまらず罪を犯し逃亡するが、頼りになる男と祝言を挙げるのを見届け、察して待っていた平次に投降する、泣かせる展開。

 ロケ地、丁子屋の番頭が馬子の岩吉とともに八王子へ買い付けにゆく甲州街道、不明(地道の向こうに池、丘の上らしく遠景にうっすらと市街地。「徳川おんな絵巻」17、18話(城代が伊藤雄之助のどたばた喜劇)で出た道と同じ)。丁子屋の番頭が消される神社、竹中稲荷か。ワルを誘き出すため八王子へ向かう平次(八は残して万七たちとゆく)広沢池西岸。大ワルに雇われた浪人たちが岩吉が隠れている山小屋を襲い立ち回りの山道、御室霊場か(酵素とも谷山林道ともとれる山道、しかし林間にお堂が幾つも散見される)


第160話「麝香が匂う」1969.5.21 28

 御用金を強奪された責をとって切腹した江戸留守居役の娘は、名を変え江戸に住み三年もの間仇である強奪犯を探し続ける。求める仇はまた、御用金を運んでいて殺されたはずの婚約者を殺した相手でもあった。

 ロケ地、おみつの父・福井左衛門の墓がある安楽寺、相国寺林光院(「出前」帰りのおみつが平次に目撃される)、墓地(遠景に諸堂の甍が映り込む。ラス立ちもここ)。棺の中から消えた山城屋の死体が見つかる川端、罧原堤下桂川河川敷。越前屋寮の裏口、不明(堀端設定、船着きのある水辺に塀)
*おみつに入江若葉、越前屋に菅貫太郎。スガカンのしれっとした穏やかな善人面→開き直ったワルの変化はやはり逸品。麝香は菅貫が常用する懐紙から匂うもので、暗殺現場で血刀を拭いた遺留品。そんな品を「風邪ひいたから一枚頂戴」芝居の親分に渡しちゃってバレバレ。


第161話「消えた千両箱」1969.5.28 28

 仏面の被害者実は大ワルパターンの話、手先に利用された青年は島帰りの父のせいで幾度も奉公先をしくじりクサっているところを付け込まれる。青年を中尾彬が、父を信欽三が演じ、ともにいい味。

 ロケ地、お倫を尾行して殴られ昏倒する八、不明(屋形船を係留の船着き)。幸太が隠れている材木置場、不明(遠景の山なみ、嵐山から愛宕にかけてぐるっと映る)。抜け荷取引の伊勢屋の船着き(蔵前)瀬田橋竜宮玉垣傍川端(船や荷あしらい、川から見たアングル)


第162話「金魚殺人事件」1969.6.4 29

 富商の妾殺しに続き、現場にいた形跡のある金魚売りの老爺が斬られる。出てくるのは殺された二人の過去の因縁、親分は悪を見逃さない。

 ロケ地、金魚売りの八十吉を訪ねる平次がゆく農地、亀岡盆地・河原林町付近の田圃か(現在圃場整理中、確認不能かも)。九助がひそかに八十吉を埋めた墓、化野念仏寺石仏群石垣脇に土盛り。
*老爺殺しを目撃した隣人に長門裕之、職業を聞かれた際のやりとりは泥棒モノの落語でよく聞くネタ。金魚泥棒をして回る際もほとんど落語。*風物詩の金魚はたっぷり出てくるが、八が親分ちのそれを安物呼ばわり。


第163話「盗賊の恋」1969.6.11 16

 三箇条の掟を守る盗賊の哀話、狙った先に幼馴染の娘がいて苦悩のうえ、仲間に裏切られる盗っ人を里見浩太郎が演じる。親分は彼の人となりを見込み求められるまま泳がせてやり、娘に彼の正体を知らせず隠してやる温情を見せる。その分、非道の輩に対する嫌悪は激しい。

 ロケ地、夜回り中の平次に見つかり逃げた鶴吉が屋根から降りる路地、随心院大乗院前。その直後火の番の老爺が殺されるのを目撃し胴巻を託されるのは拝観入口前。鶴吉の回想、老爺の娘と遊んだ幼時のお宮さん、不明(重ね鳥居か)。老爺の持っていた書付を調べに赴く鬼子母神、御香宮(本殿前、八がやって来て報告の段では絵馬所も映り込む)。鶴吉が配下とツナギをとる縁先、龍潭寺方丈縁先(背景に反った渡廊)。相模屋の番頭が出入りする本所の御家人屋敷(賭場)民家門。手下に相模屋への押し込みは中止と告げる鶴吉、不明(花頭窓のあるお堂)。手下の一人・平蔵を詰問し斬りかかられ堀に落ちる鶴吉、龍潭寺庚申堂


第164話「嘆きの花嫁人形」1969.6.18

 成功者に翳あり、恨みの筋は誰も彼も不幸に落としてゆく。やっと会えた父、嫁ぐ筈だった男が共に罪に落ち、一人ぼっちになってしまった娘が気丈に笑うのが切ない。

*ロケなし、セット撮り。タイトルの人形は、捨てた娘を偲んで作った等身大のもの。平次夫婦のはからいで、花嫁衣裳を着た娘を父に見せてやる挿話もある。縊死した父の遺恨を晴らそうとする息子に長谷川明男。


第165話「満月の影」1969.6.25 29

 死にかけの盗っ人に隠し金の書付を託されてしまった男、片割れとして冤罪に落ちるところを平次の奔走で救われる。お話は、卒中で逝った賊の首領の娘周辺で起こる騒動を描く。罪無き男のため、お咎め覚悟で担当している事件を擲つ平次が泣かせる。

 ロケ地、成増屋の女中・お勝が殺されて見つかる小川、上賀茂社家町・明神川。隠し金のある神社、今宮神社(ホットスポットなのであちこちがたくさん映る。ラス立ちは東門内の石橋、下の空堀も使用)


第166話「消えた唐人娘」1969.7.2 16

 銃殺された淡路屋、現場には唐人服の娘がいて話がややこしくなるが、出てきたのは親の無実を晴らそうとした健気な日本娘。お上をたばかったと神妙な娘に、唐人娘は長崎へ帰ったと笑う平次だった。

 ロケ地、小間物屋の番頭を装い典医の寮で聞き込みの平次、不明(嵯峨野あたりの料亭か)。淡路屋をクビになった手代の宗吉が「飲む」屋台、嵐山公園堀端(中ノ島橋下手の南岸、石のベンチ映り込み)。唐人娘の素性が割れ、檀那寺へ赴く平次、金戒光明寺石段(本堂を背景に見上げ)相国寺法堂脇回廊(背景に庫裏)相国寺墓地(林越しに諸堂の甍、入口の門を内からのアングルも)相国寺湯屋(万七、行き会うもスルー)法堂(万七にあれが唐人娘と教える)。なおも娘を尾行、宗吉と落ち合うくだりは日吉大社走井橋東本宮(楼門や境内、万七が宗吉を引っ立ててゆくのは東参道)
*宗吉に織本順吉、娘の助け手には違いないが目的はヤラしいという悪人、篤実そうな被害者面が凶相に転じるところは絶品。*居直った宗吉を御用の段、短筒持ち出すのを銭で制し縄で手繰り寄せる親分の美技が炸裂。これを手にした八、妙な手つきで弄り回すなと思うときっちり撃っちゃってうひゃあの古典ギャグあり。


第167話「献上氷秘話」1969.7.9 29

 献上のお氷が盗まれて大騒動、罪を着せられ始末されかかった人足に縋られた平次は、構うなとの達しに逆らい究明に乗り出す。哀れな娘の目の手術に使われた氷、包帯のとれる日ずかずかとやって来た家老一同にひるまず啖呵を切る平次、思いは通じ恋人たちは救われる。

 ロケ地、相良藩江戸屋敷、相国寺林光院。お氷盗難の件には構うなと通達を受け奉行所を出てくる平次、永観堂中門。平次の前に現れ手を引けと迫る相良藩士・成田、相国寺鐘楼前〜弁天社鐘楼裏手石碑前。相良藩邸を出てきたお女中に話を聞く平次、相国寺鐘楼前〜宗旦稲荷。成田の恋人で元腰元の娘の事情を知ったあと、町をゆく成田を呼び止める平次、永観堂放生池畔〜阿弥陀堂石段


第168話「紫陽花は知っていた」1969.7.16 29

 身重の身投げ女に不審を抱く親分、奉公先の富商にキナ臭さを嗅ぎ、お町のダンナを抱き込んで釘を刺してくる相手に一芝居打ちお縄に。体面のためには人殺しも厭わぬ外道に、立場が無ければ叩っ殺してやると吐き捨て、怒りを隠さない親分なのだった。

 ロケ地、お加代の土左ヱ門が上がる大川端、大覚寺大沢池堤(対岸に天神島の鳥居、汀には今ある土留杭は見られない)。加代が埋葬された谷中・妙念寺、黒谷墓地。加代の恋人だった御家人を問い詰める平次、相国寺鐘楼裏手・宗旦稲荷
*お化け話、為さんたちが見たのは誤認で、それを利用して関係先に「出る」のはお芝居という運び。幽霊に扮するのは生き別れだった妹というお決まりのパターン、出た際のクレーン移動が傑作で横方向のほか後退もアリ。


第169話「仮面の女」1969.7.23 29

 面打ちの師匠が殺され、状況証拠真っ黒の弟子は失踪。その男と言い交わした仲だった師匠の娘は三月後別の弟子と祝言を挙げるが、思惑を隠していた。

 ロケ地、菱川天堂の娘が明日祝言と出入り激しい門、不明(別荘か料亭みたいなしつらえ、設定は菱川宅か料亭か不明)。これを覗いていた六部が手配中の喜三郎と見て追う平次ら、捕まえるのは金戒光明寺長安院下坂(出頭するとの言を容れ解放)。天堂の墓に参る娘・お妙、黒谷墓地(本堂裏手)
*前話に続き、犯人を追い詰めるのに怪奇タッチで迫る←師匠の部屋から面を打つ音。*三月の間仮面を被り犯人を探っていた女の心は凍てつき、恋も放棄し旅に出るというのをケアの親分、父の形見の能面を十手で叩き割る荒事に出る。


第170話「お関殺し」1969.7.30 29

 水芸の太夫が殺された裏には欲がらみの事情、使われた毒の経路を辿る・肝心の毒投入トリック解明等、平次の推理が冴える。八が親分の当て推量としつこく言い立てるのもおかしい。

 ロケ地、使われた毒の出所を求めて御蔵米業者をあたる平次、八と落ち合いダレている彼にハッパをかける里の道、不明(丘から下った道の際に蔵、八がへたり込んでいる後ろに半鐘櫓のような脚)。平次の話を聞いて店を抜け出し近江一座に行こうとした下総屋の若旦那を呼び止める橋、中ノ島橋
*万七親分、清吉と八のWポカリを食らいクラクラ。


第171話「いのちの鏡」1969.8.6

 次々起こる女の不審死のもとはとてつもない色悪、洗うと過去にも悪事がザクザク。結婚を餌に女を食い物にし肥え太ってゆく男だが、平次の粘り勝ちで証人が出てアウト。
*ロケなし、セット撮り。


第172話「稲妻に浮かぶ顔」1969.8.13 29

 人に利用され裏切られてきた薄幸の女、降りかかった災難に親身になってくれた板前に心を寄せるが、彼もまた或る目的のため近付いた男だった。

 ロケ地、若柳で殺された隠居の儀平の死体が発見されるお堂、不明(小祠、周囲は田んぼ)。若柳の板前・良之助の悪い噂を言いふらしていたチンピラが死体で見つかる大川端、不明(草原、植生から河原と思われる)


第173話「琴の爪」1969.8.20 16

 酒乱の香具師の元締殺し、自分がやったと名乗り出る娘、いや自分がと庇う母。冷静に事態を見ていた親分は現場で拾った琴爪を提出せず保留、縺れた糸を解いてゆく。

 ロケ地、吉兵ヱが殺された明神さま境内、御香宮摂社前(回想シーンほか何度も出てくる。母親が名乗り出る場面では本殿側面も映り込む)。大番屋、永観堂中門(門の内外のほか、釈放される母子を陰で見る幽玄が参道脇の植え込みにいる)。琴の師匠・柴沢幽玄邸、不明(料亭ふうの門)
*久々にお静がヒントを齎す挿話、琴爪は三つセットとアドバイス。銭形平次には珍しい瓦版屋が事件の経緯を書き立てるシーンあり、しかし犯人の使嗾で動くもので、単なる情景描写ではない。


第174話「神かくし」1969.8.27 29

 富商の一人息子の誘拐、主は倅の命大事と頑なに町方の介入を拒むが、内情を知った平次は主の心底を責め説得する。

 ロケ地、最初の金の受け渡しが行われる谷中の塔、毘沙門堂(田原屋が金箱を載せた荷車を引いて現れるのは本堂脇、尾行してきた平次らは本堂入口脇に潜む。誘拐犯らが現れるのは鐘楼脇、子を隠してあるとたばかり田原屋を中へ入れようとする。一味が逃げ去ったあと鐘楼の中を調べるくだりがあり内部も映るので、保存ものの貴重な映像)
*田原屋に渡辺文雄。


第175話「月夜に消えた娘」1969.9.3 16

 男に捨てられ娘を里子に出し生きてきたあばずれ女、成長した娘との再会を悪党に利用されてしまう。目的はその娘が引き取られる実父の身代、替玉まで使い金をとろうとした男は身近に潜んでいた。

 ロケ地、大川に上がる「お美代」の死体、罧原堤下汀。脅迫者に金を渡しにゆく大津屋の女将、不明(縁日の境内を抜け、林の中で接触←境内端の祠を行くと林、傾斜あり木の生え方から丘の上と推測される。樹種は広葉樹)。お美代が里子に出された在所(板橋・蓮根村)にあるお美代(半年前に死んでいた本人)の墓、龍潭寺か(林の中に墓石林立、傾斜地)。一味の伝次が手なぐさみに使っている荒れ寺、内部はセットで外は龍潭寺(伝次に追われたお光が走り出るのは門前の小祠、次いでお紋が出てくる際に山門が映り、嗅ぎつけてやってきた平次らは参道を来る。捕まりかかった伝次が撃たれるのは参道脇の苔庭の林間。参道右手に萱葺の家が見えるが、現在は無い)。大津屋の女将の回想、「お美代」を夫のため引き取りに行った先で伝次の奸計に落ちおさよを「落としてしまう」橋、宇治川喜撰橋か(夜景なので判りにくいが、橋から見える流れは滔々と瀞をなす)。身代金を渡しに大津屋が赴く品川御殿山、不明(石畳の坂を登りきった左手にお宮さんの鳥居、坂の敷石は乱調子)。事後、自分を慕い共に暮らすというお光をわざと突き放しひょうたんを出て行くお紋、両脇に塀の路地、不明(左手に流れの早い水路、腰高な石垣は穴太積みに似て坂本の町なみを思わせる)
*岡場所の女・どぶろくのお紋に万里光代、哀しい女を熱演(惚れたという八におまえには勿体無いと言い放つ親分の顔が妙にマジで笑える)。大津屋に永井秀明、番頭に深江章喜。*同じ脚本と思われる話が、1975年の杉良「遠山の金さん」第10話に見える。人物名や細かい筋立ては違うが、継母が気を利かせて迎えに行き誤って娘がドボンは同じ。


第176話「荒海の虹」1969.9.10 16

 由比正雪が隠した軍資金を巡って起きる血腥い事件、正雪一味生き残りの老囚が残した判じ物を手がかりに親分たちは伊豆へ。よそ者を嫌う閉鎖的な漁村は、叛乱に関わった者たちの子孫が隠れ住む里だった。

 ロケ地、軍資金の在り処を示す永楽銭の一つが隠されている日吉神社、不明(石鳥居くぐったすぐ中に祠)。伊豆への山道を辿る平次ら、不明(平次が海を見下ろすシーンもある)。西伊豆の漁村、蘇洞門か。
*万七曰く「唐人の寝言」の、老囚が言い残した軍資金のありかを示す文言が傑作「大いなる木戸の西・牛の角・海老に汚れあり・猫が山を越えて海を見る」、これをすらすら解く平次の絵にも注目。微妙に伏線が張られている真犯人や、出てきたヤバい巻物の処理も痛快。里を守ろうとする青年に峰蘭太郎。


第177話「人斬り弥平太」1969.9.17 17

 大名同士の係争で片方は切腹、殿様の一周忌に遺臣が不穏な動き。一味に関与するヤクザを追うが事故で頓死、動きを探るため平次は死んだ男に化けて潜入、そこでは急進派と穏健派が対立していた。

 ロケ地、人斬り弥平太の江戸入りを阻止するべく張り込む街道筋、不明(地道→竹林の小丘陵)。平次の化けた弥平太がアジトへ導かれる際船に乗る大川端の三本杭、嵐峡か。アジトを探し聞き込みの八が棒手振りに話を聞く坂下、不明(坂の上に倉あり)。ほんとうに弥平太か疑われ、お千加を的に手裏剣の腕を試される川端、不明(瀞を成すが流れは早い)。アジトへ踏み込む捕り方が入る門や庭、不明。
*ムシリをつけた親分の変装、映画での橋蔵を髣髴とさせる。立ち回りは長ドスで峰打ち、ヤクザでも侍でもない刀捌きが妙味。


第178話「盗まれた首」1969.9.24 29

 土砂降りの夜に獄門台から盗まれる凶悪犯の晒し首、次いで起こるのは首の主をお縄にした岡っ引襲撃。たった一人の身内である老父に疑いがかかるが、平次は割り切れないものを感じ動く。調べてゆくと首の主の非道ぶりがざくざく、その行動原理には陰惨極まる裏事情が隠されていた。

 ロケ地、仁造が夜中に荷物を持って入ってゆく神社、今宮神社(東門〜境内。平次らは石橋に潜む)。仁造に情をかけるのかと問う八、御所高倉橋。仙次が仁造と会っていた麻布の寺、相国寺墓地入口の門と墓地。もと仙次の情婦だった女とその亭主が仁造に殺される橋、今宮神社石橋。仁造が金を隠していたのはその橋の下の溝。
*拾い子を恩で雁字搦めにし犯罪マシーンに仕立て上げた凶悪なオヤジを演じる加藤嘉、怖すぎ。


第179話「謎の千両富」1969.10.1 17

 上方から流れてきた凶悪な盗賊団を追って、浪花の目明しが江戸へ。彼を陰から手助けする小唄の師匠は、平次の幼馴染だった。美空ひばりをゲストに迎え、東映映画で何度もコンビを組んだ二人が息の合った応酬を見せる楽しい一話。

 ロケ地、回向院の二番富を当てた伊勢屋が舟遊びの川、罧原堤下桂川。海坊主一味に殺された伊勢屋らの検分、罧原堤下河原。海坊主一味の男が合図の丸太に細工をしている堀端、桂川渡月橋下手・臨川寺前左岸。お新が子らに「合図」を見張らせている水辺、嵐峡汀。合図が流れてゆくのを見る一味のアイパッチ男、罧原堤下汀。昔遊んだ水辺にやって来る平次とお新、大覚寺大沢池堤(遠景に心経宝塔ほか映り込み)。伝通院の富籤を売り出す男、永観堂画仙堂前。札突きが行われる伝通院、永観堂御影堂(遠景に多宝塔映り込み)。一番富に当った芝居で金箱を船に積み一味を待つお新と天王寺の弥吉の船、一味出て大立ち回り(危機に銭で平次登場)の中州、大堰川保津付近。晴れて鱶造の縄尻をとり奉行所を出てくる弥吉、大覚寺大門。共に江戸を去るお新を見送る橋、参道石橋(北望)
*ひばり橋蔵の言い合いの妙、いつもよりオーバーアクション気味の橋蔵が傑作。万七の小唄も大笑いで、奥から聞こえてくるぎぇーうばーの奇声を平次が評して「風邪っ引きの豚」。*福ちゃん見っけ・金箱積んだ屋形船を囲む一味の一人で褌一丁できょろきょろキョドる。


第180話「狂った竜」1969.10.8 29

 将軍家お世継のための竜を描き名を上げた御用絵師、その絵は盗作どころか作者を殺して得たものだった。心中を装って殺された亭主のため、女房はあばずれ女の芝居を打ち事情を探る、泣ける話。

 ロケ地、御用絵師・佐能幽斉がお礼参りにやって来る神田明神、わら天神参道〜六勝大神(幽斉に罠をかける際は裏手も使用)。本郷の幽斉邸、相国寺林光院門、式台玄関。
*女房・お夏に吉行和子、放埓な大酒呑みと貞淑な女房を見事に演じ分ける。


第181話「女ふたり」1969.10.15 29

 贋金事件を追う平次、捕えた男は恩ある店のため身を捨てて単独犯行と言い張る。主題は、店のためと父に言い含められ亭主をあきらめる女房と、危険を冒して破牢させようとする現地妻の対比。芸者上がりの小料理屋の女将を長谷川待子が演じる。

 ロケ地、田原町の両替商へ油を運ぶ人足を尾行する途中ならず者の襲撃に遭う林、不明(蔵や鐘楼が見える)


第182話「海猫の唄」1969.10.22 17

 お上から休暇を貰い海辺でのんびり平次ファミリー、しかしきっちり起こる事件。平和な里の頼りなさそうな岡っ引を助けて動く平次、鋭く真相を看破し身柄を引き渡し去ってゆく。

*海ロケ、尼寺も現地か。ふだんは十手しまい込んでたりする、ところの岡っ引・仙助がいい感じ、おとぼけ見逃しオチつき。


第183話「影を追う女」1969.10.29 29

 岡っ引殺しを追う平次、スラムへ入り込み見つけた被疑者は記憶喪失。しかし万七すら首を捻るその女はやはり無実、殺された目明しに強請られていたヤクザのどら息子が浮上する。

 ロケ地、岡っ引の新助が死体で見つかる隅田川端、不明。小間物屋に化け下町を探る平次が八とツナギの神社、今宮神社境内。盛り場の酒肆で探りを入れる平次を怪しみつけてくる竜造一家、渡る木橋、不明。大工の文吉を八が見張る普請場、今宮神社東門内塀際、八は石橋上で見張り。文吉が「おしま」を連れ江戸を出ようと走る四ツ木町(葛飾?)の水辺、嵐山公園堀端(漁具や小屋あしらい)
*人を殺したと思い込み、洗っても洗っても手が血だらけと言うマクベス夫人みたいな「記憶喪失」女に中村メイ子、不安げな表情が可愛くて秀逸。彼女を庇い見守る恋人に近藤洋介。スラム探索の親分は小間物屋に化けて入るが、あんな眉目秀麗な行商人は不審がられるかもって感じ。酒肆での酔態も見もの。期待の倅が己の情婦と通じ、知己の目明しを殺めたと知ったヤクザの親分が見せる表情も味わい深い。


第184話「武家の世の中」1969.11.5 29

 目をつけた美人を大奥に入れ、次期将軍を生ませ政を牛耳ろうという企み。関わった町場の者を消しにかかるワル、しまいに平次まで殺そうとはかる。自宅を城と言い襲撃に備える親分が小気味よい。

 ロケ地、血の海の自邸が怖くなり妾宅へ逃げ出した医師が駕籠で通る道、今宮神社石橋。越前屋が用人・倉沢に娘に暇をと乞う庭、不明。
*首魁を兄の仇と斬り捨てたのち自刃する弟、人の命も自分の命も大事にしない「お武家ってやつは」の愚痴が出る。


第185話「身投げ女」1969.11.12 29

 八が助けた身投げ娘は騙り、しかし裏に哀しい事情。博打で身上潰した父の借金返済を迫られ、島帰りのワルに強要されてのこと、親分の見逃し癖が出る。事件は島帰りとつるんで店の主を殺す番頭の話。

 ロケ地、八がおしのの身投げを止める橋、中ノ島橋(太田屋の主に金を貰った際の橋は花屋橋、同じ所にばかり出ないと思うから八の橋は違うかも。しかし後段騙り芝居に出ている橋も同じ中ノ島橋…)。丁稚奉公中の弟と会うおしの、嵐山中州付近堀端に茶店あしらい。
*おしのを脅し騙りをやらせる島帰りに睦五郎、血も涙もない悪党。*手代に番頭のことを聞く番屋のくだり、背景の火鉢をつつく番太に福ちゃん。


第186話「平次の恋」1969.11.19 17

 海産物問屋の老主人が急死、残された美しい若後家をめぐって起こる怪事件。後家が兄を殺したとねちねち疑る主の実弟、腹黒い横顔を見せる番頭、後家に言い寄って殺される幼馴染と怪しげな記号が散りばめられるが、これとは別系統に微妙な伏線が張られている。

 ロケ地、若後家の幼馴染の男が惨殺されて見つかる主水河岸、桂川堤法面か。その男が後家に言い寄った堀端、嵐山公園か。
*表題は平次のとんだ大芝居、真犯人あぶり出しのため酒盛りをして後家さんにべたべた・挙句の果て酔っ払って泊まってゆく、鼻持ちならない体たらく。映画でよく見たおどけぶりが懐かしい。


第187話「二つの証言」1969.11.26

 恋人を思うあまり妓楼へ盗みに入る男、しかし目撃した小女は平次にも楼主にも頑として真実を語らない。男が盗ったのは、女たちを苦界に縛り付ける紙片だった。

 ロケ地、偽証した小女を待ち構え詰問するお弓、大覚寺護摩堂前。
*盗っ人が出てくる際お弓も居合わせ目撃、真実を証言したのに小女にミソをつけられ怒ったお弓はムキになり事態を転がす働きをする。


第188話「四枚の花札」1969.12.3 29

 座頭殺しでいかにも怪しい女のアリバイを証言する元岡っ引の老人。平次に見せた敵意は娘の仇を渡したくない一心から、凄惨な怨念を生んだのは過去の無慈悲な振る舞いだった。

 ロケ地、按摩・茂の市の死体が上がる川端、罧原堤下河原。辻番所に弥七を訪ねた帰りの平次にお静が駆けてきて新たな死者発生を告げる路地、不明。弥七の娘の墓、金戒光明寺本堂裏手。
*悲惨な状況で娘を亡くし無慈悲な「四人」を憎悪する弥七に浜村純。憎さげな酒肆の女将(もちろん四人のうちの一人)に白木マリ。すぐ死体の按摩に汐路章。*平次の好物と出される真桑瓜、弥七に食わせて貰った思い出の一品という挿話入り。手土産に包んで行くも投げつけられ気の毒な瓜、映っているのは「まっくわ」ではなくプリンスメロンかも。確かこの頃急激に作られなくなった覚えが。


第189話「能面の男達」1969.12.10 29

 面を被った男たちの押し込みは五千両。犯行に使われた能面を盗まれた富商が平次に語った、歪んだ人生観そのままの事件を「無益の殺生」と総括し親分は憤る。

 ロケ地、雇われ一味の虎吉が殺される墓地、黒谷墓地(回想シーン、後金を貰おうとして凄まれるのも同所)
*面マニアの美濃屋に山形勲、賊の首領に中田浩二。


第190話「二度目の獄門台」1969.12.17 30

 平次がお縄にした男は真犯人が名乗り出て釈放、しかし親分は信念をもって丹念な調査を続ける。積み上げた事実と細やかな情は、頑なに自分がやったと主張する男を陥落させる。

 ロケ地、米問屋に押し入った仙八が逃走するルート、橋と川は中ノ島橋と下手の河床。
*月番が代わるので未解決事件を残すなとか、事務がややこしくなるから再吟味はダメとか思い切り勝手なことを押し付けられる親分、こういうときは樋口のダンナは出してこず吟味与力がご登場。*ならず者同士の義理と半ばヤケで罪を引き受けてしまう儀三郎に森健二、仲間を騙しまんまと牢から出たうえ平次にキツい嫌味をかます極悪人・仙八に深江章喜。


第191話「雪の降る町で」1969.12.24

 餓死者逃散相次ぐなか直訴を企てた庄屋、彼を捕縛に赴いた男は幼児を死に追いやるに忍びず指揮者の目付を斬り出奔。お話は、この男がささやかな幸福を夢見たところで断ち切られる。親分は男が守り通した子が捕われようとするとき侍たちの前に立ちはだかり、気迫で追い返す役まわり。

*ロケなしセット撮り、郷原浪人に小池朝雄、心を通わす酒肆の女将に赤座美代子。


→銭形平次 大川橋蔵版 表紙


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