銭形平次 192〜208話

嵐山堀端 キャスト
 銭形平次/大川橋蔵 お静/鈴木紀子 八五郎/林家珍平
 お民/園佳也子 為吉/神戸瓢介 お弓/土田早苗
 万七/遠藤辰雄 清吉/池信一
 樋口一平/永田光男


第192話「春の風来坊」1970.1.7 30

 清廉な勘定奉行を陥れる陰謀、行動を制限されながら動く親分が行く先々で見る口入屋の俄か番頭は、閉門となった奉行の潔白を晴らそうとしていた。

 ロケ地、勘定奉行・秋月主馬邸、相国寺林光院(竹矢来を結われた閉門の場面と、晴れて標が解かれ「半次郎」のままの息子が入ってくるシーンでは式台玄関も)
*調子よく口入屋へ入り込む半次郎に舟木一夫、屋台で主題歌を盃叩いて歌うサービスあり。秋月を信じ続ける口入屋の娘は大原麗子。秋月の後を狙うワルと組む悪徳商人に神田隆。*商人たちが山吹色のお菓子携えて勢揃いの座敷に踏み込む平次、ぶちまけた菓子が全部おんなじ最中なのが笑える。


第193話「いぬ」1970.1.14 17

 平次に回ってきた嫌なお役目はお町のダンナの身辺調査、悪人どもが俺たちをなんと呼ぶかとお弓に問う親分の渋面が物悲しい。貧に喘ぐ浪人が何を仕出かして今に至ったか丁寧に描かれ、悲惨な結末を迎える。

 ロケ地、近藤のダンナに付くよう手配された平次が挨拶に出向く茶店、中ノ島橋上手中州岸に床机セット(近藤は堰堤脇の岸辺に佇み、平次らは橋を渡ってくる)。お兼婆さんの墓、近藤が供養している八丈送りになった畳職人の墓、不明(同じ所、平地と傾斜地で使い分け)
*抜け荷一味と結託との投書が来る鬼同心は川合伸旺、複雑な人間性を好演。*後味わるい結末に苦り切る親分、大事の十手も放り投げクサるが、八のてーへんに反応しぱっと手にしてバツ悪そうにする顔が可愛い。


第194話「鬼子母神参り」1970.1.21 18

 材木商乗っ取りの企み、子が主の実子でないとの疑いを吹き込み破滅に追い込もうと謀るワル。翻弄されずたずたに傷ついた夫婦仲の修復にも一役買う親分、ルーティンの為吉お民の夫婦喧嘩をうまく本筋に取り込んだ、小気味よい作りの佳作。

 ロケ地、出合茶屋聞き込みの帰りに平次らがお民を見かける道、宝塔寺参道。平次らが身を隠すのは塔頭の大雲寺。お民が入ってゆく四谷坂下・日宗寺(鬼子母神)宝塔寺仁王門。お参りのお民に声をかけるのは本堂前。
*仙石屋主人に御木本伸介、女将に馬渕晴子。


第195話「江戸っ子長屋」1970.1.28 30

 とにかく騒がしい「お祭り長屋」に巻き起こる泣き笑い人情劇、酒癖の悪い職人を皆して懲らしめてやろうと仕組んだ芝居は、本物の殺人事件に発展する。

 ロケ地、締め出しを食った熊五郎がならず者に襲われる師匠を助ける寺の境内、金戒光明寺本堂脇(西側)
*長屋住人の一人に汐路章、連行される熊五郎にカマすねっとりした皮肉が大笑い。善人でもねちねち汐路章面白すぎ。*熊五郎の娘を見返る優男の若旦那に近藤正臣、平次の指摘に「違う」と発する裏返った高声が巧い。


第196話「木枯しの女」1970.2.4 18

 ダニのような男に見込まれてしまった女の話。島抜けした男が彼女のもとへ現れるのは防ぎ得ず、女が自棄ぎみに平次に語った通りの結末を迎える。

 ロケ地、中山道本庄宿、通行人改めの検問を突破して逃げる権次、不明(山道と野原)。奉行所門、大覚寺大門。平次の回想、権次の女・お滝の「身代金」をやり取りの寺(?)、不明(水場、手すりのある石段、前に大灯籠のお堂)。お滝が権次の強盗仲間に呼び出される神社、今宮神社境内。その男を尾行しかけた八が万七にぶち当り見失うのは東門。権次に殺された地回りの死体が見つかる護国寺音羽町、大覚寺大沢池北西畔。平次の回想、権次と切れるよう女郎のお滝を説得した音羽町の堤、大覚寺大沢池堤。同じく回想、板橋宿で佐渡送りの権次を見送るお滝、不明(両岸に竹林の川に木橋)
*お滝に桜町弘子、悪いヒモと離れられぬ悲哀を熱演。


第197話「系図のない武士」1970.2.11 30

 斬られた男が言い残した侍の名、出てくる二人の「同名」の浪人。裏には出自を偽っても仕官したい足軽出身の男の事情、系図を騙し取られた浪人には病の妻、武士の体面が引き起こした事件という、銭形お得意の「お侍ってヤツは」パターンのお話。

 ロケ地、系図を仲介した六造が斬られた石地蔵、大覚寺石仏護摩堂の間(裏手から)。「頬傷」ホンモノ相楽が六造に詰め寄るのは五社明神。「頬傷」相楽が平次に経緯を告白するのは仁和寺経蔵前、九所明神脇。「小林」ニセ相楽がグルの酌婦を始末しかけるのは哲学の道・宗諄女王墓脇右岸堀端(墓所前の橋も映る)
*ニセ「相楽」に小林昭二、秘密を知る者の口を封じ明日は屋敷入りの手前で捕まり。


第198話「大外れ壱番富」1970.2.18 30

 富商乗っ取り話。主と後継を殺し店を牛耳る番頭だが、闇から脅迫の手。結局その店の経営方針である、商才ある者をよそから引き抜き役立たずになるとポイという手口が招いた悲劇と知れる。狂言回しに富籤狂いの若者を出し、オチも彼が締める。

 ロケ地、湯島天神の富突場、木島神社舞殿。欲をかいて一番富を受け取りに来た用心棒を追っかけてやっつける親分、黒谷墓地
*富籤狂いの優男は川地民夫、溝に落ちてた財布に入ってた大当たり五千両の富籤は濡れてパァ、最後は八が着物を持ってゆく質屋の店員で渋チン商人を演じ笑いをとる。


第199話「暮六つの鐘」1970.2.25 30

 幼い頃生き別れた父親の形見の仏像、愛する女のため売りに出したところ当の父の目に留まる。しかし父は大金を出してそれを購おうとし、道具屋に悪心を起こさせてしまうのだった。

 ロケ地、父に香華を手向けに行きとんだ天一坊と京屋を叩き出された彦太がぶらつく川端、罧原堤下か(平次に報告に来る八のシーンも同所)
*彦太に地井武男。


第200話「盗賊に賭けた十手」1970.3.4 18

 義賊と呼ばれた男は島から帰り更生を期するが、元の手下の困窮を見捨てておけず一度きりと盗みに入る。その金が外道に狙われ、悲劇を出来する。

 ロケ地、亡妻の墓に参る島帰りの佐吉、黒谷墓地。隼の伝三が金を持ってこいと呼び出す大妙寺、永観堂千佛洞まわり塀際。
*仲間の錠前師の老爺の孫がさらわれ身代金に盗った金が要求されるが、親分は変装して佐吉とともに現場へ同行、語り草だと笑う。


第201話「紅い手裏剣」1970.3.11 18

 万七親分の燃え上がる恋、しかし相手は盗っ人の娘で、札差に入る大金の運搬ルートが目当て。娘の親父は本格の盗賊、粗暴な手下に背かれた意地から最後の華と名人芸を見せようとしていた。

 ロケ地、万七がお国とデートの神社、今宮神社(本殿ほか境内各所。舞殿前に簾立てて茶店あしらい)。蔵前の札差へ金を運ぶ途中喧嘩(雇われ者のお芝居)に巻き込まれる土手、東高瀬川堤(背景に松本酒造酒蔵)。仙造が金の入った長持を沈めてあった川、東一口の前川か(難を逃れて一時長持を運び入れた小屋の裏手という趣向、土手に張り出した建物が見える。護岸は石垣)
*万七親分の家族設定、女房に先立たれ息子が一人。前に出た坊よりかなり育っている。この子を見捨てなかったことで平次は老盗賊を目こぼし。タイトルの手裏剣は仙造の元手下が使う得物、こいつは血も涙もない凶賊。*見ものはやっぱりうきうき万七、くねくねと女に迫る気味悪さ満点のしぐさは絶品。巨体を揺するのが可愛いんだよね。


第202話「針にかかった魚」1970.3.18 30

 特赦で佐渡から帰った男は、まっすぐ自分をハメたワルに向かうが再度罠に落ちる。殺しを防げなかったと悔やむ平次は、巧妙に仕組まれた工作を見抜き、三年前の悪事も炙りだす。

 ロケ地、為吉に誘われ釣りの八、大覚寺大沢池畔。坊主で帰る道すがら物騒なことを呟く弥之助を見るのは五社明神、弥之助は大沢池北西畔に立つ。弥之助が大黒屋と思い込み釣り人を絞める水辺、放生池堤。検分にやって来た万七が出てくるのは護摩堂脇。大沢池は水少なく底が見えている。
*冒頭、為さんが魚屋で買って誤魔化そうと持ちかけるエピソードが後段に持ち出され、謎を解くきっかけに。


第203話「御用金の行方」1970.3.25 18

 御用金強奪事件、手違いから一味にも金の隠し場所が不明となり右往左往。平次をたばかろうとした大根役者たちの裏にさらに黒幕、しかしはじめに演じた猿芝居を実行する羽目になる。

 ロケ地、御用金強奪現場、上賀茂神社北神饌所裏手。勘定方組頭の千崎が平次に捜査状況を知らせてくれと頼む神社、新日吉神社楼門際〜本殿裏手。一味の勝造が隠れていた小屋、罧原堤下河原か(背後の水面に流れが見える)。平次が騙りの「目付筋」に監禁された神田川沿いの空家、邸外での殺陣は嵐山公園堀端に塀をセットして。勝造が言い残したヒントに金は墓の中と思いつく平次、金戒光明寺栄摂院前〜龍光院前。「有明新兵衛」の墓は本堂裏手墓地
*友に申し訳ないと腹を切りかける千崎に情け容赦ない言葉をかける平次、これが微妙な伏線。彼をも操っていた魔性の女に長谷川待子。


第204話「江戸愚連隊」1970.4.1 30

 殿の掛軸を盗られた腹切ると騒ぎ平次を頼るお侍、かっぱらいのチンピラを捕まえて出てきた真相は、仇討ちや詐欺。

 ロケ地、高遠藩御納戸役から軸を盗む稲妻組の若者たち、癪のフリの娘は中ノ島橋、軸をパスしながら逃げる若者たちは堀端。稲妻組に話を持ちかけた男を尾行する道、相国寺路地(光源院の北あたりで刺殺)。高遠藩上屋敷、相国寺林光院
*親分の侍嫌いが進みそうな事件、折角貰った長期休暇は何日潰れたか。*稲妻組は詐欺に遭いかかった縁で越後屋が雇い入れの運びで、町のダニも更生してメデタシ。


第205話「捕物供養」1970.4.8 19

 これで定年という日に破牢者が出て大失態となる牢番の親爺は自責の念に駆られ自死、逃げた凶賊と手引きした仲間をお縄にする平次、爺さまの初七日の供養とする。

 ロケ地、五平渡しで船を盗み逃げおおせる賊、罧原堤下河原に小屋・船着セット(平次の推理の「再現ドラマ」仕立て)。牢の格子を切った吉次の死体が上がる川端も同所。その船を燃やした痕跡を見つける相川屋所有の空地、不明(よく出てくる材木置場、梅津あたりか)。大捕物ラス立ちの相川屋荷揚げ場、琵琶湖畔か内湖か(丈高い葦を干してある水辺、徳川おんな絵巻等でも見かけた光景)
*破牢の賊・源佐に深江章喜、つるむ岡っ引に森健二。


第206話「心中屍体始末」1970.4.15 30

 擬装心中の片割れは隠密回り、平次は変装し犯罪集団の群れに身を投じるが、そこには「心中」で殺された女の恋人も。復讐劇は凄絶な幕切れを迎える。

 ロケ地、隠密回りと酌婦の心中死体が上がる洲崎の浜、広沢池東岸(池中からの撮りか)。隠密回りの死体を確認にゆく寺、相国寺光源院。八と一芝居打ち一味に潜入の親分、嵐山公園堀端(南岸、囲いをあしらい行き止まりが堀という趣向、中州の料亭裏側が借景。八の堀ボチャ・プカ浮きあり)。一味のアジト付近の描写、上賀茂神社北神饌所裏手や奈良社渉渓園など。女を売り飛ばす船を待つ一味、罧原堤下河原に小屋セット。抗争で殺された一味の男が流れ着く下手の汀も同所。
*女を殺された恨みを報じに一味に入る源太に中野誠也。*親分の変装は銭でアイパッチに月代ぼうぼう。アイパッチは銭で、もちろん危機の際「使う」。


第207話「裏切りの刃」1970.4.22 30

 連続する血腥い殺し、16年前の強盗事件との関わりの謎が晴れて出てくるのは、仲間全員を騙して金を独り占めしていた男。夫婦親子に命のやり取りをさせる悪辣さに、親分の怒り爆発。

 ロケ地、奉行所門、大覚寺明智門。16年前の押し込みの件を八に話す親分のシーンは上賀茂神社境内にスイッチ。お梶の墓、黒谷墓地。お梶の息子の京太が太吉に折詰を持ってくる船小屋、罧原堤下か。江戸を売ろうとする肥前屋に突きかかる太吉、上賀茂神社神事橋。利助が太吉を誘い出す天神裏、不明(舞殿の奥に朱玉垣)
*万七親分、出番少ないけど迷推理を開陳、お梶の残した血文字「ろく」で六のつく男を調べるも不調→そうか女かも→「犯人はお六って女よ」…。


第208話「五里霧中」1970.4.29 19

 ワンマン親方が一人決めの娘の婿=後継が殺される。いつもの如く万七の短絡で「凶器」の持ち主で娘といい仲の同僚が捕えられるが、もちろん彼はシロ。夢見がちな親方の娘が捜査を引っ掻き回す一幕があって、メデタシで〆られる。

 ロケ地、婿に決まった伊八が殺されて見つかる水辺、罧原堤下河原(船小屋あしらい)
*親方の娘が曲者、恋人が冤罪に落ちかかっているのに「命を賭けてくれた」とか嬉しそうに舞い上がるアレな人。自らの夢の実現には偽証も厭わぬあたりはちょっとコワい。ラスト、真犯人に迫られるくだりでは蓮っ葉な悪女ぶりもちらり。この女と祝言を挙げる運びとなる若い衆は亀石征一郎、目は怖いもののダーク部分なしの被害者。*メデタシは親分に仲人の話が来てエンド、しかしまたまた「高砂」詠唱を渋る平次、調子っぱずれの歌声が戸から漏れる。


→銭形平次 大川橋蔵版 表紙


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