忍びの忠臣蔵

1981.12.18CX/東映


 工藤栄一監督がオムニバス「お庭番」から「元禄十四年/同・十五年」をリメイクした作品で忍者たちから見た忠臣蔵裏面史、主人公の公儀隠密に萩原健一。
浅野刃傷のあと、遺臣たちの行動を危惧した大目付により大石内蔵助を監視する役割を負う忍者がショーケン。当初忠実にお役目を果たす彼だが、自身に向けられる身内の監視にプチっと来たうえ大石の人物に興味を持ち、独自の行動をとることとなる。忍者は監視者の組頭にツナギ役の若者のほか、上杉家老・色部の放った間者が登場する。主筋はもちろん忠臣蔵で、ショーケンが態度を変えるのは山科閑居の浮様の段。ナレーションをショーケンの妻女役の吉田日出子がつとめ全編通じて陰鬱にぼそぼそ語り、最後に何食わぬ顔をして戻っている夫に愚痴を垂れるモノローグにつなげてある。

ロケ地
・江戸城、姫路城天守。刃傷と聞き門に殺到する各家の家臣たちのシーンは菱の門(内外を使う)
・内匠頭切腹を告げる早駕籠が走る街道、北嵯峨農地・陵前の道
・大事に藩士総登城の赤穂城、彦根城天秤櫓(貝塚慎吾が忍び込む際には橋の下に取り付き、下を通る藩士の話を盗み聞き)
・貝塚に岡惚れの女・おみのがなんで黙って宿を引き払ったと縋る水辺、広沢池東岸
・赤穂・花岳寺(大石が主家の永代供養を頼みに赴く寺)、粟生光明寺阿弥陀堂か(堂正面と、貝塚が潜む床下・亀腹大きい。前の石畳はランダム敷石)。その大石の帰途、色部の間者・伊谷とやりあう林、糺の森か。
・京・山科大石寓居、民家(手前の駐車場に竹と芝垣をあしらい)
・実家へ退去する母を追いかける主税、北嵯峨農地
・大石に託された神崎与五郎妻女の身請金を持って走る貝塚、北嵯峨農地・陵前
・江戸へ向かう大石一行、海辺の街道は舞子浜松原と汀。

*ショーケンは無愛想でぶっきらぼうな態度、吉田日出子は天然系で、おかしな夫婦が前後のフレームを作る。*貝塚を監視する組頭・平野に福ちゃん、吉田日出子さらって監禁したり、成田三樹夫に報告したり忙しく立ち回り、貝塚に近付く池上季実子もさくっと始末(殺る際の映像はなし)、最後はブチ切れ貝塚とやりあい大のけぞりかまして頓死。*色部の間者・伊谷は貝塚と似た経緯を辿るが、こっちは吉良の行く末が気になって仕方ないので願い出て付け人に。*連絡係の若者もいい味、貝塚を尊敬していて妻女を気遣ったりする一方、野心も覗かせる。*大目付の成田三樹夫、柳沢出羽守に大石の動向を報告に行った際の「蚊叩き」が必見。扇子で蚊を追う・仕留める・落ちた蚊を汚そうに広げた扇子に取りぽいっと投げ捨てる、笑わせようとしての所作なのか人柄を表すのか判らないけど、成田ファン必見。*裏歴史ものなので、表の「忠臣蔵」部分は思い切り端折り。討ち入りなんか陣太鼓も響かない。代わりに、上杉の加勢を頼みに走った伊谷と戦う貝塚のくだりに、ティンパニの重低音がどんどこ。*ショーケンは間者なのでなりは様々、忍者ルックのほか薬売りだったり大工や植木屋などもやるが、いっとう似合ってるのは撞木町の妓楼の牛太郎。通常モードの傘張り浪人もけっこうイイ。


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