消えた小判屋敷
天野信監督作品
1958.8.19大映京都

 京は綾小路の両替商・大黒屋は、大恩ある三ヶ月藩の参勤交代費用・一万二千両を工面し、勘定奉行らとともに御用金を運び西国街道をゆく。途中宿泊した吹田村の庄屋・黒田孫右衛門宅ではたいそうなもてなし、しかし翌朝御用金は蔵ごと忽然と消えていた。
パニックに陥る大黒屋、この手で錠をさした蔵はほんとうに建物ごと無く、彼は道に迷って夕べ一人で来たのだと家人は口を揃える。そんなはずはと宴の折藩士が剣舞で損じた床柱を見ると傷ひとつ無く、座興の席画と出され名前を書いた屏風にも痕跡なし、果ては酔ってつまづき壊した置物も割れていない。いよいよ気触れと扱われてしまう大黒屋、そこへ一行と別れて石清水の護符を受けに行った息子・清十郎がやってくる。後段は清十郎により謎が解かれてゆく過程を描き、騙りの賊との大立ち回りもたっぷり。

民家長屋門

 ロケ地、街道で悪たれガキに打たれている大黒屋を助ける天満の目明し・三次、不明(山際の竹林沿いの地道)。御用金を運ぶ一行が高槻藩士の改めを受ける街道、不明(川堤か)。勘定奉行が清十郎に石清水八幡宮を指し護符を貰ってくるよう指示する松林の街道、不明(先触れが帰ってきてこの先の橋が落ちていると告げる)。迂回し予定より遅れた一行が辿り着く吹田村の庄屋・黒田孫右衛門邸、民家長屋門(上写真)。黒田邸周辺の描写、田畔の道や塀際、孫右衛門の後妻・お若が編笠の侍とツナギをとる神社(愛宕社か)、ラスト出立の街道(国分寺付近か)など、思い当たる節はあるものの同定の決め手なく不明。
*清十郎に梅若正二、大黒屋に香川良介、実は本物孫右衛門の娘のおひなに美川純子、色っぽい後妻に毛利郁子。天満の岡っ引と下っ引は中田ダイマルラケットのコンビ。*清十郎は大黒屋の倅だが、剣の腕を買われ三ヶ月藩に仕官、御用金運搬が初仕事という設定。梅若正二氏はこの頃赤胴鈴之助シリーズ出演中。*民家長屋門を使った蔵の消える屋敷のからくりは、当主が双子でそっくり同じ家が建てられていたという奇譚。片方が蔵で縊死しており、不吉と取り壊されていたのだった。もちろんロケは同じ屋敷の門、アングルを変えてうまい演出がなされている。犯人は三ヶ月藩を横領の咎で追われた侍、村ごと脅していた大ワル。


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