花の折鶴笠
河野寿一監督作品
1962.12.1東映

 「朱鞘の一本どっこ」を気取るちんぴらやくざの半次郎、なりゆきで助けた娘に純情する。
娘は盲目で、旅籠の主の誤解から殿様扱いされている半次郎を信じきっており、そんな娘にほだされた彼は身の危険を顧みず、お菊を狙う貸元一家と大立ち回り。娘は半次郎に惚れた巾着切りによって無事江戸のお店へ送り届けられるが、そこへ娘を助けた殿様と称し騙りが現れる。これもやはり看過し得ぬ男伊達、敵わぬかもしれぬ相手にかかってゆく半次郎なのだった。

ロケ地
・半次郎が大根泥棒の畑、不明。お菊一行と出会う街道筋、野道や海辺不明(この部分の海はマジ海っぽい)
・馬入川の渡し、琵琶湖内湖か湖畔か(葦原)
・江戸へお菊を送り届けたお芳が街道へ出て半次郎を待つ松林沿いの道、琵琶湖西岸松原(近江白浜付近、風車街道に似る。橋はクリーク河口に架かるものか)
・ラスト、干草の荷車に潜り込んでいる半次郎を見つけるお芳、不明(高島の鴨川扇状地か。クリークや山なみが似る)

*冒頭では半次郎のおいたがひとしきり描かれ、いたずらっぽい橋蔵の表情が可愛い。大根泥棒や、転んで潰した蛙を村娘のほうへ投げたり、卵泥棒に農家へ侵入したりと騒がしい。なんでもひとまず懐に入れる癖が後段の伏線となるのかどうか、衣の中で割れる卵はとりあえず汚い。中段では、お芳が懐に突っ込んでいった大金入りの財布に有頂天で散財しまくるお調子者ぶりが描かれる。財布はお菊についてきた番頭がお芳に掏られたもので、そこに加賀様御用の書付が入っているもんだから、旅籠の主が半次郎を前田家家中ととんだ勘違いを仕出かす設定。このくだりでは、さんざん呑んだあと賭場へゆくと言い出す半次郎が宿の者に見送られるシーンで、股間にぶらーんと揺れる財布が傑作。ここで登場する浪人、貸元の用心棒で途中からお菊を使った悪企みを思いつく熊谷甚十郎、これが佐藤慶なのも見もの。後段は江戸、無事お菊の手術は成功するが、場末の酒肆で身分違いとしんみりの半次郎が泣かせる。お芳を相手に惚気てみせるのも見せ所。そして熊谷の企みに気付いた半次郎は鳴海屋に向かい、殿様として入り込み賊に豹変する熊谷と大立ち回りを繰り広げる。このすったもんだの騒がしいコミカルな殺陣が楽しい。半次郎が晴れて目の開いたお菊には会わず、簪を置いて黙って立ち去るのも憎い。この段では、明日包帯がとれるというお菊が、部屋に下がった折鶴モビールを触って「お殿様」半次郎の面影を見るイリュージョンが挿入されており、妄想は発展し池の釣殿から平安貴族の衣装に移行し、舞い踊る二人でホワイトアウト…どんな育ち方をしたのかお菊さん。


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