秘剣揚羽蝶 −源氏九郎颯爽記−
1983.1.28フジ/東映

 シバレン原作の痛快時代劇、九郎と遠山の金さんを里見浩太朗が二役で演じる。
 お話は、前職を奸計を用いて切腹に追い込んだ長崎奉行が、時の老中・水野越前守に取り入るため琉球の王女を貢物にしようと図る陰謀。前奉行の娘の仇討ちもからむ。九郎は仇討ち娘を助け、金さんは王女の危難を救う。
九郎のビジュアルは白いお召に笹竜胆の紋、ふだんは総髪の浪人態、キメのシーンでは解き髪で立ち回り。金さんは通例の遊び人ルックで頬っ被りもあり、ちゃんと遠山桜も見せる。
対するワルは長崎奉行をはじめ、結託の商人は盗っ人との二足草鞋。凶悪な用心棒もついていたりする。この作のワルは総じて助平ったらしく、風呂を覗いてたりすぐに寝所に連れ込んだりと脂ぎってワルい。最後は奉行以下皆殺しの成敗が下るが、水野老中はバックれて遁走。

ロケ地

・懐を狙いに来た蝙蝠半次との出会いとなる富士川・蒲原の渡し、広沢池東岸
・渡って向こうの浜・田子の浦、琵琶湖西岸松原
・前長崎奉行の娘・千春が用人の亡骸を運び込む堂、大覚寺護摩堂
・琉球王女一行に従う現長崎奉行に仕掛ける千春たち、酵素河川敷(駕籠道中にダート)
・襲撃に失敗し追われる千春たちを救う九郎、左源太の目を斬ったあと頼る普化宗の山寺、不明(深山のイメージに那智滝がインサートされる)
・山寺の和尚に貰った虚無僧ルックで大山街道をゆく一行(千春と半次が変装・九郎はそのまま)谷山林道
・千春をさらって相模川の急流を下る盗っ人・丹兵衛(河内屋)保津峡(途中で船を止めて千春にヤラしく迫るところで九郎に阻まれる)
・品川東海寺に入る琉球王女、神護寺山門〜書院。
・老中・阿部伊勢守邸、大覚寺明智門
・九郎の情報を得た伊勢守がセッティングさせる王女と将軍の会見、お浜御殿イメージに大覚寺勅使門(太鼓橋手前に砂浜を合成、橋には蟹をあしらい)。将軍が入る玄関、相国寺大光明寺前庭(頭巾被った「将軍」は中仕切のほうへ去る)。ラス立ちクライマックス、庭先に追われた長崎奉行が千春の刃を受ける、石庭。九郎が去るのを見送る千春と老中に加え遠山奉行、中仕切。
*実は盗賊の河内屋に川合伸旺、女がらみのシーンあり、「相模川」下りで船をやるシーンあり、なんと潜水もこなし、最後は変装のマスクをべりべり剥がして凄む完っ璧にワルい役。九郎に斬られたあと足をヒクヒクさせる死に際もなかなかしつこくて良い。この手下の左源太も執拗さがマルの亀石征一郎、目斬られてからはアイパッチで剣客ふう。水野老中は「怪異」金田龍之介、王女の入浴をステンドグラス越しに覗くシーンでは生々と舌なめずり。このあと王女に抵抗され腕を刺されるほか行灯倒して家が火事という情けなさ、無念がる仕種がたまらない。水野への訴追はなく逃げたままなのがちょっと惜しい。九郎の懐中を狙ったあとすんなりと「子分」になっちゃう小松政夫、ラス立ちでは長崎奉行の手下をぶっといロープで「勇次」みたいに吊り仕置するのが笑える。


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