新・座頭市2


第1話「恋鴉いのち百両」1978.1.9

 市と道連れになる薬売りの女、彼女の言うほうへ行くと刺客。それを雇うのは彼女の義弟、二人は市に斬られた博打うちの妻と弟だった。市が二人をヤクザから救ったあと、まだ気持ちの昂ぶる義弟を優しく包み、女は去ってゆく。

 ロケ地、河原で昼をつかう市と薬売り、大堰川か。薄の街道筋、不明。
*薬売りに小川知子、義弟に長谷川明男。


第2話「目なしだるまに春が来た」1978.1.16

 市と間違われ斬られた旅の按摩、直後通りかかった市はその按摩から娘へ届ける金を託される。死んだ男は幼い娘を旅の一座に置き去りにしており、市が父親ではと忖度されるが、市は真実を語る口を持たない。しばらく座に留まる市、按摩の遺児を鍛えたり座の危機を救ったり、そして太夫が蛆虫に無体を強いられるところへ乗り込み仕込を振るうのだった。

 ロケ地、草むらに潜む仲間の元へ走ってくるヤクザ(福ちゃん)、大堰川河畔林際か。市が按摩のむくろを持ち込む寺、丹波国分寺境内、塚は乳銀杏の根方。春風一座が小屋掛けの神社、廣峰神社(屋台が出ているのは入口の鳥居付近、酉蔵一家のヤクザが座の人気者の浪人に金をつかませ座から去らせるシーンは参道中門)。酉蔵殺しの按摩を出せと役人がやってきて、和尚の介入で「ゆうべ死んだ犯人の按摩」の墓へ行くくだり、塚は丹波国分寺乳銀杏の根方。
*捨て子を我が子のように育てた出刃打ちの太夫に朝丘雪路、和尚に殿山泰司、太夫に言い寄る二足草鞋の親分に今井健二、市を狙うヤクザトリオの一人に福本清三(関係ない按摩さん殺して恥じぬ極悪人)。*手裏剣さばきの代役に立つ市、ヅラかぶり「付け目」して出てくるのが傑作。


第3話「天保元年駕籠戦争」1978.1.23

 父がいた頃は三十も駕籠があり羽振りのよかった甚ちゃんの家、今は阿漕な親分にしてやられ相棒の八公とふたり、ひとつの駕籠で営業中。今も妨害は続いており、ある夜相棒が殺されてしまう。このとき甚ちゃんの家には、腹痛で倒れていたのを助けられた市がいた。

 ロケ地、甚ちゃんの家、酵素河川敷にセット(血で汚れた相棒の衣を洗うのに小川、その衣を干してある「木」の傍などが効果的に使われる)。市が先棒をつとめ丸源一党をからかってきたあと客を乗せふらふら行く街道、保津峡落合トンネル。休む市と甚ちゃん、広沢池東岸(市の義理が嬉しいと呟く甚ちゃんは汀、また担ぎだしたところへ丸源の用心棒が現れるのは桜並木の堤・腕の見せ合いとなり、甚ちゃんは先棒が座頭市と知る)。脅されて今は丸源で働く恋人が八公殺しの現場にいたと知り、腹の子を流そうと石を持って歩く甚ちゃんの妹、保津峡落合崖道(せっかく授かったものをと説く市のシーンは広沢池桜並木にスイッチ)。姿を消したおりんを探しがてら駕籠を担ぐ市と甚ちゃん、西瓜食って休む水辺は広沢池東岸(農婦が妹の居場所を告げてゆく)。妹とその恋人が人質にされている西の谷へ赴く市と甚ちゃん、砕石場か(整然と段に切り取られた山肌や、激しい水食の跡を見せる崖など。崖下の砂地は涸れた水脈にも見える)。妹と男の仲を許し、祭りの太鼓を叩く甚ちゃん、鳥居本八幡宮広場に櫓をセット。市が去る道、ラス立ちの砕石場に出た場所と同じか(背後の侵食地形は「かかし半兵衛」で出る侵食崖に酷似)
*乱暴者だが気のいいアニキの甚ちゃんに根津甚八、妹に栗田ひろみ、その恋人に風間杜夫。丸源の親分に梅津栄、用心棒に山本昌平。*頼りなくよろけてブチ当るふりして丸源の駕籠を「斬る」市や、ラス立ちで青竹に刺されたと見えて懐にさっき食べてた西瓜仕込んでるなど、コミカルな芝居も見どころ。*場所の設定は丸源の親分が八公を殺したあとぶち上げる台詞「本庄から深谷まで丸源の駕籠が独占」から、中山道・本庄−深谷間と推測される。


第4話「」1978.1.30

 お女郎に頼まれ妹に金を届ける市、ひどい扱いを受けつつ健気な盲目の娘の目を開けてやろうとする。気のいい青年医師の手術は成功するが、欲をかいた養親は妾に出す先のヤクザの意向を受け、治療を台無しにしてしまう。

 ロケ地、乗り合わせた医師が市の目を手術してやると言う谷戸の渡し、広沢池。おたよを連れ佐倉へ向かう市、流れ橋木津堤(昼飯を食う茶店)。青年医師を訪ねる佐倉の参天堂、走田神社社務所。治療代稼ぎに成田山で荷担ぎのバイトをする市、豊国廟石段
*おたよに大竹しのぶ(演技は凄すぎのひとこと)、彼女を妾にする親分に遠藤太津朗、養母に菅井きんと田武謙三、医師に柴俊夫。


第5話「歌声が市を斬った」1978.2.6

 掏摸や、借金で逃亡中の娘と道連れになる市。市に感銘を受ける二人、掏摸は更生を誓い、娘は逃げずに運命と向き合おうとする。

 ロケ地、市を襲う追い剥ぎ浪人、木津河原。掏摸に財布をやられる渡船、木津か。借金とりと母が刺し違えた旅籠から逃げてきた三人が落ち着く河原、流れ橋の見える木津河原。貸主の亀屋へ向かう娘がゆく道、木津堤。馬子になった掏摸と市が行き会う野道(「まだ」市に声は掛けられず)、不明。
*お菊は中野良子、掏摸に川谷拓三、娘の母に刺される借金とりに蟹江敬三、追い剥ぎ浪人(のち亀屋用心棒)に待田京介、怪しの亀屋に北村和夫。*三人は門付けをして歩く。この際勝新が三味線を弾く。大立ち回りがはじまる前の、三味で刀を受け尚弾き続ける演出が見もの。


第6話「五本の長脇差」1978.2.13

 渡世人を気取る悪ガキ五人組、子供を死なせたくない市は好まざるヤクザの出入りに関わるが、ガキどもは性懲りも無く口車に乗り、遂に一人が命を落とす。仲間の死に号泣しドスを捨てる若者たち、もちろんガキを使嗾したヤクザは血の洗礼を受ける。

 ロケ地、上州・室田宿近くの野道は谷地田や小川等出てくるが不明。市をスカウトしに来ていた藤五郎一家と事を構えてしまう五人組、鳥居本八幡宮に縁日あしらい。鱗田一家に唆された五人組が藤五郎一家の使いに仕掛ける山道、谷山林道か。仲間の死体を乗せた大八を引いてゆく若者たちが渡る木橋、不明(下に市、彼らが川に投げ捨てたドスのしぶきがかかる)
*市を用心棒に斡旋する道中師に夏純子、鱗田の親分に山本麟一。


第7話「遠い昔の日に」1978.2.20

 市の幼馴染が二人登場、トメちゃんとは旧交を温めるが、村を出る市に花をくれた少女は凶賊の情婦と成り果てており、無惨なすれ違いとなる。

 ロケ地、庄屋宅を襲って出てきた賊とはちあわせ斬ってしまう市、摩気橋たもと民家前。凶賊出没のため検問が行われている街道、不明(坂道)。座頭市を連れてこいと命じられるも、相手が幼馴染の市と知り逃げられたことにして報告する賊の情婦、不明(丘の上の池堤)。トメちゃんがよろずやを開いている宿場の寺子屋、普済寺(市が宿場にやって来るシーンで総門、お師匠さんや子らを人質にした賊が呼ばわるのは鐘楼門、市が村人に撲り倒されるのは参道、子らが監禁されているのは本堂)
*冷酷非情な凶賊の首領は石橋蓮司、情婦に李礼仙、トメちゃんに草野大悟、寺子屋師匠に大出俊。粗暴なうえ人の心を弄ぶレンジ怖すぎ、覆面している場面が多いが声で却って怖さ倍増し。


第8話「そこのけそこのけあんまが通る」1978.2.27

 火の車のお家のため分家に輿入れする幼い姫様、しかし道中身辺に怪しい影。嫁に行くなと出るお化けに脅えた姫は逃げ出し、市と道連れに。これが姫の命を守る結果となる。

 ロケ地、街道をゆく琴姫輿入れの行列、大内亀岡道(青柳藩の先手物頭が出迎えるのは辻堂前、渡世人たちがやって来るのは八木道から)。琴姫の宿、摩気民家(翌朝逃げ出す姫は川側の塀伝いに出てきて、門前の見張りの目を避け川に下りてゆく)。姫の犬が市にまとわりつき、里の子と服を取り替えた姫が現れる橋、本梅川若森廃橋。里の子らと縄跳びに興じるお宮さんは藪田神社境内。日暮れて帰る子ら、残される市と姫、大堰川河川敷。姫不在のまま空駕籠で出立する輿入れの行列、摩気民家摩気橋。市が姫と当座暮らす小屋と周辺、大堰川堤の傍か。市と別れ迎えとられてゆく姫、大堰川堤か。
*いちまさんのような琴姫は斎藤こず恵、市と遊び睦むさまが可愛らしく物悲しい。姫付きのじいと侍女は稲葉義男と中山麻里、姫への刺客だった先手物頭は工藤堅太郎、市を狙うヤクザに大木正司。*姫は赤津藩佐治家息女で本家筋、輿入れ先は分家の青柳藩。行列の道筋は赤津・青柳藩領境、位置等詳細不明。


第9話「まわり燈籠」1978.3.6

 百姓のため代官所を焼き打ちした親分は追われ逃げ回る日々、たった一人残った子分は疲れ果てたすえ地回りと組み親分を手にかける。この経緯に、恐れを知らぬ腕自慢の若者がからみ、悪党の目論見を引っ掻き回す。

 ロケ地、ほぼ流れ橋と周辺。冒頭義助を狙う賞金稼ぎは橋下、市と三次が出会う茶店は堤下、旅籠の娘といちゃつく三次は堤・河原・汀、義助が裏切りに遭うのは橋下。
*三次に石橋正次、親分を裏切る一の子分に平泉征、つるむ地回りは小林昭二。


第10話「冬の海」1978.3.13

 絵を描く娘と道連れになる市、養生所を抜け出してきた彼女は市を描き市と遊び、やがて命数を使い果たして逝く。いつものように襲い来る敵を薙ぎ倒し市が去ったあと、天駆けった天女の手からこぼれた絵が冬の渚に散ってゆく。

 ロケ地、市についていっていいか聞く娘、広沢池北西岸(水無)。二人が腰を落ち着ける渚の小屋、間人海岸
*娘は原田美枝子、迫力のアップの連続。語る言葉なし、ただ見るべし。市に助けられ懐く青年に谷崎弘一・暴将の久ちゃん、なかなか可愛くよく利いている…裸描きたい発言に即脱いで出てくるし。


第11話「子別れ街道」1978.3.20

 旅籠で隣り合わせた男から子と女を託される市、子は祖父のもとへ、女の因縁も市によって断ち切られる。

 ロケ地、子を託した男が追っ手に斬られる鎮守、鳥居本八幡宮広場。届け先の印旛沼の漁師の祖父宅、大堰川河川敷にセット。
*子を託す父は和崎俊哉、彼が連れて逃げた親分の女は范文雀、姐さんを取り戻しに来る追っ手に高岡健二や丹古母鬼馬二、親分は浜田寅彦。坊の祖父の今福正雄もいい味。


第12話「雨あがり」1978.3.27

 狂犬のような男に魅入られ夫を殺された女は男をハメて島送りに。その狂犬の帰還に、宿場は蜂の巣を突付いたような騒ぎ。てっきり女が幸せに暮らしていると会いに来た市が、その宿場に現れる。

 ロケ地、島帰りの狂犬を迎えに出る玉村宿のヤクザたち、待つ茶店は大堰川河川敷か(水面は映らず、水たまりだらけの地道と葦原、遠景に山なみと竹林)。遂に現れた島帰りに密告者は自分だと女を庇い包丁で刺そうとして返り討ちに遭う板前、大堰川堤畔か。
*料理屋の主である亭主を殺された女にいしだあゆみ、現れた市に悪態をつく気だるげで投げやりな演技が光る。島帰りの狂犬は夏八木勲、宿の主に花沢徳衛、飯屋の親爺に高品格、赤獅子一家のヤクザに福本清三。高品格、市を狂犬に宛がおうとして説得する段であたふた「噂じゃ座頭市は強きを助け弱きを挫く」とか言っちゃったり、気をひこうとしてメザシを山盛りにしたり頓珍漢をしでかすのが大笑い。


第13話「忠治を売った女」1978.4.10

 無理矢理妾にされたことを恨んだ女は国定忠治を密告し、獄門台に送ったことで追われる身に。逃避行には元亭主が随行、女の雑言に血がのぼり性悪ヤクザに売ってしまったりするが、市の示唆で女を守り愛を示して逝く。

 ロケ地、雪の道ほぼ不明。ちょっとした山道のほか、稲架のある田畔なども。雪の中を歩く市の姿がコミカル。
*女は二宮さよ子、独特の口調も不貞腐れた態度も良し、獄門台を見て嘲笑うつもりが晒し首を見て忠治への愛に気付いたと語るくだりは圧巻。彼女の元亭主は岸田森、惨めで馬鹿な役回りのコキュを好演。ペーソスに満ちた愛嬌ぶりはさすが巧者。女を食い物にして忠治の名声で男を上げようとする性悪親分は名和宏。


第14話「夢に追われて阿波踊り」1978.4.17

 札所巡礼の市は、父の位牌を持って祖父を訪ねる少年と行きずりに。坊が父の実家に受け入れられる経緯に、市を亭主の仇と狙う女もからみ、決着は阿波踊りの輪の中に持ち込まれる。

 ロケ地、海辺や祖父宅、札所等不明。クレジットには協力/徳島市観光協会。藍農家の蔵や庭先など秀逸。
*祖父に浜村純、婚礼の席で坊の父に捨てられた嫁に吉沢京子、この一家を狙うヤクザに小松方正、市を仇と狙う道中師に江波杏子。


第15話「女の鈴が哭いた」1978.4.24

 手首を落とされ市を恨む岡っ引は搦め手から攻めてくるが、やり口が卑怯そのもの。仲睦まじい出刃打ち芸人夫婦の仲を裂き、亭主に市を殺させようとした卑劣漢は、身の丈に応じた死を迎える。

 ロケ地、市が出刃打ち芸人夫婦の胡弓と鈴の音を聞く道、広沢池か。仕事を終え睦みあいながら夕陽を浴び宿へ帰る夫婦、流れ橋
*芸人夫婦は佐藤オリエと高橋長英。岡っ引は蟹江敬三で、亭主に対する悪魔の囁きぶりは巧すぎ。利用されるヤクザは汐路章。


第16話「裸の泣き虫役人」1978.5.1

 融通のきかぬ堅物の代官所手代が、腐りきった上司に絶縁状を突きつける話。どう見てもいい人の市を騙し討ちにする役を仰せつかった小役人は、彼独特のやり方で市を庇い代官に悪態をつく。

 ロケ地、我孫子付近の街道筋、谷地田や木橋、河畔等ほぼ不明。小金代官所は民家長屋門(ごく一部分しか映らず)
*小役人は坂上二郎、ヤクザも引き連れ市を捕縛にやって来た代官に二階の窓を小出しに開けて放つ悪態が抱腹もの。彼と夫婦約束をしている子持ち女は吉田日出子、ほんわかテンポのずれた感じが坂上二郎とお似合いで、坊とのからみも暖かい。悪代官は菅貫、市から逃げ回るじたばたがさすがの巧さで面白すぎ。


第18話「こやし道」1978.5.15

 悪党の化かしあいは悪辣な目明按摩の勝ち、しかしそこに市。ワルが貯め込んでいた悪銭を売られてきた娘に渡す段で、タイトルの逸話が出る。

 ロケ地、女衒とニセ按摩が屯する茶店に行き合わせる市、琵琶湖岸(沖ノ島の見え方から東岸と思われる)。破戒和尚の寺、丹波国分寺門。ニセ按摩が女衒を埋め、和尚と情婦を殺す墓地、不明(背後に萱葺き民家)。殺された老婆の亡骸を運ぶ大八と、市を追ってきた渡世人たちが行き違う野道、丹波国分寺裏手の畦道
*ニセ按摩に藤岡琢也、含み針が凶悪。彼にしてやられる面々は女衒が和崎俊哉で和尚が殿山泰司、情婦は菅井きん。*こやし道は、市の手を引いてくれた娘が悪い虫も肥やしになると教えた野焼きの畔。


第17話「霜夜の女郎花」1978.5.8

 家のため身を売った姉を思う妹、かっぱらいで得た金で女郎の姉を借り切り、病んだ体を休ませようとする。しかしその宿場には、たちの悪い二足の草鞋が巣食っていた。タイトルは楼の軒下に咲く草花、お女郎の姉が我が身に擬えるモチーフ。

 ロケ地、街道筋、お地蔵さん等ほぼ不明。
*女郎の姉は音無美紀子、ちんぴら親分は清水紘治、楼主は江幡高志で、妹に金を盗られて馬鹿をみる旅人に梅津栄。


第19話「めの字の置きみやげ」1978.5.22

 馬子の少年に誘われ、孤児を育てている娘の家にしばらく居着く市。育ててくれた祖母の教えを守り、自分にできることで世間様へお返しと子らの世話を見る聖少女は、たつきのため街道で袖を引くが、ヤクザに付け込まれてしまう。

 ロケ地、お春の「寺子屋」、萱葺民家。子らと遊ぶ段、小川を飛び越える市、不明。お昼をつかう河原、大堰川河川敷。街道に立ち旅人の袖を引くお春、大内辻堂(アングルは正面から、少し引いて後ろの山も映しこむ。客と中に入ってゆくのが撮られている、珍しい使い方)
*お春は友加代子、彼女を慕う青年に渡辺篤史。無闇に乱暴なヤクザは小田部通麿。


→ 座頭市覚書


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