新・座頭市

第3シリーズ  1979年 勝プロダクション/フジテレビ


第1話「今日も行くひとり旅」1979.4.16

 助けてやったのに懐中を狙う男に刺されかけ、反射的に斬ってしまう市。その男の女房と弟は市を仇としつこく付け狙うが、悉く失敗するうえヤクザの魔手から市に救われる。

 ロケ地、雨宿りの市、萱葺民家(イカサマ博打の御宿の佐吉を追うヤクザがなだれ込み、市が介入)。懐中を狙った佐吉を斬ってしまう河原、大堰川河川敷。街道で市を呼び止める佐吉の女房・おせん、大堰川堤(背後に河畔林と堤外地にある畑地、佐吉殺しの件を迫るおせんは畑地)。おせんが市を殺すため浪人を雇うくだり、不明(お堂か祠か)。市を懐柔にかかり船で行こうと誘うおせん、大堰川汀(にわか雨に遭い市が濡れながらおせんを庇うシーンはセット)。おせんの家、萱葺民家。佐吉の墓に参ったあと去る市、不明。
*おせんに浅丘ルリ子、妙な早口が利いている。結婚を餌に彼女に振り回される佐吉の弟は江藤潤で、おせんをモノにと狙う悪辣な親分は菅貫。


第2話「冬の花火」1979.4.23

 声の大きい花火師と知り合う市、招かれた家には耳の遠い娘。七色の大輪を咲かせると懸命の花火師を助け、かつ目と耳と違いはあるものの同じ境遇の娘を励まし鍛える話があって、市を狙う渡世人がところのヤクザと共に乗り込んでくる荒事、花火師を脅迫して市を爆殺する企みは潰え、出来上がった花火がぽぉんと屋根を突き破って上がる。

 ロケ地、花火試射の火が移り燃える葦原、不明(市が葦を仕込みで薙ぎ払い助かり)。花火師の娘が内職を届け手間賃を貰って出てくる門、民家門。花火師の家、酵素河川敷にセット。
*花火師は財津一郎、持ち前の諧謔が市と絶妙のからみ。父の花火で耳をやられた娘は中村七枝子、音の無い世界に住む彼女と市の触れ合いは心に響く名演。ヤクザは井上昭文で、最高の狂言回し。


第3話「市の耳に子守唄」1979.5.7

 市に道連れをせがむ女の身辺は物騒、盗っ人の亭主に命を狙われる彼女は身重。生まれてくる子のため甲斐甲斐しく立ち回る市だが、産声を共に喜ぶはずの女は世を去ってしまう。

 ロケ地、押し込みの男女を捕えるべく張られる検問、大内辻堂前。検問をやり過ごし再び市の前に現れる女、大内・亀岡道。産婆宅、萱葺民家と周辺。
*女は大信田礼子、市を逃がしてくれる牢名主は岸田森で、牢内には森章二も。*産褥の枕頭に貼られた護符に浦安鬼子母神の記述。


第4話「あした斬る」1979.5.14

 市と関わる奇妙な人々の話。いいとこの令嬢みたいな首吊り未遂の幼女、ハッタリ親分に子供じみた手下という取り合わせのヤクザ、そしてユニーク極まりないのが凄腕の脱藩浪人。市を狙うヤクザをハメる浪人の話が主で、各登場人物の個性が融通無碍に描かれる。

 ロケ地、渓流沿いの温泉宿、日吉山荘か。釣りの市、幼女をタテにとられ浪人と対決の市、大堰川河川敷。
*凄腕浪人に郷ひろみ、ポニーテール長め。ヤクザの手下で一人だけまともに使えそうな男に本田博太郎、野の花を足蹴にする下っ端にムッとするあたり独特の表情。幼女は飯島洋美、これが最も謎めいた存在。


第5話「ふたおもて蝶の道行」1979.5.21

 寂しがりやの三河万才と道連れになる市、その男が岡惚れして構った女を里の間々田まで送ることになるが、市が看破したとおり女は訳ありだった。

 ロケ地、石段を登り詰めた市を襲う一団、木津堤法面の石段。こそ泥を働き村の衆に詰め寄られた猿之助が飛び降りて逃れる橋、流れ橋。このとき市は橋下にいる。溺れてなどおらず川から上がってきた猿之助が市に笑いかけるのは右岸際の汀と思われるが、妙に泥が堆積。子ら相手に万才を演じる猿之助、通りかかった美女を見て凍るのは藪田神社入口付近。男と落ち合う女の「実家」、不明(萱葺の母屋、市と猿之助が待っている「表」に庇)
*猿之助に川谷拓三、終始独特の「川谷節」で泣いたり怒ったり喚いたり自己完結したり。見捨てないでと市に縋るくだりがおかしくて哀切。美女は松尾嘉代、落籍された旦那を裏切るしたたか者を好演。これに旦那が差し向けた渡世人は峰岸徹、凄む態度もやられっぷりもいい。*ところの設定、女の目的地は間々田。追っ手を避け日光街道ではなく裏街道をゆくという会話が出てくる(話に出る表現は奥州街道)。


第6話「糸ぐるま」1979.5.28

 庄屋を抱き込んで村の衆を騙し、娘を叩き売った金をせしめるちんぴらヤクザは、市に懲らされて真人間に。しかし因果はめぐり元の子分に賞金首として突き出されるところへ市、紋切り型の口説を吐き、つるんだ役人ともども悪を斬る。

 ロケ地、女衒に金を貰った段で襲われる村人たち、丹波国分寺(塀越しのアングル、はさ木と河畔林が見えている)。つるんだ庄屋も殺しますます増上漫のちんぴら団が客を蹴散らして上がりこむ茶店、谷山林道か(一人逃げず床机に座る客は市)。市の挑発に乗り追いかけてきたちんぴらの首魁が片足を斬られる街道、大内辻堂手前の地道(仕儀を見て子分どもが踵を返すのは亀岡道)
*市に足を斬られ追分宿の風呂焚きになるチンピラに緒形拳、女房の酌婦に倍賞美津子。女はあの村で売られた女、二人が互いの何をどこまで知っているかは語られないが、市に救われ戻ってきた亭主との抱擁が泣かせる。


第7話「ゆびきりげんまん」1979.6.11

 やむなく斬った男の遺児を祖父母のもとに送り届け、十年後約束通りやって来た市は違う名を名乗る娘に会う。彼女は身を投げ出して、押し込みに殺された祖父母の仇を討とうとしていた。

 ロケ地、懐を狙った男を斬り、その遺言で男の娘を送り届ける市、朝靄の薄原は大堰川河川敷か。場面切り替わり十年後、その娘・おふくに会うため宮之越へ向かう市が巡礼女と道連れになる峠、保津峡落合崖道。巡礼女と桜粥を食す茶店、谷山林道か。黄葉を踏みしめ野道をゆく市、および幼女のおふくと遊ぶ市、藪田神社入口の銀杏の根方。おふくの祖父母を殺したヤクザを斬って姿を消した市を追っておふくが走る道、冒頭の朝靄の薄原と同所。
*おふくに大谷直子、峠で会った按摩を市と認識したときの眼、仇のもとへ入り込むための山出し娘の芝居も良し、正体を見破った市に諭される場面はとりわけ印象的。侍くずれのヤクザは清水紘治。*回想と現在がめまぐるしく交錯する、市とおふくの旅のシーンが美しい。峠の茶店の「桜粥」は小正月の小豆粥ではなく、塩漬けの桜を炊き込んだ一品で旨そう。「みやのこし」は宮之越?(中山道/信州)。


第8話「大当たりめの一番」1979.6.18

 掏られた財布を市に取り返して貰った男だが、所持金の額を喋っているのを悪党に聞かれ有り金残らず巻き上げられてしまう。しかしこの男、純朴さが過ぎて釣り込みに使われたお女郎に岡惚れ、天女扱いで食い下がる始末。ヤクザにボコられしおしおと故郷に帰ろうとした彼に、市から望外のプレゼントが二つやってくる。

 ロケ地、平助がちんぴらガキに財布を掏られる神社、梅宮大社(境内、楼門内外。富籤を売っているのは舞殿で、貼り紙に「本庄社」とある)。平助が市に待っていろと言われる牧西八幡、大内か(本庄宿のようなので「牧西」としたが、読みは違う)
*平助は草野大悟、惚れられるお女郎は波野久里子でヤクザは深江章喜。市が泊まる一文宿の騒がしい面々、貰った籤が千両富と知ってがたがた震えだす市も傑作の、コミカルなお話。


第9話「雨の船宿」1979.6.25

 川止めの宿で展開される、ちょっとグランドホテルみたいなお話。市のあとからやって来て相部屋になる、十手を返上にゆく途の老目明しは、たった一つ心残りの十年追い続けた対象にここで出会う。市を相手にしんみり夜語りがなかなかの見せ場、目明しは市の所行を知悉している設定。

 ロケ地、船宿、大堰川河川敷(宿から川を望む入口を河原に、船宿はセット)。雨上がり、対岸で待っている船頭を「見逃す」くだりは堤、そのあと市を襲う渡世人たちとのチャンバラは堤外地の地道(轍あり)
*逃亡者だった船頭に山本圭、彼を慕う宿の下女に根岸とし江、目明しは須賀不二男。市を殺ろうとする下品な親分に藤岡重慶。このほか、金を積んで船を頼む訳ありげな若い男、女郎を乗り逃げする僧侶、雨の中遊んでいて作った傷から破傷風を発病する子供、子のため危険を承知で出す船に乗ろうとする傲慢な侍たちなどの群像劇がお話に厚味をもたらす。ここを先途と稼ぎまくる宿の親爺もいい味。*渡し場の設定、藤岡重慶が凄む際にここは岩淵の兄弟分の縄張りと発言、岩淵宿とすると岩槻街道の荒川か←日光御成道の荒川はたいそうな暴れ川で当時架橋不能。


第10話「市の茶碗」1979.7.2

 立ち寄った庄屋宅で名器を触り目利きを誉められた市は、その茶碗を作った名人に惹かれ窯場へ。いろんな人の肩を触ってきた手だと、弟子の助言を退け市が「心で」ひねった茶碗を見た名人は、天啓を得る。

 ロケ地、庄屋屋敷、不明(茶碗を見る縁先と庭、名人の女房が代金を受け取る門まわり)。俺もひとつ作ってみるかと呟く市がゆく枯れ田、七谷川畔か。女房が茶碗入りの行李を盗られる茶店(市も行き合わせ)平野屋。盗っ人が行李を開け茶碗ばっかりと怒って投げ捨てる神社の神楽堂、鳥居本八幡宮舞殿(市が居合わせ飛んできた名人の茶碗をキャッチ)。名人の工房、酵素河川敷(木のそばに登り窯、河原に小屋をあしらい)。返された自作の茶碗をお地蔵さまに持たせて去る市、北嵯峨農地か(松の根方)
*名人・夢七は江原真二郎、妻女にいしだあゆみ。チャンバラは名人を斬りにくる土佐藩士らと(夢七はもと土佐藩のお抱え焼き物師)。土をひねる「手」のほか、火加減を「聞き」異能を発揮する市が見もの。また、名人に閃きを与えるものの、市の作った茶碗は評価されないのがよく利いている。


第11話「人情まわり舞台」1979.7.9

 恩人の市を見かけた「ぶっといヒモ」は見栄を張ってもてなすが、転がり込んでいる先の代貸に市を殺れと因果を含められてしまう。腐っても市に手をかけたりできぬ男の「工夫」が見もの、牙をむいたヤクザどもに市の仕込みが舞い、「ヒモ」とその女に纏わりついていたしがらみがほどかれる。

 ロケ地、代貸が差し向けた用心棒と斬りあう市、広沢池北西岸
*博打狂いで親を泣かせた潮来の船大工の倅に原田芳雄、今はヒモ。市を招じ入れた二間の家で、市の手を引いてぐるぐる回らせ広い家に擬装するのが大笑い、奥の座敷とか渡り廊下とか。市に毒を飲ませて仕留めるためのお芝居宴会、賑やかに歌うヤクザたちの顔凍ってるのが妙味、小峰隆司の表情が秀逸。


第12話「虹のかけ橋」1979.7.23

 現実を肯定できず、いもせぬ娘を求めて旅する女と道連れになる市。彼女の身の上話が狡猾なヤクザに立ち聞かれ、子を求める母の心は市への仕掛けに利用されてしまう。

 ロケ地、市とお須磨が出会う深谷宿への抜け道、保津峡落合(お須磨が崖下を見て傷心し顔を伏せるのは落下岩、下の清滝河口も落下岩も共に見上げ・見下ろし両方のアングルあり。市が落下岩の「下」から現れ、お須磨が引き上げてやる←抜け道と教えられたがとんだ急崖だったという設定)。道連れとなった市とお須磨がゆく野道、七谷川河畔林そばの畦道。休む茶店、丹波国分寺前にセット(土塀のみ「茶店の中」から映り込む)。ヤクザがお須磨の娘に仕立てる下女が、隠して飼っていて放られた子犬を追ってゆくと市がいる葦原、広沢池東岸(後段、里の子らと遊ぶ市も同所、水無し)。お須磨が勧める酒を呷って昏倒した市にヤクザが殺到する河原、大堰川河川敷
*お須磨に中村玉緒、娘は死んでない神隠しに遭ったと言い募る狂気を孕んだ目が怖い。市の首をとり組の跡目を継ごうとはかるヤクザに蟹江敬三、話を持ち込まれるところの親分に今井健二、手下に有川正治。*娘をとるか市をとるかと迫られ毒酒を渡されたお須磨が市にそれを勧める際のブラックな暗喩と、ヤクザが娘に刃を突きつけている遠くの気配に全てを覚り芝居を打つ市、ほとんど神の領域。


第13話「鬼が笑う百両みやげ」1979.7.30

 十年も家を空けふらふらしていた青年は、ひょんなことから悪党が隠匿した大金を手に入れ、有頂天で故郷へ。道中、用心棒として頼られてしまった市は、悪気のない青年が闇に落ちるのを防いでやる。

 ロケ地、仙太が隠し金を見つける深谷の鎮守、鳥居本八幡宮。仙太が払いに小判を出して悪党に目をつけられてしまう茶店、丹波国分寺前にセットか(背景にはさ木と河畔林ぽい林)。市を斬りにきた浪人とやりあうところへ、仙太を狙った者どもが鉢合わせの街道、天井川の堤か。
*仙太に谷崎弘一、人の良さ丸出しの足りないっぽい青年を好演。彼を盗っ人に仕立てようとした二足の草鞋にボッコボコにされるくだりは真骨頂。十年も帰らぬ息子のためいつも好物を用意してくれていたおっかさんは赤木春恵、おっ母のおっ切り込みが旨そう。


第14話「あんま志願」1979.8.6

 市に弟子入りを願い髷まで切ってしまう若者の真意は父母の仇討ち、放浪の途にあり十日前に事実を知った混乱ぶりを火野正平独特の演技で見せる。困っている者を放っておけぬ気の良さ、苦界に身を沈めた姉や、泉下の父母との「会話」も正ちゃん節炸裂、とどめは姉に仇討ち完遂を知らせに走りながら吹く按摩の笛。

 ロケ地、田畔や水辺、亀岡あたりと思われるがほぼ不明。


第15話「かかしっ子」1979.8.13

 父母亡き後意地の悪い親戚に引き取られた幼女、兄が叔父夫婦を「殺して」逃げたあと彼女は口を閉ざし、一人健気に兄を待つ。その子と関わった市は、やがて「殺し」の真相を知る。

 ロケ地、妙の兄が鬼熊の親分に叔父叔母殺しと決め付けられ逃げる田畔、不明(畔にはさ木あり)。釣りの妙が通りかかった市に鉤を引っ掛ける河原、大堰川汀。妙が屋根に乗り案山子を掲げ兄を待つ家、大堰川河川敷にセットか。妙が子守をして米を貰う農家、民家縁先か。
*二足の草鞋の鬼熊、大木正司。兄弟に同情的で、逃げ込んできた妙の兄を匿い市に託す酒肆の親爺に殿山泰司。*もの言わぬ妙に竹笛を作ってやり意志の疎通をはかる市、鬼熊との立ち回りはこれを吹きながら(妙に「出るな」等の合図を送る)。


第16話「送り火 迎え火 灯籠流し」1979.8.20

 賭場で恩を受けた男の家へ金を届けに行った市は、いきなり湯を沸かせと老婆に引っ張り込まれ、そのまま出産に立ち会う。その縁から三年後再び深谷宿へやって来た市は、亭主が帰らぬまま健気に暮らす母子を見るが、道中ずっと市を追っていた渡世人が、彼女らがずっと三人で暮らせる日を夢見ていた亭主なのだった。

 ロケ地、深谷宿への道を歩く市、堤際の田畔か。灯籠流しの川、劇中歌の流れのイメージ、大堰川か。
*健気に亭主を待つ女に倍賞美津子、亭主は待田京介で母は浦辺粂子。*待ち焦がれた亭主の酷薄さを思い知らされ、何もかもわかった上で仕込を置いていった市に応えるおりょうが泣かせる。その気遣いの、市に届けられた提灯を見て笑うヤクザどもの浅薄さ加減も利いている。


第17話「この子誰の子」1979.8.27

 葬儀の席に現れ隠し子だと偽り金をとる騙り母子、女にはわるいヒモがついていたが、欲をかいて策に溺れる。心惑う母の手を引く坊が頼もしい。

 ロケ地、騙り母子に金を渡す庄屋の屋敷、不明(萱葺民家、周囲の町なみも映る)。お留が上がりをとりに来る捨吉を待つ木の根方、北嵯峨か。市が休む茶店、不明(前に小川、水車が回る)。市を殺るつもりの石見銀山の効き目を相棒で試す捨吉、大堰川堤法面か。
*騙り女に藤村志保、ヒモに蟹江敬三。お留と捨吉という名の対比も面白い。ヒモが市のことを注進におよぶヤクザは江幡高志、ラス立ちでは市に斬られたうえ坊にボコられ。*訓練のすえ関係ない時でも頭に手を置くと自動的に泣き出す子、市に毒を盛りにかかるも徳利をすり替えられ自分が飲んでしまうヒモなど、ユーモラスな場面がたっぷり盛り込まれている。


第18話「犬と道づれ」1979.9.3

 村娘を女衒に引き渡すヤクザを殺った市を、一宿一飯の恩義を返すため狙う渡世人。市の行為を正当と語る彼を、市は斬らない。市が足を斬った渡世人と、彼に足を傷つけられた犬は、同じ医者に手当てされる趣向で、医師宅でドラマが展開される(医師は獣医)

 ロケ地、娘たちが女衒に連れて行かれかける渡し場、広沢池東岸。犬を連れて川辺をゆく市、木津川汀。焚き火をしているとヤクザの手下が上から降ってくる橋、流れ橋。犬を診てもらう医者の家、不明(萱葺民家、けっこう立派で傍には蔵のような建物も)
*市を狙い足を斬られる渡世人はにしきのあきら、医師は小野進也(柔の達人で長崎帰り、豪胆な人物)。手伝いの婆さんは武知杜代子で、渡世人にシナ作ったりする。常連の馬子に梅津栄、愛馬にどぼどぼ酒を飲ませていて体調不良の因を作っている模様。*犬と市の交流は温かく微笑ましい。一つ椀の飯を共に食らうシーンは秀逸。市の犬はメスの柴で、医師宅の三本足はちょっと洋犬っぽい黒ちゃん。医師の進言で二匹は夫婦に。ついてきてしまう犬を制する市の仕種もなかなか。


第19話「静かなくらし」1979.9.10

 盗っ人の爺さまに頼られてしまう市、崖から落ちて頓死した爺さまの遺品を娘に届けるが、隠し金のことが知れるや娘夫婦の静穏な日常は一変してしまう。市が爺さまを殺しただの大金を一人占めだのいう的外れな忖度や、金に群がる亡者どもが描かれ、凄惨を見た夫婦は憑き物が落ちたようにもう金は要らないと笑う。

 ロケ地、渡世人に襲われている爺さまを助ける市、広沢池東岸。爺さまの娘夫婦が経営する石和山中の茶店、保津峡落合を望む立地。爺さまの隠し金のことを夫婦に告げた亭主の昔のワル仲間と喧嘩になりドボンの渓流、保津峡。ガキに手を刺された市が身を寄せるお堂、不明(ガキが市に山羊の乳を持ってくる/後段夫婦が逃げ込んでくるのも同所)
*爺さまは小沢栄太郎、娘は二宮さよ子で亭主は河原崎次郎、亭主のワル仲間は中野誠也。


第20話「祭りばやしに風車」1979.9.17

 かつて懲らしめた賭場荒しと再会する市、堅気になり嫁と楽しく暮らす彼を再び悪の道に誘う仲間を斬り、黙ってその地を去ってゆく。

 ロケ地、賭場荒しの鉄砲水の八が市に指を斬られたあと、貸元の衆に嬲られる林、酵素河川敷・木の前。貸元衆を斬った市は竹林のほうへ去り、その後ゆく街道や顔を洗う河原、大堰川堤と汀か。風車を売る「八」、買った子らが走り去るのと入れ違いに市がやって来る道、大覚寺放生池堤。商売に出る「八」が通る里の道、北嵯峨農地か。当地を去り際、鳥居に石を乗せ祈る市、大覚寺五社明神
*鉄砲水の八は石橋蓮司、女房は萩尾みどり。市を家に招く「八」、彼も市も昔の話はおくびにも出さずハイテンションで惚気話など続ける。市が気付いていたことの表現は、悪に立ち返るなと諭すくだりで「八」の手を優しく撫でることでなされる。


第21話「渡世人の詩 前篇」1979.10.15

 小貝川のほとりで久しぶりに会った老侠客は、かつて市に斬られた痕を一生傷として生きてきた男。彼は市が草鞋を脱いだ先と対立関係にある一家の客分なのだが、なぜか敵方の若い衆の名を出し、心に留めるよう市に頼み込む。そしてほどなく両者は一触即発の緊張状態に。

 ロケ地、藤代一家が仕切る朝市、丹波国分寺境内に屋台あしらい。小貝川の河原、木津か(河原は砂地と葦原)。黒磯一家へ乗り込み脅しをくれる市、会談の座敷を開けると広沢池東岸(北望)の汀が見える趣向(堤に桜開花)


第22話「渡世人の詩 後篇」1979.10.22

 老侠客が、気にかけてくれるよう市に頼んだ青年は、弟分の横死を見て心を決め、藤代一家に盃を返し一人仇に向かう。彼の侠気に値せぬ仇、義理立てに値せぬ親分、あたら若い命を散らさぬため市と利助が動く。

 ロケ地、黒磯の親分を脅しつけた帰り、市と桜花で丁半を競う利助、広沢池東岸。小貝川河原、木津河原か(利助が市にわざと斬られる道は堤か)
*老侠客・利助に森繁久彌、ホトトギスの生態で清吉との関係を暗喩。絶息の際にも口ずさむボウフラの歌が味わい深い。清吉は根津甚八、彼の親分は小池朝雄(はじめ人望厚い設定で出るが果たして欲深の経済ヤクザ)で子分に和崎俊哉。


第23話「不思議な旅」1979.10.29

 様々な顔をして市に近付く女、望みは母の仇討ち。父と呼ぶ声をひとまず受けて、市は血刀を振るう。

 ロケ地、飯をやった乞食女が水に向かってゆく市を止める桟橋、湖畔か。道端で酒盛りの乞食女と市が人捜しの渡世人たちに声を掛けられるくだり、土手越しの湖面か(土盛り側の水面は水溜り?)。乞食女が市を案内する尼寺、西の湖園地か(葦原に萱葺きのお堂、花頭窓あり)。奉納相撲が行われる祭りの神社、不明(求馬の4話や暴将などでも出たいつもの土俵か)。香取を去る市、道端に三味を弾く娘、西の湖付近か。
*乞食女、尼の声、女郎屋へ上がり市を揉み療治に呼ぶ女、原田美枝子。女の生き血を吸うヤクザに小林昭二。


第24話「おてんとさん」1979.11.5

 その山でご来光を浴びれば目が治ると信じ大挙してやって来る盲人たちを騙し、金鉱へ放り込み労働を強いる悪党ども、市も姑息な手で仕込みを奪われなす術なし。親分の情婦がこっそりお山へ導いてくれるが、縋る思いで待ったお天道様が照らし出したのは、悪党に斬り殺された無惨な死体だった。

 ロケ地、盲人たちが婀娜っぽい姐さんに先導されゆく山道、不明。市に治ると信じているのか問う親分の情婦、お堂は高山寺に似るも不明。ボタ山、タコ部屋のある山間、不明。姐さんの回想、盲人の母と門付けの日々・追われる家、美山か。目が開いて姐さんを見る市の夢、背後の水落ちは柊野か。ご来光を拝むお山、不明(山頂に大きなケルン状の石積み、上に祠)
*親分の情婦に太地喜和子、幼女にも容赦ない親分は藤岡重慶で手下に松山照夫、孫娘を連れた盲人の老爺に村田正雄。*あまりの無惨に、それまで開眼を期して拝んでいた太陽に唾する市、名シーン。


第25話「虹の旅」1979.11.12

 さる御側室に宛がわれてしまう市、甘い夢のあとは凶事。欲にかられた者、保身をはかった者それぞれ「流れ者の按摩」を軽く見て血煙に消える。

 ロケ地、宿下がりの御側室の駕籠がゆく道、下鴨神社馬場。揉み療治を頼まれた市が駕籠に乗せられゆく道、上賀茂神社ならの小川畔。「療治」を終えて宿に帰る市のくだり、俄か雨の描写は中ノ島橋、雨宿りの市は上賀茂神社北神饌所裏手、雨上がりの林は下鴨神社糺の森(木の間から青空に虹)。御側室の件で父の越後屋を強請った浪人たちが市を始末しようとする帰り道、下鴨神社泉川(市の知らせで現場へ赴き、市をたばかり始末しようとする越後屋も同所、金箱は泉川に落ちている)。夜明けの林をゆく市、下鴨神社池跡
*御側室に岩崎加根子、越後屋に中村鴈治郎。


第26話「夢の旅」1979.11.19

 酒を食らって破れ寺で眠り込んだ市の見る夢、サイケデリックな映像で綴られるそれは、もちろん夢なだけに破天荒。目が開いて有頂天の市っあん、前回の御側室引きずってる。

 ロケ地、冒頭の街道風景、大堰川堤か。夢パート/不思議タッチの古着屋で購った御側室の衣を着込んだ市が、それまで着ていた衣服を投げ捨てる川、大堰川と堤か。湯女風呂か温泉か、不気味な男たちと同じ湯船に浸かるくだり、広沢池東岸に小屋あしらい。首の無い市の衣を着た男の死体が検分される川、大堰川か。夜の水辺で女の打つ鼓を聞く市、琵琶湖岸・河口州か。大勢の渡世人に囲まれ戦うも相手を倒せず、両足片腕落とされ膾となる市、不明(足もとは砂地/おてんとさんに救いを求める市で夢パート終り)。寝ていた破れ寺のある葦原、西の湖園地か(あしらわれたお堂は方形)。岸辺に菜の花咲き乱れる、市を乗せた船がゆく川、近江八幡水郷


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