ジャン有馬の襲撃  伊藤大輔監督作品  1959.7.12大映

キャスト
有馬晴信/市川雷蔵 鶴姫/叶順子 長崎奉行/根上淳 桂通斎/山茶花究 小畑三郎兵衛/山村聡 小寿々/弓恵子 パウロ王/武田正憲 大御所/三島雅夫 本多正純/坂東蓑助


 イベリアの極東植民地で起こった騒動は政治色を帯びており、日本の利権を排除するため罪人がでっち上げられる。しかし時は戦国末期、関ヶ原で徳川氏の世は来たものの大坂城には未だ豊臣氏が拠り、いまひとたびの騒乱は必至な情勢。そのために武器が必要な大御所・家康は、理不尽な要求を呑もうとしていた。ここに、無実の家来を政争の道具にされた切支丹大名が立ち上がる。イベリアの一行から家来を取り戻した有馬晴信は、イベリアに意趣返しならぬとの大御所の命に逆らい、ディオ号の船底で苦役を強いられる同胞を救うべく海戦を仕掛けるのであった。

ロケ地
・広東・珠江市の海崖の刑場、不明(丘の上には洋城)
・長崎奉行所、御所管理事務所長屋門
・有馬氏の城、セットか(城門入ってすぐ天主堂)
・駿府へ向かうイベリアの一行、谷山林道か(富士山の見える峠)
・晴信がイベリア一行から奪還した家臣・小畑と再会する小川べり、酵素か。
・駿府城、二条城東大手門(大きな樋が見える)
・大御所に献上されたアラブ馬との馬競べが行われるルート、不明(谷地田の畔みたいな地道や丘陵、晴信が代わっての騎乗を願い出る御殿は檜皮葺きの殿舎)
・馬競べを制した晴信に恩賞を与えようと申し出る大御所(駿府城の茶庭)、不明(セットか)
・長崎へ帰るイベリア一行を追う晴信にディオ号出航の知らせが来る街道、不明。
・総登城の触れが出され続々やって来る有馬の家臣たち、姫路城はの門下坂〜ぬの門(内側)。早馬が駆け入る有馬の城門、姫路城菱の門
・長崎を出たディオ号に有馬の船団が仕掛ける、ディオ号が座礁した橋杭の瀬戸、琵琶湖(マジ海ではこの撮影は無理・静水域でなくては撮れないと思われる点と、僅かに見える「証拠」から琵琶湖と「想定」)

映画上の設定
・カストロ船長のイベリア船は「La patrino de dio」、「聖母」号。
・史実ではマカオで起きたポルトガルとの紛争は、広東の「珠江市」で無辜の日本人が処刑されたことに怒った民衆を「イベリア」が制圧したことになっている。この際、城砦から町に砲撃なども映像化されている。この城がチェスのルークそのままの外観で見もの。
・有馬晴信は居城内に聖堂を設けるキリシタン大名。映画の中でも「禁令までは」と語られるが、どう見ても現役バリバリの信徒で、登場時などは天草四郎紛いのピラピラ多重襟ブラウスを着けていて、髪形もほとんど天草四郎。晴信の居城は島原半島の口之津にある設定。洗礼名はジャン・プロタシオ。
・カストロ船長はそもそものトラブルの張本人、日本娘(小寿々)を手篭めにしようとしていたところを有馬の御朱印船の水夫に見られ、これを糊塗するのに国旗を蹂躙されたとか言い立てて銃殺刑に持ってゆく←押しかけた民衆も始末。この色魔は座礁したディオ号に乗り込んだ晴信に成敗されるが、衣装がちょうちんブルマで大笑い。突撃の際、ガンガン撃ってくるイベリア軍に平気で刀持って吶喊かますハルさんたちもなかなか怖いものがある。
・広東で起きたトラブルのため急ぎ長崎を出てゆくディオ号は、通常の海路を行かず五島列島を突っ切っるルートを選択。ここで長崎奉行に水先案内人を乞うのだが、選ばれたのは晴信が匿っている支那人の神父・王。彼は南京の乱の際、明国皇帝に退位を迫ろうとしたお尋ね者の叛徒で、洗礼名はパウロ。長崎奉行所の求めに応じディオ号の水先案内人をつとめるが、晴信に報いるためディオ号をわざと座礁させる→銃殺。
・有馬家御朱印船宰領の小畑三郎兵衛、船足の遅い櫓船を戦場に間に合わせるため打つ芝居は異人に見せるための「ハラキリ」、時間稼ぎが目的なので、ことさらたっぷりと間をとり作法に則った切腹を遂げる。これに礼をもって応え水葬に付すイベリア人たちも描かれる。極悪脳天気だけではないらしい。切腹の座の敷物に花が置かれているのも細かい。
・長崎奉行は全てを知ったうえで晴信に肩入れ、「王」がイベリア船を座礁させることを確信してゴーサインを出す。
・改易必至の大事を仕出かした晴信のその後はさらっと流し、遠流としか語られず。そもそも大御所も彼の行動を制しつつ「結果」を嘉する設定。


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