長谷川伸シリーズ

1972-1973 NET/東映 全30話(26タイトル)


沓掛時次郎 1972  監督・山下耕作 脚本・結束信二

 明神一家に草鞋を脱いだ時次郎は、渡世の義理で人を斬るがその男から妻子を託される。亭主を殺した男に敵意をむき出しにする女を春日部の実家へ送ってゆく時次郎、女の親はとうの昔に亡くなっていた。

ロケ地
・六ツ田の三蔵が帰って来たと注進に走る明神一家の三下、不明(竹林際の地道、北嵯峨か)
・一家の人数が三蔵を襲う五郎八沼、広沢池東岸
・春日部へ向かう道中、不明(渡船が浮く川は瀞、堤上に松林。船をおりて歩く河原は礫、派流の渡渉もある)
*時次郎は鶴田浩二、三蔵は菅原文太、三蔵の女房・お絹は松尾嘉代。明神の親分は小田部通麿で、配下に遠藤辰雄。時次郎を兄貴と慕う仙太は田中邦衛。

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沓掛時次郎 后篇 1972

 人足仕事までして世話を見てくれる時次郎に、お絹の凍った心は融けてゆくが、病は篤くなってゆく。彼女をいい医者に診せるため時次郎は出入りの助っ人に、お絹は苦しい息の下で時次郎の名を呼ぶのだった。

ロケ地
・百助らが来たので身を隠す仙太、北嵯峨農地竹林際に茶店あしらい。
・時次郎が働く普請場、流れ橋(橋桁が落ちている)
・おろく婆さんの宿がある集落、不明(田から一本道、村落入口に石垣)
・絹の墓、不明(丘か土手下か/百助が斬りかかってくる際隠れる納屋は基壇が石)
*おろく婆さんは三益愛子、亭主が北村英三。時次郎が助っ人する八丁徳の親分は片岡千恵蔵、対立する聖天一家の親分は天津敏。


雪の渡り鳥 1972  監督・井沢雅彦 脚本・さわさかえ

 恋をあきらめ下田を去った鯉名の銀平、四年後立ち戻った彼は外道の横行と恋しい女の窮地を見ることに。彼に引け目を感じた兄弟分は暴発、銀平は尻拭いを引き受けお縄を受けるのだった。

ロケ地
・下田港の情景に琵琶湖岸(砂浜の岸辺のほか、突堤も使用←ブロック丸見え)
・五兵衛の駄菓子屋は海浜設定、琵琶湖岸の石垣を用いて表現。
・大鍋一家と帆立一家の出入りは湖南アルプスの涸れ河原。
*銀平は杉良太郎、お市は松原智恵子、兄弟分でお市と結ばれる卯之吉は江原真二郎、朋輩に古川ロック。帆立の親分は高品格、つるむ代官は高野真二。*尺ゆえディティールはかなり省かれ設定も一部変更されているが大筋は同じ。


中山七里 1972  監督・原田隆司 脚本・加藤泰

 明日は祝言という女をヒヒ爺に汚された政吉は激怒、当の相手を嬲り殺して帰ると恋人は喉を掻き切って果てていた。逐電した政吉は、三年後旅の途でヒヒ爺におさんを斡旋した目明しと出会うが、御手配の女はおさんに酷似、政吉は唐丸を襲い女を連れて逃げる。

ロケ地
・昼休みに逢う政吉とおさん、二人して新居のための日用品を買って帰りの坂、宗忠神社参道坂(見上げ)
・昼を使うお堂の裏は金戒光明寺本堂裏手縁下(墓石も映り込む)
・木場の情景、本物の貯木場と「材木置場」(玉垣は見当たらず、蔵と黒塀が見える)
・中津川宿に現れる目明しの文太のくだり、飛騨路・木曽路分岐の石標を鳥居本の愛宕参道一の鳥居下にあしらい、「飯屋の簾」越しに見る趣向(この飯屋に渡世人となった政吉が居合わせる)
・文太を避け中山七里をゆく政吉、山道は谷山か安行山か不明、峡谷は保津峡(左岸の地道と汀)。唐丸を襲いおなかを救出した政吉が縄を切ってやる巌、保津峡落合落下岩(この前に吊り橋が出る)。ラストシーンの早瀬、清滝川・落合橋下の河原。
*川並人足の政吉は竹脇無我、おさん・おなか二役は梓英子。ヒヒ爺の餌差屋は戸浦六宏、目明しの文太は菅貫太郎。おなかの亭主に島田順司。*餌差屋は単なる助平で特段の設定は無し、おなかは文太の横恋慕でハメられ火付けの罪人にされている設定・亭主の徳之助と門付けをしているところを見つかり。*おなかを助ける動機は死んだおさんの身代りにするため、亭主を庇うおなかの口からかつておさんが問うたのと同じ言葉が発せられ、政吉は正気に戻り二人を逃がし文太に立ち向かう運び。


町のいれずみ者 1972  監督・河野寿一 脚本・結束信二

 弟夫婦の家に転がり込む島帰りの岩吉だが、人の目は冷たく愛した女もよそへ嫁いでいた。折しも凶賊が跋扈、彼に疑いがかかりいよいよ居場所もなくなるところ、自棄になって飛び出した夜道で岩吉は当の賊と出くわす。

ロケ地
・伊勢屋でかつての恋人に撥ねつけられた帰り、自嘲する岩吉が佇む大川端、宇治川左岸河川敷(祠あしらい。後段、口入屋を全て断られたあとにも出る)
*岩吉は近藤正臣、怒りを抑えひたすら耐える表情が真に迫る。弟夫婦は河原崎建三と大原麗子、兄を気遣うがどよーんと暗いへんが傑作。夫婦の知人で天真爛漫に接してくれる娘は田坂都。岩吉を見返った女は北林早苗、どうやら岩吉をハメて島送りに仕向けたヤクザは藤岡重慶、島抜け浪人の凶賊は波田久夫、虫の息の岩吉に無理解を詫びる同心は左右田一平。*運ばれてゆく岩吉の亡骸のシーン、次々と提灯を掲げ出てくる町衆→提灯のあかりのみになるラストが美しい。


一本刀土俵入 1972  監督・安田公義 脚本・直居欽哉

 勧進元の意向に背き巡業先で追放された取的・駒形茂兵衛は、腹を空かせて彷徨ううち取手宿に。酌婦・お蔦の情けを受けて江戸へ戻るが、部屋の女将には旅先の親方から知らせが届いており復帰叶わず。思い余って入水しようとした茂兵衛だが、隣で念仏を唱えるお店者を助けてしまい、イカサマ博打の件を聞き怒りに燃えて殴り込みに行く段で中ほど。

ロケ地
・巡業先へ赴く一行、不明(田畔)
・小屋掛けの野、不明(周囲に竹林と雑木林)
・追放を言い渡される茂兵衛、鳥居本八幡宮広場。
・野を彷徨う茂兵衛、不明(葦原、土手等)
・船戸の弥八と事を構える渡し場、木津川下流部
*茂兵衛は勝新太郎、我孫子屋前のくだりは力の入らなさ加減が○、貰った銭と櫛簪を押し頂く姿も良し。お蔦は岡田茉莉子、ヤクザの弥八は小池朝雄、部屋の女将は春川ますみ、勧進元に大滝秀治。

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一本刀土俵入 后篇 1972

 十年後、取手へやって来た茂兵衛はいかさま博打で追われる男を見るが、彼こそお蔦の亭主なのだった。儀十一家を撃退しお蔦たちを見送ったあと、名台詞「十年まえに櫛簪巾着ぐるみ意見を貰った姐さんに、せめて見て貰う駒形のしがねえ姿の土俵入りでござんす」。

ロケ地
・利根川べりの街道をゆく渡世人の茂兵衛、不明(薄原)。かつて供え物を貰った地蔵は川堤か。
・儀十一家の三下が人違いして茂兵衛の笠をはねあげる川辺、木津河原。川向こうへ上がる儀十も同所(渡し場)
・お蔦たちを見送った翌朝、取手をあとにする茂兵衛、大堰川河川敷か。
*お蔦の亭主は滝田裕介、儀十は山本麟一。安孫子屋の女たちの消息を話す老船頭は加藤嘉。*お蔦を見送った直後残党が出てくるが、このときの殺陣がちょっと「市」。大立ち回りの際は相撲と杭ブン回し。


江戸の巾着切り 1972  監督/井沢雅彦 脚本/野波静雄 

 神技を持つ掏摸名人・芝節の芳蔵は、気ッ風が災いし常に飯櫃の底が見えている暮らし。陽気な女房が彼を支えるが、掏摸になりたいと現れた亭主の弟を擁護する始末。やむなく弟を訓練する芳蔵だが、好きな娘の苦衷を見た弟は兄の戒めを破り人様の懐から大金を掠め取る。事情を聞いた芳蔵はその金の封を破り弟に持たせるが、その夜助けた一家心中寸前の親子は弟に金を盗られた被害者なのだった。

ロケ地
・的を見つけ後をつける芳蔵、今宮神社石橋〜東門(仕事を同業者に持って行かれる場面はセットにスイッチ)
・訓練中、好きな娘とばったり会う芳蔵の弟、「材木置場」(蔵が見えている)
*芳蔵は長門裕之、女房は藤田弓子、弟は佐々木剛で恋人は永野裕紀子、芝居口調の隣人はなべおさみ。


人斬り伊太郎 1972  監督/斉藤武市 脚本/鈴木兵吾

 気まぐれで人を斬り、首吊りの足も引っ張る極悪渡世人・伊太郎。或る日亡母に酷似した飯盛女と出会ったことで更生を遂げるが、彼女の幸せを確かめにやって来た段で、かつて犯した罪の償いが巡ってくる。

ロケ地
・弟分の軽口に乗った伊太郎が旅の侍を斬る大間々の街道、北嵯峨農地・竹林際。
・心中者から盗った金で賭場へ出向いた伊太郎、出てくる門は金戒光明寺長安院、昔の弟分が声をかける道は永運院下坂
・伊太郎の回想、義母に罵られ生母の絵姿を見て泣いたお堂の縁下、黒谷本堂か。亡母に抱き上げられた思い出、北嵯峨農地田脇。
・伊太郎を親分の仇と追うヤクザたち、金戒光明寺善教院前坂三門脇草叢参道下(弟分の魚金が三門から見ている)
・おふうの部屋に金子を置いて出てきた朝、おふうに会わせてくれたと亡母に感謝する伊太郎、広沢池東岸
・ヤクザたちが伊太郎を囲み散々に斬りつける夜道、中山邸参道
*伊太郎は丹波哲郎、亡母・おふう二役は鰐淵晴子。


旅の風来坊 1972  監督/稲垣浩 脚本/藤木弓

 親分なし子分なしの一匹狼・関戸の佐四郎、ある日助けた旅の父子の身の上を知った風来坊は、夫婦親子を隔てて泣かす悪党を懲らしめにゆく。

ロケ地
・冒頭の山道、不明(林道か)。帆立の親分とサシで勝負しおケラの帰り道は田畔か。
・高崎宿はずれ、釜太郎が五郎八の子分に見つかってしまう茶店、保津峡左岸の路傍にあしらい(入口演出の小道具のみ)。三人の斬りあう「崖下」、保津峡落合河口(見物の佐太郎は清滝右岸の崖道)
・親子のその後を見に行く佐太郎、民家と周辺(導入は下の道から、元気になった坊に母への伝言を頼む田畔は門南側の田畔。下の車道が地道)
・また旅ゆく佐四郎、不明(山道)
*佐太郎は片岡千恵蔵、釜太郎は伊吹吾郎、女房のおつるは中村玉緒。*がさつで大らかな好人物を、御大が伝法口調で演じる。おつるを女郎屋の二階から逃がすくだり、当て落とした赤木春恵の女中の帯をくるくる剥がして使うのが大笑い。


三ツ角段平 1972  監督/村野鐵太郎 脚本/宮川一郎

 親分が望んだ女の気持が自分にあると知った段平は、それでも目上の意向に従おうとするが、彼の侠気には悲惨な仕打ちが返ってくる。

ロケ地
・段平が棹を使う渡し船、不明(水は湛水、岸は砂地、対岸には松林。茂十一家とのラス立ちもここ)
・祭礼の神社へ向かう人々、民家前。お宮さんは藪田神社
・親分にたばかられ成田の親戚筋に見舞いに行った段平の往還路、本梅川堤若森廃橋と周辺の田畔。
*段平は天知茂、彼を慕う芸者は野川由美子、店の女将に木暮実千代、親分は石山健二郎で亀裂を入れようとはかるライバルは天津敏。


頼まれ多九蔵 1972  監督/三隅研次 脚本/松村正温

 喧嘩っ早い黒塚の多九蔵、気に食わぬ者は片端からやっつけていたが、出会うたび調子を狂わされる、どうにも気になって仕方ない男がいるのだった。
約束したのに来ない男の代わりに、死んだ恋人が現れ仇のもとに誘導する逸話で締める。

ロケ地
・多九蔵が蟹蔵の顔に傷を呉れる街道筋の茶店、北嵯峨農地竹林際(設定は上州烏川、ラス立ち前蟹蔵の口から)
・紋次と行き会うもいつもはずされる回想シーン、上州のは北嵯峨農地・信州のは保津峡落合河口
・伊賀松が旅人を騙して殺し金をとる街道、広沢池東岸の林
・尻啖え観音の刺青の男をとっちめる渡し船、大堰川
・伊賀松が親切ごかしにさっきやっつけたのはこの先の矢板の親分の義理筋と教える道、大堰川堤か。
・伊賀松が飛脚を殺し金を奪う街道、北嵯峨・陵付近の地道。
・飛脚殺しと捕えに来た二足草鞋をシメた多九蔵が夜に泊まるお堂、鳥居本八幡宮舞殿に扉をあしらい。紋次がやって来てサシで対決となるが、矢板の親分が手下を引き連れて殺到し水を差す(立ち回りは鳥居付近や広場で)
・意気投合した多九蔵と紋次が酒を酌み交わす船、広沢池東岸葦原(ここで紋次が背に彫った恋人・お峰の刺青を見せる)
・紋次の回想、お峰を殺した浪人を討ち果たした町角、御室霊場参詣路途中の地蔵脇。
・紋次と約束した佐原へ馬に揺られ向かう多九蔵、広沢池西岸(稔りの田んぼ越し、馬子が神崎の渡しに出て「多九蔵さんを知らないか」と問う不思議な女の話をする)
*多九蔵は若山富三郎、紋次が渡世の義理を欠いても自分を襲わなかったと知り「喧嘩、やめよっか」が可愛い。羽斗の紋次は大木実で終始渋い(刺青のビジュアルが見もの)。


旅の馬鹿安 1972  監督/工藤栄一 脚本/鈴木兵吾

 気のいい渡世人・安兵ヱは短気で早とちり、たまたま知り合った女の難儀に持ち金を投げ出すが、それがもとで人を殺めることとなり江戸を退転。後年旅先で後の始末を聞き、あらためて己を罵る「馬鹿安」だった。

ロケ地
・安兵ヱが旅人に江戸の話を聞く茶店、亀岡盆地の田(ここから安兵ヱの回想となり、ラストにまた茶店に戻る。田畔には「はさ木」)
・騙され店から連れ出されたお賎が悪党に追われる十文字の渡し、大堰川河川敷(草叢や堤に汀)
・芸者・蝶吉が山ほどおもちゃを抱えた安兵ヱと出会う神社、不明(坂上がると殿舎)
・広吉が安兵ヱに意見する水辺、広沢池東岸(投網を打つ漁師あしらい)
・旅人から蝶吉が恋わずらいで死んだと聞かされ己を馬鹿となじる安兵ヱ、大堰川
*馬鹿安は北島三郎、蝶吉は高田美和、蝶吉の姉・お賎は日色ともゑ。お賎を騙す悪党は佐藤蛾次郎、彼が依頼する苦情引き受けの法師の辰は玉川良一。安兵ヱの友人・広吉は松山英太郎、旅人は岡八郎。


江戸の花和尚 1973  監督/井沢雅彦 脚本/吉岡昭二

 魯智深よろしく背一面に刺青の花和尚・熊ンベは怪しの経を上げて回るが、行く先々で人助け。さらわれた娘の奪還に乗り出し、親が裂いた仲の男と娘を娶わせるのをご褒美にして、祝言の模様を垣間見た和尚は去ってゆく。

ロケ地
・富商・紙屋から金を盗ってきた三次が泥棒装束を着替えていると和尚にとっ捕まる祠、大覚寺天神島
・岡っ引に問い詰められる和尚、金戒光明寺放生池(腕の入墨を見て、自分を諌めて死んだ娘を回想)。人質交換の猿屋河岸、広沢池東岸(金も娘も船で持って行かれてしまう)
・言いつけに背き紙屋から礼金を貰った三次を突き放す和尚、大覚寺大沢池堤(露店あしらい)
・和尚を追いかける三次、金戒光明寺参道石段、登りきったところで悪党の道場主らが出て大立ち回り、助太刀の緒方浪人は経蔵で寝ていて参加(和尚に刀を投げ渡すも不要と返される応酬が何度か反復される)
*和尚は植木等、三次は左とん平、緒方浪人は多々良純。道場主は安倍徹、紙屋の娘は中山麻里で恋人は太田博之。


関の弥太ッペ 1973  監督/土居通芳 脚本/成沢昌義

 妹を身請けに行く途中、関の弥太郎は訳ありの枕探し男に金をとられたうえ、妙な経緯で娘を託されてしまう。これがため虎の子の五百両を失った弥太ッペは、苦界から妹を救えず自棄となり、殺し屋稼業の狼ができあがる。利根河原の飯岡・笹川の大出入りで中ほど。
*山道や渓谷に野面、皆目判らず。スタッフも見覚えないし中村・三船両プロ協力とあるし、おそらく関東撮りと思われる。*弥太ッペは萬屋錦之介、妹の居場所を教えてくれた才兵ヱは中村伸郎、お小夜の父で淵に身を投げてしまう枕探しが生業の男は仲谷昇、お小夜の祖母だった沢井屋の隠居は細川ちか子、弥太ッペの妹の馴染みだった渡世人・箱田の森介は西村晃。*タイトルの「弥」は旧字表記。

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関の弥太ッペ 後編

 乱戦のさなか、敵方に森介をみとめた弥太は場を離脱、この際己が加勢していた飯岡方の男を斬ってしまい追われる身に。才兵ヱは討手に斬られ、弥太の剣を封印して逝く。森介は小夜を届けたのは自分と名乗り出たのち結婚を迫り傍若無人の振る舞い、しかし弥太に真実を聞き改心。名乗らず去った弥太は討手の待つ場所へ、森介も同行し死に場所を求める。
*成長したお小夜は鮎川いづみ。


越後獅子祭 1973  監督/佐々木康 脚本/飛鳥ひろし

 渡り鳥の片貝半四郎、願を掛けての道中で助けた太夫は当の会いたかった相手、しかも太夫を贔屓の勧進元はその昔彼を口べらしに売った父親なのだった。

ロケ地
・山道をゆく半四郎、清滝河畔。
・怪我をした角兵衛獅子に代わって舞う小陣一座、上賀茂神社北神饌所前、校倉も映り込み。
・草鞋を脱いだ先の頼みで仇討ちをすける半四郎、天神川か。
・十日町へ二丁の道標がある飯山道、大覚寺護摩堂(角兵衛獅子だった半四郎とお小夜が泣く泣く別れた場所、幼い半四郎が祈った祠は堂脇にあしらい)
・高崎を追われた小陣一座が十日町へ向かう道、不明。
・半四郎が十日町へ向かう道、清滝河畔〜大覚寺大沢池畔(護摩堂前で駒沢が出る)
・仇討ちを邪魔した件は許してもらったものの、贖罪の念で駒沢と道中を共にする半四郎、大覚寺大沢池堤(以前助けた角兵衛獅子が道端で昼を使っていて、太夫の来着を教える)
・父と会うものの身を退いて町を後にした半四郎がゆく街道、保津峡左岸の地道落合・書物岩下
*半四郎は森進一、太夫は新藤恵美、妹分に山口いづみ。高崎の二足の草鞋は名和宏、髭面の仇討ち浪人は葉山良二。


暗闇の丑松 1973  監督/マキノ雅弘 脚本/衣笠貞之助

 強く思い合う丑松とお米は祝言を挙げぬまま暮らし始めるが、欲をかいた養親は二人を引き離そう画策。こそこそとしたその企みは、丑松が養親と用心棒を殺めてしまうというとんだハプニングを出来させる。兄貴分の勧めで一人江戸を去る丑松、涙の別れで中ほど。

ロケ地
・丑松とお米が所帯道具を求める浅草・聖天さんの宵の市、上賀茂神社。導入は一の鳥居、一時二人がはぐれるのは二の鳥居続きの朱垣前、丑松がお米を見つけて呼ばわるのは神事橋、兄貴分の四郎兵ヱに所帯を持つと話すのは北神饌所前、暮れて神灯が点されるのはならの小川畔。どのシーンにもたくさんの露店や行き交う人々を演出。
・江戸を去った丑松がゆく道、川堤か。
*丑松は長谷川一夫、お米は山本富士子、四郎兵ヱは水島道太郎、お米の養親は清川虹子、丑松の始末を頼まれるも馬鹿な結果に終る用心棒は伊達三郎。

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暗闇の丑松 (後編) 1973

 落ち着き先からの便りはお米に届かず、互いに消息知れぬまま時が経ち、焦れた丑松は江戸へ向かう。その途中の板橋宿、宛がわれた宿場女郎はお米なのだった。お米と丑松のやり取りにたっぷり尺をとり、「女郎」の縊死から一気に復讐へ進む。

ロケ地
・寄居宿イメージ、本梅川若森廃橋(北望、旅人あしらい)
*主要キャストは前編に同じ、サブタイトルに「後編」とは入らず。


髭題目の政 1973  監督/工藤栄一 脚本/高岩肇

 人を斬ることに疑問を抱く渡世人・政。我が身を守るため襲撃者を倒し、あるときは我が身に仇なす者の難儀を救う。己と似た女郎との出会い、その女の妹が女衒に連れられてゆくのを旅の空で見た政だが救おうとして叶わず、このとき旅僧に会い指針を見出すのだった。

ロケ地
・賭場の諍いで斬り合いになるのを避けた政を追い襲う黒塚の子分衆、藪田神社前田畔(手を洗う小川もあり)、立ち去る姿は神社境内の小道。
・彼を仇と追う黒塚の子分・勝造が病み苦しむのを助ける道端、藪田神社参道脇銀杏の根方。放っておけと言う勝造に構わず担いでゆく途中、旅僧と出会う橋は若森廃橋
・善光寺イメージ、金戒光明寺御影堂甍と鐘楼。
・善光寺宿の飯盛女・おふじの妹が女衒の手にあるのを救おうとした政、再び会った旅僧に金を貰う山道、不明。
・女衒一行を追ってゆく道、不明(田畔)
・僧に貰った金を使い果たした政が、その金を酒色に使えばきっと膾刻みにされ死ぬと戒めた僧の言葉を思い出す道端、藪田神社参道脇銀杏の根方(勝造を助けたシーンにははっきり映らなかった灯篭が見えている)
*政は菅原文太、善光寺宿で出会う飯盛女・おふじは渚まゆみ。黒塚の親分は小池朝雄で子分の勝造は工藤堅太郎、旅僧は殿山泰司。女衒の汐路章もいい味。*「髭題目」は渡世人をやめた政の姿、春をひさぐ女たちに施しをして歩く旅人(出家とは語られない)、笠の下は髭ぼうぼう。ふつう髭題目とは筆端を派手にはねた字のお題目のことだが、関連は不明。


獄門お蝶 1973  監督/井沢雅彦 脚本/西沢裕子

 お尋ね者の女渡世人・お蝶は、優男に騙され馬鹿な死に方をした女を看取るが、旅の途でその優男と出会う。男と連れ立っての旅路は、女の墓へ続いていた。

ロケ地
・親分の言いつけで姐さんを殺しに来る子分たち、大覚寺天神島朱橋護摩堂前。今
・度は姐さんの「男」を追って旅立つ子分たち、姐さんの墓のある薄原脇の道、不明。
・道中、谷に架かる木橋、不明。
・桶川宿でお蝶に追い払われた子分たちが待ち伏せる宿場はずれの祠、不明(橋たもと)
・お蝶と松三郎がゆく道、まず渡る橋は下河原橋か。以降の道、不明(川堤か)
*お蝶は江波杏子、松三郎は待田京介でお蝶の昔の男と二役。回想シーンが被り、白面の優男と強面の兄哥が交互に出る趣向。子分二人は小松方正と田口計。


抱き寝の長脇差 1973  監督/松尾正武 脚本/マキノ雅弘・滝沢一

 対立する大州の弟を斬ってしまった磯の源太は草鞋を履くが、三年の間に矢切の親分は病み一家はほぼ離散、当の大州が幅をきかせ民を泣かせていた。自分のため苦界に身を沈めた女と別れを惜しんだ源太は、町衆の助けも借り大州一家を殲滅、捕り方とやり合いつつ「磯節」とともにフェイドアウト。

ロケ地
・矢切と大州の大出入り、琵琶湖畔か。
・お露に別れを告げる源太、大覚寺大沢池堤
・源太の旅の情景、竜ヶ尾山から穴太の里遠望〜クリーク脇〜琵琶湖(琵琶湖大橋から南湖)〜木津堤と思われる「街道筋」〜雪嶺〜萱葺民家(雪景)大覚寺五社明神舞殿(壁あしらい)
・三年経ち常陸へ帰ってくる源太のくだり、渡る橋は流れ橋、渡船や船着場は琵琶湖(突堤)や西の湖付近水郷と思われる水辺、里中のクリークも。
・祭礼の神社、石座神社(鳥居前から石段、旅に出た源太の無事を願いお百度を踏むお露は本殿)
*源太は渡哲也、お露は丘みつ子、矢切の親分は嵐寛寿郎、女按摩は春川ますみ。捕り方の一人に福ちゃん。*旅の情景には「天を斬る」に出てきた景色がたくさん。


たった一人の女 1973  監督/大西卓夫 脚本/松村正温

 嫁ぎ先も決まっていた娘が渡り鳥と恋に落ち、手に手をとって出奔するがお嬢様は慣れぬ暮らしに弱り病没。娘を失った親と、渡世人に兄を斬られたヤクザと、ただ一人の女を亡くした男と、一様に虚ろに陥る心情が物悲しい。

ロケ地
・出奔の際の寺、楊谷寺。タイトルバックは、奥の院参道から本堂を見下ろした図。追われ逃げる男女は、山門を走り出て参道石段を下り、外塀沿いを北へ。曲折した塀が尽きるところで、娘の親に連れ戻しを頼まれた親分が立ちはだかる。
・逃避行の街道筋、棚田か。
*女を死なせてしまう渡世人は山口崇、お嬢様は松本留美。親に頼まれお嬢様を奪還に来て斬られてしまう親分は金子信雄、その弟で八年も仇を追う男は早川保、お嬢様の父親は河野秋武。


刺青寄偶 1973  脚本・監督/マキノ雅弘

 ふと出会った渡世人と女郎は運命的な恋に落ちるが、逃避行の果て女は儚くなり「一生に一度の男」に嘆きを見せる。臨終の場にやって来た女衒たち、男は死因を作った者ども相手に大立ち回り。

ロケ地
・連れ戻される道中で女衒らに気を吐く女郎、北嵯峨農地竹林か。
・幼馴染を頼り職を得た男が立ち働く木場、「材木置場」(蔵が見えている)
*運命の男女は菅原文太と吉行和子、男の母は万代峰子、女衒は江幡高志。*容態篤い女を励まし誠を示すため、女の指に針を握らせ女の名を彫る刺青が哀れ。タイトルの訓は「いれずみちょうはん」。


道中女仁義 1973  監督/佐々木康 脚本/宮川一郎

 親の仇を求めさすらう渡世人・御殿の縫三、行きがかりで助けた湯女に「この世でたった一人の男」と惚れられるが、受け入れてやれぬ事情があった。別れのあと自棄を起こした女は悪党とつるみ美人局を働いていたが、その悪党と仲間の浪人が縫三の仇という奇縁、また縫三の「事情」を薄々察しつつも女は仇討ち叶うようはからい凶刃に斃れる悲劇が袖を絞らせる。

ロケ地
・信濃路の湯宿、日吉山荘(内部はセット撮り)
・縫三と別れたあと彷徨うおのぶを見つけた九郎蔵が言い寄るお堂、大雲寺閼伽井屋形前。
・逃げたおのぶがお前と一緒になるくらいならと飛び込む橋、中ノ島橋
・仇探しの旅の縫三と岩松、北嵯峨農地竹林際。祠で休む女を見かけおのぶではないかと見てみる道、広沢池西岸の道(祠は観音島)
・九郎蔵が相良浪人暗殺を企むやしろ、大雲寺石段石座神社境内。駆けつけた縫三が相良たち相手に大立ち回りは本殿前。
*縫三は美空ひばり、父の仇を討つため男に身をやつし道中。同行者の弟分は香山武彦。おのぶは浅丘ルリ子、心中に失敗した過去を持ち、縫三がその男に酷似という仕立て。湯宿の地回りは梅津栄で手下に平沢彰や川谷拓三、ここへ客分で来ていた九郎蔵は藤岡重慶で相良浪人は神田隆。


直八子供旅 1973  監督/土居通芳 脚本/池田一朗

 嫉妬に狂った男に挑まれ傷を負った直八、それがもとで大病を患い、薬代のため女房は自ら苦界に。母を恋しがる子が女郎屋のまわりをうろつきはじめたため直八は旅へ、そこでろくでもない仁義を押し付けられたうえ事情が変わるや命を狙われるが、追っ手は横恋慕男が引き受けてしまうのだった。

*野面、田畔等全く不明。「関の弥太ッペ」同様中村・三船プロ制作なので関東撮りと思われる。*直八は萬屋錦之介、女房は波乃久里子。横恋慕して直八に重傷を負わせる渡世人は御木本伸介。恩着せがましく汚れ仕事を強要する親分は神田隆、子分に中田浩二、実は弟だったと知れる追い剥ぎ浪人は高橋昌也。*病み付きうらぶれた風情の前半、金をつかんで女房を身請けすると決めてからは肝のすわった兄哥に豹変。追っ手をまいて子に追いついた際の「泣き」もありいろんなヨロキンが見られて楽しい。


殴られた石松 1973  監督/大西卓夫 脚本/結束信二

 旅先で仇討ちに関わる次郎長一家の話。はしゃいで仇討ちを煽る石松をいなしつつ、仇討ちの困難さを思い青年を案じていた親分は、襲撃に失敗し囚われた青年の身代りに唐丸へ入り帰りを待つ「メロス」展開。タイトルの殴打は、常吉と入れ替わりに唐丸を出た親分が次郎吉を気が利かぬとポカリ、なぜ一日遅らせて恋人たちを一緒にしてやらなかったと怒る逸話。

ロケ地
・頬桁の久六に助っ人で名古屋へ赴く次郎長一家、石松が親分にお茶を持ってくる橋は本梅川若森廃橋
・親分のはからいで故郷の三河・森村へ赴く石松、畦道や幼馴染の家(萱葺)は不明、代参の豊川稲荷は吉田神社竹中稲荷参道重ね鳥居。
・常吉の兄が木堂浪人に殺される氏神さま、藪田神社境内(浪人に斬られた道は鳥居の南の小道)。このあと出てくる三河の風景は主に棚田、本梅あたりか。
・仇を討って急ぎ戻る常吉らが渡る夕景の橋は流れ橋
*石松は松方弘樹、はじけたおちゃらけぶりを披露。仇持ちの常吉は目黒祐樹、恋人は三条泰子。次郎長親分は大友柳太朗、大政の兄貴は伊達三郎。*唐丸身代り申し出の段、発心の説明には佐渡法難の折の日朗上人の橘の故事を引く。


瞼の母 1973  監督/山下耕作 脚本/野上龍雄

 幼い頃に別れた母を求めさすらう渡世人・番場の忠太郎。旅の空にやっとこの人と訪ね当てた先では、タカリとばかりの冷たいあしらい。今一度と食い下がるが埒あかず母の料亭を去る忠太郎、娘に諭された母が追ってきて名を呼ぶが答えず去る。

ロケ地
・忠太郎が弟分と飯岡に仕掛ける野、河川敷か。
・知るべを頼み倅と別れた女を探すくだり、近江出身の瞽女に話を聞くのは今宮神社楼門(頼まれた男が待っているのは門前茶屋の一和、忠太郎と合流し入ってゆくのは東門)。瞽女が母でないと知ったあと、楽しげにゆく母子を凝視する忠太郎は石橋上。母の料亭を辞した忠太郎がゆく夜道、チンピラと浪人が襲う原はインドアセット。
*忠太郎は高橋英樹、母は月丘夢路。料亭に巣食うチンピラは江幡高志、彼に雇われ忠太郎を襲う浪人は平沢彰。


蝙蝠安 1973  監督/山下耕作 脚本/高岩肇

 けちなタカリで世を渡る安、いっぱし人様の役に立っているつもりなれど世人は彼をゲジゲジ扱い。そんな彼が一世一代、気の毒な恋人たちを添わせてやろうと打った大芝居、馴染みの師匠は真意を悟り惚れ直し安と二人の未来を夢見るが、その夜安に恥をかかされたヤクザが安を襲う。

ロケ地
・掛け取りの金を盗られ絶望した泉州屋の手代に金を与える安(盗っ人から掠めた当の掛け取り金)広沢池東岸
・縁談が壊れるようお参りの泉州屋の娘、今宮神社本殿(彼女といい仲の手代が祈るのは「お金をくれて助けてくれた人に会わせて」)
・手代の金を盗った男が岡っ引に追われるのに出くわし手助けの安、今宮神社東門
・お嬢様と逃げるよう手代を唆した安が二人を待つ夜の川端、下鴨神社泉川橋たもと(境外から二人がやって来る)。娘を駕籠に乗せた安が手代を振り切り去ってしまうのは馬場(参道の可能性あり)
・泉州屋女将に頼まれ出張ったものの恥をかかされたヤクザが安を襲う夜道、下鴨神社河合社脇。
*安は若山富三郎、頬に蝙蝠の刺青。馴染みの常磐津師匠宅では三味を爪弾くシーンがほんのちょっと出てくる。師匠は浜木綿子、恋人たちは石山律と珠めぐみ。安を殺すヤクザは大木実。


六車の額太郎 1973  監督/倉田準二 脚本/高岩肇

 恋人を置いて草鞋を履いた額太郎は、或る日旅の途中で幼馴染が金を盗られ殺されるのに行き合わせる。遺髪を携え戻った故郷、その幼馴染の父が己の両親を焼き殺したと聞いた額太郎、その「仇」も恋しい娘も今は江戸と聞き息巻いて出てくるが、実家の火事の因は別にあり、娘が思わぬ者と縁を結んでいることを知る。

ロケ地
・儀八が法印一味に殺される葦原、西の湖か(汀にたくさんのヤナギ/戸板を持ってくるくだりで映る堤が疑問、蛇砂川か)
・額太郎が下仁田六車(ろくしゃ)村へ帰ってくるくだり、渡る橋は若森廃橋(下手右岸から菜花と堰堤越し)、散歩に出ていた弁吉親分(恋人・お金の父)を見かけて挨拶するのは藪田神社境内。
・額太郎の実家である旅籠の焼け跡、両親の墓、不明。
・火をつけたと噂の儀八の父・総兵衛の家へ行ってみる額太郎、萱葺民家(中はセット)
・復讐の念に燃え江戸へやって来た額太郎が儀八殺しの子分を見てシメる花見の稲荷(王子稲荷か←宴席に玉子焼きの包み)、イメージの楼門は不明(王子稲荷に非ず)、汐路章をシメる花見の席は大覚寺大沢池(池畔に茶店あしらい、茶店傍らに鳥居をセット/女中はお金という奇縁)
・額太郎のその後を語るナレーションに被る街道筋、本梅川堤(若森廃橋上手・左岸堤、汀に子守あしらい)
*額太郎は林与一、お金は藤田弓子、弁吉は中村竹弥で総兵衛は原健策、儀八は青山良彦。強殺に放火の極悪一味のかしら・法印七之助は戸浦六宏。


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