徳川風雲録 八代将軍吉宗

2008.1.2テレビ東京/東映

第一部「紀州の暴れ龍見参!

 元服を機に父に会い鬱憤を晴らそうとしていた新之助は、己と似た磊落な性格に惹かれてゆく。父の根回しで鍛えられ引き立てられ、遂に一藩の主となる「頼方」だが、妻とは生きて会えぬまま死別、子も不明。そして柳沢の企みで六代将軍が紀州から遠のくや、失意の父や兄たちはばたばたと世を去り、頼方は紀州藩主の座に就くことになり名を吉宗と改める。

ロケ地
・大岡忠相が吉宗に天一坊の出現を告げる鷹狩りの野、竜王か。東海道をゆく天一坊一行、山室堤(背景に富士山合成)琵琶湖(富士山合成)
・35年前の吉宗の御捨子の儀のくだり、和歌山城天守は本物、神官が拾い養父に赤子を渡した城の辰巳の方角の芝は城内(二の丸庭園か)
・紀州藩飛地・伊勢松坂、新之助を鍛える根来衆のくだり、馬をやる山道は谷山林道、チャンバラは鳥居本八幡宮か。
・新之助が自ら元服をする夜の川、不明(谷川)。夜這いをかける多藻の家、酵素民家セット。
・城へ押し通る新之助、和歌山城岡口門。取り押さえられた彼を「お湯殿の子」とからかいに来るおじゃる兄二人、清凉寺本堂裏手
・父と手合わせする新之助、二条城二の丸御殿内庭。二人で遠乗りに出る野道は山室堤(天守合成)、山道は不明。兄たちと正室のことを愚痴る光貞の話で出る紀州藩上屋敷は西本願寺大玄関門
・母に会いにゆく新之助、紀伊古勢村イメージの棚田、不明。於由利の方が暮らす家、美山民家(母屋のほか井戸も映る)
・鷹狩りに城を出る光貞と新之助、二条城西虎口(兄たちが石垣上から見てやっかむ)
・兄たちが新之助をつかまえ一生冷や飯食いと揶揄する城内の廊下、清凉寺回廊
・嫌がらせにクサった新之助が馬をやる野道、山室堤。その後の海辺の地道と御用浜は不明(マジ海/伊賀之介が出て父の仇と斬りかかり、危機に土屋主水之助が登場)
・参勤交代の光貞一行がゆく伊勢松坂の街道、谷山林道(作業場の南の杣道)
・紀州藩上屋敷内に普請中の御成御殿、篠山城大書院(前庭に大工をあしらい北面を使う)
・京入りの新之助、京イメージに東寺南大門と塔を南から。「試し」の誘惑の一夜が明けた京の暁イメージは清水寺三重塔(子安塔から遠望)。「仇討ち」の洛外鳥辺野社、仁和寺九所明神石鳥居〜塀際疎林(奥に九所明神が映り込む)
・江戸へ向かう多藻が休む茶店(新之助と擦れ違い/伊賀之介軽く接触)大覚寺大沢池畔。
・偽道中奉行の雲霧仁左衛門に接触する伊賀之介、不明(林道)
・光貞と土屋主水之助が「果し合い」の浜辺、琵琶湖岸松原。
・紀州藩江戸屋敷に入る一行、大覚寺蔵(明智門内側上部も映り込み)。完成した御成御殿は篠山城大書院北面、内部はセット。
・側近に多藻のその後が判明したか聞く新之助、不明(門)
・紀州藩邸に綱吉御成りのくだり、廊下は篠山城大書院内廊下、セットと併用。帰り際、鶴姫と綱教に西の丸入りを示唆するのは大書院前庭。
・父の根回しによる光圀のはからいで越前丹生藩主となり、名を頼方と改めた新之助が登城する江戸城イメージ、姫路城天守(三国濠端から見上げ)
・元禄14年3月14日、登城する徳川頼方のくだり、江戸城イメージは姫路城天守(南側から桜越しに遠望)。ここで主役が中村雅俊に交代、この日浅野の刃傷。
・大石切腹と聞きお預けの細川家へ押しかける民衆、妙心寺聖澤院。人の波の後ろにいる頼方の背後に法堂。同じく逃げた同志を難詰したあと大石の後を追って腹を切る毛利小平太のくだりは聖澤院門の北方塀際。
・西の丸入りの甲府綱豊、二条城本丸櫓門
・綱教の葬送の列がゆく坂道、二尊院紅葉の馬場(光貞がここで倒れ、その葬送も同所)
・宝永2年10月6日、紀州家五代藩主となり吉宗と改める綱吉との会見のくだり、江戸城イメージに姫路城天守(堀留から天守望)。浜へ遠乗りのシーンは不明(マジ海)

第二部「大奥騒乱!御三家の野望

 紀州藩主となった吉宗は正室を迎え、藩政改革に着手。政治を壟断する側用人や大奥を苦々しく思う彼は、幼君家継死去に伴う後継争いに際し、遂に自ら将軍の座に就くことを決意するのだった。

ロケ地
・紀州藩上屋敷外観、西本願寺大玄関門。花嫁・真宮理子の輿が入る門、随心院薬医門を内側から。屋敷へ入った理子がゆく廊下は書院縁先(苔庭から見上げ)
・綱吉との会見に臨む家宣が間部詮房を従えゆく城内、姫路城城内塀際(矢狭間あり)
・綱吉が吉宗に新妻との暮らし向きを問う城内の庭、姫路城西の丸(家宣主従が目礼して通り過ぎる/吉宗と家宣の奥女中・喜世が再会)
・野遊びの理子を襲う伊賀之介、沢ノ池東岸。急を聞き騎馬で駆けつける吉宗はダート、汀で伊賀之介とチャンバラ(氏倫と陣内が殉職)
・家宣の正室・熙子が男児を産むもその日に亡くなるくだり、江戸城イメージに姫路城天守(真下から見上げ、今回このアングルが多用される)
・家宣の側室方について語られるくだり、左京の方(喜世)がゆく御廊下は東福寺通天橋
・宮参りで鉢合わせる熙子一行と左京の方、車折神社本殿前。熙子の嫌味をかわしやり込めた絵島に、よく言ったと笑う左京の方は手水舎前
・綱吉の死後失脚し肩を落し去る柳沢、姫路城内塀際。
・吉宗を訪ね「欲を持て」と忠告する土屋主水之助、屋敷の庭は不明(遣水に架かる橋上)
・熙子らがゆく御廊下、東福寺方丈前縁。行き合う左京の方に嫌味を浴びせるのは回廊。
・顔色優れぬ左京の方を案じる家宣、東福寺通天台。仲睦まじい二人を見て妬心を燃やす熙子は通天橋から通天台を見る。
・理子懐妊を聞いた夜、天一を思い縁先に佇む吉宗、随心院本堂縁先。
・お国入りの吉宗を見送る理子、随心院大玄関。その後千賀に立派な男児を産めるかと不安を漏らす理子は本堂縁先
和歌山城、北からの遠景と天守。地震で亡くなった母の墓に参るくだり、不明(塚は丘の上。崖から落ちかけた子を助けるシーンあり、母付きの侍女・お須磨と親密に)
・吉宗似の子を授かるよう寺に参詣する理子、萬福寺大雄宝殿内陣(十八羅漢が映し出され印象的、寺僧を伊賀之介と見間違えギャーの場面あり/幻影は内藤剛志)
・地方巧者に灌漑の件をはかる吉宗、大堰川河川敷。灌漑工事も大堰川。吉宗に付き従うお須磨を捕え脅迫する伊賀之介、竜王か。返り討ちに遭い落下する伊賀之介は保津峡落合落下岩にスイッチ、ザボーンは落合河口付近の保津峡、這い上がってくるのは付近の巌。
・伊賀之介が出た夢を見て死産する理子、母体も危篤と聞き馬で駆けつける吉宗がゆく道、下鴨神社馬場
・家宣の三男・大五郎死後、鍋松ぎみを遊ばせる左京の方に嫌味を言いに現れる熙子、彦根城玄宮園池畔。
・家宣に召され登城した吉宗がゆく廊下、東福寺方丈縁先(ローアングル)。後継について相談されるくだりで出る、家宣に世子相続を迫る間部の回想シーンは姫路城内塀際。
・懐妊したお須磨の方が到着する紀州上屋敷、随心院大玄関(半年後長福丸誕生)
・家宣死去のくだり、江戸城イメージに堀留から見た姫路城天守。天英院が佇む階、東福寺方丈縁先。月光院が物思うのは通天台
・奥の院を出て暴れる天一坊を諌める雲霧、焚き火をする夜の林は酵素「木」の前。伊賀之介に斬りかかるもいなされ、天下一の悪党になってやると吠えるのは川中。
・上賀茂の競馬のことを天一坊に持ちかける羽黒坊、酵素竹林際。競う相手の姉・春菜が弟の勝利を祈る神社、日吉大社白山宮(舞殿越し本殿/天一坊が出て拉致)。蒔屋参之丞と試合う馬場、下鴨神社馬場(姉を拉致監禁と告げ動揺させ勝つ)。行き合わせた土屋主水之助に助けられた春菜が駆けつけ、自害した弟を見る「試合場」の先の祠、日吉大社白山宮(落水が映り込む)。仇討ちに出る春菜を見送る土屋、白山宮下石段
・絵島生島事件のくだり、代参の折山村座へ寄った絵島が生島新五郎の誘惑を受け物思うのは東福寺通天台。呉服屋・後藤に化けた雲霧が絵島への届け物と偽り通る城門、彦根城太鼓櫓(長持の中は新五郎と雲霧一味)。絵島のスキャンダルと盗難事件のことを聞く吉宗は随心院本堂縁先。高遠へ遠流の絵島の駕籠がゆく道、酵素ダートか。三宅島へ流される新五郎を乗せた船がゆく海は広沢池、観音島をナメる(観音島に洲崎弁天社の碑あしらい)。味方の奥女中は全ていなくなったと話し間部が怖いと吉宗に縋る月光院、姫路城西の丸
・巡礼姿の春菜が偶然天一坊を見かける川辺、有栖川源流部か(観念し自嘲する天一坊を斬れず)
・伊賀介が吉宗を金で斬る話を尾張に持ち込むくだり、藩邸は随心院薬医門
・家継危篤を受け八代分捕りに動くくだり、老中連(老中の一人に福ちゃん)を工作に赴く吉宗がゆく御廊下、東福寺通天橋。水戸綱条を持ち上げる座敷、東福寺方丈座敷(座敷から勅使門を望むアングル)。尾張継友と行き合い、さも次期と認めているかの如く振舞う御廊下は通天橋。この様を見た天英院が悪あがきと嘲笑するのは洗玉澗へ下りる石段。
・家継死去の報を受けすぐさま馬で出る吉宗、随心院大玄関。格式にこだわり駕籠を用意させ手間どる継友、随心院薬医門
・八代将軍についての評定が決したあと、吉宗に行き合い祝いを述べるも皮肉を吐き捨て去る尾張通春、姫路城はの門下坂
・江戸へ向かう天一について歩く春菜、大堰川堤か。
・吉宗将軍宣下後失脚し去る間部、姫路城内塀際。
・弓のお稽古上様に「大奥美女50人リスト」を持ってくる大岡、不明(幔幕張り)
・失意の天英院の手をとり労わる月光院、東福寺方丈回廊。
・伊賀之介に天下取りの企みを話す雲霧、不明(眼下の道を天一坊がゆく)

第三部「天下危うし!吉宗VS天一坊

 天一生存を知った吉宗の側近は秘密裡に始末をはかるが、曲折あって御落胤一行は東海道を仰々しく下る事態に。一時は伊賀介や雲霧から逃れる天一坊だが、結局戻り大岡忠相の裁断を受けることとなる。

ロケ地
・天一坊と春菜がゆく山道、不明(雲霧配下の襲撃あり、林道から山中)
・御馬場で尾張宗春と馬を競う吉宗、不明(竹林沿いの地道/大堰川河川敷か)
・父に構ってほしくて馬の稽古をする長福丸、二条城二の丸御殿内庭(落馬した長福丸を庇い母・お須磨が蹄を受けてしまう)
・長福丸に稽古をつけてやる吉宗のくだり、江戸城イメージに姫路城天守(三国濠端から見上げの小天守を従えた図)
・なぜ自分付きの侍女に配置転換を願い出たのか千賀に問う竹姫、姫路城西の丸
尾張名古屋城、隅櫓越しに天守。名古屋の殷賑を見ていた土屋主水之助が藩士に誰何され斬りかかられるのは大覚寺天神島。ここへ駆けつけてくる宗春は放生池堤石橋を渡る。
・徳川氏本来の宗家を名乗る「松平館」、不明(どこかの林に城門をセットか)
・吉宗と竹姫のゴシップを聞いた宗春が盛大に嫌味をかますくだり、名古屋城遠景をはさみ姫路城内塀際(矢狭間あり/宗春は弓のお稽古中)
・薩摩へ輿入れする竹姫が城を出るくだり、姫路城への門内塀際〜への渡櫓〜菱の門。
・嫡子の初節句を盛大に執り行う宗春のくだり、市ヶ谷の尾張藩江戸屋敷外観は大覚寺宸殿(池側塀越し、鯉のぼりあしらい)。町民を邸内に招き入れるシーンは等持院方丈廊下から庭を望む図。金撒きの階は不明。
・吉宗の譴責を受けるも行い改まらぬ宗春が、遂に蟄居謹慎を申し渡され駕籠も無紋でゆく街道、山室堤
・鷹狩りの吉宗のもとに天一生存と報告に来る大岡忠相、不明(第一部冒頭と被る/竜王か)。東海道を来る天一坊一行、山室堤(富士山合成)
・土屋主水之助が逃亡中の天一坊と春菜を見かける街道筋、酵素。主水之助のいる茶店はダート待避所にあしらい、ここから河川敷をゆく二人を見る。二人は「木」の前で赤川大膳らに追いつかれ、竹林に逃れた春菜の危機に主水之助登場。
・駕籠の中に咲津を仕込んだ「天一坊」の行列が幕府方の襲撃に遭う海浜、琵琶湖岸松原(汀に草地、遠景にうっすらと町なみ映り込み/天一坊方の侍で福ちゃんチラリ)
・天一坊事件の半年後、御馬場で天一坊の幻を見る吉宗のくだり、姫路城天守南面と竹林を合成。竹林は宗春と馬を競わせた「馬場」と同所、天一坊と春菜がゆく道は堤道(不明、大堰川堤か)で、このシーンの騎馬の吉宗は吹き替えっぽい。


キャスト
徳川吉宗/中村雅俊
天一坊(吉宗青年期・新之助と二役)/内田聖陽
徳川光貞(吉宗実父)/松方弘樹
於由利の方(吉宗生母)/かたせ梨乃
多藻(天一坊生母)/酒井美紀
天一(幼少時)/小林翼
お高の方(光貞正室)/多岐川裕美
鶴姫(綱吉娘・綱教正室)/高橋由美子
徳川綱教(吉宗実兄・紀州家三代藩主)/大高洋夫
徳川頼識(吉宗実兄・紀州家四代藩主)/河野洋一郎
真宮理子(吉宗正室)/木内晶子
お須磨(長福丸生母・元於由利の方侍女)/井上和香
竹姫(綱吉養女)/田中美里
加納平治衛門(新之助養父)/平泉成
加納久通(平治衛門息子・吉宗側近)/篠塚勝
有馬氏倫(吉宗側近)/中野英雄
安藤帯刀(紀州藩付家老→吉宗側近)/綿引勝彦
滝田主計(吉宗側近)/峰蘭太郎
疾風の陣内(根来衆頭目)/石倉英彦
千賀(陣内娘・吉宗側近)/国分佐智子
大岡越前守忠相/石黒賢
徳川綱吉/山本圭
徳川家宣/橋爪淳
水戸光圀/藤田まこと
柳沢吉保/嶋田久作
英一蝶/鶴田忍
千町太夫/青山倫子
紀伊国屋文左衛門/西田敏行
大石内蔵助/西郷輝彦
間部詮房/榎木孝明
月光院/桜井幸子
絵島/黒谷友香
生島新五郎/中村俊介
天英院/南野陽子
水戸綱条/楠年明
尾張継友/江藤潤
尾張通春(→宗春)/山田純大
竹腰正武(尾張付家老)/柴田林太郎
成瀬隼人正(尾張付家老)/小沢象
松平親顕(松平館当主)/西岡徳馬
土屋政直(主水之助叔父)/中田浩二
土屋主水之助(元旗本)/松平健
赤川大膳(雲霧配下)/前川泰之
咲野(雲霧配下)/奥貫薫
春菜/星野真理
雲霧仁左衛門/大地康男
山内伊賀之介/内藤剛志

*けっこう荒くれな「新之助」が中村雅俊にスイッチした後は湿った展開で、関係者死亡がこれでもかというくらい続く。まず天一生母の多藻が伊賀之介に襲われ自刃するのを皮切りに、大石内蔵助切腹を聞く細川屋敷外で毛利小平太の切腹を止められず、次期将軍の目がなくなった紀州家で嫂も兄も父も頓死、藩主就任後にも正室から側室から側近から皆死を遂げ、挙句の果てずっとずっと気にかけていた多藻に産ませた天一を立場上どうすることもできず死に追いやる、鬱な展開。そんな彼を癒してくれる竹姫に心惹かれる段でも、多藻に済まなく思い仏間でぐじぐじしているうちに世間を憚った側近が話を潰しにかかっていたり。こうした不幸な経緯が、吉宗をして民を思う名君たらしめたと結論づける。そんな設定なので、中村雅俊はぐずぐずべしょべしょと泣き暮らし、将軍となり子を得ても先妻と行方不明の天一に済まぬと落ち込み、子が事故に遭うや己が悪いと落ち込んだり泣きまくりで、クライマックスの天一坊事件では目も当てられぬ取り乱しようを演じる。このほか竹姫関連で見せる優柔不断さなど、人間くさいオヤジぶりが特色の吉宗であった。

*参考 徳川風雲録外伝 主水之助七番勝負

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