鼠小僧次郎吉

三隅研次監督作品 1965.4.3大映

キャスト
鼠小僧、小谷新九郎/林与一 お小夜(伊勢屋娘)/姿美千子 お咲(虎吉女房)/藤村志保 虎吉/工藤堅太郎 大坂屋の小僧と女中/白木みのる、桜京美 立見雄一郎(小谷友人、貧民窟住人)/伊藤孝雄 貧民窟住人/遠藤辰雄、夢路いとし、喜味こいし 伊勢屋/香川良介 太田黒喜平次(旗本、勘定方)/須賀不二夫 梵字の安五郎/神田隆 蝮の清次/千波丈太郎 鎌倉河岸の藤五郎/伊達三郎 長沢屋/浜村純


 義賊・鼠小僧と、義侠心から鼠を助ける浪人を林与一が二役で演じた痛快作。私欲のためには貧民窟など焼き払うも厭わぬ悪党を懲らす鼠だが、そうした行為も所詮蟷螂の斧と自嘲する醒めた一面も見せる。事ある毎に鼠の逃走を助ける小谷浪人もまた、鼠の行為を全面的に賛美したりはせず、侍の心萎えた己にもどこか捨て鉢。鼠捕縛のため囮として捕われた小谷を逃がしたあと、捕り方に追われるかたちで鼠も江戸を去ってゆく。

建仁寺

ロケ地
・侍屋敷から金を盗って逃げた鼠を追う町方が、追い詰めるものの逃げられる塀際、北野天満宮脇天神川右岸(お土居)の民家塀際(ラウンドした塀を林越しに見上げ)。逃げた鼠を追う坂も付近か(竹垣)
・老目明し・長沢屋の手下が小谷浪人を追う道、不明(土塀際)。駆け込む林は糺の森か(追っ手をやり過ごしたあと、安五郎の用心棒と手下が伊勢屋の娘に無体をはたらくのを阻止/小僧を連れて通りかかった「大坂屋」が騒ぎを見かける)。逃がされた娘が走るのは上賀茂の校倉に似た高倉脇。
・町でばったり大坂屋と会った幼馴染の船頭・虎吉が彼を追って駆け込む寺、釘抜地蔵境内。虎吉の真意を問い詰めるうち目明しが現れ「次郎吉」を捕えにかかるが逃げられるくだりでは「材木置場」が映り、セットにスイッチ。
・伊勢屋に因果を含められ匿われていた寮を出る小谷浪人のくだり、彼に別れを告げるため立見浪人が待つ橋は中ノ島橋、虎吉が鼠を売ったことを話す。
・虎吉の死体が見つかる堀端、伏見の濠川か(護岸は石積、水路は奥のほうで曲折)
・中山道をゆく小谷が出張った捕り方につかまる道、不明(片側は林の際に石の柵、もう一方は腰板塀の壁で脇に溝、御所拾翠亭にも似る)
・小谷が捕われ唐丸に籠められている問屋場(?)から脱出させた鼠が「協力者」の女中と三人でゆく朝靄の林、糺の森か。小谷を「贔屓」の女中が正体を現し、鼠が二人に別れを告げ去る道は松本酒造前東高瀬川堤。小谷とお小夜がいるのは旧高瀬川側の法面で、鼠が去る堤を見上げ。
・虎吉の仇を取りに安五郎の前に現れる鼠、建仁寺方丈西塀(興雲庵との境の路地)
・船宿に潜伏していたところを長沢屋に見つかり、殺到する大人数の捕り方から大屋根を逃げ回った挙句堀に身を躍らせた鼠、それを求め右往左往する捕り方の提灯を遠目に見て漕ぐお咲の船、不明(湛水域)。鼠が乗り込んだあと川を下るその船、朝日を拝む川面は宇治川か(流れは瀞、堤はかなり高い)

・鼠小僧の表の顔は、小店の温和な主・大坂屋。小僧と女中が鼠の噂をするのを笑って聞いている。伊勢屋には大坂屋として出入りしていて、伊勢屋の娘が小谷に助けられたことを告げて仲立ちし預ける次第。
・スラムは市ヶ谷の谷底にある設定、よくできたセットで表現されている。小谷は友人の立見とここに住んでいて、追われた鼠が逃げ込んでくる。この一帯は安五郎が買い上げていて、盛り場を拵える腹づもり。


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