御法度

大島渚監督作品  1999.12.18松竹

キャスト
加納惣三郎/松田龍平 田代彪蔵/浅野忠信 土方歳三/ビートたけし 沖田総司/武田真治 近藤勇/崔洋一 井上源三郎/坂上二郎 山崎烝/トミーズ雅 湯沢藤次郎/田口トモロヲ


 司馬遼太郎「新選組血風録」中の妖しい一編、「前髪の惣三郎」を映像化した作品、「三条磧乱刃」からもエピソードを引いてある。己の生にどこか捨て鉢な美少年・惣三郎によって起こる痴情のもつれは、舞台が新選組なこともあり血腥い結末を呼ぶ。「そのケ」のない者にも劣情を抱かせる仇花が、人の心の奥底から禁忌を引きずりだす幻想風景が秀逸。

西本願寺 御影堂

ロケ地
・加納惣三郎は女を知らない・言い寄る者も多いと噂が立つくだり、屯所廊下をゆく惣三郎は知恩院渡廊、惣三郎の姿を求める田代彪蔵は本堂廊下。
・里の童に魚を獲って貰っている沖田のところへやって来て田代と惣三郎のことを尋ねる土方、広沢池東岸。原作設定は醒ヶ井七条不動堂村の堀川。
・長州征伐の御用を言いつかって二条城を出てくる近藤勇、二条城北大手門〜外濠端。
・お西さんの境内を散策する惣三郎が井上源三郎に出会うくだり、相国寺方丈。惣三郎は方丈西側から東側に回り、前庭に面した階で源さんがうたたねをしている運び。前庭白州と唐門越しに法堂の甍が映り込んでいる。原作設定は西本願寺黒書院。
・源さんが「お宗旨」さんを見かけ稽古に誘うくだり、知恩院本堂廊下。
・源さんと惣三郎の稽古を愚弄した浪士を探索するくだり、肥後者の尾行を請け負った小者が袈裟掛けに斬られて見つかる先斗町の鴨河原、渡月橋と下の河原。源さんと惣三郎が小川亭に討ち入るくだりの「裏手の川端」はセットか。
・土方の命を受け惣三郎に女を宛がうべく島原へ誘う山崎監察のくだり、執拗にアタックの屯所廊下は知恩院本堂廊下、渡廊。
・島原へ向かう山崎と惣三郎がゆく夜道、惣三郎の鼻緒をすげてやる塀際は西本願寺山科別院・四宮川沿いの塀際。駕籠に乗り込む小川べりは上賀茂神社ならの小川畔。島原大門は今宮神社東門に花街のデコレーション。惣三郎に太夫を宛がい翌朝屯所に帰ってくる山崎、西本願寺イメージに本物の阿弥陀堂越し御影堂甍。
・島原の夜のあと、奉行所から帰る山崎が何者かに襲われる堀川端の夜道、粟生光明寺石段上部(階の一部と石畳の坂のみ映る)
・田代討伐を命じられた惣三郎が佇む階、相国寺方丈縁先。

*たいていは壬生が舞台だし、後期新選組設定でも壬生のままだったりお茶を濁したりすることが多い「西本願寺屯所」のビジュアルに真摯に向き合った貴重な例として、この作品は見逃せない。美術の西岡善信氏が、お西さんで聞いてもわからなかった建物の状況を調査して作り上げた「絵」。その経緯は平凡社から出ている「映画美術とは何か」や淡交社刊の「シネマの画帖」に詳しく述べられているので必見、西岡氏の緻密なスケッチやパースが拝見できる。美術ではラストの鴨河原の野面セットも秀逸、これも前記の本に詳しい。

参考文献
「映画美術とは何か」 平凡社
「シネマの画帖」 淡交社
「新選組血風録」司馬遼太郎著 角川文庫


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