八百八町夢日記


スペシャル 「夢を追って」 1989.10.10  

 シリーズ初回、義賊・鼠小僧を斬罪から救った北町奉行が、彼を同志として隠れた悪を暴くチームを結成する過程を描く。
次郎吉には三郎三という名を与え、自らは浪人態に作り榊夢之介を名乗るお奉行、もとから使っていた密偵・おりんの三人が秘密のチーム。
初手、次郎吉は榊に完全に心服していない状態で「仕事」に入り、鼠小僧の処刑に嘆きの日々を送っていた恋人を榊がケアしてくれていたことを知り、真の仲間となる。お話の最後には次郎吉が晴れてお初と祝言をあげるエピソードが置かれている。

 初仕事は抜け荷で大儲けの悪徳商人の摘発、なかなか尻尾をつかませない大和屋にそれぞれが裏からアプローチをかける。大和屋の用心棒の中に一人凄腕がおり、常時頭巾をかっちり被っている。彼の「事情」がお話の焦点、哀れな混血児がはじめて愛した女や、彼を操る元長崎奉行など出てくる。
ワルどもの悪行を見定めたあとは北町奉行として出役し、「夢」の扇を突きつけ大和屋を断罪。大物のほうは若年寄・林備前守が、大和屋から押収した覚書のなかから「特に許し難い者」の名を朗々と読み上げ、切腹を迫る運び。

ロケ地

  • 北の隠密回り・黒沢が真っ向に割られた死体で見つかる中州三俣、広沢池東岸(後段、おりんが聞き込みのくだりでは漁師小屋があしらわれている)
  • 鼠小僧の処刑場、不明(土壇場は均されて層になった土盛りの上、処刑を見て衝撃を受けたお初を励ます榊の段では背後に小滝と崖が見える。いろんな作品で使われてきたアレ)
  • 大川端を通る大和屋の荷駄を部下に襲わせ、撃退する芝居を打ち雇われる榊、大覚寺大沢池堤。榊に追い払われたお芝居の二人(北町与力と同心)が息をつく堀端、望雲邸脇の有栖川畔。
  • 牢に潜入した次郎吉が大和屋番頭毒殺犯とともに破牢し逃げ込む寮(道風庵)中山邸門。怪しまれた次郎吉が始末されかかる川端、嵐峡(亀山公園から下りる石段も使用、途中から広沢池へスイッチ)
  • 殺し屋・ジュアンが当時の長崎奉行らに強要され初めて人を斬った回想シーン、大覚寺天神島
  • 自分を斬りにきたジュアンに出生の秘密とワルの非道な企みを告げる榊、真実を知り殺人機械であることをやめたジュアンが用心棒らに斬られる野道、ともに鳥居本八幡宮(小柴垣、広場)
  • 荷を待つ大和屋に船は北町が押さえたと呼ばわりひと暴れする次郎吉、不明(桂川畔か)
  • 祝言を覗きにやってきた榊と話す次郎吉、桂川左岸・臨川寺地区の堰堤脇河川敷(大水が堰堤を隠す勢いで流下)

*ひそかな見ものは林備前守の佐藤慶、はの字へ変装して入る榊を心配そうに見ていたり、次いで次郎吉が入っていくのに驚いたり、二階で密談するシルエットを見てフフやるのうと呟いたり、なんか気の弱そうな顔つきはとても柳生烈堂演った人と思えない。
*ジュアンはオランダ商館長と丸山遊女の子、彼を引き取る条件に抜け荷ルートを約束させた挙句、預かった彼をキルマシーンに仕立て上げるという悪辣きわまる設定。笑えるのは頭巾の中身、モロ紅毛人っていう真っ赤な蓬髪。
*大和屋の荷受け現場に来た鼠と立ち回りの場、福ちゃん入り・用心棒のセンセイ。牢名主の手下の小峰さんもかわいい。


第1話 「娘たちを追って」 1989.10.17  

 年貢の払いに窮した百姓衆を騙し、娘たちをキープする口入屋。焼けた吉原の仮店で大儲けを企む裏には勘定奉行が控えていて、夢さんたちはたくみに内部へ入り込み悪党の目論見叩き潰して娘たちを救出。

ロケ地

  • 十三夜の月見におりんを誘った夢之介、入水しかけの百姓の親爺を止めるのは嵐峡
  • 口入屋が娘たちを閉じ込めていた隠居所、大覚寺望雲亭
  • 口入屋へ娘を預け金を持って帰る道で追い剥ぎに襲われる下総から来た百姓、大覚寺五社明神・有栖川寄り(三郎三が出て撃退)

*夢さんが助けた親爺は谷村昌彦、悪徳口入屋は高城淳一で手下に野口貴史や田中弘史、黒幕の勘定奉行は田中浩で強面の部下は出水憲司。


第2話 「命を賭けて」 1989.10.24  

 謎の爆破事件を追う夢之介は、火薬のエキスパートに化け渦中に身を投じる。小屋など吹っ飛ばしてみせるだけあって目的は派手、不行跡を咎められ逆恨みしたお血筋が、将軍と幕閣を爆殺しようと目論んでいた。

ロケ地

  • 逃げようとした花火師を贄に爆薬の威力試しが行われる目黒山中、不明(例の砕石場跡みたいな、崖のある野原)。目撃した猟師が斬られ落ちる崖、保津峡落合落下岩(一時途中に引っかかり・八田らが発見するのは崖下)
  • 花火師を求める男に接触する夢之介、呼ばれて行く浜町の護摩堂は大覚寺護摩堂、駕籠に乗せられ更に船に積まれ、連れ込まれる寮は望雲亭(内部はセット、床の間の紐引くとゴゴゴで地下に工房)
  • おりんと八田が夢之介の行方を求め手がかりを捜し回る川筋、広沢池東岸
  • 新火薬の試しが行われかける御狩場、酵素河川敷。駆けつける三郎三とおりんはダート、夢之介たちが走る道は大覚寺大沢池堤
  • 事後、贄にされかかった娘を助けるため人を殺めたことでお奉行に裁きを乞う三郎三、大覚寺放生池堤

*お血筋の悪党は川辺久造、腹心は岩尾正隆。悪事に加担する遊び人の色悪は小野進也、金を毟られ裏切られたうえ火薬試しの的にされかかる娘は山下智子。福ちゃん二態、遊び人が拝領した脇差を刀屋に持ち込み盗っ人扱いされた三郎三を捕えに出る捕り方と、ラス立ちに出てくる家来(一旦お奉行に刀を向けるも腰砕けの役回り、腰の抜かし方がシャープで大笑い)。
*色悪に騙されている娘から居所を聞き出すのに次郎吉は女房のお初に依頼。夢さん潜入に際しては、藩を退転した砲術家と触れ込み、その藩にちゃんと根回ししてある細かさ←悪党方が接触前に聞き合わせに行ってる運び。


第3話 「盗っ人ざんげ」 1989.10.31  

 次々と大名家から逸品の茶道具を盗む賊、裏に好事家の大物という図。探りに入った三郎三が敵の手に落ちてお初を人質にされてしまうが、夢さんはトンデモ方面から突破口を開く。

ロケ地

  • 茶道具盗を警戒し張り込む八田、蕎麦をたぐる町角は相国寺浴室前。
  • 定家の軸を盗みに牛込・禅宗寺へ現れる賊、イメージに相国寺庫裏。賊の前に立ちはだかる三郎三は回廊、逃げた賊を火盗改が出て斬り捨て・三郎三を捕縛。
  • 御側室参詣の寺で女形に化けた夢之介が「誘惑」のくだり、御側室が入る門は永観堂中門(拝観口)、夢さんの「女形」が控える廊下は御影堂縁先。
  • 火盗改の指図に従い三郎三が茶杓を盗みに入る下谷大雲院、随心院薬医門。町方が出張って来ないので移動する三郎三の前に現れる夢之介は長屋門(中から出てくる)

*茶道具を集める元側用人で娘は将軍側室の「向島の御隠居」は戸浦六宏、グルの火盗改長官は伊吹剛。


第4話 「空蝉が飛んだ」 1989.11.7  45

 二度も嫁に逃げられた男の三度目の嫁取り、嫁の家族も失跡していることに血腥さを嗅ぎ取った夢之介は用心棒として潜入、なかなか事実を信じようとしない三番目の女の命を救う。

ロケ地

  • 女難の相の御籤を引き当ていちゃいちゃの三郎三夫婦、上御霊神社本殿脇茶所を社務所に仕立て(帰り道で三倉屋のお道具調べに行き会う)
  • 三倉屋の花嫁・おはんに詰め寄る掛取りの衆、上御霊神社楼門〜本殿裏手。
  • 用心棒になった夢之介によけいな詮索をするなと釘をさす三倉屋、「材木置場」。丸太の向こうに蔵や塀映りこみ。
  • おはんの両親のことを聞き込む三郎三、武蔵野(?)の茶店は大覚寺大沢池畔。
  • 三倉屋が槇と偽り椹を使っていた橋、中ノ島橋(八田調べ)。これを夢之介に報告するのは大覚寺放生池堤、二人して釣りを装い。
  • おはんに責められた三倉屋が開き直って語る「両親殺害」の回想、大覚寺大沢池畔。
  • 財産を始末し武蔵野へ向かうおはんを見送るお奉行、大覚寺境内に木戸・茶店あしらい。

*おはんは根本りつ子、三倉屋は北村総一朗でつるむ材木奉行は外山高士。ラス立ち福ちゃん入り、用心棒のセンセイで斬られ組。
*空蝉は着物の増えるおまじない、おはんが匂袋に入れて母に渡したそれが悲しい証拠品に。


第5話 「情けをかけて」 1989.11.14  46

 貸し先からネタをとり悪事に加担させた挙句消す高利貸し、四度目はならじと動く夢之介は上方の盗っ人という触れ込みで一味の中へ。三の字のかけた情けが仇になりかける話は、奉行と彼の紐帯を示すのと二段構えの情話。

ロケ地

  • 両替商・菱屋と小普請奉行の密談を夢之介に報告するおりん、二尊院紅葉の馬場石段上部に二人腰掛け。
  • 天井から降ってきた小判のせいで父の心が折れたと嘆く少女、仁和寺中門。表裏両方のアングルあり。開口部をフレームに、金堂と石段の連なりがのぞく絵と、二王門頂部越しに双ヶ丘を望む絵とあり、珍しい構図。
  • 金塊が着いたことを用心棒が報告しに来る鎮守、鳥居本八幡宮。舞殿に人質の少女がくくられ、三の字が助けたあとお奉行が鳥居下に出張る。
  • 事後、祭りの幟が立つ参道で屋台を出す父娘、二尊院紅葉の馬場・坂下。菱屋から小判を失敬した件を話し笑うお奉行と三郎三は少し離れた参道に(山門も映り込む)

*元錠前師で島帰りの蕎麦屋親爺は平泉成、小判を見るや倍にしてくると賭場へ走ってゆくのが大笑い。彼の娘は市丸和代、幸薄そうな表情が秀逸。黒幕の小普請奉行は小林勝彦、菱屋は山本清、グルの口入屋は波多野博。


第6話 「女賊の恋」 1989.11.21  

 二組の賊を追い使い、出世のための金を得る旗本。道具に過ぎぬ身で「御前様」を愛した女の哀れを描く。

ロケ地

  • 女賊の回想、三田村と逢瀬の神社、不明(重ね鳥居)
  • 三田村が凶賊を始末する竹林、北嵯峨か。
  • 事後、孕んだ女賊に下したお奉行の人情裁きが町で評判と話す三人、二尊院紅葉の馬場・坂下(祭礼の幟や露店あしらい)

*女賊は一柳みる、奥祐筆の娘と祝言を挙げようとしていた三田村は鹿内孝で用人は芝本正。凶賊は大木正司で子分は福本清三。おせんを気遣う牢名主は絵沢萌子。


第7話 「闇の顔役」 1989.11.28  46

 秘密裡に抜け荷を探っていた目明しの殺害、僅かな手がかりから怪しい商人を突き止める夢之助たち。しかし捕えた男は裏をかかれる形で奪われ、お奉行は潜入した自分の前に立ちはだかった覆面の男の正体に気付く。

ロケ地

  • 丁子屋を捕え連行する道、広沢池東岸。怪しの四人組が出て奪われ。
  • 丁子屋が黒幕にあがりを渡す屋敷(おりんが呼ばれてくる屋敷)中山邸門。

*おりんの父を死なせた六年前のしくじりで白眼視され、おりんとも添えず夢も希望もなくした臨時回り同心は辻萬長、丁子屋は高野真二。広沢池の捕り方の一人に福ちゃん。
*蘭蝶ではなく鵞鳥と酷評される丁子屋の新内、そこへ流しに化けた夢之助が現れ座敷に呼ばれる運び。


第8話 「強請」 1989.12.5  46

 公共工事独占を狙った口入屋の悪事を、巡りあわせで平吉が暴く結果に。濡れ衣着せられはの字飛び出し→怖いセンセイ強請を思いつく過程がコミカルに描かれる。

ロケ地

  • 犬と大男の用心棒を連れお散歩の卍屋の妾を「誘拐」のくだり、中ノ島橋上。おりんが男たちを引きつけ、三郎三が船で連れ去り(堰堤上手)
  • 卍屋が夢之介に用心棒を依頼する屋形船、大沢池か。

*卍屋は遠藤太津朗、用心棒のセンセイは浜田晃で番頭は玉生司朗、作事奉行は波田久夫。
*濡れ衣は高価い京菓子盗み食い、真犯人はお松。


第9話 「我が子を思いて」 1989.12.12  46

 凶賊を息子にもった母は、贖罪のため我が身を顧みず世の人に尽くすが、身の上が知れるや人々は彼女に冷たく接する。それを哀れと見た二人の男は、それぞれのやり方で気の毒な老母を気遣い見送るのだった。

ロケ地

  • 島抜けの夜がらす一味の残党が着く浜、広沢池東岸
  • 女児の落とした下駄を拾おうとして川に落ちた子をおかな婆さんが助けようとするくだり、渡月小橋。泣く女児は橋上、下駄を引き寄せようとして水に落ちる子は橋下手右岸河川敷。飛び込んだ婆さんに続いて三郎三が水に。
  • 船を沈めた話を船頭らに聞き込むおりん、広沢池東岸(火盗改が見ている)
  • 夢之介が入り込む、万屋が残党を隠している屋敷、中山邸通用門。母に会いに行くと称し屋敷を抜け出す政吉を「見逃す」用心棒の夢さんは参道。
  • 夜がらす一味の隠し金を埋めてある竹林、北嵯峨か。

*老母は菅井きん、性根治らぬまま逝った倅は吉田次昭で仲間に阿波地大輔。窩主買いの万屋は江見俊太郎、グルの火盗与力は原口剛。


第10話 「おりん慕情」 1989.12.19  

 おりんのもとから祝言間近に黙って消えた恋人、不幸な経緯で掛け違った運命はひとときの邂逅ののち再び遠くへ翔り去る。

ロケ地

  • 平吉を呼び出し秀之助について聞く夢さん、大覚寺護摩堂。話しながら平吉が池に石を放る。ここへ三郎三が現れ合図、逃がし屋について報告するのは大沢池畔。
  • 秀之助を探し出したおりんが何故姿を消したか問う川端、嵐峡(花嫁を乗せた船が通過)
  • 秀之助と親しかった男がおりんに五年前の経緯を話したあと斬りつける水辺、広沢池西岸湿地(三郎三が阻止/捕縛)
  • 逃がし屋のアジトの寺から出て「隠し金」の場所へ赴く夢さんと秀之助、大覚寺天神島(二人の間におりんが割って入り秀さんを逃がそうとする)
  • 事後、秀之助の墓に参る三人、広沢池西岸・柳の大木(孤立木)の下の田畔(穂実り)。三人は西岸沿いの「道」を帰ってゆく。

*秀之助は並木史朗、首切り役人の家業を嫌い家を出て板前→おりんの店、おりん絡みの下らぬ経緯で友を刺し殺し「転落」、逃がし屋のもとで殺人担当に。黒幕の元船手頭・小田島は上田忠好、一味の寺僧は西山辰夫。冒頭秀之助に消される、逃がして貰うはずだった凶盗は小峰隆司。ラス立ち福ちゃん入り・小田島の家来、去らず斬られる。


→ 八百八町夢日記 第一シリーズ表紙


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