関東遊侠伝 利根の朝焼け

河野寿一監督作品  1963.2.6東映


 天保水滸伝を脚色したお話。恋しい娘と結婚するため、渡世人に身をやつし任務を果たす若者を主人公に据え、これに人物群をからめてゆく。

 飯岡と笹川の間で妙な動きをする、若き渡世人・三日月の健は腕も立ち気っ風も堂々。彼は飯岡の刺客としてやって来て、当の的の笹川の親分を男と見込んで正体を明かす。
しかし事は思い通りにゆかず、繁蔵親分は道に斃れ、健を追ってきた恋人は悪党の手に。八方ふさがりの状況を打ち破ったのは、後悔の淵に沈む繁蔵の妹が八州に切る啖呵を聞いて、ぐっさぐさに痛いところを突かれた、横恋慕浪人だった。

ロケ地

  • オープニング背景、水郷をゆく船は西の湖か。馬子に引かれ馬でゆく道は竹林際、渡る橋は欄干のある木橋で橋脚は渡月橋に似た大きな橋。その後畑の脇の道には野菜干しの架台あり。健が房総へやって来る過程をこれで表現、里見浩太郎の歌が被る。
  • 諏訪明神の件で飯岡の使いとして笹川へ赴く健、虎松と連れ立ってゆく街道、不明(棚田の農道、道端に風流な物置小屋あり)
  • 飯岡とつるむ八州・小宮山の屋敷、民家長屋門。中はセット撮り。
  • 笹川の繁蔵に腹を割った健、約して辞する彼を送ってゆくお小夜と抱き合う町角は梅宮大社神苑・門内側。現在のように仕切りがなく、東参道の蔵が背景に来ている。
  • 笹川の人数が一斉に上陸する川端、琵琶湖畔か。このあと広大な葦原に移動。
  • 飯岡の指図で先発した健がゆく道、先に出た物置小屋のある道。遅れて出る飯岡の手勢が渡る橋、オープニングに出た木橋。
  • 桧浪人が健を待ち伏せしている時雨峠、谷山林道か(分岐道下の切り通しに似る)
  • 繁蔵や健を手配する高札が出る街道、丘の麓の民家前。
  • 飯岡の乾分・成田の甚蔵を呼び出し、繁蔵殺害の黒幕を聞き出す林、下鴨神社河合社裏手
  • 捨て身で小宮山の悪事の証拠を掴みに行ったお直を救うべく走る健、切り通しのある谷地田の道。飯岡の人数と鉢合わせるも、桧浪人が助けてくれる山道、不明。小宮山邸へ走る健、民家南塀際〜民家長屋門
  • 事後、一転明るい顔で虎松と道中の桧浪人、谷地田の道。奇しくも桧と同じ台詞を吐いてお小夜と街道をゆく健、行く手にきれいな切り通し。

 叔父は大目付な健は里見浩太郎、文ひとつやって江戸に残してきた恋人・お小夜は北条きく子。一目で健の人体を見抜き、全面的に協力してくれる笹川の親分・繁蔵は近衛十四郎。繁蔵の妹で、健に恋し嫉妬で道を誤るお直は久保菜穂子、出戻りで小宮山に言い寄られている設定。笹川の乾分・富五郎は小田部通麿。飯岡の下っ端で、健にくっついて歩く張子の虎松は大泉滉。ヤクザを使い苛政を敷き民を泣かす、大目付に睨まれている八州・小宮山は原田甲子郎。小宮山と密約を交わしている飯岡の親分は阿部九州男、手下の成田の甚蔵は北村英三。お小夜を卑劣な手段で手に入れようとする桧浪人は東千代之介、小夜を追って房州へ舞い込み、旧知の小宮山のもとへ転がり込む運び。


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