喧嘩屋右近

杉良太郎主演作品 1992TX/松竹  *お弦/萬田久子


第1話 よろずもめ事買入れ候

 喧嘩の仲裁を生業とする茨右近、南無妙法蓮華経を背に「でぇへへへへ」と終始笑いながら揉め事を解決、しかし手法は有無を言わせずのぶった斬り。
 今回は御側御用の馬役と揉めた部屋住みの若者を助け、ついでにその兄を死に至らしめた同僚たちも葬り去る右近。馬役の望月は無論のこと、乗り込んできた配下ともども皆殺し。大目付に「殺戮」なんて言われてるのがおかしい。

ロケ地
・望月丹波邸、相国寺大光明寺
・目付・早瀬相模の駕籠を止め、望月に無理矢理書かせた書付を渡し事の次第を告げる右近、仁和寺観音堂前
*笑いのパターンは上記以外に「うぇへへへ」「うひひひ」など多彩、笑ってないのは金が無くて食べられなかった鰻を眺める時くらい…。殺陣の最中もずーっとにたにた笑ってるし。「トンデモ」入りすれすれの賑やかなどたばたが楽しい。

キャスト/坂上忍、大出俊、伊藤敏八、内田勝正、玉川伊佐男、山内としお、北見唯一

第2話 仲裁待ったなし!悪党裁く無双剣

 長屋を買い占めて更地にし遊郭を建てようとする玄蔵一家、北町同心の一部とつるみ追い立てに乱暴狼藉を働く。長屋の住人の魚屋と関わった右近は玄蔵を脅しつけ「私がやりました」証文書かせ熱血同心に引き渡す。腐敗同心たちはちょいちょいっと始末。

ロケ地
・喧嘩仲裁に走る右近のシーンに今宮神社参道。仲裁のあと夫婦で蕎麦を手繰る飯屋は東門外かざりやの床机。
・布袋長屋の大屋がお参りの神社、今宮神社本殿。お参り中玄蔵一家に拉致られ殺される、広沢池東岸汀に漁師小屋セット(水少なし)
・熱血同心・中井にワルをやっつける算段を話す右近、大覚寺五社明神大沢池畔。
・早駕籠の女房と併走の右近、今宮神社参道。このあと二人でいちゃつきながら歩く、東門外参道
*にたにた笑いながらの居合、斬られたことに気付かない相手に「脚と手を斬ったんだよ鈍いなオマエは」と蹴り倒したりコミカル。

キャスト/山本陽一、八木小織、宮内洋、森山潤久、草川祐馬、上田忠好、大竹修造、小船秋夫

第3話 美女救出・江戸城大奥へ潜入せよ!

 大奥で権勢を誇る宮城野の方の弟を、上州・中久保藩の次期藩主に潜りこませようと図る御留守居役。神君拝領の香炉で窮地に陥った藩は右近を頼り、お騒がせ夫婦大奥潜入ですったもんだの大騒ぎ。なんとか香炉を取り返した夫婦だが、約束のお金が個人の身代をはたいたものと知っては受け取れず「時価」のお仕事はパァ、顔が映るお粥を啜る羽目に。

ロケ地
・幕府留守居役(大奥の取次)・天野長門守屋敷、相国寺大光明寺
・香炉を上覧に入れるよう命じられる江戸城・老中御用部屋、相国寺方丈・裏庭を望む座敷。
・中久保藩江戸屋敷を出たところで宮城野の弟に襲われる岩間、相国寺鐘楼前。
・御典医になりすまし駕籠を仕立てて出発の右近夫婦、金戒光明寺三門
・江戸城、姫路城天守。右近らの駕籠が入る城門は姫路城菱の門、行く城内に三国濠端、、検問を受ける御切手門は知恩院北門。やり過ごし、更に行くのは姫路城西の丸で、大奥御広敷門は大覚寺明智門、七ツ口からはセットにスイッチ。
・大奥内でのどたばたのあと駕籠がよたよたと出てくる帰り道、姫路城西の丸。やっとの思いで外に出ると中の人は人違いでもう一回と落胆の川端、上賀茂神社ならの小川畔。二巡目は最初の潜入と同じ個所がアングルを変えたりして出てきて設定もだいたい同じ。津世を救い出したあと宮城野の弟の手勢と大立ち回り、香炉を持って旅立つ岩間父娘を見送る道も、ならの小川と周辺。

キャスト/葉山葉子、山本ゆか里、早川保、灰地順、牧冬吉、小船秋夫

第4話 悪の上行く悪い奴

 凶盗・土蜘蛛に押し込まれ、有り金盗られ亭主以下を皆殺しにされ火までつけられ途方に暮れる哀れな母子からの、金を取り返してくれとの依頼を、はじめは断りながらも同情禁じ得ず受ける右近。やり過ぎで十手を取り上げられた岡っ引を手下に使い見事盗っ人を突き止め始末するが、なんと薄幸そうな女将は大騙りの常習犯、子供まで借り物。知らせを聞いて凍る、百両の夢を見ていた夫婦の表情が見もの。そして結局持ち出し嵩み、夫婦は沢庵を齧るのであった。

ロケ地
・容疑者を乱暴に追い立てる岡っ引にちょっかいを出す右近、吉田神社竹中稲荷参道重ね鳥居に屋台や茶店をセット。
・オカマから聞き出した賊のアジト・下谷金杉の無人寺、不明(クリーム色の塀に五本線で道端は水辺っぽい←仕事人激突でははっきり水面映り。門のとこ塀の高さ・色変わり構えは向門で瓦、門左手は林、痛快三匹12とも同じ)
・いい気分で東海道をゆく騙り女・お蝶が渡る橋、木津川流れ橋。右岸遠景の山の向こうに富士山を合成、風呂屋のタイル画に酷似。

キャスト/一色彩子、青木義朗、西田良、紅萬子

第5話 盗賊狩り

 盗賊に両親を拉致され飯屋に売られた幼い加代を見捨てて置けず「買い取る」右近夫婦。その後富商の依頼で夜回り中に出るその賊を嬲るように討伐、加代の親も救出と大活躍。富商から礼金が出るが痩せ我慢でパァ、しかし唐突に奉行所の役人が盗賊捕縛の恩賞金二両をくれたりする。だからそれをパァっと使うから重湯生活なんだってば。

ロケ地
・沈む加代をお祭りに連れてゆく右近夫婦、吉田神社竹中稲荷。参道重ね鳥居に屋台が出て、本殿でお参り、参道の茶店で団子を食わせてやっていると加代が賊の一味を発見、そいつが逃げるのは舞殿〜三高碑への石段、シメて両腕を叩き折るのは吉田山の林か。
*加代の父は腕のいい錠前師で、賊に脅され追い使われる設定。*賊の先回りして蔵の中にいる右近、来るのが遅いから呑みすぎたと「酔剣」を披露、でぇへへと笑いながらびしばしやっつける。このほか、加代を買った酒肆の親爺から「買い取る」際値切るのに「肩のところ平に」の恐喝文句が飛び出す。

キャスト/岡村学、中井久美子、小船秋夫

第6話 この世から消えたい女

 仲の良かった二人の殿様は、老中職をめぐる鞘当てで険悪に。困ったのは一方の妹でもう一方の側室に上がったお方さま、実家に帰るも儘ならず尼寺に若君とひっそり暮らすが、御家の後継問題も加わり追い詰められる。ここに奇策を用いる右近、お方さまの当初の依頼のとおり「この世から消す」ことにして、怪しげな仮死に陥る薬を用い馬鹿なお通夜芝居をしてのける。

ロケ地
・右近に依頼を断られたお稲の方がゆく道、実家の赤城藩からの駕籠が待っているのは相国寺大光明寺南路地
・行方不明の娘と孫の捜索を依頼した坂口甚兵衛を待つ右近夫婦、餅まきの門は建仁寺三門(北側から)。一個もとれない物慣れぬ男児を構っていると雲水の群れに囲まれる場面では同じく門前で、背景に法堂を背負う。立ち回り場面は両足院前にスイッチし相手も忍者ルックに変身。追い払ったあと、お稲の方が子に駆け寄ってくる。母子が身を寄せている妙光尼寺、久昌院(門、お堂縁先)。母子が甚兵衛の探している二人と知り事情を聞くも答えないお稲の方に怒って出てくる夫婦、さきほどの餅まきの門。ここで二階の窓から右近を見ている甚兵衛を見つけその部屋に駆け上がるが、窓からちゃんと三門が見える仕掛け(合成かどうかは不明)
・甚兵衛の回想、仲の良い将棋友達だった頃の殿様二人の傍らで微笑むお稲の方、赤城藩江戸屋敷の広間、相国寺方丈(北庭が見えている)
・その後険悪となりお城でも角突きあわす両家の殿と家臣たち、江戸城イメージに姫路城天守、御廊下は相国寺方丈北廊下。南雲藩江戸屋敷、相国寺大光明寺門。赤城藩江戸屋敷、大覚寺大門
・赤城藩の侍がお稲の方と若君を拉致のくだり、建仁寺久昌院庫裏前庭(右近が出てきて母子を確保、くぐり戸から外へ)。このあと母子が亡くなったと芝居を打つのは久昌院方丈。仮死の筈が冷たいと慌てたお弦が医者を連れて走ってくる、三門久昌院と禅居庵間の前路地・クランク部分。仮死芝居がバレたあと、斬りかかってくる赤城藩士らとの立ち回りは門から出て院前の林間へするすると移動、法堂基壇部で忍者とチャンバラののち、悪家老を成敗するのは三門(南からのショット、開口部から法堂が見える)。南雲藩の殿様にご褒美の脇差を貰い去る右近夫婦、三門北側参道

キャスト/山本みどり、工藤堅太郎、石山雄大

第7話 尼僧一人、八万石の大騒動

 十年前引き裂かれた隣同士の旗本の娘と息子が晴れて一緒になる、その間のごたごたに関わる右近夫婦。恋人の片方は尾州八万石・小豆沢藩の殿様に、女のほうは出家して巣鴨の尼寺に侘び住まいの日々、十年を経て殿の正室が他界し約定であった正室に迎える話が出て来る。これを阻み、側室である自分の娘を据えようと画策する家老の企みは、右近に潰されるのだった。

ロケ地
・川辺に毛氈敷いてピクニックの右近夫婦、下鴨神社泉川畔。小豆沢藩士が懐中物を掏られる縁日、馬場にセット。この巾着切りを捕まえた岡っ引に身柄を引き渡せと迫る藩士たち、糺の森池跡(右近介入)
・白秋尼が住持する巣鴨の尼寺、西明寺山門。白秋尼が額づく正室の墓前、西教寺二十五菩薩来迎群像前(家老らが尼を消しにかかるところへ、右近夫婦が墓地の塀から身を乗り出し声をかける)
・右近たちが白秋尼を救出し匿う知り合いの屋敷、中山邸門
・小豆沢藩邸、相国寺林光院
・お弦が小豆沢藩出入りの商人・和泉屋に接触するためわざと茶を零す茶店、今宮神社高倉下にセット。
・さらわれたお弦と白秋尼の人質交換の駒込誓願寺、粟生光明寺石段上部。両の林に潜む藩士たちを右近がちゃっちゃっと始末。
・家老に結納の席へ連れて行かれる小豆沢の殿様が、死んだと聞かされていた白秋尼見て駆け寄る廊下、西教寺本堂・客殿間回廊。殿ごと斬れとの家老の命で始まるチャンバラ、西教寺本堂縁先。
*はじめ、御家騒動には関わりたくないと言う右近、「町場の揉め事がスキ」ってそれは…。付回す藩士の一人を捕え早桶に押し込め首に刃あて「平になるよ」は傑作。

キャスト/未来貴子、不破万作、下塚誠

第8話 賞金稼ぎの裏の顔

 賞金稼ぎで資金を作り小商いを始めようと夢見る若いカップル、悪党退治と称し彼らを追い使う町名主の正義づらの裏には、後ろ暗い連中から金を掠め取る悪党の顔が隠されていた。

ロケ地
・町名主別宅、中山邸通用門
・日本橋の呉服商・越前屋の手代と娘が追っ手から逃げる道、北野天満宮拝殿裏手広沢池東岸(舟着あしらい)
・賞金稼ぎのカップルが元の職人仲間がターゲットになっていることを話しあう、仁和寺五重塔

キャスト/石原良純、宗方勝己、若林志穂

第9話 命がけ!女金貸しの悲願

 厳しい取り立てで「鬼」呼ばわりされる金貸しのお駒、裏には亡夫の借金を返し娘を取り戻すという事情が。頭巾の侍に命を狙われるお駒、借金のカタに用心棒を引き受ける右近、取立てについてゆき脅す文句は「肩から上が平に」のいつものやつ。遂にお駒の娘を誘拐して命をとろうとする挙に出る金貸しを憎む元侍を、右近が豪快に斬って捨てる。

ロケ地
・お駒の身の上を聞きながら右近がゆく水辺、大覚寺放生池堤。お駒の回想、亡父の借金返済を迫られ娘と心中しかけた雨の夜の橋、中ノ島橋(金貸しの元締・天竺屋が現れる)
・元侍の易者がお駒の娘をさらい呼び出す妙林寺山門、南禅寺三門

キャスト/吉川十和子、中井啓輔、原口剛、下元年世、井上茂

第10話 乗っ取り

 作事奉行が悪企み、ほうぼうの店に自分の息のかかった者を入り込ませ証文を書き換えさせるなどして欠所に追い込み私腹を肥やす。右近夫婦と親しい材木問屋・大黒屋にも奉行の手先・清吉が入り込み堅物の主人を遊び呆けさせるは娘に手を出しかけるはで、元からいた番頭の伊之助は苦悩する。そのうち証文を書き換えられ町方に通報され大黒屋は捕縛、店は差押さえとなるが清吉をシメた右近が続いて奉行の駕籠を襲い、悪行を書状に認めさせて幕。

ロケ地
・作事奉行・佐久間伊織邸、相国寺林光院
・大黒屋の娘が幼い頃、縁日に連れて行った光景を回想の伊之助、大覚寺心経宝塔前に屋台セット。
・にせ物屋が語る大黒屋の芸者遊び、夜の広沢池上に船を仕立てて東岸から。
・清吉に呼び出される大黒屋の娘、五社明神塀越しに大沢池北西畔。
・大黒屋が捕縛されたあと伊之助に詫びを入れずっとお目付け役でいてくれと言う大黒屋の娘、大覚寺天神島
・清吉をシメる右近、粟生光明寺石段上部。奉行の駕籠がゆく、粟生光明寺紅葉道、林越し。薬井門をくぐったあたりで右近に棺桶ぶつけられ駕籠を止められる。

キャスト/小野進也、森下哲夫、西初恵、小船秋夫

第11話 連続殺人!殺し屋の罠

 お弦の留守中、世話になったからと三崎浪人の妻・菊が右近の世話を焼くが、スクエアさに「頭の芯まで凝る」有難迷惑の右近。この夫婦が名取屋のどら息子に借金を口実に無体を働かれ、妻は自刃、仇討ちに行った夫も護衛に来ていた殺し屋にやられてしまう。また、右近に気のある小間物売りのお鶴がどら息子に拉致されるに及び、乗り込んでお仕置。坊主になるか命日にするかと迫り髷をすっぱり。このあと出る殺し屋も冗談飛ばしながら片付け、最後に残った殺し屋「死神さん」とチャンバラ、死神さんの飛ばされた刀は戸の裏に隠れていた名取屋にどすっと刺さるというオチ。また、その刺さってるのをぐりぐりっと回すからなー杉サマ。

ロケ地
・名取屋の手先・東海屋が殺し屋を口笛で呼び寄せる林、鳥居本八幡宮広場。
・名取屋のどら息子が女を連れ込む寮、中山邸通用門。お仕置して出てきた右近と、女の殺し屋との殺陣は雨の参道の夜。
・三崎の死体が上がる川辺は罧原堤下桂川汀
・三崎夫婦の墓、鳥居本竹林か。
*東海屋が飼う「本来なら獄門磔」の凶悪犯を集めた殺し屋集団のヘッドに福本先生、なりは忍者ふう。笠をとり杉サマの軽口に乗せられにっこり笑う福本先生がたまらなく可愛い。殺陣もなかなか。クレジットにお名前あり、杉サマの劇中の呼びかけは「死神さん」。

キャスト/網浜直子、ひかる一平、中田博久、外山高士、福本清三

第12話 迷い姫、危機一髪!

 信州朝霧藩10万石の病がちの殿様には姫一人しか子がおらず、後嗣は姫の婿という話が進むなか、側室お玉の方(国元御前)と江戸家老が姫の双子の妹(不吉とされ里子に出されていた)を持ち出しすり替えの悪企み、あわせて殿の毒殺も目論む。右近は消されかかって屋敷を逃げ出した姫を拾い、事態を解決するほか姫の婿となる若様を引っ張り出して芝居を打ち、恋のお膳立てまでしてやる張り切りよう。万事めでたしの大団円のあと姫から右近夫婦に下された50両は、贋物屋やわんさと出た掛取りに毟られまくり。

ロケ地
・国元御前が姫を毒殺しようとする茶席、建仁寺久昌院座敷(侍女が毒茶を姫の手からさらってあおり悶死、直後家老は姫に斬りかかり)
・右近が家老に姫を連れてゆく場所を教える川端、広沢池東岸(お屋敷から連れ出し済みの若様が船着きで釣り)
・姫の危機を救う白馬の騎士を婿予定者・三笠の若様の左馬之助に演じさせる浅草寺の絵馬堂、北野天満宮地主神社。若様の「危なっかしい」殺陣は本殿裏手で。
・すりかわって藩邸にいる妹姫が墓参に出る寺、建仁寺三門前に駕籠とお供。
・三笠の若様の婿入り行列がやって来る道、建仁寺久昌院前路地

キャスト/北原佐和子、遠藤征慈、工藤明子、御木裕、黒田隆哉、小船秋夫

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