喧嘩屋右近 U

杉良太郎主演作品  1993TX/松竹  *お弦/萬田久子


第1話 女房も貸します、喧嘩屋稼業

 伊予多喜浜藩の隠居に仕事を頼まれる右近夫婦、お弦は嫁となる三河田原藩の冴姫に化け、右近は姫の側用人・茨木三左衛門なんて称し姫を害さんとする分家に対抗する。分家はかつてのお家騒動の際幕府が乗り出して本家から分けたもので、各家にはそれぞれカラーが割り振られ当主は各色の服を着ているという趣向(戦隊モノか)。またそれぞれに娘がいて藩主に添わせようと目論んでいる。お弦の化けた「姫」をそれぞれ見に来る分家当主たちと右近の会話、「姫」の年齢を揶揄され自身の髷にツッコミ入れられキレかける右近が傑作。最後は婚礼の席で姫を偽者と斬りかかる分家当主たちを右近がバッサリ、しかし事後贋物屋が申告する収支報告は五十両二分で二分の赤字。

ロケ地
・黒の二本柳家(本家)大覚寺大門、野点の庭には相国寺大光明寺の石庭を使用。
・麹町の青の二本柳家、門は撮影所セット、肥えた姫が鯉に餌をやる庭に梅宮大社神苑(池中亭からの画もあり)
・番町の緑の二本柳家、相国寺林光院。出戻り姫が小間物を見る座敷に建仁寺久昌院
・麻布の茶の二本柳家、相国寺大光明寺。お子様姫がお手玉の座敷は建仁寺久昌院か。亀が探りを入れる廊下は建仁寺方丈前縁。
・田原藩邸の庭に梅宮大社神苑汀(茶の殿様が身に来た際の「姫」として羽根つきのお弦)
・右近が贋物屋たちを使って捕われた芝居を打つ際の南町奉行所は大覚寺明智門。この際同心や捕り方をアルバイトに雇い多額の出費となる。門の使用料も贋物屋の持ってくる「せいきゅうしょ」に明記されているのが笑える。

キャスト/灰地順、早川雄三、幸田宗丸、赤塚真人、小船秋夫

第2話 仇討ち指南

 若い殿様の物好きで臣下に理不尽な仇討ちを強要するという、よくある馬鹿殿話かと思いきや、実は江戸家老が公金流用を隠蔽するためうるさい勘定方を始末する工作。しかも御前で行われる仇討ちの場で殿も始末の算段、仇討ち者たちが右近のもとに駆け込んだため、ワルの目論みはがらがらと崩れ去る。

ロケ地
・若侍の回想、父を斬った「仇」が家督を弟に譲り浪人して国を出てゆく道、下鴨神社紅葉橋
・加茂藩の若殿が野駆けしているところを右近にロープで吊るされる道、下鴨神社馬場
・加茂藩江戸屋敷、相国寺大光明寺。若殿が庭先で弓のお稽古は建仁寺方丈前庭
・右近夫婦が江戸家老とつるむ鳴海屋を助ける芝居を打つ夜道、上賀茂神社ならの小川畔。礼をすると鳴海屋が夫婦を誘う妾宅、中山邸(門)
・大川に浮かべた屋形船で鳴海屋の接待を受ける右近夫婦、大覚寺大沢池
・殿の御前での仇討ち、建仁寺方丈前庭。家老の腹心の指南役は勅使門で往生。指南役要請を断ったあと、お土産と棺桶に込めた鳴海屋を引き渡して去る右近、建仁寺三門
*右近が鳴海屋を脅しつけるのに貰った金包みを池にぼちゃんと放り「大川に蓋は無ぇんだ」と更にもう一包みぼちゃん、蓋が無いから重いものは音立てて沈むとやるくだりは傑作。でもあとで投網打ってサルベージにゆく夫婦、首尾よく引き上げるが船が追突されて再度ぼちゃん。

キャスト/赤塚真人、草川祐馬、原口剛、木村栄、中嶋俊一、芝本正

第3話 縁切り寺、決心の道中

 亭主と別れたいという女を鎌倉・東慶寺まで送ってゆくことになった右近夫婦、途中何度も執拗な襲撃を受ける。それもその筈、女の亭主は闇の殺し屋の一員、尼寺門前まで変装して追ってくるしつこさを見せる。女は道中イチャイチャし続けの右近夫婦が羨ましいと言い置き尼寺へ。

ロケ地
・鎌倉へ向かう街道での襲撃、北嵯峨農地陵前や竹林(鈴ヶ森、梟首台あしらい)、一部広沢池北岸か。渡し場、罧原堤下汀と川(船上でも襲撃)。鎌倉へ入る直前大挙して襲って来る殺し屋たち、保津峡落合・落下岩
・東慶寺、勝持寺(山門際に尼に化けた亭主が待ち構えていて、参道石段でチャンバラ)

キャスト/赤塚真人、河原崎建三、岡本舞、崎津隆介、甲斐道夫、柳原久仁夫

第4話 私を捜して!消えた娘

 右近のもとにもたらされた「私を捜して」の文は強欲な両替商の父を改心させようとする娘の芝居だった。これに博打で借金抱えた手代がからみ少しややこしい展開に。

ロケ地
・右近が佐野屋(両替商)を呼び出しお説教の墓地、二尊院(遠景に三帝陵の階)
・身代金をガメた手代が旅装で出てくる祠、北野天満宮・文子天満宮付近。手代が博徒たちに借金を渡す、仁和寺塀際。右近が博徒たちとチャンバラののち手代をシメる、九所明神

キャスト/赤塚真人、吉野真弓、原田清人、内田さゆり、山内としお、志乃原良子

第5話 影武者右近・吉原潜入!

 気の弱いカマっぽい作事奉行に頼まれ殿様の代わりに吉原へ馴染みになりにゆく右近、そこで応対に出た太夫に公金着服の疑いで自害した父の名誉回復を頼まれる。請け合い、殿様を丸め込み下僚らを糺させるがワルどもは遂に吉原へ乗り込み太夫と右近を始末しようとする。今回25両ゲットし贋物屋にはヘマの責任とらせ払いは無し、しかし吉原で大立ち回りの際の物損金をとられ(+)(−)ゼロ。

ロケ地
・作事奉行堀江主膳邸、随心院長屋門
・大工・長兵衛の娘が父の死後吉原へ身を沈める覚悟をした梅咲き乱れる神社、北野天満宮拝殿裏付近と地主神社

キャスト/赤塚真人、阿藤海、大沢逸美、早崎文司、伊藤高

第6話 人相書きの男

 深更、右近宅に転がり込んだ腹ぺこ男は名を浮世捨三郎と名乗る。三年前藩の御用で国元へ赴く道中襲われ記憶喪失となり、半月前突然記憶は蘇るが戻った江戸で見たものは自分の墓と他家へ嫁した婚約者だった。この経緯には捨三郎に激しい妬心を抱いていた同僚が関わっており、戻ってきた彼を密殺しようとする。右近はつるむワルをまとめて叩きのめし捨三郎は帰参叶いめでたし、しかしアテにしていた賞金が出ず〆はマイナス。

ロケ地
・上州篠山藩邸、相国寺大光明寺(門)
・収支報告のため国元へ赴く「新三郎」、上州への街道筋に嵐山自転車道。山道、保津峡落合落下岩。刺客が出る峡谷、落合河口
・猟師に助けられる十二ヶ岳山中の小屋、酵素河川敷にあしらい。
・新三郎の墓がある了源寺、粟生光明寺(山門・石段・墓地)。ラス立ちは石段上部で。

キャスト/赤塚真人、磯部勉、伊藤美由紀

第7話 偽医者騒動

 強力な眠り薬を開発した医者が盗賊にその薬を狙われ、右近に身代わりを依頼、右近は診療所で怪しげな治療を行う。一方、お弦は月影清之助なる病の浪人に引っ掛かり、薬を持ち出す。ココ、歯の浮くようなお世辞に舞い上がるのが傑作。また、贋物屋が妙な報告の仕方するから嫉妬に身を焼く右近。しかし月影の正体は「お役者小僧」なる盗賊のヘッド。騙された挙句薬の実験台にされるお弦、右近の怒り炸裂の剣が振り下ろされ盗っ人皆殺し。
礼金七両持って鰻を食いにゆく右近夫婦、しかしそこへ依頼人の医者が来て怪しげな治療がもとで苦情殺到と故障を申し立て金を取り返していってしまい、文無しに。
*ロケなしセット撮り

キャスト/赤塚真人、堀内正美、志織満助、柳原久仁夫、島崎路子

第8話 当たるも八卦、当たらぬも八卦

 右近のところへ岡っ引が持ち込んだ依頼は、材木商の伊勢屋が古参の鳴戸屋に嫌がらせを受けこのままでは、というもの。実権を握る鳴戸屋の隠居が占い好きと聞き「通天斎」と称し仕込みの芝居で接近する右近、しかし中に入ってみれば伊勢屋の言い分と違うことに気付き「乗り換える」ことに。また、なぜか鳴戸屋の娘は年の離れた伊勢屋に嫁ぐと言って聞かない。乗り換えの直後鳴戸屋手配の「始末屋」が襲ってくるのを受け贋物屋に伊勢屋再調査命じる右近。
伊勢屋へ嫁ぐというお冴の真意は仇討ち、会っていた浪人は幼少の頃生き別れた実兄と知れる。15年前勘定方下役だった父が伊勢屋の起こした日光東照宮改築の疑獄に絡み刺殺され、直後母も自死。始末屋に阻まれ伊勢屋に近づけない兄は、妹を使い伊勢屋の懐に入れようとしていたのだった。
右近の説得により妹を使うことを断念した兄は単身伊勢屋の駕籠に斬りこみ、始末屋の返り討ちに遭い膾となって果てる。この死をみたお冴は復讐を決意、伊勢屋との婚儀が整えられる。盃事のあと鳴戸屋の身代はワシのもの宣言のマイティー伊勢屋、しかしめでたい席に流れてくる右近の念仏、花嫁は泥棒長屋のオカマ・月之丞。この前に右近が始末屋を片付けてあったので伊勢屋はあっさり始末されてしまう。結ばれたお冴と義兄の正次郎で大団円、しかし岡っ引や贋物屋、月之丞らに礼金を毟られた夫婦は一文無しに。

ロケ地
・妹の真意を糺す兄・正次郎、上賀茂神社ならの小川神事橋下汀。
・お冴が実兄に会っていたことを右近夫婦に話す、大覚寺天神島
・岡っ引が右近にお冴の身の上を話しながらゆく大野家の墓がある寺、二尊院(紅葉の馬場〜墓地)
・大川に実兄の死体が上がる、罧原堤下汀。
・船に兄の亡骸を乗せ花で埋めて葬送の海辺、広沢池東岸
・お冴が回想の安房の海、間人海岸付近各所。
*本放送時(1993.11.26)はスペシャル。再放送時は前後編として扱われることが多い。

キャスト/赤塚真人、五十嵐いづみ、山下規介、矢木沢まり、中田浩二、竹内亨、鷲生功、中井啓輔、大竹修造、岩尾正隆、青木義朗

第9話 おれたちの右近先生

 塾の留守居を依頼される右近、ランニングをさせたり和尚の法話を聞かせたり自習をさせたりと珍妙な授業を繰り広げた挙句、生徒のエゴイスティックな態度に腹を立て全員放校だと喚く。
そんななか、留守を頼んだ清瀬宗平は塾へ戻る道で刺客に襲われ意識不明の重態に陥る。動揺する塾生らを抑える右近、そのうち塾生らは先生を襲った者を突き止める。見つかり追い回される生徒を助けたあと、右近はワルの岩木屋と清瀬が元いた信濃守山藩の勘定方が藩校建築で大儲け目論み高笑いの寮に乗り込み大暴れ。*論語に朱をびっしり入れたアンチョコを作成し授業に臨む右近、しかし途中から話は喧嘩のやり方になってしまうのが笑える。

ロケ地
・池で終日釣り(おかず調達)の右近夫婦、通りかかった贋物屋にこの池は浚えた後と聞きがっかり、大覚寺護摩堂前の汀。
・清和塾のある亀戸浄心寺、西明寺(山門、境内)
・清瀬が刺客に襲われる道、仁和寺観音堂前。
・刺客のあとを尾けた塾生が追われ潜む、仁和寺経蔵下。その後追われ囲まれるのは、大覚寺五社明神舞殿前。
・岩木屋の寮、中山邸門。

キャスト/赤塚真人、中丸忠雄、堀田真三、山田哲平、西山辰夫、徳田興人、溝田繁、小船秋夫

第10話 賞金受取り人

 右近に賞金首の男を捕まえてくれと沼田藩からの依頼が来る。男は詰腹切らされる場から刀を振るって逃げた凄腕の持ち主・内藤。賞金首ゆえ恩賞を狙った腕自慢が群がる。その一人に目を患った妻のため竹光をたばさみ参加の浪人・塚本。右近夫婦は頭から同情し何度も助けてやった末賞金を譲ってしまうのだった。

ロケ地
・鰻を獲るため贋物屋を潜らせる、大沢池(依頼者がやって来て命綱放ったらかし)
・依頼者の話(回想)、内藤が沼田藩士らを斬って逃走、大覚寺参道/有栖川の中(夜間・スモーク焚き/大沢池溢流大量に流下)
・賞金稼ぎたちの決闘、落合近くの清滝川河原。
・高井戸宿付近で贋物屋が内藤に捕まり身ぐるみ剥がされる、酵素ダート待避所。
・右近夫婦が四谷の大木戸手前で塚本と会う、酵素ダート崖上林間。
・塚本が腕利きの賞金稼ぎと対峙し危機一髪に駆けつける右近、大覚寺天神島
・内藤の潜む小屋、酵素河川敷に小屋セット。

キャスト/赤塚真人、岡まゆみ、五代高之、梅沢昇、関根大学、水上保弘

第11話 同心を殺した男

 江戸を荒らす盗賊「五本槍」、一人捕えるごとに一人北町同心が殺される理由は、清廉な士と見えた係りの同心・新堂が盗賊の金を掠めていた事実を隠蔽する工作だった。
献身的に新堂に尽くす妻は悪いことをしたなら報いは当然と言いながら、「同心の妻」という括りでしか行動できぬ我が身を嘆く。事情を飲み込んでいながら新堂を斬り捨てる右近、事後依頼者の奉行が高飛車に金を放り投げるなど後味のわるーいお話で、右近夫婦の雰囲気も沈みがち。

ロケ地
・船を出して釣りの右近夫婦、ガツンとぶつかってきた船の主・北町奉行が一方的に依頼内容をつらつら、広沢池東岸

キャスト/赤塚真人、誠直也、鈴鹿景子、松本朝生、岡村学、西園寺章雄、浜伸詞

第12話 名前のない依頼人

 屋台で蕎麦をひさぐ夫婦の娘・お初が殿様にみそめられお屋敷に。身分違いを案ずる蕎麦屋夫婦の心配は的中、大名家との縁組の話を聞かぬ殿に危機感抱いた家老に殿の留守中あからさまに密殺されてしまうお初。右近は屋敷に乗り込み、お初を下種呼ばわりする家老たちを叩っ斬る。事後、殿様が自ら蕎麦屋の住む長屋を訪れお初の位牌に手を合わせたことが語られるのが唯一のフォローの暗ぁい救いようのない話で、今回も沈む右近夫婦(+亀吉)

ロケ地
・藤林二万七千石江戸屋敷、相国寺林光院(門、玄関)
・蕎麦屋夫婦がお初の思い出を回想の氷川神社、わら天神(敷地神社)
・家老が殿に立花藩の姫との縁組を迫る藤林邸の庭、相国寺大光明寺石庭
・殿の留守にお初を連れ出し密殺の家老、相国寺林光院大光明寺南塀広沢池観音島〜船で池上(石抱かせてどぼん)〜死体が上がるのは東岸汀。設定は海ではなく池。
*タイトルは一人では気後れの亀吉が作った依頼状、お初に惚れてた亀ちゃん全編ぐすぐす泣き通し。

キャスト/赤塚真人、下川辰平、立原麻衣、矢木沢まり、黒部進、西岡慶子、春やす子

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