御家人斬九郎

第四シリーズ
おふくろ/流れついた男/大利根の月/恋文/罠には罠を/脱獄/武者修行/狙われた女/追われもの/佐次の純情


第1話 おふくろ 1999.1.13

 女に騙され、奉公先に凶盗を引き入れてしまう仙松、以後仲間に引き込まれ罪を重ねてゆく。逃げたくて母に出したSOSの文、はるばる京から駆けつけた母は約束の東八で待ち続けるが、息子は運拙く瞬時の邂逅のあと落命することになる。
 時が経ち、雷おこしは父となり娘にデレデレの日々、東八の親父は上州に隠居、店を引き継いだ佐次は戻ってきたりよと新生活。相も変らぬは斬九ばかり、しかし蔦吉との距離は幾分縮まったかのような、阿吽の呼吸。

 ロケ地、息子の文に東海道(ラストシーンのSEから海浜設定と思われる)を急ぐりく、山室堤道(堤外地へ降りる坂をうまく使用、堤上には高灯台をセット)。女をまいて東八の手前まで行く仙松、追いつかれ踵を返すが、りくが気づいて追う、しかし共にいる女を見て声をかけず灯明掲げたお堂に入る、神光院蓮月庵。盗賊一味の女を探して歩く斬九と八重、小休止の蔵は神光院本堂西の蔵。ここで女を見かける、中興堂前。

■希望の灯 りくが、息子の目印にと無理を言って灯させる東八の提灯、闇夜にぼうっと黄色く浮かぶ。わざとにじませたその灯、瀕死の仙松の目に霞んでゆき「東八だ」の言葉を残して事切れる。事後、りよ母子と佐次が忙しそうに立ち働く繁盛している現実の東八の提灯は、明るく光っているがにじんでいない、心利いた演出。
■佐次かわいすぎ りよの申し出を受け、相生町の親分「二人の面倒は俺が」「俺でよかったら」「俺が」の、可愛さブレイク。


第2話 流れついた男 1999.1.20

 蔦吉が拾い寺子屋に就職の世話もした記憶喪失の侍、子供に優しい柔和な川上春太郎(雷おこしの安易な命名)は、時おり狂気を孕んだ顔をのぞかせる。
一方、斬九郎が拾った老武士はなにやら訳ありげ、時が経つうち明らかになってゆく春太郎の素性、遂に爆発する狂気。最後は拾われた二人して黄泉路を辿る結末となる。

 ロケ地、冒頭、刺客に襲われる黒田源兵衛、保津峡落合落下岩(崖下の河口付近と岩壁見上げのショットも)。寺子屋の上善寺に神光院。寺子屋が開かれているのは中興堂山門ほか前庭に宝筐印塔本堂など各所を使用。大川の屋形船で営業の蔦吉が船で漂流の男を拾う、大覚寺大沢池・天神島前付近(夜景)。斬九郎が蝦蟇の油売りのバイトしていて暴れ馬出現、鳥居老人を拾うこととなる縁日、下鴨神社馬場。春太郎(源兵衛)の素性と罪状を斬九に告げる西尾、大覚寺大沢池北岸。真壁藩から放たれた刺客とやりあう春太郎、中ノ島橋上。皆殺しの返り討ちのあと血刀を洗うのは橋下、狂気に苛まれ刀を振り回すのは右岸側水路のなか。実父・鳥居の訪問を受け上善寺裏手で話す春太郎、仁和寺北塀内側の際(卒塔婆や五輪塔セット)。蔦吉が彼らのところへ近づく塀際は西塀(御室桜林の西・宸殿裏手)。仁和寺のシーンは神光院と交互に現れる。

■ウチノリヨ 鳥居老人が真壁から来たと聞き、佐次親分「うちのりよも」発言を冷やかされ「うちのりよでしょう!」と声を荒げる。可愛いの一語に尽きる。
■洗脳 事後、寺子屋の前に来た斬九と蔦ちゃんの耳に聞こえてくるのは、子らに忠孝の教えを説く麻佐女さまの声…「自分はメザシを齧っても親には鰻を」…斬九どひゃーで幕。


第3話 大利根の月 1999.1.27

 斬九版ウラ天保水滸伝。笹川の繁蔵の情婦を若村麻由美が演じるなど、お遊び要素たっぷりの一作。斬九はその情婦・お町の用心棒に雇われ下総へ。おきまりのメンバーが次々出てきて大出入りへと展開してゆく。で、乱戦に介入した斬九郎は繁蔵を斬ってしまうのだが…理由は、繁蔵が女の危機に目もくれず寂しく死なせたこと。平手造酒とのエピソードもたっぷり。

 ロケ地、お町と下利根へ向かう斬九郎、もう少しで利根の渡しの街道筋、山室堤道(堤外地へおりる分岐路)。弁当を使う河原は近くの桂川か(水流から右岸と推定)。飯岡の手下に突っかかられる山道、谷山林道分岐道。平手造酒の家、高台の簡素な山門を持つ寺、不明。飯岡屋敷外をゆく平手造酒と斬九郎、古びたラウンド土塀長屋門。飯岡屋敷からお町を連れ出し、繁蔵のいる山へ向かう斬九郎、手下に誰何される崖道、保津峡落合崖上。平手を送って行った帰り飯岡の手下から「仕込み」を聞く佐次、萱葺き民家の村、美山町か。出入りの宿場はみろくの里

■剣はお玉ヶ池 平手造酒に近藤正臣、胸を病んだ剣客を好演。飯岡屋敷へ忍び込んで佐次に黒招き猫で頭をどやされたり、斬九に「斬られた」際もアレ死んでないなどと飄化た態度がマル。おふくとのからみも良し。
■わかむらまゆみ 二役の若村氏、道中はしおらしそう、繁蔵のもとに着いてからの豹変が見せる。蔦吉に戻って斬九の憎まれ口聞く拗ねた顔もイイ。巧いなー。


第4話 恋文 1999.2.3

 大黒屋へ来た嫁御寮は、斬九郎の初恋の人に酷似。少年の日の甘い思い出にデレデレ斬九にムカっときた蔦ちゃんの「観察」は、女の素性を暴くことになる。
そして大黒屋への企みは潰え、町方により盗賊輩は捕縛されるが、斬九郎が事後隠密回りから知らされたのは、「初恋の人」の三年前の死亡だった。

 ロケ地、佐次が番所へ出向き「初恋の人」の婚家の聞き込み、金戒光明寺長安院下坂を見る位置に路地を隔てて番屋をセット。大黒屋の先代の法要、刺客の出る墓地、二尊院墓地。斬九郎に逃がして貰ったお玉が乗る渡し舟、保津峡(嵐峡近く)。舟久前の船着きに佇み操どのは易々と死なないなどと言い蔦吉に剣突を食らう斬九、広沢池東岸(見返りは舟久のセット)

■追憶に胸キュンでメロメロ 大黒屋でお玉と将棋を指す斬九、蔦ちゃんに「操どの」の話を持ち出され「なんで喋るんだよぅ」と喚いて盤をぐちゃぐちゃに…コドモか。麻佐女さまに操かどうか見に行かせ、結果聞いて塀際でへたり込む/お玉を逃がしてやる際生硬な態度で「逃げてください」ののち、別れを惜しみ伸ばした手をするりとかわされトホホ…この、なっさけない表情が巧い。
■ジェラシー お玉が田舎者じゃないと見抜く蔦吉、佐次に探索を示唆の際「お玉なんて、名前からして化け猫みたいじゃない?」。将棋に口出す姿も可愛い。


第5話 罠には罠を 1999.2.10

 かたてわざで預かった備前長船の名刀をコソ泥にやられるお間抜け斬九、白魚の吉次に力を借りることになるが、彼は賭場で捕まり牢の中。しかも刀は高家の若君の元服に贈られる代物、二日と時間を切られるなか、どたばたと話が展開し、依頼者切腹寸前で長船は戻る。

 ロケ地、西尾や吉次と相談の堀端は八幡掘。刀を入手し叔父の失脚を狙う旗本の若様をおびき出し長持の鍵を掏ったり、刀持って走ったり、どら息子の若様で長船の試し斬りしたりする路地には妙心寺を使用(大庫裏裏クランク・衛梅院前・玉鳳院前・涅槃堂前・福寿院道)

■印籠掏摸スリ 岡江清十郎の腰から印籠を掏る吉次の手並み鮮やか、も一遍戻させるのも面白い。バレた際の蔦ちゃんの、すっ惚けた表情で「何か?」の場面も良し。これに都知事の息子のギョロ目がよくマッチ。


第6話 脱獄 1999.2.17

 朝右衛門急病で斬九郎にお鉢が回ってきた首切り役、しかし当の罪人は恋しい女に一目会いたくて脱獄、逃亡。舟久に入り込み蔦ちゃんまで人質にとられたり。
同じワルなのに片や死罪、片や出世の運命、男の恋人を無理矢理妾にし、しかも保身のため男も妾も斬って捨てる悪党与力は、上弦の月のもと、斬九に送られることになる。…首切り代はどうした。

 ロケ地、雨の夜脱獄の岩蔵、有栖川河床。お浜宅へ来た編笠の武士を尾ける斬九、舟がゆくのは大覚寺天神島裏手。悪辣与力・山神がお浜を隠してある出合茶屋、望雲亭(主屋、門)。蔦吉を人質に舟でゆく岩蔵が上陸の向島、広沢池と思われるが暗くて確信なし。

■麻佐女さまは蜘蛛がお嫌い すーっと天井から下がってきた大蜘蛛にきゃあきゃあ、薙刀騒ぎ。仕事もなくブラブラ斬九に「探しなさい。ドブさらいでも人さらいでも」、首切り代返戻求めた斬九に「お金って何だったかしら」、富籤の当選金半分を要求する下女に「そのようなこと申したかのぅ〜」とコミカルな芝居で、救いようのない暗い話を彩る。


第7話 武者修行 1999.2.24

 珍しく朝から素振り、酒飲んでないので朝餉もきちんと頂き、あまつさえ自ら母に金を差し出す斬九郎、怪しむ周囲。やっていたのは道場破り、いい気になってる彼に蔦吉はそのうち痛い目見るよと言うが、その通りにドツボはまり。果し合いの助っ人つとめた斬九、見事に騙され罪を着せられ入牢する羽目に。
雷おこしに牢から出してもらった斬九郎、まっすぐ相手に向かってゆき、しかし髻を切るにとどめる。釣り餌の女が実は人妻というしまらないオチもついていて、情けないことこの上ないのであった。

 ロケ地、浮かれ斬九が素振りの真似して女たちに忌避される橋、中ノ島橋。藤井と果し合いは大覚寺天神島

■こぉんな声で 冒頭、張り切り斬九の所作は声からして「芝居がかっていて」傑作。


第8話 狙われた女 1999.3.3

 親の事情で泣く泣く嫁いだ女だが、人格者の夫に心酔し幸福な日々。しかし「前の男」は彼女を思い続け、しかも禄を失い無頼に身を投じていた。男は女の息子を誘拐、斬九にかたてわざが舞い込んで来る。

 ロケ地、宗隆寺の実家の墓に参る美津、西教寺墓地。田所采女を呼び出し事情を話す斬九郎、広沢池西岸(水無)。美津が土岐仙之助と会う(婚前の密会も同所)竹林、わらびの里か。仙之助たちのアジト、酵素民家セット。人質交換のかけすの森、下鴨神社糺の森池跡

■田所の息子誘拐事件でのかたてわざを持ち込むのはるい殿。不首尾にはいつものように嫌味をがみがみやるが、斬九の話に耳を傾けるなどどこか親しげ。


第9話 追われもの 1999.3.10

 斬九版幕末秘史、「大塩平八郎は生きていた?」の巻。
凶作続きで米が不足しているところへ、富商たちの物流操作で庶民は米も食えず難渋。貧乏御家人宅も例に漏れず飯櫃は空っぽ、蕎麦を啜る日々。
そして、舟久で会った新顔の芸者とコンタクトをとる訳ありげな武士。大坂東町奉行所から来た同心たちが追うその男、大塩平八郎(中村敦夫)。大坂での戦の話を聞かされ民富論ぶたれても、ハァ?な斬九郎がおかしい。そして斬九は、追い詰められた大塩が斃死する場に立ち会うのだった。

 ロケ地、息子の金をくすねた麻佐女さまが鰻重を食らう「江戸前大蒲焼」の料理屋、大覚寺望雲亭(門と座敷、座敷からは大沢池心経宝塔が見えている)。鰻屋からの帰途、麻佐女さまが雲助に絡まれるのを助ける「大塩」、相国寺大光明寺南塀通用門前。麻佐女を送り届けてくれた「大塩」を追いかける斬九郎、南塀を墓地門越しのアングル。夜、おしのを襲い止めに入った蘭方医を刺し殺す富商・鴻池のボン、上賀茂神社ならの小川畔。大塩の最後の地となる街道筋の河原、木津河原と思われるが確信なし。

■妖怪オコメノゴハンガタベターイ 蕎麦三昧の日々に飽いた麻佐女さまの言。照明下から当たってて不気味、「鰻丼天丼お寿司松茸御飯に栗御飯鯛茶漬け、おーい」と呼ばわりつつ部屋を後にする…哀れっぽい表情で母を見送る斬九の表情がおかしい。


第10話 佐次の純情 1999.3.17

 あちこちで甲斐性なしのレッテル張られ放浪の斬九郎、いま佐次が担当している商家の用心棒に。相次ぐ投げ文に悩まされるその家の後妻、店を畳んで勘当息子にもちゃんと分け前をと見えたはとんだお芝居、芸者上がりの金に汚い毒婦は息子を殺め情夫と逐電、この際張り込み中の佐次が深手を負う。
 今回、各方面から佐次とりよについて突っ込みが入るが、控えめで純な親分は「このまま」母子の面倒を見続ける自分を選択する。

 ロケ地、佐次宅へ居候し損ねた斬九が西尾と茶店で話す、今宮神社門前茶屋・一和


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