必殺仕置人

1973ABC/松竹

キャスト
念仏の鉄/山崎努 棺桶の錠/沖雅也
鉄砲玉のおきん/野川由美子 おひろめの半次/津坂匡章 おしま/三島ゆり子
天神の小六/高松英郎 中村主水/藤田まこと


第1話「いのちを売ってさらし首」1973.4.21

 御側衆のポストを狙う北町奉行と凶盗・闇の御前が裏で結び、江戸に出てきたばかりの食い詰め百姓を斬首の身代わりに仕立ててのうのうとのさばるのに義憤と欲とで仕置チームが形成されてゆく。

ロケ地
・身代わりに処刑された男の娘を助ける錠、西教寺かくろ谷か。
・浜田屋の寮、中山邸(門)
・的場と浜田屋を始末する水辺、広沢池か大沢池と思われるが暗くて判別し難し。
・菅貫が晒されているのを広めて歩くおきんと半次、嵐山自転車道?


第2話「牢屋でのこす血のねがい」1973.4.28

 豆を買占め値を吊り上げる雑穀問屋の元締・山城屋。反対した泉屋は濡れ衣を着せられ欠所のうえ自死、一家離散。京へ養女に出ていたおしんが簪一本で父を追い込んだ連中を始末にかかるが山城屋への復讐は果たせず刑死、しかしその遺志は仕置人たちによって果たされる。

ロケ地
・雑穀商・近江屋の死体が見つかる水辺、鉄と主水が死体に付着した女の髪について話す、大覚寺大沢池畔・護摩堂前。
・山城屋の警護のバイトを放り出して女としけこんだ鉄が帰途錠や半次とツナギをとるのは大覚寺天神島
・大山まいりの山城屋が立ち寄る弘法霊泉(鶴巻温泉?)保津峡落合、落合橋下の旅館も。
・仕置の場となる桜並木、嵐山公園中州
・ラスト、処刑場の山城屋の血の跡を眺めるチーム、罧原堤か。


第3話「はみだし者に情なし」1973.5.5

 変態爺の紀州藩江戸家老に獲物の女を貢いでいたのは蝋燭問屋の三国屋、八丁堀や岡っ引もグル、泣かされる女あとを絶たず。仕置の話が来るが当初主水抜きで行われ、目撃情報から鉄と錠はいっとき牢に放り込まれ拷問されたりする。
チーム始動、変態さんの座敷に乱入し拉致、新たな依頼者となった乞食の亀に報復させてやったあと三人を裸に剥き裸踊りをさせ辱め、水に落とすシーンで幕。

ロケ地
・変態家老の待つ向島の三国屋の寮へ送り込まれる「人形」乗せた大八がゆく、大沢池堤
・三人が裸踊りさせられる橋、中ノ島橋。半次が煽って追い立て、中州からドボン。
*主水が二人を召し捕るシーン、盲いてなお乞食を続ける亀に仕置料から小判を投げてやる錠のシーンが印象的。


第4話「人間のクズやお払い」1973.5.12

 天神の小六に取って代わろうとする狂暴な若者・聖天の政五郎、苛烈な同業者殺害を繰り返す。政五郎を始末する相談をしていた顔役たちも奸計に陥ち血祭りに。このときたまたま来合わせた幼児まで惨殺する悪辣ぶり。
その政五郎が勢力を伸ばすのに関わった弥七はあまりのやり口に脱けようとしたが、手裏剣を投げる右腕を落とされてしまった経緯を語り仕置人たちを止める。しかし殺された幼児が馴染みの女郎・お仲の息子だったことから政五郎のもとに赴き母親への弔慰金を要求する弥七。サシで対決も敵わず返り討ちに。
弥七の入った棺桶を前に始動する仕置チーム。依頼人はお仲。重い腰を上げた小六が翌朝動くのをわかっていて敢えて仕掛ける。主水がセコ役人を装い誘き出した先で政五郎は鉄に肩を破壊され、これを見た子分どもは途端に政五郎を叩きにかかる。つい今まで手下だったチンピラに刺される政五郎、手下は主水と錠が始末。翌朝、小六が手勢を率いて来るのから逃げ隠れる仕置チームで幕。

ロケ地
・政五郎について相談をぶつ主水以外のチーム、永観堂墓地か。
・弥七が政五郎に返り討ちに遭う、下鴨神社糺の森
・小六と手勢が渡る橋、中ノ島橋。橋下にチームが潜む。


第5話「仏の首にナワかけろ」1973.5.19

 鉄の流人仲間で落盤事故の際命を助けてくれた焼き芋屋の安蔵は奇妙な性癖を持っていた。そもそも佐渡へ送られた際の罪状は、通りかかった娘の簪が無性に欲しくなり奪ったことによるもの。大屋の娘を狙った安蔵は次々とその両親を殺害し婿におさまるが、姑息な隠蔽工作も働いており、しまいに地回りと鉄らをぶつけるよう仕組んでゆく。
不審を抱いた主水の調べや錠の目撃から真相が知れ、仕置料が置かれる段となる。首吊り縄のロシアンルーレットで安蔵を仕置したあと、武装してダンビラ振り回し襲ってくる地回りを鉄は一人で畳んでしまう。安蔵の死に顔を眺めやる鉄の複雑な表情。

ロケ地
・冒頭縁日で無断で商売して追われる錠と半次たち、今宮神社境内。
・行方知れずの大屋を探す娘と安蔵、大沢池北西畔
・ラストの首吊り縄および黒達磨との乱戦はいずこかの砕石場か。


第6話「塀に書かれた恨みの文字」1973.5.26

 辻斬りが趣味の馬鹿殿・守山藩の松平忠則。田舎から出て来たお嶋の父と妹も被害に遭う。お嶋は年季を伸ばし金を作り「依頼」。
鉄たちは辻斬りの正体は守山藩の者と書いた瓦版を作り町中に貼る・投げ込んで歩く・売り歩くと派手に動く。これは幕閣の耳にも入り、窮した守山藩の馬鹿殿は家来を自訴して出させる。牢内では小六がその侍にスケープゴートに仕立てられたことを告げさんざん脅しつけて真相を聞きだす。馬鹿殿の立ち回り先も聞きこみ、吉原へ現れたところをとっ捕まえ牢に放り込みさんざんに嬲る。その後大童となり邸に辿りつく馬鹿殿の目の前で門が閉められ、家老は後嗣を決め病死扱いとなったことを告げる。殿について辻斬りの三人は切腹仰せつかるが、これを許さぬ鉄と錠は邸に乗り込み仕置。

ロケ地
・お嶋の父と妹が斬られる、下鴨神社河合社前。
・守山藩上屋敷、随心院薬井門


第7話「閉じたまなこに深い渕」1973.6.2

 清原検校に母と兄の仇と斬りかかる娘、果たせず捕縛され何故か検校自身に裁きが任される。娘は盲目の兄に検校の位を頂くべく道中をゆく途次、下男に崖から突き落とされ母と兄は殺された経緯を持つ。その下男に清原検校は酷似、しかし盲人なことから人違いと思い込む娘、真相は鯉の鱗を嵌めて偽っていた清原検校=下男で、娘から託された金は仕置料となる。

 ロケ地、宇津ノ谷峠で下男に襲われるお糸たち、落合トンネル〜落合付近の崖。清原検校邸、相国寺大光明寺。ラスト、おきんが釣りの主水に投げて寄越す仕置料、中ノ島橋(おきんは橋上、主水右岸河川敷)


第8話「力をかわす露の草」1973.6.5

 将軍ご寵愛の姉の権威を盾に横暴の限りを尽くす内藤安房守の奥方。狆を溺愛し水を掛けたなどと腰元を虐待し不具者にする所業はプチ綱吉くん。傍には大男のボディガードがついていて、狆を逃がした腰元を探してかんのん長屋に乗り込んできた際には錠もボコボコにされ、あろうことか短筒で奥方に撃たれるという始末。腰元を庇った鉄などはギタギタにやられたうえ監禁されてしまう。娘を無茶苦茶にされた商人が百両の仕置料を積みチーム始動、大男は鉄と錠が二人がかりでようやく仕留める。主水は二人を藩邸から逃がす役を負う。

ロケ地
・狆探しサボリの主水が鉄に声を掛けられる、今宮神社境内。
・奥方が姉のもとへ行く行列を尾ける半次とおきん、相国寺路地鐘楼。半次が立小便のお稲荷さんは宗旦稲荷。大男に見つかった二人がボコられる、方丈塀際。
・若年寄・内藤安房守邸、大覚寺大門
・ラスト仕置人たちがゆく塀、京都御所管理事務所北塀。


第9話「利用する奴される奴」1973.6.16

 鉄が入れあげた花魁は凄腕のジゴロに食い物にされていた。津川雅彦演じるこの色悪が出色の出来。女をコマす際も始末する際も表情や仕草が秀逸。手口も冷酷そのもの。
半次の調査で十数人の女を抱えていることが判明、鉄の惚れた女・お順に事を告げに行く半公とおきん。ジゴロ・清造の正体を見たお順は鉄に仕置を依頼、しかし恋情止み難く「殺し屋が来る」と知らせに走り清造に空井戸に放り込まれてしまう。鉄らの来襲には人数を伏せる清造だが、狂暴な仕置人二人には通用せず××潰しかけられ「あんにゃー」と色気の無い絶叫を残し始末される。事後井戸でお順を発見する鉄、しかし女は「やっぱり来てくれた清さん」と呟き事切れる。

ロケ地
・お順を埋葬するくだりの品川宿付近の道と竹林、北嵯峨農地か。


第10話「ぬの地ぬす人ぬれば色」1973.6.23

 将軍の側室・お美代の方が外出先で目にとまった友禅を無理矢理買い上げ。それは娘の婚礼衣装と取り縋った父も、あろうことか傍にいた婚約者も斬殺されてしまう。残された娘・お雪は不憫と言い立て大奥へ召抱えるとの話をたつきの道無き故に受けるが、父の死の因となった布地を雑巾に仕立てろと命令される。また、上様のお声がかかったお雪に激怒したお美代の方はお雪を父殺しの伊賀者に下げ渡そうとする。その夜自ら縊れて死ぬお雪、おきんに託されていた金が仕置料となる。付女中として入り込んでいたおきんはお美代の方の髪をばっさばさに刈り取るという荒技を見せる。仕置は宿下がりの寺で。豪快。

ロケ地
・友禅流しの川、桂川か。
・江戸城、彦根城。宿下がりの根津仏性寺、妙顕寺。渡廊越しに方丈を望むアングルほかが使われ、寿福院塔が映り込む。本堂廊下では錠の派手な三角飛び、主水の殺陣は亀腹越しで摂社前。


第11話「流刑のかげに仕掛あり」1973.6.30

 奉行の信頼厚く同心たちより幅を利かせる岡っ引・鬼岩、殺人事件をごまかし別人を処刑させ金を毟る等の悪行を働く。この鬼岩が「仕置人」に目をつけ大騒動に。お島が捕まりおきんも責め問いされるなか、ぎりぎりのタイミングで鬼岩をハメて湯屋で仕置する鉄と錠。二人がかりでも反撃されまくりの今井健二の悪役は一味違う。湯屋を囲んでいた捕り方は主水が裏で手を回し散らす。タイトルは真犯人がこっそり流罪になった結末から。
*セット撮り。


第12話「女ひとりの地獄旅」1973.7.7

 大陸から日本に流れ着いた李一族は畠山藩に優遇され焼き物を生業としていたが、藩主が老中候補になったことから鎖国令違反の一族の存在がヤバくなり皆殺しに遭う。ただ一人禍を逃れた娘は江戸に出て夜鷹となり半次がこれに岡惚れ。そのうち畠山藩の者に見つかり娘・李麗花は追われることに。事情を知った仕置人たちは麗花の所持していた竜造寺焼の香炉を売り仕置料とする。仕置の手立ては隣藩と仲が悪いことを利用し主水が煽り立ててお国入りの際騒動を起こしそこを狙うというもの。情勢を察知し間道を少数の供とゆく畠山弾正を遠征した鉄たちが仕置。麗花に仇をとらせてやるが生き残りの家臣の刃を背に受け彼女は落命。

ロケ地
・李一族の村、酵素
・畠山藩邸、大覚寺明智門
・李一族が難破し流れ着く畠山領の海浜、琵琶湖(巌の形状、海津大崎か長命寺山あたりか)
・早馬が行く街道、主水の仕事だという鉄、北嵯峨農地か。
・松平領を通る畠山弾正の駕籠(中はカラ)が松平の刺客団に襲撃される道、酵素。間道で鉄らに襲われた弾正が一人逃げ込み仕置される野原も酵素。麗花の荼毘も同じ。今回酵素が三つの設定で出てくるが微妙にアングル等を変えてある。


第13話「悪いやつほどよく見える」1973.7.14

 家老の娘をさらって油屋に立てこもる岩木藩の下士、主水が救出を命ぜられたことから「仕事」に入るチームだが話を聞いて若侍にシンパシー持ち家老のほうを仕置に方針変更。調べに入った藩邸では飢饉に苦しみ訴えに来た名主たちの斬殺死体が発見される。半ば笑いながら家老を仕置する鉄、力余って文机もぐしゃって潰す凶悪さ。家老の死を聞かされた立てこもり侍は我が事成れりと自死を選ぶ。

ロケ地
・家老の娘をさらう現場、粟生光明寺石段。
・岩木藩邸、大覚寺大門。出陣シーンでは錠が東から、主水と鉄は西から歩いてきて大門前に集結、という画。大門と明智門が同時に映る珍しい例。


第14話「賭けた命のかわら版」1973.7.21

 霊岸島の工事落札を狙う鳴海屋、ライバルを抜け荷偽装でハメる・担当の役人を美人局で抱きこむなどの巨悪から、町場での乗っ取り買占め金品取立て手籠めなどセコい悪事も山ほどしてのけるワル。これを執拗に追う瓦版屋のすっぱ抜きの留だが鳴海屋の雇った揉み消し屋に女房を殺された挙句自身も手にかかり果てる。鉄らは留造がかましたハッタリの暴露瓦版の原版を餌に鳴海屋から百両を強奪、仕置料とする。
*仕置現場となる吉原の座敷、鳴海屋たちが食べ散らかした鯛を勿体無いとむしゃむしゃ食らう鉄が傑作。また、鉄が揉み消し屋を仕置する手法はハンギングと凝っている。

ロケ地
・賄賂を受け付けない船津をハメる美人局の屋敷、中山邸通用門。
・留造の隠れていた小屋、広沢池東岸
・鉄が原版をネタに鳴海屋を強請る屋形船、嵐山公園中州側の桂川


第15話「夜がキバむく一つ宿」1973.7.28

 甲州屋の借金踏み倒し挙句娘を死に追いやった信州の藩の勘定方と江戸勤番を仕置する鉄と錠、江戸へ帰る途中豪雨に遭い山中の小屋に足止め。そこには雲水や職人などの先客、そのうち新顔も入ってくる。止まぬ雨の中、降り込められた密室じみたあばら家で次々と殺されてゆく人々。鉄らを追うかと思えば藩の隠し田に関する密書の争奪戦。孫の命名を楽しみにしていた無関係の職人が殺されるに及び鉄らは反撃に出る。しかし錠は争いの中で過って女を刺すハメに陥り慟哭。
朝、一転からりと晴れ鉄と錠は悪夢のような小屋を後にする。

ロケ地
・冒頭止め絵で語られる甲州屋の娘の自死、大沢池畔


第16話「大悪党のニセ涙」1973.8.4

 祭りの踊りの輪のなかで殺された三国屋。状況証拠から捕まった仙八は無実を主張、どうしても出牢し病の母に一目と訴えるのにほだされた牢名主の天神の小六は、風の強い夜赤猫招きの仕掛けで牢に火を誘い緊急解き放ちにさせる。
しかし仙八は真犯人のうえ奪った金が気になって確認したいがための涙芝居、隠し金を掠めた弟分に無体を働き老母も殴打する始末。顔を潰されたと激怒の小六(自尊心が強いって自分で言う)は鉄に大金を渡し仕置を依頼、囚人集合場所の回向院内陣で点呼の最中骨外し。

ロケ地
・仙八が金を隠していた光明寺、招善寺墓地参道。
・集合場所の回向院、粟生光明寺(薬井門、石段、本堂)
*赤猫騒ぎの牢、女郎屋や酒屋に殺到する囚人たち、回向院に集まる囚人たちの躍動感溢れる描写が秀逸、さすが工藤栄一。


第17話「恋情すてて死の願い」1973.8.11

 失火の罪問われ火焙りに処される油問屋・但馬屋。しかしその裏には同業のワルのギルド、失火ではなく付け火。残された二人の姉妹はワルが持つ付け火の証拠となる念書を求め奔走、書付を盗りに入ったりする。しかし姉妹に情報提供していた元手代が実は一味とグルで、まず妹が落命、次いで姉も証拠書類を持って訴え出たところで奉行所内部にいた一味の与力の罠にはまり処刑されてしまう。
彼女達に深く関わり念書奪還までしてやった錠の家に残された感謝の手紙に酒でも呑んでくれと添えられた金が仕置料となる。

ロケ地
・妹の死体が捨てられる、中ノ島橋下手川中。
・北町奉行所、京都御所管理事務所北門(錠が座っているのは前の溝のなか、遠景は宗像神社西塀)
・与力・永尾の仕置は中ノ島橋(橋上、橋下河川敷)
*仕置の際誰何された鉄が「いま巷で評判の仕置人だ」とやるのがご愛嬌。深く関わった錠の怒りは元手代を念入りに刺し、障子にびしゃっと飛び散る血しぶきで表現されている。


第18話「備えはできたいざ仕置」1973.8.18

 若い娘を騙して連れ込み鬼面つけていたぶる三河以来の旗本・加納十兵衛。或る日連れ込まれ弄ばれた挙句発狂するおさと、婚約者の大工は犯人を突き止めようとして返り討ちに。瀕死の彼はおさとのもとに辿りつき突き止めた相手の名を告げ落命するが、その名・橘屋が狂女の記憶を戻し、膝元で死んでいる恋人を認識させる哀れな結果となる。
結婚資金を託すおさと、仕置料となる。強敵と言う主水に鉄は手の込んだ仕掛けを提示。鉄は夜に加納の寝所に忍び、おさとが孕んでその子が殺しに来る・見捨てられて病死扱いの詰腹などと不吉な暗示をかける。昼間には狂態を装ったおきんがまとわりつき、心理的に追い込まれた加納は妻を斬殺し狂乱状態で失踪。奉行所には内々に見つけて処分の沙汰が下り、出動した主水が矢継ぎ早に投げられる小柄をかわし抜き胴一発で仕留める。加納に加担していた富商は鉄と錠に乗り込まれる。
*凝ったシーンの多い見応えのある一作。長屋でハンモックで寝ていたり、おさとを探す佐吉のもとへ行者姿で現れ小銭を掠めるなど鉄のパフォーマンスが笑える。加納追い込みに狂女装うおきんに加え半次までヘンな格好で「十兵衛〜」と迫るのが傑作。

ロケ地
・狂ったおさとを療養させる佐吉、西寿寺(本堂、鐘楼)
・橘屋の桧町別邸、中山邸(門、参道)
・加納十兵衛邸、相国寺大光明寺。狂乱のおきんは方丈西塀の松に出る。
・失踪した加納を殺る主水、鳥居本八幡宮(鳥居下、竹林)


第19話「罪も憎んで人憎む」1973.8.25

 大飢饉、飢える民衆。街には死者溢れかえる。当然の如く暴動起こり、鉄らも打ち毀しに加わり米を奪う。その米で握り飯パーティ中、無宿人狩りの手が入り男たちは連れ去られる。老中・秋山但馬守と金座・後藤が組んでの小判改鋳に必要な金を佐渡で掘らせるための強引な人足集めであった。囚人の中に黙し語らぬ青年あり、これがなんと後藤の息子・精一郎。父の非道に耐えかね政治結社・水明社に身を投じていたのだった。
鉄と錠を逃がす算段を講じるうち佐渡送りは早められ、夜中唐丸駕籠の列がゆく。主水は全てを賭して仲間を救う覚悟を定めるが、駕籠に老中に対抗する勢力の斬り込み、精一郎を奪ってゆく。どさくさに鉄と錠の駕籠の戒めはずし逃がす主水、精一郎を追うよう示唆。
救出された精一郎は水明社の面々に星野淡路守を老中に据え精一郎に金座を継がせるつもりであることを聞かされ、理想とのギャップを知る。そして直後、父も同意の上の老中の刺客が襲いかかり精一郎は重傷を負う。苦しい息の下彼が告白したのは小判の混ぜ物で利ざやを稼ぎボロ儲けの金座のやり口であった。
老中と後藤を消さねば自分が危ないと起つ鉄と錠、精一郎の言い残した小判師の監禁場所へ潜入、まさに小判師を始末しようとしていた老中たちを仕置。
*嬉々として打ち毀しに参加し、とても持てぬ量の米をかっさらおうとする鉄の姿が傑作。また、老中を仕置に赴く際叫ぶ「絶対佐渡へは行かねぇぞ」の言の激しさ、帰りに小判ぼろぼろ落としながら逃げてゆく鉄の姿は感動的。また、仲間の危機に際し瞬時に命を投げ出す決意を固める主水の珍しい姿が拝める。*権高く不浄役人の主水に接するとても偉そうな老中・秋山に伊丹十三、一癖ありそうなワルが絶品。

ロケ地
・おきんが後藤の小判師が獄門になった話を主水に告げる、大沢池木戸前。
・北町奉行所、大覚寺大門
・刺客にやられた精一郎を担いで逃げる鉄と錠、御殿川落ち口付近。
・金座、大覚寺明智門


第20話「狙う女を暗が裂く」1973.9.1

 かんのん長屋に逃げ込んできた殺人鬼・鬼寅、おきんの部屋へ入り込み血包丁を突きつけ脅す。手当てなどするうち同郷であることが知れ急速に心通わせる二人、しまいに鉄と錠も事の訳を聞くことに。
一年前、座敷料理に呼ばれた彼は席にいた芸者・蝶丸に岡惚れ、入れあげた挙句身請けを理由にあっさりと別れを申し渡され逆上、店の若いのにヤキ入れられるも恋情已み難く上方へ出て五百両の算段つけて江戸に帰還。しかし芸者に聞かされたのは、堅物の彼を蝶丸が籠絡できるかという酒席の見世物の座興だったという真実だった。
捕り方の手回り、寅吉は逃がす手段を考えている鉄を尻目に、おきんが止めるのも聞かず町方の人数に身を投じ斬殺される。おきんに遺した「今度生まれてくるときはあんたのような」の言葉が哀切。その場から寅吉が殺し残した一人に向かう鉄と錠。誰何された鉄は「鬼寅だ」と言い放つ。
*鬼寅が立てこもるおきんの部屋でほぼ全てが進行する趣向。さしたる悪事を働いていない富商たちが仕置される伏線に、寅吉のことを全く覚えておらず犯行動機も判らないというくだりが描かれる。社会の最底辺で生きる鉄らにとってまごころを踏み躙ることは殺しと同様の悪事という解釈か。


第21話「生木を裂かれ生地獄」1973.9.8

 か弱き民の地所を取り上げる富商・札差の備中屋は勘定吟味役の平田と組み、佐渡の金の横流しを画策。彼らに踏み躙られた民の怨嗟を晴らしに佐渡まで赴き仕置の主水たち。備中屋は殺さず、水替え人足のなかに放り込むという処置がこの作らしいやり口。
仕置場所は坑道のなか。凝ったアングルで一人一人消してゆく仕置人たちの姿が描かれる。
主水が地所奪われ恋人を拉致された娘の訴えを聞かず死なせてしまううえ、錠の家でその棺桶の上に座り軽口を叩く場面と、人足に落とされた備中屋にかける台詞は対を成すように感じられる。また、今回佐渡と聞き激しい拒否反応を示す鉄が語る佐渡の生地獄のくだりも見せる。
*備中屋の用心棒の前で蝿を楊枝で仕留め怪しまれる主水、というシーンがあり後段でも主水は見張られていたりするがそれ以上の展開はナシ。

ロケ地
・釣りの主水と鉄に必死に訴えるお咲、大沢池畔(ちょっと判り難いが菱や睡蓮がうるさいくらい生えているので判断)。その後お咲が備中屋の駕籠の前に現れ斬りかかるシーンは大沢池畔で間違いなし。
・佐渡へ囚人護送の主水、街道筋は北嵯峨農地か(地道)


第22話「楽あれば苦あり親はなし」1973.9.15

 阿片を扱い奉行所にも顔をきかせる盗賊・野分の藤造は、喜怒哀楽の幅が常人とかけ離れたパラノイア。子との縁薄い藤造はできた子を溺愛するが、自分の子でないかもという疑い消せず殺してしまった前歴を持つ。
藤造の子を産んだお波は狂暴な悪党を子の父とするに耐えず、水茶屋勤めの頃関係のあった男たちを訪ね歩き父親になって貰おうとする。その中に主水と鉄もいたりする。
この男たちに藤造の手が伸び、二人まで殺され鉄は雲隠れ。残った主水は上役通じ呼び出され、その席でお波を連れて来るよう脅される。堅気に育てる大事にするという主水の伝言と、周囲の迷惑を考えお波は藤造のもとに帰り、子を交え新生活が始まるが途端に疑い出すパラノイア。恐怖のあまり逃げ出したお波は子とともに斬られてしまう。
かんのん長屋に辿りついたお波は鉄に子はあなたの子と「告白」、金を渡す。
*圧倒的な迫力を持って画面を支配する藤造の個性。口をびろんとだらしなく開き弛緩した風貌、ゆっくりとした口調で語る凶悪な言葉。お波母子を深更覗き込む姿の不気味さ、殺してしまった子への哀惜を隠そうともせず土饅頭に縋りおんおん泣く姿、他に例を見ないインパクト。

ロケ地
・手代の清兵衛が殺される隅田川(船上)広沢池
・板前の新吉が殺られる神社、鳥居本八幡宮。子の墓、くろ谷か。


第23話「無理を通して殺された」1973.9.22

 田舎から出て来た苦学生の面倒を何くれと無く見てやる女芸人・揚羽のお蝶、北町同心として立身したその男といずれ祝言、と幸福に酔う。しかし地位を手に入れた男は更なる上を求め、お蝶を捨てるばかりか利用し罪に落としその父まで犠牲にするという外道に成り下がっていた。
その男・村野が手に入れようというポジションは、代貸の乙松と組み主水と小六に取って代わることだった。
 最後は小六救出に向かった主水に真っ向勝負の末斬って捨てられる。小六の主水たちに対する信頼なども巧みに描かれる。
*お蝶の悲恋と、小六が命を狙われる企て、とほとんど二話ぶん詰め込んであるので折角の細かいエピソードの印象薄れ勿体無い。錠と妙に親しくなるお蝶の父とか、小六の勢力の細かい部分とか、お蝶の父がかつて凄腕の殺し屋だったこととか。


第24話「疑う愛に迫る魔手」1973.9.29

 かんのん長屋に持ち上がる立ち退き騒動。潰した跡に女郎屋を建てる計画を炭屋が立て、普請方組頭が後押し。大家の喜助は気強く断るが、盗っ人だった前身を娘にバラすと脅されやむなく諾。その娘は最近母を亡くし引き取ったばかり、心通い合わぬまま喜助は炭屋の手先の岡っ引に殺されてしまう。また娘は岡っ引に人殺しと喚き、拉致され女郎たちの中に入れられこれも殺されてしまう。娘が殺されるのをなす術も無く見た錠たちは砦の築かれた長屋に死体を持ち帰り、仕置がはじまる。
*長屋に築かれるバリケード、半次の学生運動ふうのアジ、女郎たちの中に密かに生まれる連帯など70年代初頭を色濃く反映。

ロケ地
・喜助に頼まれ八王子在におとよを迎えに行く錠のくだりのみで、大半がセット撮り。
・野辺送りの農地は大沢池−広沢池間の農地か。
・おとよの母の供養を頼む寺、西寿寺(石段上部・本堂屋根を背景、境内芝地)
・江戸へ向かう道中、広沢池西岸観音島。竹藪沿いの道は北嵯峨か。


第25話「能なしカラス爪をトグ」1973.10.6

 半次が憧れ、ほのかな恋情を抱いていた貧乏旗本の娘・秋絵は苦学生の弟・数馬の世話をずっと見てきた苦労人。その弟は難関を突破し晴れて湯島の学問所に。しかし落ちた長崎奉行・松坂の馬鹿息子、その母は合格者に欠員を作り息子を押し込もうと謀り、数馬を暗殺する挙に出る。前後の事情から松坂邸に赴き、弟の仇と馬鹿息子に斬りかかる秋絵だが用心棒に敢無く始末されてしまう。二つになった棺桶の前で、半次は秋絵が半次に世話になった礼として遺した金を仕置料として置く。
*半次は錠と共に松坂邸へ乗り込み、馬鹿息子を育てた母を詰り毒づく。こんなことしてもあの姉弟は帰ってこないと感情を爆発させる半次の姿が哀れ。殺しは行われず立ち去る。鉄は馬鹿息子の叔父の書院番頭と用心棒を他所で仕置。

ロケ地
・塾の門、京都御所九条邸跡・拾翠邸。塾からの帰り姉弟が渡る橋、京都御所厳島神社九条池の橋。
・湯島学問所、大覚寺明智門
・数馬が暗殺される内藤家菩提寺、くろ谷か永観堂か。
・松坂邸、不明。
・馬鹿息子と金引き替えの浅草明神下榎、今宮神社高倉。鉄は梁にいて様子を窺っている。
・ラスト、仕置帰りの鉄が橋下に佇む半次に「千両箱」放り投げるのは中ノ島橋


第26話(終)「お江戸華町未練なし」1973.10.6

 大旱魃、井戸水等悉く枯涸れ市民生活に多大な影響をもたらす。そんななか寺社の深井戸のみ湧くが、疫病を理由に使用禁止となる。夜陰に紛れ病の父のためその水を汲んだ娘が見張りの岡っ引に陵辱されてしまうという事件が起こり、嘆いた父は仕置を依頼する。仕置料が出ないことから相手にしない鉄たち、しかしその父が死に残された娘は再度岡っ引に襲われ、簪で傷を負わせてしまう。寝覚めの悪いチームは荒っぽい手段で娘を逃がすが、このとき同心に姿を見られてしまう。人相書きを作られ、闇の仕置人と断定され追われる鉄ら四人。そのうち半次が奸計に落ち捕縛され、井戸水で儲けていた役人たちを仕置した後まさに「土壇場」から半次を救出したチームは解散に追い込まれるのだった。

ロケ地
・旱魃のイメージに流れ橋下河原と橋脚。
・深井戸のある寺社、今宮神社境内。
・解散後、山道をゆく鉄、谷山林道。おきんと半次が別れる橋、流れ橋。錠が乗る渡し舟、木津川
*旅装でアジトに現れ、自分も共にゆくという主水。別れるか共にゆくかコイン投げで決めようと言い出し「別れの裏」しか出ない細工銭を投げる鉄「世の中裏目ばっかりよ」。解散話が入り些か尺足らぬ気味の最終話だが、鉄の飄々とした明るさ・珍しく見せる主水の誠心がなかなか。


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