福沢諭吉

澤井信一郎監督作品  1991.8.24東映

キャスト
柴田恭平 仲村トオル 南野陽子 若村麻由美 哀川翔 寺杣昌紀 円谷浩 村田雄吉 冨士原泰平 小林秀樹 中村久光 波方清 浜田晃 野口貴史 広瀬義宣 今井久 伊庭剛 中嶋俊一 野村宏伸 鈴木瑞穂 芦川よしみ 草薙幸二郎 火野正平 勝野洋 榎木孝明
ナレーター/田口計
脚本/笠原和夫、桂千穂

∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵

 下級武士の家に生まれた男児が、学問によって身を立てる過程を、慶応義塾創設まで描いた伝記。

 友や家族、塾生といった周囲の人々との関わりを軸に話は進み、よく知られた逸話や名言を挿入するつくり。
激動の時代はやがて帰結を見て、新時代に際し晴れがましく高らかに理想を謳いあげる姿で終劇。

枳殻邸

ロケ地

  • 豊前中津、諭吉9歳時の逸話、稲荷のご神体を道端の石ころに取り替えるところを、剣の稽古帰りの奥平に見咎められるシーン、大覚寺五社明神祠。背景に大沢池が映り込む。船着(大)には釣り人あしらい、桜開花中。
  • 諭吉14歳時、奥平に手荒く稽古をつけられる浜、不明(マジ海)。汀で一人素振りのシーンも。
  • 諭吉21歳時、長崎留学中の一幕、蘭書を読む奥平は西教寺本堂縁先手すりに腰掛け、背景に墓地が来る。掃除を終えた諭吉は墓地の方からやって来て奥平に声をかける。このシーンに先立って映るテロップ入りの長崎イメージは、西教寺大師堂脇のエキゾチックな亭を前景に、本堂の立つ崖を映し出す。
  • 安政5年の江戸・諭吉25歳時、長崎から着いたはがりの諭吉が奥平に挨拶する場面、下鴨神社馬場(奥平は「銃で流鏑馬」中、画面手前には厩舎あしらい。奥平はこの時点で家老になっている。またこのとき諭吉は適塾での朋輩・岡本を紹介する)
  • 奥平の指示で藩が開く塾の教授として入る中津藩築地鉄砲州中屋敷、不明(連子窓が続くお長屋、すぐ向かいに線入りの塀あり、御所長屋門に雰囲気が似ている。あしらいものと思しき柵に、諭吉到着を待ちわびる弦斎が取り付いている)。後段にも頻繁に登場、「路地」を二方向から見た図が出る。
  • 「先生」になったものの塾生はなかなか集まらず、そのことを岡本に詫びる諭吉、中屋敷内の情景は大覚寺蔵前。北西方向からのクレーンショットで、明智陣屋をナメて撮ってあり、遠侍や大門も映り込む。ここは後段にも出てきて、明智陣屋の西にある門も映る希少な使用例。
  • 横浜行で、今まで学んだ蘭語が非主流であることを知りクサる諭吉、自棄になって剣を振り回しているところへお錦が来て咸臨丸の情報を伝えるシーン、大覚寺天神島
  • 米国へ行く使節団に加えて貰うべく、奥平に根回しを頼みにゆく諭吉、枳殻邸。刀の手入れをしていた奥平はゲストハウス縁先にいて、印月池も映り込む。ここの設定は中津藩上屋敷で、以後も何度も登場、池端の芝地には陶製のガーデンセットが置かれる。
  • 塾で英語を教えていた件で、塾生の親の水戸藩士にねじ込まれたあと、奥平に呼び出され詰問されるくだり、不明(座敷から前庭を見る図、塀はクリーム色五本線入り。ここも後段別の場面で同設定で出てきて、季節お構いなしに桜が咲いている)。奥平の詰問に土岐のご隠居が介入し事をおさめたあと、土岐と二人帰る諭吉、妙心寺(今度の件は諭吉も悪いと諭す土岐は大龍院前路地で、奥に大法院が映り込む。心配して迎えに来たお錦と岡本に軽口を叩いていると土岐が発作を起こし人事不省に陥るシーンは春光院脇のクランク石畳)
  • 土岐の墓前で祝言を挙げる諭吉とお錦、宝塔寺墓地。多宝塔が映り込む。
  • 長州征伐イメージの行軍シーン、木津堤か。
  • 塾に篠原小十郎を訪ねてきたノブ、諭吉に言伝た桜橋は八幡堀白雲橋。篠原が飛んでゆくシーンで橋上が使われ、ノブが待つシーンに橋下の堀端が来る。このあと、ノブが洋妾だったと知らされるシークエンス。
  • 慶応3年、諭吉再渡米のくだり、サンフランシスコオリエンタルホテルに擬えられた洋館、不明。同年、大政奉還のイメージのお城は姫路城天守(このあともお城イメージは同所)
  • 中屋敷が没収となり塾の移転先を捜すくだり、諭吉が弦斎と見にゆく芝・新銭座の元丸岡五万石・有馬家中屋敷は随心院長屋門(門として内外を使う)。ここの敷地設定の古びた蔵、不明。新普請で塾を建てるシーンは大覚寺境内(護摩堂裏・塔前付近の広場、奥に林が見えるが建物等は映らず。ここが慶応義塾発祥の地、設定は築地鉄砲洲中津藩中屋敷か)
  • 戊辰戦争勃発、幕軍が京目指して渡る橋は流れ橋、官軍の行進は映画村セット(ここで既に江戸、行軍中の旧知に篠原が声をかけるシーン)
  • 彰義隊が籠もる上野寛永寺、粟生光明寺。石段上部に冠木門あしらい、中ほどに逆茂木を設置しているシーンが出て、山門も映る。
  • 芝・増上寺に拠る官軍、薩摩の兵に会いに来る篠原のシーンは宝塔寺本堂広縁。
  • 薩摩が取り付く寛永寺黒門口、粟生光明寺。本郷・加賀藩邸前に据えられるアームストロング砲、西本願寺大玄関門。塾生が屋根から見る、上野のお山が黒煙に包まれる情景、仁和寺塔。彰義隊と薩摩兵が激闘を繰り広げる上野山内、粟生光明寺から日吉大社へスイッチ、走井橋や大宮橋が映り、戦闘は東本宮へスイッチし、以降場面は錯綜。
  • 戊辰戦争の終わり、箱館戦争で捕われた古川節蔵(岡本周吉)が引かれゆく雪原、不明。
  • 明治4年、三田に移転した慶応義塾で講義する諭吉、ザンギリ頭の学生たちが入ってゆく校舎は龍谷大学大宮キャンパス、導入は鉄製のフェンス越し。講義は例の「天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ人ノ下ニ人ヲ造ラズト云ヘリ」で、ここで終劇。

・日記目次 ・ロケ地探訪 ・ロケ地探訪テキスト版目次 ・ロケ地一覧
・時代劇の風景トップ  ・サイトトップ