新必殺仕置人
  1977ABC/松竹 全42話 

念仏の鉄/山崎努
巳代松/中村嘉葎雄 正八/火野正平 おてい/中尾ミエ
死神/河原崎健三 元締の虎/藤村富美男
中村主水/藤田まこと


第1話「問答無用」1977.1.21

 寅の会に中村主水がかかり驚愕の鉄、仲間に依頼し密かに主水をアジトに呼び次第を告げる。その後、世話になった商家からと差し入れの鯛が毒入りだったり、金で取引を持ちかけられたりする主水。そのうち、隠れている小屋に上司・筑波の妾で以前主水が手にかけた罪人の女房が出刃で襲うが果たせず自死。ここからとらの会に主水をかけた起こりが上司の筑波と知れる。筑波は罪人として斬られた庄兵衛と盗み金を巡って取引の挙句裏切ったのだった。
女を葬った足で筑波を斬りにゆく主水、鉄らは主水の小屋を襲う仕置人を始末。事後、主水は隠してあった金を引き上げるがロープを切って捨て水中深く沈めてしまう。

 ロケ地、南町奉行所、大覚寺明智門。庄兵衛の女房だった妾に主水は間もなく死ぬと告げる筑波、錦水亭。出刃で襲い失敗したあと自死の女を医者に担ぎこもうとする主水と鉄、金戒光明寺三門墓地石段下。
*筑波を殺る前、もう何も信じられなくなったと言い「これからは徹頭徹尾手抜きでゆく」と宣する主水、一年ぶりに会った鉄に赤井剣之介の死を語るシーンも哀切。


第2話「情愛なさけ無用」1977.1.28

 巳代松が町で自分を買ってくれと縋られた女の父は、借金苦で自死を選ぶ。父の亡骸に縋り泣く娘に弔いもあげさせず引き立ててゆく検校の使い、巳代松は鉄にどうしてもこの一件は競り落とせと頼む。他からも依頼のあったこの凶悪な検校は巳代松の実の兄で、そもそも松が島送りになったのは目を負傷した兄の島での窮状を見捨てて置けず身代わりを申し出たもの。
チームは松が情に流され寅の会の掟に背くことを恐れる。しかし松は兄・検校の屋敷で若い娘にむごい真似を働く兄を見、しかも目明きなことを知り自らの手による仕置を決断するのだった。

 ロケ地、巳代松が身売り持ちかけた女を伴い佇む水辺、広沢池西岸(水無)。寅の会の競りが不調に終わった鉄が帰途降りてゆく石段、金戒光明寺本堂下石段。競った吉五郎が鉄に今回は譲れと申し出る墓地、招善寺墓地、墓地参道。
*鉄と巳代松の出会いが語られる一幕あり、また主水の調べで松の過去が知れ、「情にもろい松っぁん」の肉付けがなされる。*主水が前回の子犬を手放さずにいるエピがなかなか。


第3話「現金げんなま無用」1977.2.4

 寅の会を騙し、裏で直取引の仕置人・玄達、鉄の技を真似て仕置。裏切者として断罪されかかる鉄はチームに助力を要請し、無実を晴らそうとする。調査に入った主水らが見たものは、旗本の家のドロドロの内情、不倫の果て用人の子を孕んだ奥方が旦那を始末しようとした経緯。調査中、生さぬ仲の若君を毒殺しようとした奥方を阻んだ幼い侍女が殺され、正八に依頼が託されるが、これは番外として会にかけられ鉄が競り落とす。玄達の裏切りは見張っている死神の前で明らかにされ、虎自身の手で断罪されることになる。

 ロケ地、旗本・沖田正勝邸、相国寺大光明寺(門、南塀、石庭)。南町奉行所、大覚寺明智門(釈放される玄達のシーンには参道も使用)
*チームが探りを入れるあいだ、何度も窓から外を見て死神の影に怯える鉄の姿が印象的。*玄達に今井健二、正編の鬼岩とはまた違った迫力。*沖田の若様に絵草紙を持ってゆく正八、読み上げるかぐや姫「暮らしに困ったかぐや姫は仕方なく吉原に身売りをすることになり」と口から出まかせに若君のもっともっと…。*玄達のターゲット買って出た松っぁん、アバラやられて支え木入れてるのが可愛い。その危機に出てくる主水もいい。*虎の仕置はバット殴り、阪神のフィルム映る。


第4話「暴徒無用」1977.2.11

 鉄が破格値で落とした仕事は人三猿七の多摩の山奥からの依頼、飢饉で難儀する村を女を差し出さなかった恨みで孤立させる山持ちの大尽がターゲット。遠征し仕留める主水・鉄・巳代松の三人組、平家の落人の村という影沢村の不思議な習俗が描かれる。

 ロケ地、調査に入る正八、甲州街道の茶店で伊右衛門の噂聞く、谷山林道作業場。絵草紙屋として探りに入る伊右衛門邸、高山寺。按摩に化けた鉄と松っぁんが行く手を伊右衛門の手下に阻まれる、落合トンネル。影沢村を遠望する峠、谷山林道切り通し。影沢村庄屋屋敷、走田神社社務所。飢饉の際京の公家に売る娘を隠してある祠、鳥居本八幡宮
*仕置料にも相場がと詰め寄られた鉄「俺は一ヶ月殺しをしないと世の中が霞かかったみたいになっちまう」は名台詞。*掏った財布の中から虎への依頼状が出て来たと思ったらもう戸口に来ている死神、が笑える。


第5話「王手無用」1977.2.18ABC

 鼻つまみの小普請組の旗本たちがターゲット。この首魁・疋田兵庫に菅貫太郎、狂乱の殿様と将棋マニアを演じ切る。「起こり」は、疋田らが招いておいて態度が気に入らぬと斬殺した女将棋指し・初津の師匠にして情人の将軍家指南・伊藤宗看。面白そうと競り落とした鉄は、主水を外すが結局割り込まれる。一人ずつ殺ってゆき、一人残った疋田を引っ掛けるのは詰め将棋の「煙り詰め」、菅貫を引っ掛ける正八が傑作。仕置の場には宗看自身も現れ、夢中になって宗看の盤を見つめる疋田の背後にチームの影が忍び寄るのだった。

 ロケ地、初津の死体が見つかる汀、広沢池東岸(水無)。将棋所(伊藤宗看邸)相国寺林光院(門)
*菅貫のために作ったかと思えるほど凶悪にして姑息な旗本がハマっている。冒頭正八の絵草紙屋で立ち読みのうえ無理矢理ツケてゆく姿や、煙詰めに悩みまくる姿、解けぬ謎を求めて正八のもとに駆け込んでくるところなど巧いとしか言いようがない。


第6話「偽善無用」1977.2.25

 口喧しい観音長屋のおちか婆さんは、評判の忠義者の鳴海屋の手代・佐吉を盗っ人の手先と主張。誰もまともに聞かず、佐吉といい仲の婆さんの娘も家を飛び出してしまう。婆さんは一両を出して寅の会に佐吉をかけるが、余りの安値に差し戻され、盗みを働いて金を作り再度依頼。
その情熱に調べなおしのチーム、果たして佐吉は引き込みであることが判明、鳴海屋へ賊を引き入れた晩に仕掛ける仕儀となる。

 ロケ地、正八が調査のため走る八王子への街道筋、北嵯峨農地・竹林際(すごい早回し)。おちかが島送りとなる船手所、罧原堤下汀。
*鉄に糞婆呼ばわりされるおちか婆さんは亭主を殺し身代を奪った強盗を引き込んだのが佐吉と固く信じ込んでいる、これを清川虹子が怪演。


第7話「貸借無用」1977.3.4

 湯屋覗きが趣味の変態、覗くだけでは飽き足らず、湯女を襲い殺害するという筋金入り。これが大親分・羅漢寺の政五郎の倅で、懇意の同心・村上が揉み消しにかかる。村上の企みで湯屋に薪を納めている若者が冤罪をでっち上げられ、その姉の切見世女郎は正八に仕置を依頼するが政五郎一家の妨害入り不調に終わる。しかし寅の会には政五郎と村上が五十両でかかる。

*鉄に叩かれ飯を顔に塗りたくられるほか政五郎一家にボコの正ちゃん、でも後段では一家に入り込みスパイとして活躍、甲斐甲斐しく廊下を拭く姿が可愛い。*寅の会、相手を聞き尻込みする面々を見て勢いで受けてしまう鉄、金の出所に疑問持つが、これには阿呆な結末つき。


第8話「裏切無用」1977.3.11

 寅の会にかかったターゲット二件は裏で結びついていて、一人は寅の会の仕置人として入り込んでいるというややこしさ。
表の仕事とターゲットが重なった主水は仲間を騙し立ち回るが、たちまちバレてボコられ肩を外されたりする。
 モチーフに岡場所の警動の習俗を用いて遊女の哀愁が語られ、オチは鉄の馴染みの遊女が依頼人というよく練られた一話。虎の元締手ずから裏切者の仕置人を始末するシーンが見られ、ナックルで投げられる鉄球をすかーんと打ち返す藤村富美男が傑作。

 ロケ地、かねみ屋一味が隠れている小屋、大覚寺護摩堂。縁先に張子の虎が置かれ闇の重六をビビらせる。重六に対抗すべく大筒開発し発射実験の巳代松、涸れ川の河床は堀川(下立売付近か)。福山藩下屋敷、相国寺大光明寺門。仕置シーンは大光明寺南塀をフルに。


第9話「悪縁無用」1977.3.18

 深川の売れっ子芸者のおりく姐さん、正八の売るおりくを描いた浮世絵を見てぽーっとなる巳代松。たまたま頼られたことから思い入れはますます深くなる。
 寅の会にかけられる無宿・音吉。これがおりくの子の父親で、女を蹂躙し尽す大ワル。瓦版屋と結託して、再びおりくを苦しめる。子を楯にヌードモデルをさせられたおりくは仕置の依頼を「追加」、受ける鉄。松っぁんは五発同時発射の竹鉄砲を作り仕置に向かう。この際の掘割の橋上での仕置はのちに重要なファクターとなる。

 ロケ地、梅見の宴に偽装したとらの会、大覚寺五大堂観月台。事後、プランコで遊ぶ母子を影で見遣る松っぁん、大覚寺天神島


第10話「女房無用」1977.3.25

 阿片を使い女郎を操る両国の元締・相模屋惣五郎が仕置のターゲットとなるが、初手に仕掛けたチームは失敗。詫び料が添えられ再び寅の会にかかるのを鉄が落とす。
依頼者の船頭・政吉は知らずに運び屋にされていて、断ると女房をタテに脅され、しかも阿片投与で女房を殺されてしまっていた。身の危険を感じ微罪でわざと捕まり牢に入るが、担当者の主水がりつをさらわれ脅される始末。
チームは政吉を使って相模屋の手下を誘き出し松っぁんの爆裂弾で始末し、鉄が乗り込む。

 ロケ地、相模屋を尾けて排除される正八と松っぁん、今宮神社参道(縁日あしらい)、高倉脇坂、楼門。子供を使って相模屋を探索させる正八が寝そべる、今宮神社東門内側石橋そばの木の根方。松っぁんの爆裂弾が相模屋の手下に炸裂、中ノ島橋


第11話「助人無用」1977.4.1

 鉄が入れあげる茶屋女には年の離れた亭主があり、二人が町ゆく姿に人は耳目をそびやかす。茶屋の女将が地所を狙う地回りに殺害され、残された幼い娘はたまたま訪ねて来た鉄に仕置人のことを尋ねる。女房の病のため金が入用になった年老いた亭主は、昔馴染みの虎に仕事を貰いたいと申し出る。彼は昔、虎の兄貴分の殺し屋であった。老齢を案じた虎は鉄にサポートを依頼、老殺し屋に「わからないように」仕掛けるチーム、仕置は無事済むが老殺し屋は事後鉄に「わしも歳、死んだ人間相手にしとるようじゃいかんわな」と呟くのだった。

 ロケ地、虎とツナギとる天狗の鞍三、今宮神社高倉下。掲げられた絵馬には虎と天狗が描かれているという演出。虎が鉄にサポート依頼も同所。
*老殺し屋をアラカンが怪演、地回りの手下に志賀勝が凶悪。親分の経営する七福神のキャバレーのビジュアルも見せる。アラカンに「わからないように」破れたお釜でサイレンサー作る松っぁんも傑作。


第12話「親切無用」1977.4.8

 お尋ね者を雇ってしまった鳴戸屋から賄賂とり不問に付す主水が、ハメられ恨みを買い、寅の会にかけられてしまう。
依頼者は鳴戸屋へ養い子を出した取り上げ婆のお米、チームの奔走で疑いは晴れ、もう一人の養い子の雇い主が消されたことからお米婆さんも真実に気付き依頼を取り下げる。そして、鳴戸屋の財目当てで裏で糸を引いていた勘定奉行と口入屋が新たなターゲットとなる。
 はじめ半ば本気で主水を仕置しようとしていたような鉄の態度や、自分がターゲットにされたことを知った主水が見せる凶悪な一面が陰影の濃い画で表現される。

 ロケ地、南町前でコロと戯れる主水、大覚寺御殿川河床。ターゲットとなった主水を呼び出すチーム、大覚寺護摩堂。勘定奉行所、相国寺林光院。極楽屋を呼び出し話す主水、大覚寺天神島


第13話「休診無用」1977.4.15

 親切な蘭法医・玄庵が死んだ患者の妻に恨まれ、寅の会にかけられる。その女が流産し苦しんでいるのを巳代松が助け連れて行った先は玄庵宅。休診の札掲げてあるが、中に主水が斬るも取り逃がした手負いの賊が入り込んでいた。玄庵は賊を説き伏せ女を診るが、その夜顔を見られたとして女は殺されてしまう。依頼者が死に、しかし気が悪いと仕置に入る鉄たち。事後、仕置料は虎に返されるが「取っておけ」と微笑まれるのだった。

 ロケ地、ラスト虎に金を返しにゆく鉄、広沢池西岸
*筋立て荒いかな、と思わせる作だが仕置人たちの日常がコミカルに描かれ見せ場多し。ギックリ腰の主水宅に往診の鉄の乱暴さなどが笑える。


第14話「男狩無用」1977.4.22

 鉄が連れ込まれた戸田の下屋敷は、変態姫の住む千姫御殿。しばしウハウハ状態の鉄、拘束されて寅の会に遅参したりする。ターゲットは当の戸田の息女・小夜。屋敷に戻った鉄、色仕掛けで侍女を誑かし抜け道をゲット、チームを引き入れ仕置。
やらしい素材を鉄の飄化た演技でかるく処理。小夜が参詣の尼寺に妙心尼がいて「なりませぬ」を披露、石屋の回想ショットも挿まれる。

 ロケ地、下谷金杉の美濃大垣藩下屋敷、相国寺(方丈通用門・大光明寺南塀・方丈)。妙心尼の心行寺、西寿寺山門。鉄が正八をサクラに使い営業宣伝、今宮神社楼門。主水が浮気と誤解され戦慄コンビに薙刀を突きつけられる八丁堀近くの稲荷、今宮神社合祀摂社。新三郎と小夜の回想シーンに金戒光明寺(放生池太鼓橋・石段)。小夜の侍女が「宿下がり」の鉄を尾けてくる、金戒光明寺境内路地。色仕掛けのあと襦袢一枚で逃げた鉄が衣服を整える、三門


第15話「密告無用」1977.4.29

 仕事を見られてしまう巳代松、目撃者の女は松に役者の菊之丞を殺してくれと言う。松が迷っているうち女は消されてしまい、死に際に事情を打ち明け恨みを託す。
足抜け女郎のその女はもと大店の女将で、役者買いの席に岡っ引に踏み込まれ、亭主も脅しつけ離縁の態をとり、女郎にされていたのだった。菊之丞も妓楼の主人も岡っ引もグルと調べ上げたチーム、「松の依頼」で仕置に入る。
ナイーブな松っあんが悩みまくる姿が見もの。岡っ引に石橋蓮司、酷薄なワルを好演。

 ロケ地、松が殺しを見られる池辺、大覚寺大沢池北西畔、現場は護摩堂前。女に脅された直後現場に戻った松が死神の幻影見るのは石仏の間。
*菊之丞をおこわに掛けに入るおていに付き添う丁稚姿の正八、前髪付きの三尺しめた着物が可愛い。そのあと松の鉄砲の仕掛けに協力し鉦太鼓でひとり騒ぎ立てる姿も傑作。


第16話「逆怨無用」1977.5.6

 冒頭、鉄が見る殺される悪夢は正夢に。鉄と松と主水のもとに届く「殺してやる」の文。以前仕置した相模屋のあとを継いだ二代目と島帰りの息子が仕掛けたもの。金を出し合い寅の会に掛けるチーム、当の寅の会に裏切者発覚、改めて相模屋一味に仕置の依頼が下る。

 ロケ地、寅の会ハネたあと俳諧師たちが渡る橋、大覚寺勅使門橋。裏切者の阿片漬けの俳諧師の女が入る料亭、望雲亭。鉄を呼び出し裏切仕置人の始末を見せ相模屋への仕置を示唆する虎、中ノ島橋堰堤下。
*脅えまくりの鉄が描かれなかなか。こんななか鉄は松っぁんにいたずらの脅迫文仕掛けたりする…ボコられてるけど。仕置シーンはトリッキーで見せる。


第17話「代役無用」1977.5.13

 ふとしたことで幼馴染の友吉と再会する正八、今宵祝言という友吉は新居に帰らず酒を浴びる。不審に思った正八は見張るが、判明したのは彼らが偽装結婚させられているという事実。勤め先の甲州屋が手をつけた女中・おいとを家つき娘の女房から隠すためだった。苦悩する若い二人、束の間心通じ合い甲州屋から離れることを決意するが、友吉は雇われた殺し屋に消されてしまう。おいとは正八のもとに駆け込み、ここから殺し屋と仕置人たちの死闘がはじまる。
処々にきれいな回想イメージ入る正ちゃん主役の一編、本人の歌う挿入歌もあり。火野正平がメインになるときは、長七郎だろうが商売人だろうがたいてい近しい者が不幸のどん底に叩き込まれる設定なのは絶対あのえぐえぐ泣く正ちゃんの画が欲しいからだな、と忖度してみる。

 ロケ地、甲州屋が折れてくれたと思いおいとのもとへ走る友吉、回想の犬コロのように戯れる幼時の正八と友吉、河原の友吉の墓、罧原堤付近か。


第18話「同情無用」 1977.5.20

 鋳掛屋の礼二郎は、井筒屋の経理を任されているおようといい仲、しかし腰定まらずおように金をねだる日々。男に貢ぐため、おようは遂に店の金に手を付けてしまうが、付け込まれ番頭と岡っ引と北町同心に強請られる羽目に陥る。それでもおようは自分を強請るため牢に入れられた礼二郎に済まなく思い、三人をとらの会にかけ自訴して出ようとするが二人してワルの手に陥ち消されてしまうのだった。

 ロケ地、寅の会会場イメージに相国寺庫裏上部。一時解き放ちの礼二郎がおようと束の間会う鳳神社の神輿小屋、今宮神社合祀摂社。出頭場所へ急ぐ礼二郎が走る、大覚寺放生池堤。北町同心に斬られてしまう、有栖川畔。探しに出た巳代松が瀕死の礼二郎を発見する、有栖川河床。おようが岡っ引に殺される、金戒光明寺塔頭道。ラスト、おようの死体が打ち捨てられているのを見る巳代松、桂川樋ノ上町右岸河原。
*今回鉄は素人娘に手を付けたかどで入牢中、ここへ礼二郎が入ってくる。鉄、きっちり牢名主におさまり凶悪に偉そう。解き放ちは赤猫。


第19話「元締無用」 1977.5.27

 阿漕な検校を殺しにゆく老仕置人・さそりの弥八、何者かの妨害受け失敗。弥八はその後町方にチクられ捕縛される。寅の会では緊急の寄合がもたれ、弥八がこれを最後と引退を願い出ていた件もあわせ紛糾する。その席で虎に公然と反旗を翻す猫の勘兵ヱ、以後確執が続き、牢を出て再度検校を狙いに行った弥八は刺されてしまう。重傷をおして検校を仕置した弥八は、娘の待つ両国橋に辿りつくことなく虎に看取られて死ぬ。この後、虎から鉄に勘兵衛の仕置が依頼される。弥八の娘は実は虎の娘だったというエピソードが語られるが、虎が名乗りをあげることはなかった。

 ロケ地、おしんが許婚者に別れを告げられる橋下、牢を出た弥八がおしんと会う船、橋上で父を待つおしん、死神が橋上で露天出しているおしんに金を置いてゆく、両国橋に中ノ島橋。検校・道海宅、相国寺大光明寺門。弥八が勘兵衛一味に刺される、南塀通用門前。
*鉄の薀蓄たれ、「三頭筋と四頭筋の炎症による神経系統の圧迫感による鈍痛感」云々、立て板に水の早口言葉が傑作。ほかに正八の鉄コスプレも見もの。仕置の際拳法使いにはずされた足を自分ではめる鉄…痛そう。


第20話「善意無用」1977.6.3

 ならず者に襲われた娘を助け、傷害事件を起こして遠島になった軍鶏の清吉が帰還、更正を期す清吉は木曽屋のもとで木場人足として働く。額に汗する彼の元へ助けた町年寄の娘が足しげく通い世話を焼くが、娘を息子と娶わせて家名取得を狙う木曽屋にハメられ、町年寄殺しの下手人として追われる身となってしまう。清吉が捕り方に目の前で斬られるのを見た娘は、寅の会に金を積むのだった。

 ロケ地、御赦免船が着く浜、広沢池東岸に船着や柵をセット。深川の木場、中ノ島橋周辺(働く清吉を見るお加代、橋上。清吉に詫びを言うお加代、橋下背割堤上。町年寄・喜多村勘右衛門に娘とつきあうなと手切れ金渡される清吉、中州舳先河川敷)
*島帰りは裏街道をつっ走るべきなんだと説く鉄、善意など信じられないと呟く巳代松、ふと覗くペーソスがドラマに奥行きをもたらす。


第21話「質草無用」 1977.6.10

 巳代松の長屋に転がり込んだ浮浪児の姉弟、口も聞かず笑いもしない。鉄はきつい目をしたその女児を見て、恨みのこもった目だという。飯を食わせてやったりするうち、正八曰く「慣れてくる」その女児に「おねこ」と名づける巳代松。鉄に子を探してくれと頼んだ敵娼あり、もしやと遊里に二人を連れてゆく松、しかしその女郎は殺されてしまう。弟は母に縋って泣くが、おねこは黙したまま。そのうち、おねこの父は以前松が仕置した男と知れる。思い悩みおねこの母が殺された経緯を探る松、騙した相手を突き止め金を出し、寅の会にかける。
事後やはり母が必要と二人を里子に出してやる松、別れの橋上、最後の最後に立ち止まり振り返りおねこが叫ぶ「松おじちゃん、私を忘れないで」。

 ロケ地、おねこが弟に盗った食物を運ぶのに駆け上がる石段、金戒光明寺石段。母の死を見たおねこが駆け出し佇む水辺、広沢池東岸。親子連れを羨望の目で見るおねこと弟、金戒光明寺三門敷居。
*草紙を盗ったおねこを追い走る正八が見る「屋根の男」、釣り糸を垂らす。初登場。*鉄、白塗りメイクにメキシコのレスラーふう隈取・白のシャグマ・朱の襦袢というなりで遊里の真ん中で仕置、通り魔…。


第22話「奸計無用」 1977.6.17

 油問屋・山崎屋が寅の会に伊豆金山総支配をかけるが、渡した金が贋小判。虎は鉄に調査依頼し一任。伊豆へ向かうチーム、総支配は悪人でもなんでもなく、配下の組頭・黒井が悪評を撒き散らしているだけ。黒井と山崎屋が結託し、金の横流しをしているのを確かめ、仕置が行われる。
 ロケ地、伊豆との往還、谷山林道と清滝川と思われるが確信なし。採掘場はどこかの砕石場か。伊豆金山総支配邸、大覚寺大門(正八が松の木に登って偵察)
*今回の屋根の男は正八に鯛釣れたら食わせろと言われ「ムリや」。正八の鼻歌は解明できず…「達者でなァ」?。上ゲ句は湯の町エレジーっぽくて笑える。


第23話「訴訟無用」1977.6.24

 盗癖のある女房をよく庇い、店を切り盛りする辻屋の入り婿・仙蔵。隠居が娘のため転地療養を勧め、店はその弟の与吉に任せると言い出したことから歯車は狂い出す。
女房の万引きのごまかしを頼んだ公事師・長十郎に仙蔵が依頼したもうひとつの頼みは、弟・与吉の抹殺だった。公事師一味が与吉を死刑囚とすり替え始末したあと、多額の金品を要求された仙蔵は隠居に与吉が獄門になったことを告げ、公事師抹殺を示唆する。寅の会に公事師殺しを依頼する隠居、しかし仙蔵の目論見は正八の密告により露見し、付け句が追加されることとなる。

 ロケ地、南町奉行所門に御馴染みの大覚寺明智門。奉行所出入りの公事師が主体の話なので奉行所周辺として御殿川がさまざまなアングルで使われる。ことに偵察中の正八が有栖川に飛び降り御殿川河床を走るグラサン姿は印象的。
*屋根の男、雷雨のなか竿を出し「暑い冷たい寒い」。*巳代松の大雨のなかの仕掛けは傘を用いて。


第24話「誘拐無用」1977.7.1

 畳奉行の娘を女房にし身代築いた畳表問屋・備後屋、女房と連れ子を疎ましく思い始めた矢先、妾の件でチンピラに脅迫される。これを奇貨とした備後屋は金を捻出するためとチンピラを騙し連れ子を誘拐させ、身代金授受の場で昵懇の南町与力に女房ともども始末させる。
寅の会には備後屋と与力がかけられる。釣りの畳奉行がインサートされ依頼人を示唆。

 ロケ地、畳奉行田原兵助邸、相国寺林光院。釣りの川は桂と思われるが場所特定できず。
*正八、開店の支度しながら鼻歌はジュリーの「勝手にしやがれ」。*屋根の男は正八が町娘と戯れる上から赤褌を垂らす。ひっぱたかれた正八見て「痛ったー」。*巳代松の鉄砲で射抜かれる備後屋、蚊帳を引き毟り倒れるビジュアルが面白い。鉄は屋形船で芸者遊びの与力を擦れ違いざま鮮やかに仕置。


第25話「濡衣無用」1977.7.8

 虎の命の恩人・庚申の月三が金貸し・三本杉を寅の会にかける。因縁は二十年前同心・平田にたばかられ強盗殺人の罪を着せられた月三の恨み。平田は直後に職を辞し、今は札差から奪った金を元手にたいそうな羽振りの金貸しとなっている。偽証した月三の女房・お秋も三本杉の女宰領として幅をきかせている。
ひどく用心深い三本杉、しかし庚申待ちの夜に催される百芸の会に潜り込んだチームは手際よく三本杉とお秋を仕置。門外で追っ手を阻むは主水、死闘の末辛勝。

 ロケ地、月三が引っ掛かる大川の杭、桂川大堰。降り続く雨に増水の大川で堤補強の土嚢が積まれる、柊野堰堤。三本杉邸、相国寺大光明寺。偵察の正八とおていは向いの方丈の塀の上。
*百芸の会、正八は上方落語、おていと巳代松は中国奇術、鉄は阿呆陀羅経の扮装で入る。正八の饅頭こわいはなかなか上手。正八が饅頭食う所作に重なる三本杉の札差毒殺シーンの回想が見せる。*巳代松が庚申待ちの宵拾った記憶喪失娘は三本杉の娘と正八の調査で知れるが松っぁんに語られることはなく、また仕置から帰った朝娘の姿は掻き消えていた。*屋根の男、庚申待ち明けの朝正八の釣れたかの言に「夜ぉーが明ーけたー」。


第26話「抜穴無用」1977.7.15

 自邸に抜穴を作り、小悪党を逃げ込ませ上がりを掠める将軍家御用「お月見屋敷」の月峰、穴を作った大工とその父を殺し、遺族に寅の会にかけられる。珍しく超安値をふっかけられ競り負ける鉄、入った仕置人は返り討ちに遭い、ばかりか月峰は虎に手打ちを申し入れてくる。
そのうち、南町同心たちが決まって悪党を見失うお月見屋敷を疑いだし、危機を感じた一味は大金を餌に雇い入れた元大工の中間を使い「逃げ込ませ町方に突き出す」自作自演を企図。中間は言われたとおりの芝居を打つが、一味の岡っ引に謀殺されてしまう。
残された女房は、夫がお月見屋敷から貰った金を仕置料として差し出すのだった。

 ロケ地、お月見屋敷、相国寺大光明寺の門と南塀通用門。小悪党を引き入れる裏木戸は南塀の門で、何度も効果的に使われる。ラストに主水が小博打で追われる男たちを騙し小銭せびるのは鐘楼基壇部分(袴は映らず)。屋形船を仕立てて金をばら撒き遊ぶ男、嵐峡。これを見ていた大工の清次が道具箱を川に投げ捨てる、渡月橋上。再びのとらの会、会場へ赴く虎と死神、金戒光明寺石段。遅参した鉄が死神に突き転ばされる、三門。抜穴の出口の墓地、黒谷墓地
*小博打に負け市中をゆく正八、道端に金見つけ素早く拾うが「紙」、嘆く顔に垂れかかる赤褌は屋根の男、腹を立てた正八が「馬ぁ鹿めー」の憎まれ口に「落ーち目ー」と返す屋根の男。*二度目の寅の会に欠席の鉄、理由は正八にツケ回されて遊里で女たちに布団蒸しにされていて動けずという阿呆な仕儀。正八はみんなにボロカスに怒られるが、このとき鉄が遅参したため月峰一味に見つからずに済み仕置を任されることになる。布団蒸しの鉄を請け出しに行った正八に「正ちゃん、今日何の日か知ってる?」とくつくつ笑いながら言う鉄のくだりは傑作。*そのほか、松っあんの鉄砲が抜穴で炸裂し、おていと正八がどっかと座っている「出口」の石が衝撃でぐらぐらと揺れたり、煙が隙間から立ち昇るのも見もの。


第27話「約束無用」1977.7.22

 佐渡で助けられた恩人が寅の会に掛けられたのを庇う巳代松、ついて回りしまいには主水を利用したりと立ち回る。合間には馴染みの妓訪ね、男に騙されぼろぼろになった女の世話を焼いたりもする。そんな人のいい松っぁんに待っていた結末は、妓を騙した男が恩人の仙三であるという事実だった。仲間のリンチに遭い仙三の正体を知らされた松っぁん、追い討ちをかけるように正八が妓が仙三に殺されたと報告に来る。
アジトの卓から六文銭だけ取り仙三の仕置に向かう松、仙三が以前作った壕に彼を押し込め竹鉄砲を放ち、冥土の渡し賃の六文銭を壕に落としたあと、地に伏せて嘆く姿が痛々しい。

*仙三に綿引洪、若い五郎蔵さんは色悪も似合う。亭主の仇とるため付け狙う女仕置人もなかなか。*鉄が土間に西瓜叩きつけ割ってむしゃむしゃ食うシーン、絶妙。*今回屋根の男出まくり。松の長屋に足止めされクサる仙三のくだりでいきなり入ってきて釜から飯とって持ってゆく。長屋へ仕置に来た女仕置人が気配に立ち去るが正体は深夜屋根で竿を上下させる赤褌男。仕置の最中を主水に阻まれ斬られる女、堀の対岸には鶏持った赤フンが座っていて目撃し「死んだー」と呟き堀にボチャ。


第28話「妖刀無用」1977.7.29

 半分「向こうの世界」へ行ってしまっている首切り役人の池田左母次郎、夢にも日常の起居にも亡霊の声を聞く。
一方、目をつけた女には何の抑制もなしに無体を働くなど、生臭い生き地獄のなかにいる。
この左母次郎に幾度も「お試し」を依頼する馬鹿殿あり、名刀に狂い用人を嘆かせるほか、気に入らぬ家臣を陥れ「お試し」にかけたりする。謀殺された家臣の妻は、自分に無体を働いた左母次郎と馬鹿殿を寅の会にかける。仕置は一度失敗、改めて鉄に依頼が来る。主水は楽には殺さん、刀の痛みをたっぷり味わって貰ってからとの言葉通り、左母次郎をいたぶり殺すが、半ば以上魂を彼岸に引かれた男は夢うつつの裡に逝く。

 ロケ地、馬鹿殿・三田村采女の組屋敷に相国寺大光明寺南塀通用門。屋敷の正門に大光明寺門。屋敷の塀に南塀
*鉄の付け馬連れてる姿が傑作。*屋根の男はおていの傷の血止めに赤褌を正八に取られ「恥ずかしー」。*仕置の際正八が中間のなりをして殿をおびき寄せる、新入りの左母次郎と名乗り馬鹿殿が呵呵と笑うのを受けて偉そうに「ふっふっ」が笑える。*松っぁんは道に埋まってズドン、鉄は蔵の中で甲冑着込んで獲物を待つ。総面の奥でにたぁと笑う鉄、凶悪。


第29話「良縁無用」1977.8.5

 鉄、珍しく素人女に岡惚れ、うきうきとその女のいる得意先の呉服屋・唐津屋へ通う。舞い上がる鉄の暴走は止まらず、しまいに屋根の男と並んで座り、裸でだらだらと汗をかきながら、夏空に呉服屋小町・お京とブランコに乗る幻を見る…しかし鉄のカッコは妄想のなかでも赤褌一丁。
 浮かれ気分のまま出る寅の会、ターゲットがお京と聞き驚愕の鉄は、30両の仕事をあたふたと二両で競り落とす。仲間を拝み倒し調査を頼む鉄、明らかになるお京と旗本の次男坊の関係。長年弄び、金を無心し子まで生ませておきながら、出世のため捨てられてしまうお京。その上、怒って乗り込んだ唐津屋は謀殺されてしまう。鉄は虎のもとに怒鳴り込み筋違いの依頼を受けたことを責めたてる。新たに発生する仕事、ターゲットはお京を騙した旗本親子と唐津屋を斬った勘定奉行所の役人。川開きの日の婚礼の夜、混雑と花火に紛れて仕置が行われる。

 ロケ地、細井邸、相国寺大光明寺(門、南塀、庭の中仕切り門)。勘定奉行邸、大覚寺大門(正八が腰掛けているのは御殿川の手すり)お京が弥一郎を難詰してボコられる邸近く、鐘楼
*屋根の男は鉄と並んで座り、下でからかう正八と松っぁんに「馬に蹴られて死んじまえー」を鉄とデュエット。あと、小博打(暑さにやられいつ落ちるか賭けてる)の銭を掠める主水に「見たぞー」。*松っぁん、小道具に大玉を使うがふっとい青竹を持ち込んでいるのがおかしい。この点火は正八が担当し名台詞「あー正ちゃん頑張ってるぅ」。*弥一郎にボコられ倒れたお京を助け起こす鉄、恨み晴らしたいと泣く涙拭いてやり「ブッ殺してやる」と出陣、弥一郎を二つ折りにして仕置。


第30話「夢想無用」1977.8.12

 軽い気持ちで食った娘・おたみと、ままごとのような暮らしを続けるうち、深みにはまってゆく正八。身籠ったおたみを持て余し、子を流そうとしたりするが、おたみの爛漫さは遂に正八の心を捉える

「海よりも、好き」

 おたみと甲州の田舎で暮らすことを決めた正八は足抜けを申し出るが、許されるはずもなく、鉄にギタギタにボコられる。あきらめぬ正八はすぐに江戸を離れようとし、旅支度を整えて帰った家に待っていたのは、前の勤め先での毒殺事件の真相暴露を恐れた仁吉の手にかかり瀕死のおたみだった。
 滂沱の涙流しながら、腕の中で息絶えたおたみの亡骸を弄り回す正八、慟哭の果て寝かせて手を組んでやる。なお愛しげにおたみの顔を撫でる正八の目に首の絞め跡、女を捻り殺すと言った鉄の言葉が甦る。駆け出し、鉄のヤサに走りこみ斬りつける正八、巳代松に押さえられ自分の尾行のまずさが招いた結果と知らされる。鉄は畳に落ちた匕首を差し出し、仇討ちを示唆。正八は匕首を手に括り付け松のフォローで仁吉を刺殺してのける。
初めての殺しのあと夜の海へ来た正八は、おたみが用意していた赤子の衣類と夫婦茶碗を投げ捨てるのだった。
 ロケ地、船宿を出た客らが毒を食らって落ちる大川、広沢池。子を流そうとおたみを跳んだりはねたりさせる祠、大沢池天神島心経宝塔。砂丘のある海辺、日本海と思われるが不明。


第31話「牢獄無用」1977.8.19

 禁制品取り扱いのかどで欠所のうえ死罪となる鳴海屋、残された娘は寅の会に依頼、ターゲットは偽証の船頭頭・十郎太、付句あり。
標的の十郎太が牢内にいることから巳代松が潜入、しかしこの牢でとんでもない大騒ぎが持ち上がる。病身の奉行を人質に立てこもる十郎太たち、様々な策を用い解決に当たる奉行所の企みは、なぜか悉く失敗する。また、この騒ぎのため市中の警戒が薄れた隙に、両替商が次々と押し込みに入られる。この背後には、回船問屋・渡海屋と筆頭与力・高岡がいた。十郎太と密かにツナギをとり奉行所の計画を漏らす高岡、松は密書を入手し主水にツナぐ。囚人が解放され混乱するなか、仕置人たちがワルの背後に忍び寄る。

 ロケ地、小伝馬町牢屋敷近くでおていとツナギの主水、大覚寺勅使門橋。これを見る戦慄コンビ、大覚寺参道橋
*高岡刑部に今井健二、凶悪な態度が見物。牢内で進行する仕立てもなかなか。*屋根の男は連絡無いのに焦れた鉄が垂れ下がる赤褌を引っ張り、落とされる。正八がどないしたんと尋ねるのに「落ちたー」。*松を牢に残したまま始動するチーム、正八が松っぁん死んだらこれでと竹鉄砲持って構えるのを戸口に立ってからかう鉄の仕草が面白い。*牢から出た松っぁんは正八の着物を脱がせ囚人服と替えるが、みごとに寸足らずなのが笑える。


第32話「阿呆無用」1977.8.26

 藍密売の罪着せられ殺される仁助、母も亡くし江戸に出る残された娘・おみつ、観音長屋の日常に紛れ込みはたらく奇行は仕置料捻出のため。おみつに死んだ妹を重ねた正八、十両出し寅の会に掛ける。
 実は生きていて阿波屋伊兵ヱ脅している義父・仁助に巡りあうおみつ、正八が父を尾行していたのを怪しみ絵草紙屋に赴き仕置の密談聞いてしまう。主水、正八におみつを殺るよう命じる。義父に会いにゆき問い詰めるおみつ、障子の向こうで匕首構えている正八、そこへ阿波屋が乗り込んできて仕置人のことを話せと無体を働くも黙したまま自死。家の外では部屋に飛び込もうとする正八を押さえつける巳代松。
 阿波へ戻る伊兵ヱ、期限に間に合わず松をセリヌンティウスに仕立てて旅立つ仕置チーム。
阿波踊りの祭りの夜、群衆の中でひらひら踊る鉄と正八、伊兵ヱと手下を仕置、正八は持っていた徳利持たせ酔っ払いに偽装。グルの役人は路地で主水が斬。

 ロケ地、おみつの父の死体検分、中ノ島橋下河原。おみつの家、民家門。国を出るおみつ、布を晒す情景を見て泣く河原は松尾橋上手桂川河川敷。おみつ「仕置料」発言に驚く正八のくだり、おみつが晒し風景を見て泣く河原、松尾橋上手桂川左岸。仕置人たちがゆく街道筋、北嵯峨農地竹林際や罧原堤下河原に渦潮を挿入。阿波踊りのシーンは現地撮り、徳島城っぽい石垣も見える。正八が笹舟を流すラストシーン、松尾橋上手桂川

*屋根の男、阿波から江戸へ切り替わるところで「そして三年」のアイキャッチをつとめる。*鉄、松っぁんから小銭掠めるのに小屋根に上がって木切れで作った道具使い引き上げようとする…照れ隠しに人殴るし。


第33話「幽霊無用」1977.8.2

 御舟蔵の御用船の中で女とコイコイしてる正八、妙な声聞き、びびって松のところへ駆け込む。上から降ってくる赤い褌にまでビビる。屋根の上のマキ氏、幽霊と同じ台詞で素っ裸「伊豆へ行こう〜」。
ことは舟蔵番人の娘婿・伊之助がはたらく、舟の備品売りさばく小金稼ぎの隠蔽工作。事が露見しそうになった伊之助、義父を殺害。夫のやり口に仕置依頼するお糸、「あなたは殺される」の謂に責められるも吐かず。床下で一部始終を聞き匕首を構えていた正八、喋っていたら命は無かったとお糸に告げ去る。
船蔵で部品取り外し作業中の伊之助と奉行配下の職人、奉行は主水が自死に偽装し斬。職人は巳代松が「地獄へ行こう〜」で射殺。伊之助はお糸殺しに来た際鉄に殺。お糸が内職するシルエットに鉄の手が重なるシーンが秀逸。


第34話「軍配無用」1977.9.9

 勧進相撲の興行主・大間の一蔵のもとで木戸番している島仲間の留吉と再会する巳代松、しかし約束の酒場に来ない留吉。一蔵たちに勧進相撲のあがりを強奪した犯人に仕立てられた留吉の死体を発見したのは松だった。ワルどもはこれに留まらず、意のままにならぬ行司を陥れて自決に追い込むなど悪行を重ね、遂に寅の会にかけられるはこびとなる。

 ロケ地、勧進相撲が行われる寺社に相国寺大光明寺(門、方丈塀)
*大評判の勧進相撲で一山あてようとするチーム、正八は人気力士の手形を偽造して(グローブでぺったん・のちに主水が作業を手伝っているシーンもあり笑える)売り、鉄とおていは小博打の胴元をしてしくじる。*屋根の男は小博打を取り締まりに来た主水が銭をナイナイするのを「うーそつーきー」。また、鉄が仕置の際小道具に使う手形を小屋根の上で泥縄作りしているシーンもおかしい。


第35話「宣伝無用」1977.9.16

 江戸へ新作の輪島塗を売りに来た平蔵、家を出た兄を訪ね観音長屋へ。連れて来た幼い娘は妙に鉄になつく。新作の沈金彫りの価値を認めた兄・宇之吉は、博打仲間の唐木屋と組んでひと儲けを企み、平蔵を白昼プロに殺させ、遺体の前で美談を仕立てて評判をとり漆器を売りまくる。この勢いで輪島に乗り込み更なる悪事を働こうとするが、鉄が一味を寅の会にかけ現地に乗り込み仕置。

 ロケ地、御陣乗太鼓響く輪島の浜、琵琶湖西岸(対岸に近江八幡の山なみ)。能登へ向かうチーム、中山道の情景に嵐山自転車道(川側からの撮り・鉄とお弓)北嵯峨農道(主水一行)谷山林道(松っぁん)保津峡落合(伝八が誤認して殺した鉄に似た坊主のシーン)
*鉄になつくお弓、でも呼び名は最後まで「泥棒のおじちゃん」。これは鉄が巳代松の仕事場で銭を掠めたのが出会いだったことから。お弓を膝に乗せ、よく聞けばど助平なことを口走る鉄っぁんが笑える。*屋根の男は竿を掲げてなにやら体操。*水中からの松っぁんの発射、鉄のシルエットで見せる外道の殺し屋との対決がなかなか見せる。


第36話「自害無用」1979.9.23

 南町の福原与力が仕置人狩りだしを企図、探索の糸が切れるや、今度は自分の女房・志乃を道具にあぶり出しにかかる。この際志乃が前の亭主との間に作った子で、何も知らず福原邸に中間奉公している粂次を志乃にけしかけ、不義密通の相手として殺してしまう。
これまた志乃が母であることを知らぬ粂次の姉は、志乃を仇と思い込み仕置を依頼。福原たちは志乃を仕置にやってくる者を捕まえようとするが、張り込み中の主水がゲットした志乃の手紙でからくりは明らかとなる。怒りに燃えるチームは寅の会を通さずフライングするが、事後承諾で済む。
志乃の前夫で元牢屋同心の斉藤(現在は牛太郎)が冒頭とラストに哀切なフレームを作りストーリィを締める。

 ロケ地、町方に目をつけられたことで死神に制裁を受ける仕置人、大覚寺御殿川河床を走り大沢池溢水口から池に逃れるが銛で殺られる。主水が粂次と世間話、大覚寺放生池堤。鉄が洗濯の掘割、深い・橋低い・水質等から堀川かもと推測されるが確証に至らず。去り状受けた志乃が出る福原邸、相国寺光源院(門)。潜んでこれを見るお糸、宗旦稲荷。弟の仇と襲いかかる、鐘楼。鉄が福原の手下を誘き出し仕置は今宮神社高倉脇の坂。仕留めきれず高倉の南に待ち構えていた巳代松が仕留める。


第37話「生命無用」1977.10.7

 偽証文や質札強奪などで客を騙し、阿漕な真似を繰り返す質屋の大黒屋。訴えは引きもきらないが、岡っ引がグルでほぼ泣き寝入り。そろそろヤバくなるところ、材木問屋の馬鹿息子にターゲットを絞り、店を乗っ取り毟る算段を立てる。
大黒屋の手下のチンピラ・銀平は、親が島送りになったことからグレてこの道に。その親は永のつとめののち江戸に帰りつくが、息子の行状に心を痛める。島帰りを責める息子に、父は墨の入った腕を自ら叩き斬りようやく和解するが、当の息子は、足抜けを嫌った大黒屋に邪魔になった材木問屋の馬鹿息子殺害の濡れ衣を着せられ、殺されてしまう。「命売ります」と大書した紙を背に悄然と町をゆく父、これは虎のもとに届き、鉄に緊急の依頼が来る。

 ロケ地、銀平の恋人・八重の勤める茶店、今宮神社東門内側にセット。白昼、衆人環視の中で行われるとらの会、今宮神社舞殿。銀平の死を知らずデートの約束を待つ八重、今宮神社東門内石橋上。銀蔵の背の紙を引き剥がす死神、今宮神社合祀摂社前。
*冒頭、鉄に売り物の本を万引されかかる、ラストは主水に秘蔵の浮世絵を質に入れられるなど正八毟られまくり。屋根の男は主水が大黒屋から袖の下貰うのを見て「汚ねーなー」。


第38話「迷信無用」1977.10.14

 父が若死に、亭主が二人までも変死したことで、丙午に生まれた己の魔性に脅える材木問屋の跡取り娘・おもん。しかしそれは父の後妻が番頭や手代と組み、店を乗っ取るための策略だった。
市中でおもんを引っ掛けて狂態に辟易の鉄、次第に不審抱く。そこへ、おもんの店に先代から仕えるじいやが寅の会に後妻の殺しを依頼。さっくりとワルを仕置のあと、立ち直ったおもんの噂聞きもう一遍コネつけて来よと笑う鉄の顔で幕。

 ロケ地、お参りのおもんが二度目に鉄と会う、わら天神(馬の絵馬が揺れるお参りの祠は六勝大神、大あくびの鉄が参道をやって来る)
*屋根の男はおもんのことを書きたてた瓦版読みながら歩く正八に「寒いよー」「もたないよー」。*死神が主水を知らない設定がさりげなくはさまれている。


第39話「流行無用」1977.10.21

 腕はいいが頑固な飾り職人・藤五郎は老いと病のため引退を決意、三人の弟子のうち最も年季のいった清太郎に二代目を継がせると言い出す。他の弟子のうち定吉は師匠の娘・おくみといい仲だが、二代目を継げないと娘とは一緒になれないと嘆く。いま一人の宇之助は野心抱き、評判のわるい岡っ引・蝮の久蔵を抱きこみ清太郎を殺すは定吉に罪を着せるは、しまいに師匠を密殺するという挙に出る。うまく立ち回る宇之助だが、金をせびりに来た久蔵が大声で経緯を話すのをおくみに聞かれてしまい、寅の会にかけられてしまう。
定吉と旧知の正八は引かれ行くのに取り縋り松っぁんに止められ「友達なんだ」と泣く。また、定吉の様子を主水に聞き、既に処刑されたことを聞きいきり立つ正八に主水が言う「奉行所を甘く見るな」の台詞が意味深。最終二話に向けて緊張が高まる。

 ロケ地、二代目が決まったあとおくみと定吉が話す、大覚寺護摩堂。去る定吉を追うおくみ、放生池堤を北から。家から姿消したおくみを探し当て話を聞く正八、大覚寺聖天堂(バックに心経宝塔大写し)。仕置が行われる間挿まれるおくみの姿に大沢池畔・五社明神祠・心経宝塔
*今日の屋根の男は寅の会から帰った鉄に仕儀を聞く正八の場面でいきなり鉄の部屋に「戦が始まるぞー」と喚きながら乱入、布団かぶって寝てしまい鉄に足蹴にされる。相変わらず赤褌一丁だが足袋を履いていて、裏が真っ黒。


第40話「愛情無用」1977.10.28

 寅の会崩壊の序曲。
監視役の冷徹な殺人機械は、はじめて触れ合った女を亡くし人間に立ち戻るが、それは身の破滅に直結していた。
追われる身となった男にはこれもはじめての友が現れるが、運命の奔流をとどめることはかなわない。

 ロケ地、「空を見に」やってきた正八が死神の嗚咽を見る、広沢池東岸。投げ込み寺、相国寺墓地か。「二人」の髪を乗せた葦船を流す正八、広沢池か罧原堤か、水面と汀しか映らず不明。
*火野正平が歌う70年代ふうフォークソングが冒頭から流れ、この一話のムードを盛り上げ印象的。


第41話(終)「解散無用」1977.11.4

 悲惨極まる最終話。
外道仕事人が寅の会を乗っ取ろうと画策、巳代松捕縛は果たして罠であった。
鉄チーム最後の切り札、顔の見えぬメンバーである主水をめぐっての鞘当てが、緊迫のドラマとなる。
逝く者、旅立つ者、残る者、いつものように袖の下をつかんだ主水の表情を固定して終劇。

 ロケ地、辰の会に入れと迫られる鉄、金戒光明寺石段。巳代松を乗せた大八を引いて旅立つおてい、北嵯峨農地畦道。


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