必殺必中仕事屋稼業

1975ABC/松竹

中ノ島橋上堰堤キャスト
半兵衛/緒形拳 政吉/林隆三 おせい/草笛光子 利助/岡本信人
お春/中尾ミエ 源五郎/大塚吾郎 おまき/芹明香


第1話 出たとこ勝負 1975.1.4

 奇縁に導かれ集まる仕事屋チームの起こりを描く一話。
メイン二人の出会いはもちろん賭場。半兵衛と政吉の三番勝負がじっくりと描写される。
その後食い逃げ客の伊之を追った半兵衛は仕事屋の彼が北町与力に返り討ちに遭うところに行き合わせ、犯人として捕縛される。釈放された半兵衛に元締・おせいがコンタクトを取り与力殺しを依頼。一方、政吉のほうも当の依頼者から酒席で同じ殺しを依頼されていた。
与力を呼び出しだ寮で鉢合わせの二人、ほぼ同時に仕掛けて与力を殺害。その後「見たな死ね」とやりあう二人に割って入る元締、政吉の得物の短刀見て我が子と知るが黙し政吉を仲間に入れる。

 ロケ地、北町奉行所、京都御所管理事務所長屋門。半兵衛への侘びが済んだことを報告の利助、尾行されおせいを見られてしまう墓地下の坂、招善寺(これに先立ち利助が見返るシーンで木の間隠れに山門が映り込む)。政吉が入水寸前のおみよを止める、中ノ島橋(導入は堀端を歩く政吉を橋下からアオリで。おみよは水路背割上)。与力を尾ける半兵衛が政吉とかちあう、嵐山公園内料亭・錦前。与力を呼び寄せる小梅の山城屋寮、中山邸(門、参道、通用門)。現場で鉢合わせの半兵衛と政吉がやりあうところへ来るおせい、湯豆腐嵯峨野塀際。政吉を仲間に入れる話をする庭、仁和寺宸殿か。
*ターゲットとなる北町与力に石橋蓮司、物欲に加えヤラしい真似もする酷薄なワル役。


第2話 一発勝負 1975.1.11

 旗本・朝倉主膳のもとに奉公していたおしのは殿に無体を働かれるが、言い交わしていた植松は承知の上で所帯を持ち赤子も授かる。その後殿の若君が夭折、おしのの子を召し上げに来る。窮した植松夫婦は赤子の奪還をおせいに依頼。
半兵衛と政吉は朝倉邸に潜入するが、邸の賭場で夢中になっていて、待ちきれず入り込んだ植松が殺されてしまうというヘマを仕出かし、利助にさんざん嫌味を言われる。
再度潜入した二人は猛犬もうまく処理し首尾よく赤子を助け出し逃走、馬で追ってきた朝倉をも始末するのだった。

 ロケ地、朝倉邸、相国寺大光明寺(門)。利助に叱言食らう屋形船、桂川松尾橋下手。植松の死体を引き取った大八がゆく道、下鴨神社馬場(追っ手は林、人の気配に去る)。赤子奪還の相談のあと、船を下りた土手でおせいに政吉のことを質す半兵衛、松尾橋下手右岸堤(地道、現在は自転車道整備で舗装路)。朝倉が騎馬で半兵衛たちを追ってくる、下鴨神社糺の森馬場池跡。子を抱いて木更津へ身を寄せるおしのを見送る芝浦の浜、琵琶湖西岸(背後に松原、簡単な桟橋はセットか)
*赤子の話で政吉の態度に気色ばむおせいを見て半兵衛は二人の関係に確信を持つ。おせいに事を正す半兵衛、政吉が息子であることが暗示される。*朝倉の殿様に菅貫、侍女に手を出す色魔ぶりも、馬上政吉をぶっ叩く狂乱ぶりも見られてなかなか。馬術もなかなか。*半兵衛が猛犬を封じるために持ってきたのは蕎麦茹でる片持ちザル、犬の口にかぽんと嵌めて封じる…きゅうーんと鳴く大きな黒犬が可愛い。


第3話 いかさま大勝負 1975.1.18

 政吉が拾った田舎娘は坊主そばに居着き、半兵衛はまとわりつかれて博打にも行けぬ毎日にキレて家を飛び出す。許婚者を探しに来たその娘・お初だが、今回のターゲット・女衒の伝八こそ三年前江戸へ出た「茂作」なのだった。
 伝八がつるむ口入屋は政吉が女郎の足抜きの話を持ちかけうまうまと連れ出し、依頼人の女郎が縊死した部屋で待ち構えていたおせいに始末される。手下を政吉が殺る頃合、坊主そばに堅気の奉公人装いお初を連れに来る茂作=伝八、すんでのところで駆け戻った半兵衛が雪降る街角で始末する。

 ロケ地、ゴロツキから助けたお初を背負い行く政吉、桂川臨川寺地区左岸河川敷。男がいると知って放って行こうとする場面は中州舳先にスイッチ。仕事屋二人にターゲットが告げられる野原、不明(ほぼ木しか映っていない)。
*天然系のお初に桃井かおり、相手の「茂作」に和田浩二。ラスト、何も知らぬまま茂作との幸福に思い馳せる駕籠の中のお初の表情が秀逸。*半兵衛が語る坊主そばの店を入手した経緯に加え、お春が半兵衛に救われた逸話も語られる。


第4話 逆転勝負 1975.1.25

 島帰りの前歴に付け込み脅すなど、庶民を食い物にする岡っ引・蝮の弥三がターゲット。依頼は十手を取り上げることで、殺しちゃダメという珍しい設定。
しかし依頼者の吉五郎はおせいをたばかっており、政吉が弥三の家に入り込んでいる最中に弥三を刺し殺すという挙に出る。いっとき追われる政吉だが、吉五郎の手下が恐れてお上に訴え企みはバレバレ。おせいから半兵衛と政吉にあらためて吉五郎殺しの依頼が下る。

 ロケ地、ツナギ場所(前後二回とも同じ場所か)、不明。女と江戸を売る旅に夜発ちの吉五郎に仕掛ける重ね鳥居、吉田神社竹中稲荷
*弥吉の娘に思い入れ暴走気味の政吉がヤバい橋を渡ろうとするのを「母の顔」」で諌めるおせいのシーンが見もの。*小悪党の岡っ引・弥三に今井健二、いつも通りの憎さげな振る舞いから、もっとワルい奴かと思ってたら中ほどであっさり殺されるという被害者。


第5話 忍んで勝負 1975.2.1

 入牢した新人から金を毟り取る牢名主のもぐらの留三がターゲットとなる。留三はお裁きが下れば獄門の極悪人、金をばらまき牢に居続けるという人種。
これに仕掛けるためわざと賭場の手入れの際捕まり「入る」半兵衛と政吉だが、不調に終わる。その後おせいのもとに来た髪結いから囚人相手の仕事の話を聞きつけ、髪結いとして入り込み博打に事寄せてうまうまと殺る二人が傑作。
 ロケ地、利助にレクチャーを受ける際の背後の石段、不明。
*牢内の活写が秀逸。二人の日常がコミカルに描かれるところも興味深い。ことに、再度牢に潜入した二人が留三と博打を打つシーンのガラス越しのアオリは特筆もの。*お春から「子供」の話が初めて出る。


第6話 ぶっつけ勝負 1975.2.8

 今回の仕事は、女と駆け落ちした息子を連れ戻してくれとの富商の依頼、場所は草津。骨休めがてらと送り出される二人だが、行った先ではすったもんだの大騒ぎ。当の息子は素性を知った地回りに食い物にされようとしていた。息子を連れ出し女郎屋に立てこもる半兵衛たち、強引な地回りとの攻防が見もの。
その妓楼には息子と逃げた女がいてひと悶着。地回りに毟られて窮した挙句女は身を売っていた。帰らぬと駄々をこねる息子、行く末を案じた女はたまたま通りかかったお鷹様の行列に直訴しようとして地回りに捕まり殺されてしまう。嘆く男に、こうなれば一蓮托生と腹を決める二人、打って出て女の仇の地回りたちを仕置。事後、おせいの労いを受ける二人、しかし仔細は語らず。

 ロケ地、おせいとのツナギおよび帰還後に一席が設けられる待合、錦水亭(東屋外観)。沓掛の手前、茶店で休む二人、谷山林道か。通りかかったヤクザに竹藪新田はどこかと尋ねる半兵衛、北嵯峨農地か。軍鶏で野博打がぶたれる竹藪新田、酵素河川敷。立てこもり中、政吉が甚造を騙して出させる船、嵐山公園中州湛水域。甚造が待つ川下の一本松の河原、桂川松尾橋付近の土手と汀。
*道中では軍鶏の賭博、囲まれて窮した際には「勝ち目無し」と撤退、戦況を語るにも「流れを変える」とギャンブル色が添えられる。


第7話 人質勝負 1975.2.15

 松浦藩船着場に停泊した船の中で開かれる大きな賭場、ここで大負けした挙句女をカタに取られる男が続出。その女たちを異国に売り飛ばし大儲けの悪党を殺してくれとおせいのもとに依頼が来る。おせいは半兵衛と政吉にその賭場へ行き、とことん負けて女をカタに取らせどうなるかの追跡調査を命じる。半兵衛のカタは女房のお春、政吉のカタはおせいが姉として体を張る。蔵に運び込まれた彼女らを、「破蔵師」利助の働きで救い出し、大ワル二人は騒ぎのさなかに始末される。
おせいの資金源が明らかにされるなど見所の多い一作。わけても導入部となる、織本順吉演じる油屋栄三郎の博打のシーンは哀切。

 ロケ地、おせいが身の上を語るシーンのバックに柊野堰堤金戒光明寺(墓地〜本堂大屋根〜石段〜東坂下路地)
*松五郎親分主催の賭場はルーレットふうの独楽で行われる。このイカサマのからくりを思い悩む仕事屋二人のシーンで幕が引かれるが、博打うちの生態がよく描かれていて傑作。


第8話 寝取られ勝負 1975.2.22

 女房に東慶寺へ駆け込まれてしまう三州屋のドラ息子、去り状を書かないうえ寺の周りでストーカー行為を働く。これを恥じたドラ息子の母と叔父が嶋屋に三行半を書かせるよう依頼。おせいに頼み込まれた半兵衛と政吉はそれぞれ奇計を案じ書かせようとするが失敗。日数過ごすうち、依頼者のドラ息子母が縊れて死ぬ。母の枕頭で叔父に人でなしと詰られたドラちゃんは家を飛び出す。母の死後、荒れる忠太郎をつかまえ去り状書かせる半兵衛と政吉だが、おせいからとんでもないツナギが入る。縁切寺に駆け込んだ忠太郎の女房・おきぬは後見人の叔父・藤左衛門とデキており、忠太郎の母は自死でなくこいつに殺されたものと判明。事実を見た忠太郎が憎悪をあらわにするのを制止したおせいは、仕事屋二人を見遣るのだった。

 ロケ地、おきぬの駕籠を追う忠太郎、鎌倉へ二里の街道、北嵯峨農地・陵前。東慶寺、不明。忠太郎が額ずく三州屋の墓、同じく不明。忠太郎を納得させるためおきぬと藤左衛門の密会現場を見せる、中山邸通用門。


第9話 からくり勝負 1975.3.1

 お話は時代劇定番のひとつ、公儀魚召し上げの横暴。
お指差し役・古田玄蕃は役目を笠に着てのやりたい放題、ささやかな抵抗を試みる魚屋を斬って捨てもする。嶋屋への依頼は夫を斬られた女房から。初手は寒さに手かじかんだ半兵衛の得物取り落としで失敗、しかしおせいはこれを奇貨とする。窮した魚屋の面々が頼み込んでの訴えを言上に行った顔役が納戸役頭に無礼討ちされてしまった一件でターゲット追加のためだった。ワルも身辺に不安感じ、部屋住み連中を引き入れ警護が厳しくなる。そんななか利助のヘルプもあり両者いちどきに仕掛ける算段を講じる仕事屋二人、お指差し役宅の天井と床にそれぞれ忍び込み時を待つ。視ている者をハラハラドキドキさせる経過を辿り、鮮やかに始末をしてのける。

 ロケ地、御膳奉行・諸角則保邸、大覚寺大門。お指差し役・古田玄蕃邸、相国寺大光明寺(門、南塀路地、庭)。路地と庭を同時に映すクレーンショットもありダイナミック。屋敷まわり描写に方丈塀も映り込む。
*映像は効果的なものが多数。屋根裏に潜む半兵衛が置いた筒から漏れた水が天井を伝い落ちる、一滴目と二滴目が非常に効果的に使われる。政吉が床板はずし引きずり込んだ諸角のわななく手が縁下から出ているのも緊張感溢れる一幕。初手にしくじる際のいかにも寒そうな演出も見せる。


第10話 売られて勝負 1975.3.8

 性質の悪い壺振りに惚れ、さんざん毟られた挙句父母を亡くし、女郎に売られてしまう世間知らずの小娘。
男に貢ぐ金欲しさに店に強盗に入ってきたその娘のことを後々まで気にかけるお春は、仕事屋に娘を探すよう依頼したりする。うるさがりつつ親身に動く半兵衛、しかし最後に見たのは無惨な娘の自死だった。

 ロケ地、仙次に売られたおゆみを連れに来る女衒、中ノ島橋。政吉に十両渡し金張りのイカサマ博打依頼する半兵衛、上賀茂神社北神饌所(雪景)


第11話 表を裏で勝負 1975.3.15

 賭場の帰り襲撃受ける半兵衛と政吉、これはその後嶋屋を襲う騒動の幕開け。嶋屋と山城屋の飛脚が次々襲われ、荷を奪われる。弁済に追われさしもの嶋屋の身代も怪しくなり、案じた利助はおせいに内緒で政吉に大坂へ二千両を運ぶ飛脚の護衛を依頼する。この途次怪しの騎馬侍が突っかかり、政吉は護衛していた飛脚を見失うが、程なく発見した死体に突き立っていた簪から全てが明らかに。同時に山城屋が謀殺されたとの報が入り、おせいは半兵衛と政吉に仕事を依頼する。

 ロケ地、浄蓮寺、金戒光明寺(長安院下坂、石段、本堂、三門)。嶋屋の飛脚が殺される街道、桂川松尾橋下手右岸堤。北町奉行所、御所長屋門と塀。嶋屋の受難を話す半兵衛と政吉に放たれる小柄、嵐山公園中州側湛水域堀端(屋形船から手裏剣)。東海道をゆく嶋屋の飛脚・仙太が休む茶店、下鴨神社馬場にセット。政吉が騎馬侍に追いまわされる、糺の森池跡。おせいがギルド世話役の伏見屋を接待し始末する野点の茶席、中山邸庭園(苦海付近、豊丸垣と嵐山の借景)
*嶋屋の飛脚・仙太を誑かした矢場の女を始末する政吉、矢場の的に突き立てられた簪のみを映し、馴染みの女に「俺、また人一人殺っちゃった」と言うのみで行為映さず。


第12話 いろはで勝負 1975.3.22

 米問屋・伊呂波屋の裏稼業は「いろは通り」と称する歓楽街の営業。これを嫌った二代目は裏を一掃すると宣言するがその夜のうちに暗殺されてしまう。この仇討ちを依頼されたおせいはいろは通りに探索に入るが、殷賑極める賭場あり岡場所ありの風俗に辟易、仕事のほかに歓楽街の壊滅も託す。しかし潜入した半兵衛と政吉の取り入るための新規プランは大受け、いろは通りをますます繁盛させることとなる。
いろは通りを仕切る三人のうち誰が下手人か探索するうち、曲折あり残ったのはもともと堅物の徳三、動機は二代目の許婚者・篠に横恋慕していたためだった。

 ロケ地、篠が徳三に二代目殺しの犯人の目星を聞く太吉の墓、黒谷墓地。手代に戻れると喜ぶ徳三、お堂不明。徳三が半兵衛をたばかり政吉と相討ちを目論む、大覚寺五社明神
*賭場にバカラ導入の政吉、岡場所にソープ導入の半兵衛、しまいにいろはの法被着て重きをなすに至るプロセスが傑作。


第13話 度胸で勝負 1975.3.29

 日光改修のお鉢が回ってきて改易寸前の朽木藩の江戸家老は、資金に窮した挙句とんでもない奇策に打って出る。町で聞いた仕事屋の噂に縋り、密かに蓄えてあった御用金562両を一月のうちに三千両にしてくれと嶋屋に頼み込む大原頼母、無茶は承知の依頼で、いずれ藩は改易、自分は皺腹を切腹と覚悟した老爺は、頼んだ一月の間は夢見ていられると力なく笑う。
受けたおせいは半兵衛と政吉の前に562両を差し出し博打を「依頼」。このあと、派手な博打話が展開する。曲折あって出来上がる三千両、しかし藩出入りの札差と、内通している江戸留守居役は大原老人を殺め証文を盗る。
このワルどもに仕掛けるチーム、留守居役は半兵衛と政吉がさっくりと始末。札差のもとに乗り込んだおせいだが、金を作った経緯をぶちまけるとやり返され、証文を盗むにとどめ立ち去る。札差の憎さげな哄笑は長くおせいの脳裏に響くのだった。

 ロケ地、朽木藩江戸屋敷、不明。富籤突きの回向院、不明。託された金をみんなスってしまい川面を覗き込む半兵衛、中ノ島橋上。ここへ源五郎親分登場、身投げはダメと抱きついてくる。その後髭無しの半兵衛を弄り回す源五郎の背後に堰堤下の水泡が映りこむ。おせいから証文を受け取った大原が留守居役と行き会う、中ノ島橋上。斬られるのは橋下右岸の栗石散りばめた河川敷。

*札差とグルの留守居役に藤岡重慶、焦点あってないぬらくらとした表情が出色。札差には岡田英次、酷薄ですげぇ怖い。


第14話 招かれて勝負 1975.4.4

 阿漕なやり口でライバルも潰しのし上がる板倉屋、嶋屋には縊死した息子の仇をとの依頼が来る。板倉屋は嶋屋を警戒しており、観桜に事寄せておせいを呼び寄せ始末しようとするが、政吉と半兵衛は幔幕のかげで鮮やかに板倉屋一味を始末してのける。
板倉屋の妾がお春の幼馴染で、恋人を得て逃れようとするが、手が回り男は殺されるという別口の逸話が絡む。

 ロケ地、お春が偶然おこまと出会う社、今宮神社境内。おこまが三次郎とゆく市中、中ノ島橋(水量多し)広沢池東岸。お春がおこまに呼び出され、三次郎と所帯持つと聞かされる社、不明。


第15話 大当たりで勝負 1975.4.11

 年に一度の富岡八幡宮の流鏑馬、江戸っ子は夢中。おせいやお春まで浮かれてオッズにマーク付けたりする。もちろん博打打ち二人は出場者を精細に調べ上げ、勝ち馬を読もうとする。
しかし、一番人気の作州浪人・岩岡宅へ赴いた半兵衛は、口入屋で胴元の淀屋が不正を持ちかける現場を見てしまい監禁される。買収に応じない岩岡に、練習中落馬させたりと様々な妨害工作の淀屋、遂に女房をさらい髪を届けて寄越すという暴挙に出る。この際女房は頭を強打し、半兵衛の眼前で死亡、これを見た半兵衛は縄を焼ききり逃げ出し、女の簪と櫛をおせいに示すのだった。
 これは仇討ちと言う半兵衛、従って金は受け取らず。政吉と共に流鏑馬で勝利した岩岡を囲み浮かれ騒ぐ群衆に巻き込んで淀屋を仕置。

 ロケ地、流鏑馬会場の富岡八幡宮、下鴨神社馬場。大会前日に出場者が集合する、楼門内の舞殿(このとき岩岡の衣装台の下に女房の髪の束が置かれている)
*流鏑馬のシーンはたっぷりと尺とって描かれ圧巻。ほぼ葵祭とおんなじ感じ。*出場者の一人・勘八が矢場にいるのを「調査」の半兵衛のくだり、源五郎親分のお色気炸裂。*半兵衛が淀屋の蔵から逃げるくだり、岩岡の女房の死体を台にして縄を焼ききるシーンは哀切。


第16話 仕上げて勝負 1975.4.18

 賭場のファム・ファタールに溺れ身を持ち崩す男たち、とうに消された男の帰りを待ち続けるけなげな町娘、人探しからはじまる仕事は許せぬ悪を討つに至る。
フィールドは全編賭場、半兵衛と政吉のノリノリの手管も披露され見所多し。魔女めいた、イカサマを仕掛ける女・おらんを軸に進む物語、どん底に落ちた身を嘆きつつ女から離れえぬ青年の「道行き」を、菅貫太郎が演じ切る。魔性の女は嵯峨美智子、絶品。

 ロケ地、依頼内容を告げるシーンおよびラストのお百度、わら天神各所。国五郎親分の荒れ寺の賭場へゆく道、二尊院紅葉の馬場、黒門。カモにされる女を装ったあとツナギのおせい、堀川河床


第17話 悟りて勝負 1975.4.25

 出会ったはじめからどうにも気になる存在の弥兵衛に入れあげる半兵衛、彼の生きざまに深く共感しつきまとい、何くれとなく世話を焼く。その弥兵衛が匿ってやった家出娘の件で密殺され、政吉の制止も聞かず激情にまかせ実行犯を殺る半兵衛。殺しの段から涙滂沱と流れ、殺ったあとはボロボロ。仕方なく一人で本来のターゲットである家出娘の父・富商の鳴海屋を狙う政吉、しかしこの親父は短筒持ってて政吉くん大ピンチ。もう殺られかかるところへ、駆けつけ障子破って乱入の半兵衛で形勢逆転、二人で仕留める。
 このあと、ボロボロの二人は仕事料持って賭場へ赴き、弥兵衛が嗜んだ賭け方をトレースし大金を全部すってしまう。ここまでは弥兵衛へ餞の香典、残った小銭でもとの騒がしい博打打ちに戻る二人だった。

 ロケ地、弥兵衛がお民を送ってゆく道、桂川松尾橋下手右岸堤
*弥兵衛に池辺良、蜆のボテ振り姿もなんか渋い。鳴海屋の手先として動く怖いチンピラに志賀勝、似合いすぎ。


第18話 はめ手で勝負 1975.5.2

 将軍の若君の学友の地位に手が届きそうと知った馬役人の黒田、息子をスパルタしごきで死なせてしまう。野望潰えるかに見えたが懲りず、下男のデキ良さそうな息子を強引に養子にとり、返還を迫った下男を斬り捨てるに至る。この下男は政吉の博打仲間、そしておせいには黒田の妻女から息子と二人逃亡したいとの依頼が来ていたことから、黒田の始末にゴーサインが出る。

 ロケ地、黒田邸に相国寺大光明寺(門、南塀、通用門)


第19話 生かして勝負 1975.5.9

 おせいの妹分だった元芸者の桧屋の女将から来る依頼、ターゲットは桧屋の旦那と自称して回り迷惑がられる薄汚れた老爺。しかしその正体は本物の桧屋の主人、御用林伐採で私腹を肥やす作事奉行と組んだ女将が旅先で焼き殺した筈の、生ける屍にされてしまった姿だった。

 ロケ地、桧屋の主の百箇日法要が営まれる寺、西寿寺(石段上部に本堂大屋根、石塔は映っていない)。おせいが女将を呼び出し、申し立てに偽り無いか糺す神社、下鴨神社内陣と楼門、二の鳥居(内陣は格子越しに撮られた印象的な画)。老爺と番頭が争って死んだふうに繕われ見つかる川っぺり、泉川石橋下。
*依頼に疑義挟む半兵衛に気色ばむおせい、私情はさんだうえ誤謬を犯す姿描かれ、悲運を暗示。


第20話 負けて勝負 1975.5.16

 大和屋のサロンで開かれる西洋博打、大負けのおせいが半兵衛に私情入りまくりの復讐を依頼。ここで千両単位の大勝をおさめる人形師は、果たして大和屋の女主とぐるの大騙りのイカサマ師だった。
半兵衛は大負けを喫するが、イカサマの手口を調査して返り討ちのチーム、政吉をお坊ちゃんに仕立てて嵌め、博打で「殺す」。

 ロケ地、大和屋の女将と密会の伊三郎を尾行の政吉、大覚寺大沢池北西畔〜出合茶屋は望雲亭
*けれん味たっぷりの色悪を演ずるは津川雅彦、タートルネックの衣装が妙ないやらしさを強調。ハメられたことを覚った際の「えぎゃー」の叫び声が秀逸。


第21話 飛入りで勝負 1975.5.23

 足を洗った盗っ人が回船問屋の番頭となり、篤実に勤める姿は実は擬態。おかしらを売って盗み金を隠匿した男の実態をはなから知っていた頭の娘は、裏切者を父として暮らしつつ復讐の機会を待っていた。
「実はこうだった」話が二転三転、善人の仮面をかなぐり捨て金持って高飛びの番頭の企みは潰え、仕置されたうえ金は「世のため人のため」回される。

 ロケ地、政吉が仕込みと知らず盗っ人の手先・銀次と渡り合い川ボチャ、中ノ島橋(その後揉みあうのは堰堤上・下)
*話のモチーフとなる三つの杯使ったイカサマを披露するはゼンジー北京。いつまでもそのカラクリにこだわっている半兵衛さんが傑作。源五郎親分のからみも多し。


第22話 脅して勝負 1975.5.30

 狼同心と異名をとる北町の神尾仙三郎、前歴ある者を脅し金を毟り取る。この狼に猟官運動の資金を無心する与力あり、金を工面してきた神尾は用済みとばかりに始末されてしまう。
しかし、神尾に金を強請り取られた挙句息子を殺された商家の主から嶋屋に依頼が来ていて、長崎奉行就任も夢と消えるのであった。

 ロケ地、美濃屋の変事を聞き駆けつけた半兵衛が、主に叩き出されたあととぼとぼ歩く道、大覚寺大沢池堤。半兵衛を呼びとめ、巻き添えで殺された妹が不憫と泣く佐八は水門下の汀に座っている(水量少なし)。与力・岡村新兵衛邸、相国寺大光明寺(門、路地)
*今度の仕事はヤバいと渋る政吉、情婦に大金与え死に脅える姿が印象的。


第23話 取込まれて勝負 1975.6.6

 おはる懐妊の報に戸惑う半兵衛。子供は嫌いだ要らないと突っぱねおはるを泣かせるが、次第に芽生えてゆく情。そこへおはるの知人で、妊娠中の女がターゲットの仕事が来てしまう。
はなから子ができたことを嘉して浮かれ騒いでいた政吉は、半兵衛に今度の仕事はするなと掻きくどく。
仕事はしないと約束した半兵衛だが、政吉が一人向かった先では、繰り出した短刀の向こうから窓を破って仕掛けてくる。怒った政吉は半兵衛をひっぱたくが、双方半泣き。気を取り直して向かった毒婦への仕置は、おせいがしてのけていた。
 終盤を迎え、それぞれの運命へのステップが徐々に刻まれはじめる一作。モチーフに使われたねずみ講への二人の態度の違いも、来る運命への足音に聞こえる。

 ロケ地、おせいから仕事を命じられた半兵衛の脳裏に去来する虚無のイメージ、化野念仏寺石仏群。


第24話 知られて勝負 1975.6.13

 夫の挙動が不審と、嶋屋に素行調査の依頼が来る。どこか怪しいその男の所業、浮気などではなく里入りの公儀隠密だからたまらない。三年野にあり手柄無い隠し目付は、女を誑かして小藩の抜け荷の証拠をゲット、そして冷血のスパイは道具に使った女を消し、主家を潰してしまった侍が挑みかかってくるのもかわし、隠れ蓑の女房も始末しようとするがこれは仕事屋に阻まれることとなる。

 ロケ地、鯖江藩上屋敷、大覚寺大門。鯖江藩勘定方の情婦・お駒がせがんで入手した抜け荷の高麗人参を隠密・伊八に渡す屋形船、渡月小橋下堀端。用済みとなり始末されたお駒の死体上がる川、嵐山公園中州下の桂川
*鯖江藩勘定方・小田切平之介に川合伸旺、はじめ出てきた時は家老と密談していたのでワルかと思ったが、藩を思い情婦には誠意を尽くすイイ奴。抜け荷の証拠を幕府上使に突きつけられ、家老の自刃を見届けた彼は、単身隠密に向かってゆき壮絶な討ち死にを遂げる。*隠密には浜畑賢吉、色悪までは行かないが粘着質なスパイを好演。


第25話 乱れて勝負 1975.6.20

 仕事のシーンから始まり、半兵衛のためらいから政吉が負傷。失敗を悔やむ半兵衛、行く先知れぬ政吉に取り乱すおせい、半兵衛を批判する利助、そして不思議な女に拾われ看護受けるうち心揺れてゆく政吉。破綻の気配濃く過ぎる日々のうち、政吉を拾った女が殺され、事態は妙な方向へ転がりだす。女の仇を討ちに行った政吉は捕われ、利助と半兵衛は救出に向かうが、この際お春に殺しの準備を見られてしまうのだった。

 ロケ地、冒頭の「仕事」の堀端、渡月小橋下堀端。おしのの死体が見つかる川端、桂川松尾橋付近右岸河原(見物衆を掻き分ける政吉は堤道)。おしのが属していた組織のアジト・西方浄土寺、西寿寺山門、本堂前。住職に声をかける政吉は、石段を登りきらない半身を映し、住職は足元のみ映す面白いアングルも。政吉を破蔵して救出するも露見、殺し合いとなる場面は相国寺鐘楼。利助が鐘楼に飛び上がる工夫もあり。
*何回か前から兆していた破調が、遂に形をとって現れる。廃業を宣言する政吉に加え、思わず「お待ち政吉」と口走ってしまうおせい。そして、お春のもとに命からがら帰還した半兵衛が聞く冷たい言葉「汚れは落ちない」「子供なんてできなくて良かった」。これ限りと約して出て、死闘の末しかも得物の剃刀を折り捨てて女のもとへ戻った「ぶざまな」男に、用意されているものは、ひとつ。


第26話 どたんば勝負 1975.6.27

 出始めから響く破局のしらべ、弟を仕事屋に殺された島帰りの盗っ人が嶋屋を嗅ぎ回り、小ずるい火盗改同心がその盗っ人とつるみ攻勢をかけてくる。
利助が消され、政吉は罠にはまって捕らえられてしまうというハードな展開、取り乱すおせいに掟を説く半兵衛、そして母の目前で覚悟の自害を遂げる息子。最後の仕事は元締自身の発願により果たされることとなる。

 ロケ地、利助の野辺送りに陰から手を合わせるお春、大覚寺放生池堤。火盗改、明智門。最後の仕事のツナギをする半兵衛とおせい、大沢池溢水口(木戸前の橋下から大沢池を望むアングル)。事後、逃亡の半兵衛、陽炎の中立ち上がり歩き出すシーンは堀川河床(改修以前の涸れ川)


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