西鶴一代女

1952.4.17新東宝

キャスト
お春/田中絹代 奥方/山根壽子 勝之介/三船敏郎 扇屋弥吉/宇野重吉 お春の父新左衛門/菅井一郎 笹屋嘉兵衛/進藤英太郎 笹屋番頭文吉/大泉滉 菊小路/清水将夫 菱屋太三郎/加東大介 磯部弥太衛門/小川虎之助 田舎大尽/柳永二郎 お局吉岡/浜田百合子 侍女岩橋/市川春代 お局葛井/原駒子 老尼妙海/毛利菊枝 笹屋女房お和佐/沢村貞子 松平晴隆/近衛敏明 重役真鍋金右衛門/荒木忍 重役田代甚左衛門/上代勇吉 丸屋主人七左衛門/高松錦之助 用人篠崎久門/水原浩 笹屋の大番頭治平/志賀廼家辨慶 所司代役人/坂内永三郎 老人/玉島愛造 丸屋の番頭/石原須磨男 貸衣装屋/横山運平 お熊/出雲八重子 お杉/平井岐代子 お仙/金剛麗子 侍女袖垣/草島競子 中宿の女将/津路清子 扇屋の客/国友和歌子 女乞食/衣笠淳子 丸屋の仲居おさん/林喜美枝 丸屋の仲居おたま/大和久乃 お春の母とも/松浦築枝

脚本/依田義賢 監督/溝口健二

∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴‥∴‥∵‥∴‥∵‥∴

 西鶴の浮世草子「好色一代女」を脚色、高貴な女性が辻君にまで身を落とす転変を、天下の大女優が演じきった世界的に評価の高い名画、伊題は「La vita di O-haru donna galante」、英題は「The life of Oharu」。
原作とは異なり、主人公・お春は奔放な「好色女」ではなく、愛に真摯で誇り高かったため運命を捻じ曲げられてしまった、哀れな女として描かれている。だから、羅漢堂の仏さまにお春が見出す面影は、勝之介ただ一人なのである。

天寧寺

ロケ地

  • お春がふらふらと近づくお寺の門、不明(「参道」の塀は筋塀、門前はスロープ。門入ってすぐに鐘楼)。このあと「朋輩」たちが寄ってくるシーンの門と崩れ塀、セットか。娼婦たちが焚き火している男のところへ寄ってゆく「境内」は妙顕寺、本堂・方丈間の回廊下に男が座って木を燃やしていて、回廊上を来た僧侶が火の始末をせよと注意していく(勅使門や石塔が映り込んでいる。鉦太鼓の音が響いている)。音に誘われるようにお春が入ってゆく羅漢堂、天寧寺羅漢堂(ここの外観は映らず、いきなり堂内に切り替わる。僧が本尊前に座して祈り、そのあと羅漢像の前に灯をともして回る。ここへお春が入ってくるが、僧は後ろを見ず作業を続ける。お春が見つめる一体の羅漢像に、勝之介の顔がかさなった途端雅楽が響きだし、回想シーンへ)
  • 下御霊へ初穂料を届けに行くお春さまのくだり、御所描写は二条城二の丸唐門〜車寄前。御殿内庭から侍女を連れたお春さまが出てきて、菊小路卿が声を掛ける。お春さまの駕籠を追ってきて、菊小路の伝言と称し寺町の屋敷へ寄るよう伝える勝之介のシーンは、内濠端。
  • 親子ともども洛外追放となり、屋敷を出てゆくお春一家、不明(萱葺長屋門、屋根押さえも美麗。「母屋」も大きな萱葺)。縁者たちが見送りここまでと役人に制止される橋、不明(欄干も橋脚も木製。橋脚越しに土手を見る図で、親子が去ってゆく姿を映す)
  • お春親子の落ち着き先の家、不明(竹林際の萱葺民家。よく作りこまれたセット?竹林も芝居に使われる)
  • 勝之介処刑の野原、不明(高台、湖西か)
  • 磯部の早が駆ける街道、不明(山道ロング)、里の道(これもロング、里はずれ田んぼ道、亀岡か)。セットの笹屋へ。
  • 野遊びの踊りの中にいたお春を見出す磯辺、不明(芝地の野、木に紐を渡し着物を掛け幔幕ふうにした中で踊りの輪)
  • お春が江戸へ向かう街道、不明(道端に松疎らに生え、遠景に山)
  • 江戸・松平屋敷へ入るお春の駕籠、仁和寺本坊(石畳をゆく駕籠の背景に「トイレ」の建物など映り、駕籠は大玄関へ)。邸内描写はセット。
  • 島原から帰されたお春、迎えの母とゆく道は東寺境内東塀際・南望の図で五重塔映り込み。このあと寄る茶店も東寺、北大門前。門前の手水舎では女乞食に施しをするシーンがある。
  • 亭主となった扇屋を亡くしたお春が、出家しようとして訪ねる尼寺、本法寺。庭で花摘む妙海は三巴の庭(十角の池と円形石が映る)、花を活けつつ尼が話を聞くのは方丈縁先。お春のところへ笹屋大番頭・治平が返済を迫りに乗り込んでくるシーンは庫裏入口。寺を追われたお春、笹屋から暇を出された文吉が合流するのも本法寺、本堂裏手。
  • 店の金を持ち逃げした文吉が追っ手に捕まる街道、不明(地道、坂になっていて灯篭などある)
  • 乞食となり門前で三味線を弾くお春、不明(天龍寺境内と思われるが確証なし。弘源寺を東から見た図のような「塀」、門は中門に似るが続きの塀が崩れている。また、門を出たところに控所の格子が見え、その先には筋塀。「若殿」の駕籠のシーンも塔頭前と思われるが決め手なし)。このあと、倒れたお春を娼婦たちが助けてヤサへ連れ帰り、羅漢堂のくだりへ。
  • 松平邸へ迎えられるお春のくだり、駕籠が着く玄関は仁和寺本坊大玄関。よそながら「我が子」の殿様を見るシーンは天龍寺、殿様は大方丈縁先、お春が控えるのは曹源池畔、あれは我が子と追ってゆくシーンは小方丈裏の回廊。護送用の駕籠が用意されている通用口は大方丈北塀通用口、すぐそばの庫裏脇式台玄関で重職がお春が見つからないと報告を受ける。
  • 家々を托鉢して歩く老尼・お春のくだり、家並みはセット。それが途切れたところで、寺を望むお春が合掌するシーンは本法寺を模したものか。

・日記目次 ・ロケ地探訪 ・ロケ地探訪テキスト版目次 ・ロケ地一覧
・時代劇の風景トップ  ・サイトトップ