江戸を斬る II  1975〜1976C.A.L

太秦日本橋 キャスト
 遠山金四郎/西郷輝彦 おゆき/松坂慶子 次郎吉/松山英太郎
 お政/春川ますみ 太助/高橋源太郎
 閻魔の伊蔵/南道郎 橘町の源七/志垣太郎
 由美/山口いづみ 水野忠邦/安部徹
 鳥居耀蔵/金田龍之介 徳川斉昭(水戸烈公)/森繁久彌


第1話 1975.11.10

 魚政の居候若様の遠山金四郎の無頼ぶりを描き、魚政の若い衆の一人が南町にハメられ獄死する事件を軸に話が進み、悪を許さぬ決意を固めはじめる金四郎で幕。
義賊・鼠小僧の跳梁に手を焼く南町奉行に「妖怪」鳥居耀蔵、これに「怪異」金田龍之介がキャスティングされるほか水戸の烈公に森繁。紫頭巾被って立会いもこなす自称お目付け役のおゆきに松阪慶子。あとは「梓右近」のメンバーが入るほか、若様の乳母で魚政の気風のいい女将・お政に春川ますみと賑やか。

 ロケ地、木曽屋が鳥居耀蔵と談合の料亭、中山邸通用門。亭主の仇を討とうとした女房を助け、捕り方に囲まれ橋からドボンのおゆき、中ノ島橋


第2話 勇気ある決断 1975.11.17

 微行の折り金四郎の活躍を見た烈公は、力量と人柄を見込み水野一派と対抗させるべく彼を遠山家に帰らせ家督を継がせる。
水野一派の企みに乗らぬ絹問屋が借金のことでハメられかける事件と、水野のはねっかえり姫が馬を暴走させる件で「若様」大暴れ、烈公に魅入られる結果となる。

 ロケ地、和泉屋の娘が拉致され船で運ばれるところへ「紫頭巾」登場でチャンバラ、広沢池東岸(堤に塀セット)。水戸藩下屋敷、大覚寺大門と拝観受付のほうの玄関


第3話 颯爽遠山一番手柄 1975.11.24

 いよいよ北町奉行として始動する金四郎、初出仕するも与力同心たちは新任奉行を侮りとても鳥居さまにはと囃す。しかし、鼠小僧の金を使って病の息子の薬を購った浪人が辻斬りの冤罪を着せられ処刑されかかるのを、南町の月番中に鮮やかに解決してみせる。もちろん鳥居耀蔵は激怒、湯気立てて怒る姿がちょっと阿部怪異ふう。

 ロケ地、遠山家門、大覚寺大門。北町奉行所、明智門(西側から海鼠壁をちらっと見せるアングル、後段では下僚に詫びを入れられるくだりで蔵が背景に)。金四郎が奉行就任と聞き、次郎吉がそっと魚政を出て行こうとする裏口、広沢池東岸(扉を配し葦原を見せる演出)。浪人が冤罪を着たのを聞き自訴して出るという次郎吉を止めたお雪と二人、辻斬り目撃者の酒肆の娘とばったり会うのは池堤、事情を聞くのは東岸汀にセットされた船着。目撃者の件を金四郎に報告の紫頭巾、神泉苑太鼓橋たもと。


第4話 人質を奪回せよ! 1975.12.1

 腕のいい建具職人の多吉は盗っ人の仲間、侵入の際手際よく雨戸を外す役をつとめるが、一味の三箇条そっちのけの凶行ぶりに嫌気さし脱けようとしていたところ、ヤサに踏み込んだ金四郎たちに協力を求められる。多吉の手引きで捕縛寸前、一味は押し入った先の娘を人質に逃亡、医者の家に立て籠もりお手製爆弾まで作る始末。おゆきが人質の身代わりに入り、天井から金四郎と次郎吉降ってきて幕。そして今回も水野さまと鳥居は金四郎を追い落とせず。

 ロケ地、多吉のことを報告のおゆきと次郎吉、嵐山公園桂川左岸水制上(堰堤下)。船で押し込み先へ向かう凶盗一味、中州石垣。逃亡した一味を追って走る捕り方、中ノ島橋上。北町奉行所、大覚寺明智門(御殿川から見上げ)。事後、金四郎に鼠小僧廃業を告げる次郎吉、罧原堤下河原


第5話 消えた江戸小町 1975.12.8

 今歌麿と評判の絵師に描かれた女たちが次々失踪、おゆきも拉致される。何をするかというと、金持ちを集めて妙な見世物にしたあと競りにかけるというヒヒ爺の会合。元長崎奉行とつるんだ香具師たちの悪企みは、金四郎によって敢無く潰える。

 ロケ地、絵師に仕事場とたばかられ屋形船に連れ込まれるおゆき、広沢池東岸。旗本屋敷(賭場開帳)と背中合わせの美濃屋寮(変態サロン)中山邸通用門
*岡っ引の護衛つきで賭場に入ってみたり、紋紋の浪人を捜すため太助を引っ括って責めてみたり、思い切り怪しい人身売買サロン(ライトはローズピンク)にまで出席の水野のトンデモ姫、しかし金四郎は彼女がおゆきを鞭から庇ったことで捕物の場から逃してやる。そして金四郎にひっぱたかれメロメロ移行の模様。


第6話 濡れ鼠河内山宗俊 1975.12.15

 御数寄屋坊主・宗俊をモチーフに、水野老中と結託しご禁制の贅沢品を扱う富商をとっちめる金四郎を描く。水野のお転婆姫がその商家に招かれているところを宗俊の手下が見て誘拐、あとはこれを巡ってどたばたと大騒動。宗俊にマジで迫る鬼頭、紫頭巾も出て姫の駕籠を守ったり。金四郎は確保した姫の身柄を盾に水野に嫌味たらたら、でも処分は富商が遠島になるだけ。

 ロケ地、老中と結託の越後屋が抜け荷を水揚げの大川端、広沢池東岸。越後屋から帰る水野の姫の駕籠を襲う直次郎、相国寺天界橋鐘楼前。宗俊が鬼頭に追い詰められドボンの大川、大覚寺大沢池船着(小)。金四郎が出て鬼頭と対峙、五社明神。登城する金四郎、千代田のお城イメージに姫路城天守閣(備前丸から見上げ)。北町奉行所、大覚寺明智門(内外)
*河内山は悪どいながら庶民に人気の侠として描かれる。でも太助から買う魚は大鯛→鰯二匹に格下げ、遠山さまの威光に鳴りをひそめる。


第7話 じゃじゃ馬姫の恋 1975.12.22

 水野老中の縁戚・水野又四郎の横暴を懲らしめ、老中の姫との縁談を持ち込まれる金四郎、お見合いの席ではきっぱり撥ねつけるがおゆきの不興を買ってしまうのだった。
ラス立ちでの入墨披露もあり、要素いっぱいの話ながらテンポよく展開。

 ロケ地、大川で釣りの金四郎、罧原堤下汀・カワヤナギの下に船を仕立てて。水野のお転婆姫の馬が暴走するのを止めるのは下鴨神社馬場、姫が失神したふりは河合社前。抱いて戻り大川に放り投げるのは罧原堤下河原、対岸の山も映る。
*又四郎に川合伸旺、方々の商家で借り倒しを働き目をつけた娘を汚いやり方でゲットしようとするなど悪辣の限りを尽くすが、福々しくニタニタくつくつ笑う演技が炸裂。悪いんだか可愛いんだか判らない始末。金四郎に乱入された際、槍持って振り回すが天井に刺さって身動きとれなくなったり、北町に捻じ込みに来る際は首にギプス巻いてるしラブリーそのもの、タイトルの「姫」霞んじゃう大熱演。もちろんこれにはキュートなBGMがつき満点。


第8話 お小夜のゆくえ 1975.12.29

 鉛被せの偽小判が出回り、探索に奔走の金四郎。手入れで捕まった職人の補充に足を洗った老かざり職が狙われ、孫娘を拉致し強要する企みがなされるが、間違えて友人の魚政の次女・お小夜がさらわれてしまう。おゆきに覚られ孫の懇願を受けた老爺は、一味のアジトに赴き我が手を潰すという捨て身の策に出るが危機一髪。ここには金四郎と紫頭巾が現れる。裏に閻魔の伊蔵と鳥居耀蔵がいるが手は伸びず。

 ロケ地、一味の浪人・原田が口封じに消される、広沢池東岸(堤に塀と稲荷をセット)。お小夜の拉致、大覚寺勅使門橋(御殿川落差工から見越し)


第9話 初春、喧嘩纏 1976.1.5

 大名火消しと町火消しの確執を描く一話。町衆に無体を働きまくる加賀鳶、大名の威光を笠に着て意に沿わぬ者には火がかりと称し家を引き倒し、芸者にフラれたら絞め殺す、挙句その罪を町火消しに着せるなど悪辣の限りを尽くす。最後は金四郎と紫頭巾の活躍で証拠を掴まれ、これを烈公が加賀の殿様に頭越しで見せに行ったりしてワヤ、阿呆払いになったところを北町奉行が門前捕り。半分加担していた妖怪・鳥居は苦虫を噛み潰すのであった。

 ロケ地、冒頭のを組の出初式、背後の建物は二条城大手門に似るも両脇に見たことも無い壁が。加賀藩上屋敷、西本願寺玄関(門、玄関)


第10話 恐怖の罠 1976.1.12

 北町奉行を引きずりおろす今回の算段は、凶盗引っ張り込み。妖怪・鳥居は配下に命じ因果小僧一味を江戸入りさせ、月番の金四郎に無能の烙印を押そうとするが、一味の一人・おさらばお艶が源七にほだされ押し込み先のヒントを残してゆき事なきを得る。

 ロケ地、北町奉行所、大覚寺明智門。鬼頭が因果小僧を手荒く出迎える戸塚付近、上賀茂神社ならの小川畔。
*因果小僧の背には女の生首と石塔の入墨という設定、遠山の背にこれがある設定のも見たような気がする。


第11話 二人鼠小僧 1976.1.19

 病の母を支えて健気に生きる幼い娘に、魚政の面々は同情しきり。環境のよい場所に迎えとろうとするが固辞される。訳は、グレて家出した息子が帰ってくる時のためという泣かせる話。しかし息子は盗っ人と成り果てていて、江戸で一仕事した金を持って帰還、母はこれを叱りつけ自訴して出ろとはねつける。
これに、幼い妹が兄は義賊の鼠小僧と思いこんでいることと、兄の一味が鼠小僧を騙って仕事をするという設定がからみ、その上妖怪・鳥居が金四郎就任と同時に鼠の跋扈が止んだのを怪しみ探索の手を伸ばしてくるからややこしい。
後段、たまらず介入の次郎吉に紫頭巾もからみ大騒動、まだ悪に染まりきっていなかった息子は改心し盗っ人を告発する証人となり、罪一等を減じられる運びに。

 ロケ地。冒頭蜆売りの娘がゆくシーンに梅宮大社神苑汀。
*鼠を騙る上方の盗っ人に今井健二、凶盗設定ではないしお白州でも神妙、なのにビジュアルはとっても兇悪。見た目もっと兇悪な甲斐守は、自分が探索を命じた途端鼠が出たのは偶然ではないとブチ上げる間抜け設定で阿部怪異の不気味さには至らないのだった。


第12話 蜜柑は七万七千石 1976.1.26

 伊予・荻江藩のお家騒動、病の藩主をいいことに国家老が嫡子を亡き者にして愛妾が産んだ子を据えようと謀る。背後には水野がいて援護射撃、嫡子を護って斬り死にした藩士は鳥居耀蔵が出張り「病死」と言い張ったりする。紫頭巾となって殺されかけた嫡子を救ったおゆきを助けて動く金四郎、老中と藩国家老と愛妾の実父・尾張屋が密談の座敷に乱入、越前守に皮肉たっぷりカマしワルどもを引っ立てる。無事藩に迎えられた若様は長じてのちも匿ってくれた魚政への恩を忘れず、季節には伊予の蜜柑が届けられることになる。

 ロケ地、若君を守って備前橋で斬り死にの荻江藩士、中ノ島橋南たもと(若様、岸から川にドボン)。検分の伊蔵を茶店に伴い荻江藩家老に目通りさせる鳥居、堰堤脇に茶店セット。侍の亡骸はと聞く老武士に応え無縁墓へと伴う金四郎、化野念仏寺石仏群。事後、藩に迎えられる若君を見送る魚政の面々、桂川松尾橋下手右岸堤(カメラはパンして汀で釣りの金四郎に)


第13話 鱈に当って死んだ奴 1976.2.2

 遊び人の半次は、魚政の払いをさんざん溜めているくせに恐喝を企む。その手口たるや、恵んで貰った鱈に当って弟分が死んだと偽り賠償金を取ろうという乱暴なもので、払わねば死人にかんかんのうを踊らせると凄む。しかし脅しに行っている間に、早桶で待機中の弟分は侵入者に殺されていてタイヘン。来合わせた伊蔵親分は半次の与太話を聞き、調べもせずおゆきと次郎吉を括る始末。このあと、半次は金四郎の示唆で弟分を殺した連中を釣る囮となり働くが、連れ込まれた回船問屋には以蔵も捕われ、殺されると知るや「見逃す・手貸す・お上の動きを逐一報告」とあがくが相手にされずぶっ叩かれたり。二人を救出し抜け荷回船問屋を召し捕りの金四郎、紫頭巾に救われるは源七親分の活躍を見せつけられるはで以蔵親分さんざん、三ノ輪の万吉状態に。

 ロケ地、引っ掛かってきた回船問屋の手下に船で拉致される半次、嵐山公園中州水路湛水域(渡月小橋くぐる)。追った金四郎たちが船を見失う大川、罧原堤下桂川本流。ラスト、釣りの金四郎、桂川森ノ前町堰堤下右岸汀
*半次に品川隆二、名前も同じの「焼津の半次」そのもの。


第14話 危うし紫頭巾 1976.2.9

 紫頭巾の格好をした辻斬りが多発、おゆきはカンカン、伊蔵と妖怪・鳥居は喜色満面。しかし辻斬りは本来のターゲットから目を逸らすための偽装で、哀れな貧乏浪人がライバルを消したい口入屋に強要されていたもの。金四郎の無茶捜査とおゆきたちの無鉄砲潜入でワルの正体が割れ召し捕りとなるが、浪人は我が身を恥じて立ち腹を切る結果に。

 ロケ地、おゆきと金四郎のツナギに大沢池畔、北町門に明智門。落とし穴の仕掛けがあったりする上総屋の寮、中山邸(通用門、参道)、ラス立ちもここ。事後、残された浪人の妻のその後を話す金四郎たち(落とし穴で大麻で燻され危機一髪のおゆきが「金四郎さま助けて」と漏らしたことを次郎吉が告げ口)金戒光明寺本堂前茶所石段


第15話 めで鯛八五郎 1976.2.16

 魚河岸の「お召し上げ」ネタ、しかしこれは小道具で、御膳所のポストを巡る役人間の殺人事件が軸。魚政の若い衆が犯人とされあわや処刑の直前、駆けずり回った金四郎たちの働きで冤罪は晴らされる。

 ロケ地、八五郎のアリバイについて金四郎に報告のおゆき、お堂が不明。八五郎の恋人に会いに佃へ赴く金四郎たち、佃の渡し、広沢池東岸。八五郎が金を隠していた蛸壺を求めお浜御殿の石垣をかりかりの金四郎、浮御堂あたりか。
*八五郎の件で金四郎へあわよくば累をと目論む妖怪・鳥居、嫌疑晴れ目論見崩れるも、八五郎が江戸へ来たばかりなのを人別に載っていないとして「人返し令」に則り所払いとする。これは釈放後すぐに祝言を挙げさせメデタシ。金四郎と交渉の際の鳥居の笑い「ふぬははは」が段々阿部怪異じみてくる。


第16話 燃える牢獄 1976.2.23

 賭場で以蔵に捕まった魚政の若い衆、一人だけ牢に送られてしまう。陰謀はこれにとどまらず、火の手の回った牢から囚人を解き放つ段で鳥居が引き伸ばし、焼き殺すに忍びない金四郎は切腹覚悟で責を負い解放、しかし放たれた魚政の弥太は伊蔵の手におち監禁されあわや出頭不能の事態に陥るのだった。

 ロケ地、北町奉行所、大覚寺明智門。出頭場の回向院、龍潭寺
*源七やおゆき、新門辰五郎らの奔走で監禁場所から救出され、戸板に乗せられ回向院門前に辿り着く弥太、しかし鳥居の企みで人手を借りて門内に入ること罷りならぬとお達し。力をふりしぼり這って入る弥太のシーン、無表情でこれを見る、門を固める下士に福ちゃん。


第17話 雛まつり殺人事件 1976.3.1

 近所の女児が雛人形を買って貰えず寂しそうにしているのを見かね買い与えるおゆき、その人形が強つくばりの大家に取り上げられたと聞き談判にゆく。しかし行った先ではその因業親父が殺されていてタイヘン、死体のそばにあった血文字を証拠として伊蔵に捕縛されてしまう。次郎吉の手引きで牢破りのおゆき、怪しいとふんだ銭屋の甥と対決、最後は北町のお白州で決着。

 ロケ地、お政のすすめで金四郎と実母の墓参にゆくおゆき、帰りに一服の茶店は今宮神社門前・かざりや。ここへ来かかり金四郎に迫る水野の姫、東門から出てくる。次郎吉が市太郎を尾行する築地の八幡様、赤山禅院参道〜本堂(陶器の狛犬が見えている)〜脇の朱玉垣前に茶店セット(ここでまかれる)
*妖怪・鳥居、金四郎にしてやられたと伊蔵をばんばん殴って湯気立てて怒る。


第18話 忠治江戸に現わる 1976.3.8

 板橋宿で御用金が強奪され、国定忠治の仕業とされる。しかし実際は忠治の名を騙ってのことで、裏には抜け荷で大儲けを企む悪徳商人がいた。ほんものの忠治も江戸に来ていて、こちらは百姓のなりをして子連れ、自分を助けて落命した女の遺児を父に会わせるための潜入。紆余曲折あって真犯人を挙げお手柄の金四郎、忠治にはもちろんお咎めなし、そっと江戸を去らせるのであった。

 ロケ地、御用金事件のことで源七とツナギをとる金四郎、赤山禅院本堂脇に茶店セット。ここで路銀をなくしたと途方にくれている「忠治」と出会う(忠治が金四郎に貰った大福を連れの女児に与えるのは池辺)
*忠治に横内正、騙りの男に和崎俊哉、暴将第一シリーズの大岡忠助とお庭番。*今回も金四郎に手柄を立てられきいきい怒る鳥居耀蔵、伊蔵親分を叱責「顔も見たくないわ」。


第19話 桜吹雪が闇に舞う 1976.3.15

 滅多に墨を見せない本作の遠山さまがお白州で片肌脱いでおぅおぅおぅ、これを見せるのに大滝秀治をキャスティングし憎さげに「証拠はございますかな、証拠は」としつこく迫らせる。これに至るに、大滝秀治に騙されて吉原へ娘を売ったものの金も貰っていない老母の哀話と娘たちの難儀や、同様の目に遭い兄を殺された娘の話が時間をかけて語られる。大滝秀治の大ワル吝嗇医者への憎悪を掻き立てるお奉行さまを集中して描くため、今回妖怪も閻魔も登場せず。そして証拠の桜吹雪を見せたあと、恥ずかしいものを開陳させやがってとナイーブな遠山さまなのであった。

 ロケ地、吉原から逃げ伊勢屋の若旦那と心中未遂の小夜衣太夫、広沢池東岸葦原。この際誤って若旦那を刺した乳兄弟が自訴して出る北町門前、大覚寺明智門。若旦那ともう一人、圭庵に苦情申し立ての若者が消されて上がる大川、桂川松尾橋付近右岸汀。おゆきと源七が張り込み圭庵の指示で悪事を働く早乗り三次を捕縛の千住大橋、中ノ島橋。遊び人のなりで仙台藩下屋敷の賭場へ潜入の金四郎、大覚寺五社明神大門


第20話 娘目明し 1976.3.22

 タイトルの女親分は名岡っ引の一人娘、土田早苗が演じる。
事件は当初ならず者同士の殺傷事件と見えて裏に阿片密売の悪の組織、遊び人のなりで町をうろつく金四郎、売人の女が中毒になりフラフラなのを救出・女親分が先走って監禁されへろへろなのも助け、紫頭巾と一緒にワルを叩きのめし捕り物小町の手柄にして去ってゆく。女親分の手柄は瓦版となり、見当違いの男を捕えて悦に入っていた伊蔵は鳥居耀蔵に激しく叱責されてオシマイ(説明くさい怒りかたがちょっと阿部怪異ふう)

 ロケ地、北町奉行所、大覚寺明智門


第21話 目撃者は花嫁 1976.3.29

 身を固めろとせっつく親に魚政の入り婿になると嘘をつく太助、父と妹は一目嫁をと出府、そこで父が殺人事件の容疑者として伊蔵に誤認逮捕されてしまう。もちろん乗り出す金四郎、被害者の妻が殺し屋を頼んだ経緯を洗い出し鮮やかに解決してのける。事後、養女だった妹と太助を娶わせる次第となりメデタシ。

 ロケ地、太助の父と妹が出府途中通る道、大覚寺放生池堤(池から鰻の魚籠を上げる父の姿を描写、息子に鰻を料理してやろうと持参の目打ちが殺しの道具とされてしまう…この作品はこういうところが丁寧)
*白州に引き出された殺し屋、手口は針をぼんの窪に刺すという設定、また「晴らせぬ恨みを晴らしなどと言っちゃあいるが」との捨台詞は必殺を意識したものか。依頼者白木万理だし。


第22話 恐怖の黒い狼 1976.4.5

 凶盗・黒い狼が跳梁、鳥居の余計な口出しで金四郎は水野老中に逮捕の期限を切られてしまう。調べを進めるうち一味に幼馴染がいることを知る金四郎、深川の無法地帯に身を沈めるその男は金四郎の説得にも耳を貸さず、病んだ体を放棄するような形で捕り物の最中に自刃して果ててしまうのだった。

 ロケ地、幼馴染の生駒が金四郎を呼び出す山王御旅所、赤山禅院(本堂、朱玉垣)。生駒の回想、生計のため川で蜆取りの生駒少年を手伝い小遣いを渡す金四郎、上賀茂神社ならの小川(川中、神事橋)
*生駒弥三郎に山口崇、濠外に巣食うアウトローを狂犬じみた目つきで好演。


第23話 人情恋裁き 1976.4.12

 今回の伊蔵親分の誤認逮捕は金四郎、おゆきに岡惚れの島屋の若旦那を巡る恋の鞘当てから起こる一件。うしろで糸を引く盗っ人への手配は金四郎の示唆で橘町の親分が鮮やかにしてのけ、金四郎の身柄は「遠山家用人」が引き取りに来て幕、渋々引き渡す知らぬが仏の以蔵なのであった。タイトルは岡惚れ若旦那を元の鞘に戻してやる北町奉行のお裁きから。

 ロケ地、太助が若旦那に妙な工作の茶店、今宮神社門前・かざりや。若旦那の許婚者の兄が突っかかり以蔵に十手でボコられる、石橋東門。釣りの金四郎が盗っ人について次郎吉の報告を受ける、大覚寺大沢池水門付近の汀。


第24話 まごころ 1976.4.19

 寄場帰りの勝次、彼のため奈良屋の大旦那に落籍された元芸者の姉。更生を誓う男と主に誠心を尽くす女が、金がらみの陰謀に巻き込まれ互いを庇い自分こそ奈良屋殺しの下手人と言い立てるのを、綿密な調べのすえ鮮やかに裁く金四郎。ワルの企みを打破するのに遠山さまは鳥居に頭を下げ、紫頭巾はワルの手下を捕えに賭場へ乗り込み大暴れ。

 ロケ地、奈良屋の妾・お駒がお百度を踏んでいて襲われる宮、今宮神社稲荷社前〜高倉脇坂。お駒と勝次姉弟のことを金四郎に話す橘町の親分、大覚寺大沢池畔〜天神島
*伊蔵親分の誤認逮捕はいつものことでそれなり、しかし鳥居耀蔵が金四郎の申し出を受け係りをあっさり北町に譲るのには拍子抜け。なんか裏でヒーッヒッヒッとか笑って毒練ってそうで怖いんだけど何も無し。


第25話 狙われた遠山桜 1976.4.26

 金四郎の桜と酷似の彫り物をした浪人が辻斬り、これを見た伊蔵は張り切りまくり桜探しに奔走。しかもその辻斬りが、おゆきの拾ってきた行き倒れ若侍の父の仇ときて大騒動。先走って仇のもとに乗り込んだ若侍のもとに駆けつけた金四郎、危機を救い決着は白州に持ち込んだうえ、仇討ちに許可を与え思いを遂げさせてやる。

 ロケ地、助けてキャー女に騙され水野の姫の待つ屋形船に連れ込まれる金四郎、桂川松尾橋付近汀に船着きセット。辻斬り騒ぎを追っかけてこの二人を見てしまうおゆき、松尾橋下手右岸堤。金四郎が捕り方に引っ掛かっているのに騎馬で駆けつける水野の姫、走る道は糺の森か。金四郎がセッティングしてやる仇討ちの場、大覚寺天神島(幔幕と柵を巡らせ)。事後、加賀さまの上屋敷前(看板が掛かっている)で痴話喧嘩のおゆきと金四郎、西本願寺大玄関門前〜唐門南塀
*仇討ち侍を助けに馳せ参じる金四郎は捕り方に阻まれるが、水野の姫が「このお方は」とやり放免で伊蔵に正体バレ。


第26話 美しい復讐鬼 1976.5.3

 ライバルの島屋に無実の罪を着せられ刑死した父の仇を狙う美女あり、陰謀に加担した南町同心とお店者を始末し首謀者に迫るが、最後の段で危機に陥るところを金四郎に救われ同時に仇討ちは阻まれる。白州であくまで白ばっくれる島屋を証拠揃えて断罪の金四郎、お付の老爺が実行犯だったこともあり娘には殊勝と罪一等を減じ所払いとするのだった。事件の背景には鳥居が一枚噛んでおり、白州では同席させられた用人が冷や汗たらーり、しかしきっつい皮肉を聞かせるのみに終わる。

 ロケ地、金四郎たちのツナギの汀に広沢池東岸、ラスト志乃見送りの品川の浜も同所(こちらの画では桜満開)
*仇討ち美女にジュディ・オング、相手に簪でかかっていったりする。実行犯の老爺は朱紐でハンギング、ちょっと必殺ふう。


第27話 陰謀の嵐 1976.5.10

 上知令を発し独裁を確立しようとはかる水野老中、妖怪・鳥居の裏切りに遭い失脚の巻。
上知令を痛烈に批判した神官・野中静山が鳥居の策謀により暗殺、その息・英三郎と越谷の百姓衆も追われるのを助ける金四郎、しかし水野と鳥居の陰謀で閉門蟄居に追い込まれる。しかも英三郎らを水戸屋敷に落す際、紫頭巾が捕われ正体を暴かれてしまう。このピンチに水野の姫は父を脅し身を挺して金四郎らを庇うが、鳥居の裏切りで水野は失脚してしまう。

 ロケ地、由美姫が入る尼寺、不明。
*水野の姫、捕われたおゆきを庇うのに大奥行きを泣く泣く承知したり、その後金四郎の窮状やおゆきの監禁を知った際には髪を下ろすなど、初期のいけずぶりとは全く違う「いいヤツじゃん」設定。対照的に、いよいよ妖怪の正体を現す鳥居耀蔵、襖の陰で説明じみた悪企みを呟くなど阿部怪異に似てくる。


第28話 天保の夜明け 1976.5.17

 前回から竹轡噛まされて監禁されたままのおゆき、閉門の金四郎。動きとれぬまま評定の日は近づき、魚政なんか全員南町の牢にブチ込まれる始末。しかしマイティー鳥居の策謀は、金座後藤の始末を急いだ彼自身の酷薄さがアダとなって破れる。これには由美さまが一役買い、尼姿で金四郎に会い「雪姫さまとお幸せに」が泣かせる。

 ロケ地、おゆきが監禁されている金座後藤の小梅寮、中山邸通用門
*妖怪鳥居全開のお話、金田龍之介巨体をゆすって熱演。処々にででーんとアップの顔も映りまくり、迫力。最後は評定の席で立場逆転し免職・遠国預けを申し渡されてしまうが、「怪異」ほどの悪あがきは無し。評定の朝、何も知らずに縁側で壺を磨いてる姿が可愛い。「鳥居は爽やかな朝を迎えた」なんてナレーションが被さって傑作。


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