時代劇ロケ地探訪 宗忠神社

一の鳥居 拝殿
 宗忠神社は、黒住教の祖を祀る神社。備前中野村の神社に生まれた黒住宗忠は、二親を亡くし自身も病にある折り「天命直授」を受け黒住教を立てるに至る。教祖は嘉永3年に亡くなり大明神の神号を受け、文久2年ここ神楽岡に宗忠神社が建てられた。本部は岡山にある。
玉垣
 本殿や拝殿は一段高く嵩上げされ、前面にはかっちりした石の玉垣が巡らされる。その左手の玉垣前は駐車場になっている。
ここで、トータル888話を数えた大川橋蔵の捕物劇銭形平次の、記念すべき第一話のひとこまが撮られた。放送されたのは1966年。
そのお話「おぼろ月夜の女」は、寛永寺の御用金五千両を掠めとった大泥棒が仲間割れする話。盗賊団の一人は堅気の暮らしをするうち改心、盗った金はお上に返そうとするが仲間に殺されてしまう。その娘が一味を誘い出す囮になると申し出るが、彼女を祭りの人ごみに見失い途方にくれる銭形の親分が座るベンチがここ。八五郎がぼやく言葉にヒントを得るくだり、祭囃子が漏れ聞こえるお宮さんのはずれという設定。いまベンチは無く石垣が一個分くらい土に埋もれているが、撮影当時からさしたる変化は無い。
参道坂 一の鳥居から見上げ 参道坂 中ほどから見上げ
二の鳥居
 参道の坂は石畳で、桜並木が続き根方には躑躅の刈り込み。最近中央に手すりが設けられた。形状を見て、子供時分なら滑り台にして遊ぶなと思っていたら、登りきったところに「きけんのるな」と書いてあり、誰しも同じと笑いが漏れた。桜花の候はもちろん新緑と躑躅も美しく、木が葉を落し陽光降り注ぐ冬も味わい深い坂である。
池波小説を映像化した傑作時代劇雲霧仁左衛門(山崎努主演)の「張り込み」は、雲霧一党が入念な根回しのうえ名古屋の富商を狙う話。別の盗賊が雲霧のターゲットを横からさらおうとするエピソードがあり、その盗賊・櫓の福右衛門が雲霧配下の山猫の三次と出会う坂がここ。盗っ人宿の茶店でツナギをとった三次が坂を降りてくると、「三次どん」と旅の男が躑躅の植え込みから出て声をかける。場所は二の鳥居のすぐ下、アップとロング両方で見せる。雲霧は来ているのかと問う福右衛門に足を洗ったと誤魔化す三次だが、調子よく祝金を渡されてしまい以後雲霧を裏切ることになる。「坂」の設定はドラマでは格段語られないが、原作では尾張の下級藩士が住まう一帯を抜けて万松寺の大屋根を望むあたり、と細かく描写されている。
一の鳥居越しに真如堂を望む 北側入口

 坂で声を掛けられた三次が福右衛門に金を渡される人けのないお宮さんは、竹中稲荷で撮られている。吉田神社の摂社のひとつだが、宗忠神社の脇に通じる坂道を隔ててすぐにある。上写真右の、塀越しに見えている赤い鳥居が竹中稲荷。坂道をさらに行くと、吉田神社大元宮の前へ出る。この立地ゆえ、吉田神社で撮影が行われる際に宗忠神社も使われる。確認している例では、悉く吉田神社でもロケが行われている。
一の鳥居を東に行くと自然と真如堂門前に出る。神の丘・吉田山と、大寺二寺が建つ黒谷はこんなに近い。

京都市左京区吉田神楽岡町

→使用例一覧
参考文献:池波正太郎著「雲霧仁左衛門(前)」新潮文庫 ISBN4-10-115612-3

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