時代劇ロケ地探訪  大内宿


 会津の山間部にある大内宿は、往時の風をよく残す人気の観光スポット。会津西街道の宿場町には多数の萱葺民家が残され、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。道脇には清冽な水の迸る水路があり、飲み物が冷やされているのも懐かしく慕わしい情景。

 映画やドラマには、役者さんを入れてのロケのほかに、風景のみの「イメージカット」がある。テレビシリーズの水戸黄門などが好例で、お芝居が入るシーンは京都近辺だが、ところの説明には現地の名所を用いるのが通例。この手法の変形に、イメージカットも現地と異なる場所で、お芝居はスタジオセットというケースもある。こうした例では決まりきった使い回しの絵が多いが、永く印象に残る見事な風景もある。

 2004年の大河ドラマ・新選組!「芹沢鴨、暴発」は、大志を抱いて京にのぼる途次、中山道本庄宿での話。物慣れぬ近藤勇が宿割りをしくじり、芹沢鴨の機嫌を損ねて大騒ぎになる有名なくだりで、拗ねた鴨が大道で火を焚いて、詫びる近藤を耐えつつ眺める試衛館の同志という、後段につながる重要なエピソード。この宿場の「イメージカット」に大内宿が使われた。遠景でほんの一瞬だが、そこが宿場であると一目で覚らせる、説得力満点の画だった。

 風景の保存には、金も手間もかかる。殊に萱葺の維持は集落挙げての作業となるので、ご苦労も並大抵ではない。ここ大内宿でも、保存のため常時メンテナンスが行われている。美しい風景を観る裏に、こうした不断の営みがあることを忘れてはならない。

福島県南会津郡下郷町


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