時代劇の風景  ロケ地探訪

大覚寺

− 護摩堂 −

 護摩堂は大沢池北岸に建つ。裏手は心経宝塔前の広場になっている。右手に鎌倉期の石仏群が並び、左手に大きな楠が生えている。
堂正面に掲げられた額には「仏母心院跡」とあるが、護摩木を焚くところなので「護摩堂」と称する。
こじんまりとした形から各地のお堂として使われる。旅物をはじめ江戸の市井を描く作品にも多用される。
護摩堂正面 護摩堂・東側面
 斬り抜ける「女が道を変えるとき」では楢井俊平に黙って宿を出た菊と太一郎が休む街道筋のお堂として使われた。
からくり人シリーズでもよく使われた。泣き節お艶が縁に腰掛け休んだり三味を弾く姿などが正面から・裏手からとさまざまなアングルで撮られている。
新必殺仕舞人「三界節娘恋し父恋し」では庄屋屋敷から逃げてきた百姓が堂前に至ると、仕舞人チームが堂内床下に潜んでいる、といった使い方がなされている。
岡っ引どぶ「悪魔の小箱殺人事件」ではちゃるごろ(オルゴール)を鳴らしながら夜間、雪乃姫を探すどぶの姿が見られる。
鬼平犯科帳「墨斗の孫八」では堂前で刺客に襲われる盗賊の頭・孫八を長谷川平蔵が助け、その後誘われるまま孫八の家へ上がりこみ朝まで呑み明かすという展開が見られる。同「殺しの波紋」では弱味を握られた火盗改与力・富田が堂前に呼び出されている。
剣客商売「父と子と」では佐々木三冬が旗本・永井の用心棒に頭から網を打たれ害されるところを秋山小兵衛に救われている。同「嘘の皮」では香具師の一人娘に手を出した旗本の若様・村松伊織が堂前でボコられている。
三匹が斬る!「仇討ちの乙女も愛でよ秋花火」では仕官登用試験に急ぐ千石が堂脇から出て来た仇討ち少女に行く手を阻まれる。同「空っ風可愛い女の恨み文字」では千石が寝ている高崎・倉賀野のお堂として使われ、日光例幣使に斬りこむ渡世人を目撃する。同「人妻の涙甘いかしょっぱいか」では三匹が力を合わせ折角助けた侍が実は裏切っていた女房に刺されてしまう。続・三匹「名物の喧嘩団子が結ぶ恋」では仲の悪い商売敵の二世代が共に堂の縁に座っていちゃつくシーンが展開された。
幕府お耳役檜十三郎「恋文代筆仕り候」では悲恋の旗本の若様と茶屋娘が夜に逢引し、益体もない話をえんえんと続けた挙句朝まで眠り込んでしまう。
長七郎江戸日記「狙われた姫君」では辰三郎が襲われた娘の手を引いて堂前まで逃げてくると、堂の中で雨宿りしていた長さんが出てきてならず者をやっつけてくれる。同「幻の母を見た」では護摩堂前で柳生の長七郎担当の見張りに情報を貰い、裏手で自分の使う密偵とツナギをとる長さんの姿が見られる。
護摩堂・裏から 心経宝塔前の広場から護摩堂
 堂の裏手の風景も使われる。脇で伸びやかに枝を広げる楠の向こうに大沢池の水面が光る。
 暴れん坊将軍2「爆破!人質は八百八町」では人質交換が行われる原っぱへの道として使われ、護摩堂裏に「この先護持院河原」と書かれた道標が置かれている。
鬼平犯科帳6「はさみ撃ち」では盗みに入ってきた賊を撃退した元盗賊の主従がお白州をやり過ごし帰ってゆくシーンに使われた。独特のリズムで歩く猿皮の小兵衛のシルエットが印象的。
痛快!三匹のご隠居ではオープニングで紅一点のお蝶が走ってくる姿が堂裏から撮られている。
護摩堂と石仏 鎌倉期の石仏群
 護摩堂のすぐ右手には細い路地を挟んで石仏が何体か置かれている。鎌倉期のものと伝わる。
 必殺仕舞人最終話では先に江戸入りしていた晋松がチームを護摩堂に呼び集めるが、見張られている気配に気付き晋松は堂内に、板東京山と直次郎は石仏の裏に隠れる。
鬼平犯科帳「盗法秘伝」では鬼平と知らず盗みの技術を伝授した善八が金を隠していたのが石仏の下。同「用心棒」では見掛け倒しの用心棒・高木軍兵衛が長谷川平蔵を呼び止めるのが石仏前。
天神島への橋から護摩堂を見る 南堤から護摩堂を遠望
 変わったところでは江戸中町奉行所「闇に消えた女」で、護摩堂の裏手に繁華な料亭をセットし撮った例がある。夜のシーンだし通常のシチュエーションと違うので、石仏群が映っていなければ判らなかったところである。
続・三匹が斬る!「お七里のイジメが元で不倫妻」では設定は旅先の街道筋で他の例と特に変わらないが、ラス立ちのシーンに堂前が使われ、殿様は普通に堂前に立っているが千石は脇の楠に登っていて、木から飛び降りて斬り込んでくるというダイナミックなものである。
■ 大覚寺 表紙

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