時代劇の風景  ロケ地探訪

大覚寺

− 天神島 −

天神島へ渡る橋 天神島橋・北から

 天神島は大沢池に浮かぶ島である。島といっても北辺を水路で隔てただけで、放生池堤を通じてほぼ地続きの小さな空間である。
島の中央には祠が祀られ、前に石の鳥居が大沢池に向かって立っている。祠の脇には大木が聳え、根の上がった魁偉な相を見せている。
島へ渡る橋は朱塗りの擬宝珠つきの派手なもので、よく目立つ。痛快!三匹のご隠居オープニングで紅一点のお蝶が走るのはこの橋である。

 祠が町外れの情景に設定されるほか、大木も「回向院裏の一本榎」などと称され使われる。江戸の市井に擬されるほか、地方の村の鎮守などとしても使われる。シチュエーションは待ち合わせ場所や呼び出し場所で、たいてい人質交換などの碌でもない用事なことが多い。

大木と祠
池畔から鳥居越しに祠を見る 鳥居越しに大沢池
 新必殺仕置人「夢想無用」では鳥居で女に懸垂をさせ自身は祠脇の石の囲いに腰掛けて見ている正八の姿が見られる。
翔べ!必殺うらごろし「病気で危篤の男が銭湯にいた」では仕置対象の岡っ引・まむしの以蔵が若に木に吊るされてサンドバッグにされる。
服部半蔵 影の軍団「標的は謎の女」で保科家の用人が半蔵に相談を持ちかけるのは鳥居の近く。
長七郎江戸日記では元は大目付・柳生宗冬の命で長七郎に張り付いていた柳生忍の沢木兵庫(六さん)が晴れて長さんファミリーにカミングアウトするエピソードや、その六さんの悲恋話、SPでは珍しい長七郎のラブシーンもここで展開される。
暴れん坊将軍では琉球から拉致された母を探しに来た娘が騙されて呼び出される祠や、女幇間を密殺しようとした同心が橋のところで新さんに阻まれたり、火盗改の役人と結託して芝一帯の店に立ち退きを強いる悪徳商人が成敗されるラス立ち現場にと、よく使われている。
三匹が斬る!では上州・倉賀野の鎮守として設定され、例幣使の伽に出された村娘が縊死する。同「十手旅、義賊が吹いたシャボン玉」では用心棒に雇った浪人たちに奪われた豪商の財を掘り返す役人の姿が見られる。
雲霧仁左衛門「最後の大仕事」では辻家の元郎党が雲霧のおかしらに藤堂藩国家老の動静を報告する場に、また手下の州走りの熊五郎に別れを告げる場として使われた。おかしらは木の根方に立っていて、派手に上がった根の間に石仏が多数あしらわれている。
必殺!主水死すでは権の四郎によって爆破された主水のいる筈の小屋が燃え上がるのを見つめる秀や勇次のいるのは天神島。
京極夏彦「怪」「隠神たぬき」で芝右衛門狸の墓が立てられているのは木の根方。
陰陽師安部晴明で霊剣・雷切丸によって彩子から分離した「瘴気」と対決、のシーンは天神島で撮られた。また、怪談百物語「雪女」で雪女ハンターが真夏に凍死して見つかるのが、木の根方。
北辺の水路 北水路に浮かぶ観月会用の船
■ 大覚寺 表紙

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