時代劇の風景  ロケ地探訪

妙心寺

− 塔頭 −

退蔵院 退蔵院境内 桂春院 桂春院境内
東海庵東門 東林院 玉鳳院唐門 雑華院

 夥しい数を誇る妙心寺の塔頭群。大小もゆかりも様々で、内部に趣き深い庭園を持つものも多い。信仰がデフォルトなので非公開のものがほとんどだが、幾つかの塔頭は公開されていて拝見できる。退蔵院の庭と国宝の墨絵・如拙の瓢鯰図や、桂春院の小堀遠州の流れを汲む侘びた風情が見事な庭などが夙に有名。最近では梅雨の頃に開く沙羅双樹を愛でる人で賑わう東林院など、話題に事欠かない。

 妙心寺の塔頭が時代劇に使用される場合、塔頭の門を武家屋敷になぞらえることが多い。大小さまざまの門が老中の屋敷だったり、吉良さまの屋敷だったりする。画面にちらっと映るそれからはなかなか判りにくいが、あれこれ忖度するのも時代劇を見るたのしみの一つである。

龍泉庵 隣華院
麟祥院 大心院境内
 龍泉庵は、南の総門を入ってすぐにある塔頭で両脇の忍返しが特徴。暴れん坊将軍各シリーズでよく武家屋敷に使われた。幕閣の屋敷が多く、大岡忠相邸などもある。2005年の国盗り物語では、京における明智光秀邸になっていた。
隣華院は暴れん坊将軍III「花咲ける忠臣一代」で硬骨漢の老中・水野忠之邸として使われた。吉右衛門の大石が話題を呼んだ忠臣蔵 決断の時では吉良さまの実の息子が殿様の上杉家上屋敷として使われた。同話では麟祥院が吉良さまが屋敷替えを命ぜられるまで住んでいた呉服橋の屋敷として使われている。
大心院は暴れん坊将軍III「誇り高き父」で家宣公から拝領した葵の紋入りの羽織をさんざん悪事に利用する元御数寄屋坊主・桂田桂舟邸として使われ、門越しに庭の大刈り込みが見えていた。
衡梅院 天祥院
聖澤院 大雄院

 人情同心の活躍を描き、江戸弁の上司も人気の捕物ばなし八丁堀の七人ではその上司「だぜい」の与力・青山久蔵邸として衡梅院が使われた。そのほか、天祥院が書院番組頭・桑原図書邸に、別の回では松平宮内少輔邸として使われた。ワルを見捨てておけぬ青山さまは職を賭してこの門前で少輔が出てくるのを待ち構えるのであった。
聖澤院は最近きれいに修復され、北大路欣也の名奉行 大岡越前にさっそく勘定奉行邸として使われている。以前にも暴れん坊将軍で安中藩邸として使用例があり、ちゃんと元の姿に復されていることがわかる。
大雄院は、徳川武芸帳 柳生三代の剣の、宇都宮釣天井事件の段で、宇都宮城下の作事奉行邸として使われた。柳生宗矩の妾・お藤に関わり、忍者と疑われ斬られてしまう娘の哀切なくだりである。藤田まこと版剣客商売「暗殺者」では、田沼老中を狙う刺客を強要するため、浪人の妻子を監禁する松平伊勢守の深川下屋敷として使われた。

退蔵院庭園
 塔頭の庭園が舞台となることもある。退蔵院は、狩野元信作の枯山水の石庭や国宝の瓢鮎図で知られる。ロケに使われるのは奥にある余香苑の池泉で、平地のお寺の一隅とは信じられぬ深山の趣きをもつ流水庭園。上写真の、藤棚の下から滝組を望むアングルが使われる。松方弘樹の名奉行 遠山の金さん「桜吹雪が泣いた!」では、お奉行の旧友を使嗾して刺客に使うワルがここで良からぬ密談をしている。暴れん坊将軍では、上様が逍遥するお城の庭として何度か登場する。禅寺のお庭には珍しい伸びやかな明るさが、大名庭園に擬されるに相応しい風情なのである。

妙心寺 表紙

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