時代劇の風景  ロケ地探訪

桂川 罧原堤周辺

− 松尾橋周辺 −

松尾橋 鳥居は松尾大社 松尾橋から桂川

 松尾橋の上手には堰堤があり、堰下には州が形成される。早瀬には夏になると鮎釣りの長竿が林立し、河原は焼肉を楽しむ家族連れで賑わう。この付近では河原が使われる。


松尾橋上手・中州下の落合
 中州に当たり二手に分かれた水が再び会う落合は、よく使われる。州の下にできる早瀬が、ドラマに情感をもたらす。
流れを背に人物が立つショットはそれだけで絵になるので、オープニングやエンディングにもよく使われる。
暴れん坊将軍長七郎江戸日記などで大川端の風景に多用されるほか、三匹が斬る!などの旅ものでもよく出てくる。

松尾橋上手 立ち込むのは鮎釣り 河原のテントには「京都東映会」の文字
松尾橋上手の河原 アップ 低い視点から見てみる
 河原に降りてみると堤の向こうにマンションが丸見えだが、すこぅし視点を低くするとたちまち絶好の撮影ポイントが出現する。
この河原の使用例は京極夏彦「怪」「七人みさき」で、冒頭るいの首が流れ着くシーン、河原に上げられた死体のシーン、七人みさきが不気味に水中から姿を現す幻想シーン、御行の又市と百介、おぎんが七人みさきについて汀で話し合うシーン、英名二十八衆句を挟んで次々と映し出される「祟りの犠牲者」のひとつ、カラスに突付かれる首無し死体のシーンなどが撮られた。痛快!三匹のご隠居最終話では乾三四郎の意外な正体を知った関屋勘兵衛が抜刀、対峙するシーンが撮られた。

松尾橋上手の汀
 松尾橋の上に立ち上流側の河原を見下ろすと、石礫の多い汀が見える。
ここは、続・三匹が斬る!「評判の早春蘭が死を招く」で旅立つ三匹とお千が歩く河原である。また、長七郎江戸日記のエンディングで長さんが行く汀もここである。橋から撮ったものと思われる。

松尾橋下手右岸堤

 松尾橋の下手、右岸の堤には並木がある。今は自転車道として舗装されてしまっているが、以前は風情たっぷりの地道だった。
並木は水に向かって枝を長く伸ばし、枝の合間に水面が光ってよい絵になる。
木の間から流れを見ての印象的なショットと言えば必殺必中仕事屋稼業、元締のおせいと相棒の政吉の間柄に鋭く気付いた半兵衛が、おせいにそのことを質すシーンである。堤上から枝越しに川を望むと、ちょうど蛇行する地点なのもよい風情なのである。
川を映さずに堤の並木を見ると、街道筋の出現となる。


松尾橋下手右岸堤 河原から見上げ
 木津堤ほどではないにせよ、この付近の桂川は激しく蛇行するので堤も堅固で高い。河原から見上げて駕籠でも配すれば、立派な街道筋である。
あまり建て込んでいない時代には、山を借景に駕籠がゆく風景なども撮られた。
必殺仕事人で、中村鴈次郎演じる鹿蔵元締が、年甲斐もなく若い愛人と連れ立って駕籠でゆくシーンなどは印象的。

松尾橋下手 右岸の水制
 松尾橋の下手には、川中に突き出した突堤のような石積みが並んでいる。これは出水時の流れをやわらげるための施設で、この上に木が生え小島のようになり湛水域を作ると、いわゆる「ワンド」になる。江戸期以前からあった聖牛などと違い近代以降のものであるが、切り取った風景として見れば風情のある水景の小物として画面によく映える。
北大路欣也が大岡忠相を演じる名奉行 大岡越前の、大盗・雲霧仁左衛門を捕える回で、元雲霧の情婦・おりんの船を見るシーンがここで撮られた。水制上に乗ってのアングルは、青い水面がまことに美しい。

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